とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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どうもお久しぶり
ゴールデンウイーク中に間に合ってよかった…よかった

次回も出来る限りはやく投稿できるよう頑張ります!


11話

 

巨大で真っ赤な境界壁を削り出すように造られた宮殿はゲーム会場として使われていた。現在は上条と耀が、そこでギフトゲームに参加しており、舞台上では決勝枠に残るために争われていた

 

上条と耀の対戦相手は自動人形、石垣の巨人だった

しかし上条はというと耀の一歩後ろに下がり戦闘を傍観していた。しっかりと上条の首周りには白濁とした色の石が埋め込まれたネックレスがぶら下がっていた

 

「(これ…俺必要だったのかぁ?)」

「これで…終わり!」

 

鷲獅子から受け取ったギフトで旋風を操る耀は、石垣の巨人の背後に飛翔し、頭部を蹴り崩す。加えて自分の体重を像へと変幻させ、落下の力と共に巨人を押し倒す。石垣の巨人が倒れると同時に、割れんばかりの観衆の声が聞こえた

宮殿の上から見ていた白夜叉が手を叩くと、観衆の声が一斉に止む

白夜叉はバルコニーから笑いかけ、耀と上条、一般参加者に声を掛ける

 

「最後の勝者は"ノーネーム"出身

の春日部耀、上条当麻に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。ルールはもう一人の"主催者"にして、今回の祭典の主賓から説明を願おう。」

 

白夜叉が振り返り、その場の中心をある人物に譲る

その人は深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも着飾った少女がいた

彼女は龍の純血種

星界龍王の龍角を継承した、新たな"階層支配者"

炎の龍紋を掲げる"サラマンドラ"の幼き党首・サンドラが王座から立ち上がる。鈴の音のような凜とした声音で挨拶をする

 

「御紹介に与りました、北のマスター・サンドラ=ドルトレイクです。東と北の共同祭典・火龍誕生祭の日程も、今日で中日を迎えることができました。然したる事故もなく、信仰の協力下さった東のコミュニティと北のコミュニティの皆様にはこの場を借りて御礼の言葉を申し上げます。以降のゲームにつきましては御手持ちの招待状をご覧下さい。」

 

観衆が招待状を手に取る

 

『ギフトゲーム名"創造主達の決闘"

 

・決勝参加コミュニティ

・ゲームマスター・"サラマンドラ"

・プレイヤー・"ウィル・オ・ウィスプ"

・プレイヤー・"ラッテンフェンガー"

・プレイヤー・"ノーネーム"

・決勝ゲームルール

・登録されたギフト保持者はお互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う

・ギフトを十全と扱うため、1人まで補佐が許される

・ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事

・総当たり戦を行い勝ち星が多いコミュニティが優勝

・優勝者はゲームマスターと対峙

・授与される恩恵に関して

・"階層支配者"の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します

"サウザンドアイズ"印

"サラマンドラ"印』

 

これにて本日の大祭は御開きとなった。

 

ギフトゲームが終わり、上条と耀はサウザンドアイズ旧支店へと向かった。何故かというと白夜叉自身のご厚意もあるのだが、頼み事について詳しく話をしたいとの事で入ろうとしたら、いつもの割烹着を着た店員に風呂に入るよう言われた

風呂場に行くと、先客がいるのか服が乱雑に脱ぎ捨てられており、見知った学ランがあった。まさかと思いいざ扉を開けると、金髪の少年が湯船でくつろいでいた

 

「あれ、やっぱり十六夜だったのか。」

 

十六夜は上条の声に反応し振り返る、上条は十六夜の隣に浸かる

 

「ん?上条か。そうだ、白夜叉から聞いたぞ、春日部とギフトゲーム出ているらしいな。」

 

「とは言っても俺の出番なんて殆ど無いし、春日部だけでも良かったかも。」

 

初戦だけ上条が前線に出て相手に触れただけで壊したが、あまりにもあっけないのと耀が楽しめないとのことで、耀から戦闘を自粛するように言われ、それ以降は耀が前線に出てゲームを行うようになった

十六夜からしてみれば、出ているだけで羨ましかった、途中で耀を無視し参加すればいいと思ったからである。だけどそれは別に黒ウサギとの鬼ごっこがつまらなかったというわけではない

こんなにもあっさりと行くものなら上条は自分の必要性を感ぜずにいた。耀に向けていった言葉が今更恥ずかしくなってきたのである

 

「そんな事はないと思うぞ?特に春日部の場合は。」

 

「どういう意味だ?」

 

「そこは自分で考えろ。」

 

「なんだそりゃ。」

 

「ハハッ。これからわかることになるさ。」

 

十六夜は人一倍そういう事に鋭かったため、当の本人が気付いてないのに半ばあきれていた

 

「お、おう。てか、お前も北側まで来て問題を起こしてんじゃねーよ⁉︎」

 

十六夜は黒ウサギとの鬼ごっこ中に建物を倒壊させた。幸い怪我人は居なかったものの、"サラマンドラ"からは厳重注意された

 

「あれは黒ウサギが悪い。反省もしない。」

 

「少し大人しくは出来ねぇのか?」

 

「無理。」

 

「この会話、前にもした事のあるような…。」

 

上条は頭を抱えながらため息をつく

 

「気のせいだろ。俺はそろそろ上がるがどうする?」

 

上条と十六夜は今日起きた事を談笑しながら温泉をくつろいだ

 

「んじゃ、俺も上がるとするかな。」

 

 

 

2人はお風呂をあがり、着替え来賓室に向う。そこには先に上がっていた飛鳥達がいた。飛鳥達は旧支店にある備え付けの薄い浴衣を消えおり、首筋からは桃色の肌を見せていた

十六夜はそれを見た瞬間に、その場にいる女性陣の浴衣姿を鑑賞した

 

「…おぉ。コレはなかなかいい眺めだ。そうは思わないか上条?」

 

「わかりたくない。」

 

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的にあう」

 

スパァーン‼︎

ハリセンが十六夜の頭を襲った、それは耳まで赤くした飛鳥と黒ウサギの物だった

 

「変態しかいないのかこのコミュニティは⁉︎」

 

「白夜叉様も十六夜さんもみんなお馬鹿様ですッ‼︎」

 

レティシアは暴走する飛鳥と黒ウサギを止めようとはせずに上条に近寄り、少し顔を紅くしていた

 

「…当麻もそう思うのか?」

 

「お、俺?個人的にはれてぃ」

 

いつも皆の前では主殿や、上条としか呼んでいなかったレティシアが急に下の名前で上条を呼んだことを問題児達が聞き逃すわけもなかった

 

「「「「当麻…だと⁉︎」」」」

 

「へ…?それがどうしたんだよ?」

 

「い、いやこれはだな⁉︎というか他の主殿達にも下の名前で呼んでいる時だってあるだろ⁉︎」

 

いつも

というか2人の時は大概に当麻と呼ばれていた上条は不思議に思わなかったが、レティシアは皆がいることを忘れて呼んでしまった事に動揺を隠せずにいた

 

いままで無関心だった春日部は、レティシアが上条を下の名前で呼んだ瞬間からレティシアと上条をただ黙って見ていた

 

「いや。今の発音は俺達の名前を呼ぶ時とは、明らかに感情の入れ方が違う。」

 

十六夜や、飛鳥、耀と問題児達にも下の名前で呼んでいることは上条だって知っている。しかし十六夜は上条が下の名前で呼ばれていなかったことに少しだけ気になっていた

何故上条だけ?と考えた事もあった。しかし今のを見て十六夜はある事を確信していた

 

「お、同じだからな⁉︎」

 

「まさか既にレティシアを…こやつできる…!」

 

「…やはり御2人はそういう間柄に。」

 

それは白夜叉や、黒ウサギも同じだったらしい。黒ウサギに至ってはレティシアがほぼ裸になり、上条と接近していた時から気になっていた

レティシアは必死に1人で否定はしているが皆の耳には届いていなかった

 

「え…名前で呼んではいけないのかしら?」

 

「違う、お嬢様。そうじゃないんだ。」

 

「?」

 

飛鳥は何も気づいていなく十六夜達が騒いでいる理由がわからなかった

それは上条も同様で、軽く暴れそうになっているレティシアをなだめながらあることを質問していた

 

「なぁレティシア。十六夜達は何を騒いでいるんだ…?」

 

「私が知るか‼︎」

 

「…私が空気なのは今に始まった事ではないが流石に泣くぞ?」

 

オティヌスは来賓室の机にぽつりと立っていたが、レティシアの事でも話に入れずにいた

 

その後、何とか落ち着いたレティシアは頭を冷やしてくるといい来賓室を離れた。店員も頭を抑えながら出て行った

 

今はレティシアを除く"ノーネーム"のメンバーと、白夜叉、そして飛鳥の手の中に居るトンガリ帽子の精霊がこの場にいる

白夜叉は来賓室の席の中心に陣取り、両肘をテーブルに載せ今まで聞かせたことのない真剣な声音で話す

 

「それでは皆のものよ。今から第1回、黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」

 

「始めません。」

 

「始めます。」

 

「始めませんっ!」

 

「それならエロ可愛くじゃなく、寮母のお姉さん風な衣装がいいと思う!」

 

白夜叉の提案に悪ノリする十六夜に、速攻で流れを断うとする黒ウサギだが、上条はさらに悪ノリを始める。お姉さんと聞き耀は自分の胸を抑えていた

 

「いい加減に」

 

悪ノリが続き黒ウサギが止めようとするが十六夜と白夜叉によって無意味に終わる

 

「わかってねぇな。黒ウサギスタイルの良さを露出してこそ発揮させるだろ!」

 

「そうじゃ!あの手の服装は黒ウサギには似合わん。ならば胸を強調させ、美脚をださないと意味はない!寮母の素晴らしさも分かる。先日おんしと語り合ったからの。だが!それ故に!黒ウサギには例のレースで編んだシースルーの黒いビスチェスカートを」

 

「いい加減にして下さい上条さんも十六夜さんも‼︎話が進みません!」

 

「着ます。」

 

「着ません!」

 

いちいち悪ノリをする十六夜達にキレた黒ウサギはウサ耳を逆立て怒る

白夜叉は黒ウサギに怒られたからなのか、本題に移る

 

「少し騒ぎ過ぎたかの。ま、衣装の話は横に置いてだな。実は明日から始まる決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ。」

 

「あやや。それはまた唐突でございますね。何か理由でも?」

 

「うむ。おんしらが起こした騒ぎで"月の兎"が来ていると公になってしまっての。明日からのギフトゲームで見られるのではないかと期待が高まっているらしい。こうなると出さないわけにはいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させて欲しい。もちろん報酬も用意しよう。」

 

なるほど、と納得する一同

 

「分かりました。明日のゲーム審判・進行は黒ウサギが承ります。」

 

「うむ感謝するぞ。」

 

一方で胸を抑えていた耀が何か思い出したかのように白夜叉に尋ねる

 

「白夜叉。私達が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」

 

「すまんがそれは教えられん。"主催者"がそれを語るのはフェアではなかろう?教えてられるのはコミュニティの名前までだ。」

 

白夜叉はパチンと指を鳴らす。すると羊皮紙が現れ、そこには相手コミュニティの名前が並べられていた。飛鳥はその名前を見て目を開き驚く

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"に"ラッテンフェンガー"ですって?」

 

「うむ。この2つは珍しい事に六桁の外門、1つ上の階層からの参加でな。格上と思って良い。覚悟はしておいた方がいいぞ。」

 

白夜叉の真剣な忠告に、コクリと頷く耀と上条。しかし今まで出番がほとんど無かった上条は気合が入っていた

 

「大丈夫だって。もしもの時は俺が春日部の事をサポートするだけだよ。」

 

「うむ。"主催者"が言う言葉ではないが期待しておるぞ。」

 

上条の言葉に頼もしさを感じた白夜叉は笑顔で頷く。耀も隣で静かに笑っていた

一方の十六夜とオティヌスは、"契約書類"を睨みながら十六夜は物騒に笑い、オティヌスはただ黙っていた

 

「"ラッテンフェンガー"って事は"ネズミ捕り道化"<ラッテンフェンガー>のコミュニティか。なら明日の敵はさしずめ、ハーメルンの吹き笛道化だったりするのか?」

 

え?と飛鳥があげるが、白夜叉と黒ウサギの声に消された

 

「ハ、"ハーメルンの笛吹き"ですか⁉︎」

 

「まて、どういう事だ小僧。詳しく話を聞かせろ。」

 

ふなりの驚愕の声に、思わず瞬きする十六夜。白夜叉は幾分声のトーンを下げ、質問をする

 

「あぁ、すまんの。最近召喚されなおんしら知らんのも無理はないか。"ハーメルンの笛吹き"とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ。」

 

「何?」

 

「魔王のコミュニティ名は"幻想魔道書群"<グリムグリモワール>。全200編以上にも及ぶ魔書から悪魔を呼び出した、召喚士が統べた脅威なコミュニティだったもの」

 

「へぇ。」

 

十六夜の瞳に鋭い光が宿る、オティヌスは幻想魔道書群という単語に反応し何かかんがえるかのように帽子を深くかぶり直した

 

「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世を去ったはず。…しかし十六夜の話が本当だとすると。」

 

黒ウサギの緊張した顔は、もし魔王が現れるかもという警戒してのとのだった。

十六夜はしばし考え、今まで話についてこれなかったジンの頭を掴む

 

「なるほど、状況は把握した。そういうことなら我らが御チビ様にご説明願おうか。」

 

「え?あ、はい。」

 

一同の視線がジンに集まる。突然の話題に振られている表情が固まっていたが、その後ジンはハーメルの笛吹きはグリム童話の一編にあり、その内容を話した

 

「ふーむ。"ネズミ捕り道化"と"ハーメルンの笛吹き"かとなると、滅んだ魔王の残党が火龍誕生祭に忍んでおる可能性がたかくなってきたのぅ。」

 

「参加者が主催者権限を持ち込むことが出来ない以上、その路線がとても有力になってきます。」

 

「うん?なんだそれ、初耳だぞ。」

 

「おぉ、そうだったな。魔王が現れると聞いて最低限の対策を立てておいたのだ。」

 

白夜叉が指を振ると光り輝く羊皮紙が現れら誕生祭の諸事項を記してあった

十六夜はそれを手に取り、小さく頷く

 

「"参加者以外はゲーム内に入れない"、"参加者は主催者権限を使用できない"か。確かにこのルールなら魔王が襲って来ても"主催者権限"を使うのは不可能だな。」

 

「うむ。まぁ押さえる所は押さえたつもりだ。」

 

十六夜は納得したように頷く

しかし上条は何も言えないような寒気が背筋に走る。まるで何かを警戒するかのように

 

「(何だ?確かに白夜叉が作ったルールは抜け目がない。だけど何か見落としている気がしてならない。…恐らくオティヌスも何か考えているはずだし、後で聞いてみるか。)」

 

そして会議は終わり、上条とオティヌスは自室に戻る。扉を閉め、オティヌスを備え付けの机に置くと上条はベットに座り真剣な眼差しで問いかけた

 

 

「オティヌス。」

 

「言いたい事はわかる。やはり人間も何か感じていたか。」

 

オティヌスも話しかけられるのが分かっていたのか、あの諸事項について話し合う

 

「まぁな。だけど、あの白夜叉が考えて設けたルールだ。他に抜け目があるとは考えられないんだよな。」

 

恐らく"魔神"だった頃のオティヌスより力を持っている白夜叉に対して不信感は微塵もなかった

 

「何にせよ、この世界の知識が浅い私達が考えても仕方ないだろ?明日は決勝なんだろ?早く寝たらどうだ。」

 

オティヌスはというと、違和感があるがそこまで気には止めずにベットに入る

 

「あぁ。」

 

上条もベットに入るがその顔に安心した様子はなかった

 

 

 

 

会場の割れるような歓声の中、"ノーネーム"一同は運営側の特別席に腰をかけていた。十六夜の隣では珍しく落ち着きのない飛鳥かわそわそわの大会の進行を見守っている

 

「どうしたお嬢様。落ち着きがないぞ。」

 

「…昨日の話を聞いて心配しない方がおかしいわ。相手は格上なのでしょう?」

 

「うむ。"ウィル・オ・ウィスプ"と"ラッテンフェンガー" 両コミュニティ共に本拠を六桁の外門に構えるコミュニティ。通常は下位の外門のゲームには参加しないものだが、フロアマスターから得るギフトを欲して来たのだろう。一筋縄ではいかんだろうな。」

 

「そう。…白夜叉から見て、春日部さん達に優勝の目は?」

 

「ない。」

「ある。」

 

即答する白夜叉とオティヌス。しかしその返答は正反対だった。その事に白夜叉は瞳を細くしオティヌスに問いかける

 

「ほぅ。理由を聞かせてもらおうかな?」

 

オティヌスも瞳を鋭くし返答する

 

「お前こそ、その目は節穴か?あの小娘だけなら優勝は無いが、人間が居るとなれば話は別だぞ。」

 

オティヌスの返答に目を丸くした白夜叉はニヤニヤと笑いながらも納得する

 

飛鳥はいつまでも返答が来ないので視線を会場に戻す

 

「あいも変わらない信頼感だの。」

 

「生憎、私にはそれしか無いからな。」

 

それしかないと言うオティヌスに、白夜叉の顔つきが戻る

 

「そうかの。ならセコンドにでも行ったらどうだ?」

 

「…そんなのがあったのか?」

 

「話を最後まで聞いて無かったのか。」

 

昨日の会議ではセコンドに着くのはレティシアとジンで決まっていたが、オティヌスは諸事項について考えていたため聞いていなかった

 

「まぁいい。それで何処にある?」

 

「良くはないからの。後ろの通路に扉があるだろ?その扉は下にまで繋がっておる。下に行ったらレティシア達が待機しておるだろう。」

 

「助かる。」

 

そういいオティヌスは白夜叉の椅子から飛び降り、扉まで歩いて行った

 

「…さてと私も黒ウサギを視姦することに集中するかの。」

 

耀と上条は観客席からは見えない舞台袖にいた。セコンドについたジンとレティシアは、次の対戦相手の情報を確認していた

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"に関して、僕が知っている事は以上です。参考になればいいのですが。」

 

「大丈夫。ケースバイケースで臨機応変に対応するから。」

 

何処かの国のキャッチフレーズのような返答に苦笑いするジン

 

「何も知らないで突っ込むより、少しでも知識があって突っ込むのとは訳が違うからな。助かったよ。」

 

上条はジンの頭に手を置く、ジンは照れたのか、褒められて嬉しいのか口元が少し笑っていた

その傍にいたレティシアが注意を促す

 

「相手は格上だ。2人とも油断をしないように。」

 

「大丈夫。問題ないよ。」

 

「俺も出来る限りサポートするから。」

 

「…うん。頼りにしている。」

 

上条の言葉に頷き、拳を合わせる2人

舞台の真ん中では黒ウサギが入場口から迎え入れるように両手を広げた

 

『それでは入場していただきましょう!第1ゲームのプレイヤー・"ノーネーム"の春日部耀、上条当麻のペアと、"ウィル・オ・ウィスプ"の、アーシャ=イグニファトゥスです!」

 

通路から舞台に続く道に出る

その瞬間、耀めがけて高速で駆ける火の玉が迫ってきた

 

「YAッFUFUFUUUUUuuuu‼︎」

 

「わっ!」

 

しかし、それは上条の右手によって防がれる

 

「出会い頭に挑発とは随分とひでぇことするなオイ。」

 

火の玉を消されたことにより目の前にいるわツインテールの髪と白黒のゴシックロリータの派手なフリルのスカートを着た少女は驚いていた

 

「なっ⁉︎火の玉が消された⁉︎そのペンダントがギフトって所か?まぁいいや。」

 

少女の隣には轟々と燃え盛るランプと、実態のない浅黒い布の服。人の頭の十倍はあろうかという巨大なカボチャ頭のお化けがいた

このカボチャのお化けが耀めがけて火の玉を出したと上条は判断した

 

「YAッFUFUFUUUUuuu‼︎」

 

「"ノーネーム"のくせに私達"ウィル・オ・ウィスプ"より先に紹介されたり、ジャックの炎消すなんて生意気だっつの。」

 

対戦相手である少女は、栄えある舞台に"ノーネーム"が立つことに不満に思っていた

 

『せ、正位置に戻りなさいアーシャ=イグニファトゥス!あとコール前の挑発行為は控えるように!』

 

「はいはーい。」

 

小馬鹿にしたような仕草と声音で上条達と距離を取る。上条と耀はアーシャと呼ばれる少女と、ジャックと呼ばれるカボチャを気にもとめず、バルコニーにいる飛鳥達に向けて手を振っていた

 

「大した自信だねーオイ。私とジャック を無視して客とホストに愛想ふるってか?何?私達に対する挑発ですか?」

 

「うん。」

 

眉間に皺を寄せ、唇を尖らせるアーシャ。効果は抜群だ

 

「春日部もこんなお子様を相手にする事ないぞ?」

 

「お、お子様だと⁉︎」

 

上条の一言により一層、頭にきたのかうつむきながら体を震わせる

黒ウサギもそのやりとりを見て、大丈夫と判断したのか、宮殿のバルコニーに手を向ける

 

『それでは第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関してご説明があります。ギャラリーの皆様はどうかご静聴の程を。』

 

「うむ。協力感謝するぞ。私は何分、見ての通りのお子様体型なのでな。大きな声を出すのは苦手なのだ。さて、それではゲームの舞台についてだが…そうだの。招待状を見て欲しい、そこにナンバーは書いておらんか?。」

 

観客は一斉に招待状を取り出す

 

「ではそこに書かれているナンバーが、我々ホストの出身外門"サウザンドアイズ"の334番となっている者はおらんかの?おるのであれば招待状を掲げ、コミュニティの名を叫んでおくれ。」

 

その言葉にざわざわと観客がどよめき始める。するとバルコニーから真正面の観客席で、樹霊の少年が掲げていた

 

「こ、ここにあります!"アンダーウッド"のコミュニティが334番の招待状を持っています!」

 

歓声が上がる、白夜叉はニコリと笑い、バルコニーから姿を消し、次の瞬間には少年の前に立っていた

 

「ふふ。おめでとう、"アンダーウッド"の樹霊の童よ。後に記念品でも届けさせてもらおうかの。よろしければ旗印を拝見してもよろしいかな?」

 

白夜叉は"アンダーウッド"の旗印を見て微笑み、バルコニーに戻っていた

 

「今しがた、決勝の舞台は決定した。それでは皆のもの、御手を拝借。」

 

白夜叉が両手を前に出す。観客もそれに倣い両手を前に出す。パンと会場一致で柏手1つ

 

それで世界は変わる

 

変化は一瞬で劇的だった。それだけで今までいた世界から、今の舞台へと上書きした。それも上条の右手の影響を受けずに。これには上条と耀も覚えがあった

 

「春日部、これは。」

 

「うん。多分だけど白夜叉のだと思う。」

 

周りを満たすと樹木の上にいた。しかし周り一帯が樹木に囲まれていた

 

「この樹…ううん。地面だけじゃない。此処、樹の根に囲まれた場所?」

 

上下左右、その全てが樹木の根に囲まれている大空洞だった。なぜ根だとわかったというと、耀の嗅覚により土の匂いを嗅ぎ取ったからである

 

「あらあらそりゃあどうも教えてくれてありがとよ。そっか、ここは根の中なのねー。」

 

「別にお前達に教えたわけじゃないけどな。」

 

アーシャには無関心な耀、耀の代わりに答える上条だが、アーシャは苛立ったのかジャックと共に臨戦態勢に入るが、それを耀が制す

 

「まだゲームは始まっていない。」

 

「はぁ?何言って。」

 

「勝利条件も敗北条件も提示されていない。これでどうやってギフトゲームをするの?」

 

さらに苛立つアーシャだが耀の言い分に正当性を感じたのか、呆れたかのように空洞を見回す

 

「しっかし、流石は星霊様ねー。私ら木っ端悪魔とは比べ物にならねぇわ。こんなヘンテコなゲーム盤まで持ってるんだもん。」

 

「それは多分…違う。」

 

「ああん?」

 

耀はアーシャの答えには答えず首だけを振る

上条は根を右手で触るが消えない事を確認していた

突如、空洞に亀裂が入る

亀裂から出てきたのは黒ウサギだった。黒ウサギは"契約書類"を振りかざし、内容を読み上げる

 

『ギフトゲーム名"アンダーウッドの迷路"

・勝利条件

一,プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

二,対戦プレイヤーのギフトを破壊。

三,対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合。

・敗北条件

一,対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

二,上記の勝利条件を満たせなくなった場合。』

 

「審判権限の名において。以上が両者不可侵である事を、御旗の下に契ります。御二人とも、どうか誇りある戦いを。ここに、ゲームの開始を宣言します。」

 

黒ウサギの宣誓が終わる。それがゲーム開始のコールだった

黒ウサギが説明している間に上条はたった一つしかない道に立っていた

 

「迷路の脱出か…。春日部、先に行ってろ。こいつらは俺が相手しとくから。」

 

耀は小さく頷き、走る。2人の連携にアーシャは一瞬対応が遅れ、耀をみすみす行かせてしまう

そうなれば上条は1人でアーシャとジャックを相手にしなければならない

 

「へぇ…。とことん舐めてくれちゃってるのね。名無しの分際で!焼き払えジャック!」

「YAッFUUUUUUUuuuuuuu‼︎」

 

1人で充分だと遠まわしに言われ、とうとうアーシャの堪忍袋が切れる。左手を翳し、ジャックの右手に下げられたランタンとカボチャ頭から溢れた悪魔の業火が根を焼き払いながら上条を襲う

 

しかし上条は右手を前に出す

それだけで炎が一瞬に消え去った

 

「炎が消された⁉︎」

 

2度もジャックの業火を消されたことにアーシャは驚きを隠せなかった

 

「悪いけど此処は通さないぞ。」

 

「くそ!3発撃ちこむぞ!ジャック!」

 

いつまでも此処でじっとしていたら勝負にもならない。焦り始めるアーシャは再び左手を翳す。次にジャックがランタンで先程より勢いの増した業火を三本放つ

 

しかし上条は自分に当たる炎だけを確実に消し、避ける。残った業火は後ろにある根に当たり燃える

 

「な…⁉︎」

 

絶句するアーシャ。今の攻撃を避けたとなるといくら炎を増しても結果は変わらないことを察し歯噛みする

 

「くそ、やべぇぞジャック…!このままじゃ負けちまう!」

 

「Yaho…!」

 

アーシャは諦めたかのようにため息を吐く

 

「くそったれ。悔しいがこのツンツン頭はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん。」

 

「わかりました。」

 

「ッ⁉︎」

 

突然目の前に現れたジャックに驚く上条

ジャックの真っ白な手が上条を凪ぎ払おうとするが、上条は腕を交差させ何とか耐える

 

「さ、早く行きなさいアーシャ。このお坊ちゃんは私が相手します。」

 

「悪いねジャックさん。」

 

アーシャは返事をし、そのまま通路に走り抜ける

ジャックはランタンから篝火を溢す

その僅かな火は樹の根を瞬く間に飲み込み、轟々と燃え盛る炎の壁となった。先程の業火とは比べ物にならない熱量に上条さある事をおもいだす

 

「なるほどな。お前は」

 

「はい。私は生と死の境界に顕現せし大悪魔!ウィラ=ザ=イグニファトゥス制作の大傑作!それが私、世界最古のカボチャお化け…ジャック・オー・ランタンでございます 」

 

ヤホホ〜と笑うジャックだが、上条の顔にも笑みがこぼれる

 

「だけど悪いな、このゲームは俺達の勝ちだ。」

 

「…理由をお聞きしても?」

 

上条の言葉にピタリと笑うのをやめる

 

「春日部のギフトさえあれば、この迷路なんてすぐにクリア出来るからな。」

 

「なら貴方を倒して彼女に追いつけばいい話です。」

 

耀のギフトの正体がわからないジャックだが、目の前にいる少年の瞳を見て嘘じゃないと判断する

本当なら少年を残し追いかけてもいいのだが、ジャックは思った

 

それはつまらない。と

 

「そう簡単にやられるほど俺は甘くないぞ?」

 

ジャックが己が旗印を誇るように腕を広げ轟々と燃え盛る炎の背にし叫ぶ

 

「ヤホホ 聖人ペテロに烙印を押されし不死の怪物。このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!」

 

「不死の相手なんて、こちとら慣れっこだ!せいぜい時間を稼がせてもらうぜ!」

 

ジャックが今までのとは比べる必要のないくらいの業火を上条に放つ

しかし上条はそれを右手で払うことによって防ぐ

 

「なるほど…。厄介なギフトですね。その右手は、一体どんな仕組みなんでしょうか?」

 

「答える義理はない。」

 

ジャックはこの短時間の戦闘の間に上条のギフトは右手にあり、ペンダントではないと見抜く

 

「…ヤホホ。楽しくなってきましたねぇ‼︎」

 

2人を分けるように亀裂が入る

 

「残念。時間切れだ。」

 

『勝者、春日部耀‼︎』

 

会場が砕け散り、ゲームを終了の宣言する

耀を探しているのか周りを見渡す上条に、ジャックは問う

 

「…改めて、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

声をかけられた上条は振り向き左手を差し出す

 

「"ノーネーム"上条当麻だ。よろしくな。」

 

「えぇ。次こそ貴方を倒してみせます。」

 

ジャックの穏やかな声とは似合わない、その笑顔はとても怖かった

 

「はは…お手柔らかに頼む。」

 

戦うことがないようにと望みながらも

握手をしていると耀がものすごいスピードで近付く

 

「上条!」

 

「どうした春日部?」

 

上条は耀の叫び声と焦りように驚く。軽く肩で息をしている耀は空を指差す

 

「上を見て。」

 

上を見ると雨のように撒かれている黒い封書

 

「ん?…あれは。黒い"契約書類"か?」

 

ジャックは素早く"契約書類"を手に取り読み上げる。内容をみたジャックの顔はカボチャ頭には似合わない険しい表情をしていた

 

「ヤホホ。これは…全く笑えませんね。」

 

『ギフトゲーム名"The PIED PIPER of HAMELIM』

 

数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返った舞台会場

観客の1人が叫び声をあげる

 

「魔王が…魔王が現れたぞオオオォォォォォ‼︎‼︎」

 

 

その封書は魔王が襲来のお知らせであった




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