とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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本編は約3週間ぶりとかいうていたらく。

しかも明後日と言っておきながら普通に約束を破るというアホの所業

誠に申し訳ありません

次回は出来るだけ早めにしたいと思います!


9話

9話

 

星が綺麗に輝き、満月が箱庭を照らす

 

"ノーネーム"の屋敷にある上条の部屋には黒ウサギ達は白夜叉の下から戻り、その詳細を上条とレティシアに教えるため部屋の扉に手を掛けドアノブをあげる

 

「失礼します。上条さ」

 

扉を開けて部屋に入ると黒ウサギはあまりの光景に目を疑った。敬愛するコミュニティの先輩が箱庭に来て1週間も経ってない少年と寄り添いながら寝ていたからである

 

「これは一体…何が起きたんでしょう?」

 

黒ウサギは飛鳥の方に振り向きながらも、驚きを隠せきれないのかウサ耳がピンと立っていた

 

「知らないわよ、腕枕までして随分仲良くなってるわね。」

 

そう上条の左腕はレティシアの枕となっていた、折りたたまれている為か上条の胸元にレティシアがいた

飛鳥は1度だけため息を吐いて頭を抑える。それを十六夜は横からヤハハと笑いながら上条もレティシアを見る

 

「美少女と添い寝か羨ましいもんだぜ。」

 

「…起こす?」

 

耀はいつも通りの無表情だったが、まさか上条達が寝ているとは思わなかったので結果報告をするために起こそうとするが、黒ウサギはそれを止める

 

「もう遅いですから明日にしませんか?」

 

上条はガルドとの戦いの傷も癒えないまま、レティシアと勝負したのだ、疲れるのも無理はない

 

「そうね、でも私達が交渉していた時も寝てたと思うとアレだけどね。」

 

黒ウサギ達が白夜叉の下に行った理由、それは"ペルセウス"と交渉するためだった。すると十六夜が何か思いついたのか、ニヤリと口元が笑う

 

「少し悪戯してやるか。」

 

「いいわね、それでどうする?」

 

「どうせなら起きた時に2人とも驚くやつがいいな。」

 

悪魔のような笑みを浮かべ2人はどうするか話し合う

 

「(レティシア様…申し訳ありません。黒ウサギにはこの問題児達を止める事は出来ません。)」

 

黒ウサギは、そんな2人を見て何かを悟ったかのような目でレティシア達が寝ているベット見る。春日部は面白くないのか、既に上条の部屋に居なかった

 

「そうね…、これなんてどう?」

 

飛鳥がとった行動は上条とレティシアを抱きしめさせるような体制にさせた。深く眠っていたのか起きる気配はなかった

 

「これなら起きた時の反応が楽しみだな。」

 

十六夜はヤハハと笑う、2人の声が大きかったのか、オティヌスが上条のベットの中から出てきた、そして呆れながらも注意をする

 

「全く悪戯もいいが程々にしてくれ。」

 

「何だよ、オティヌスは起きてたのか。」

 

「これでは寝床を確保するのが難しいんでな。」

 

本当ならば彼女もさっさも寝たい所なのだが上条とレティシアが一緒に寝ていてる為に場所が殆ど無かった

 

「ハハッ、そりゃそうか。」

 

十六夜はオティヌスの小言を軽く笑い飛ばし気に留めなかった

 

「それに、五月蝿くされると眠ろうにも眠れない。」

 

「御主人が起きるから静かにしろって所か?」

 

「そんな所だ。どうせ明日も早いのだろう?寝なくていいのか。」

 

オティヌスは真夜中に部屋を訪れた黒ウサギ達には何かあるなと思い寝るよう促した

 

「「「はーい。」」」

 

 

 

レティシアが目を開けると、目の前にあるのは白いシャツと、シャツからかすかに見える鎖骨が見えた

 

「ん…ん⁉︎」

 

突然の光景に驚いくレティシアだが、次に抱きしめられていることに気付く

 

「(確か…話をしていたが、黒ウサギ達が遅いから先に寝たのは覚えている。だが今のこの状況は一体何が起こったって言うんだ⁉︎)」

 

レティシアは上条に覆われる様にに抱きしめられていた

 

「…もう逃がさないぞ」

 

「(寝言…?ふぎゅ⁉︎)」

 

上条が寝言を言いながら、レティシアを強く抱きしめる。男に抱きしめられたのは初めてのレティシアは対処法などわかるはずもなかった

 

「(ま、まずい。こんな所を黒ウサギに見られては)」

 

今のレティシアは顔を真っ赤にしていた。なんとか頭を少し動かし扉に目を向ける。そこには可愛らしいうさ耳が見えた

 

「……………ムフ。」

 

「(黒ウサギィィィィィィ!何だその目は⁉︎見てないで助けろ!)」

 

黒ウサギは扉を少しだけ開け、片目を覗かせている。しかし、その目は敬愛する先輩に向ける目ではなかった

 

「(ムフフ。まさかレティシア様があのような顔をするとは…。上条さんもきっちりホールドしてますし、起こすのは後にして、ギリギリまで放置しますか。)」

 

本来なら上条達を起こし、昨日何があったかを聞きたい所だったが、あれでは無理と判断して部屋を去った

 

「(なっ⁉︎黒ウサギめ放置するきか⁉︎どうすればいい………そういえば誰かとこんな風に寝たのは何時ぶりかな。暖かいな…脱けだせそうにないし寝るか。)」

 

レティシアは抜け出す事を諦めて目を閉じる、上条から伝わる暖かさに頬を緩めながら眠る

 

 

 

 

外から鳥のさえずりが聞こえ、それにより上条が目を覚ます。昨日はガルドと戦い、レティシアの猛攻を避けたせいか疲れも溜まり、すぐに眠った上条だが、ある違和感に気づく

 

「……え?」

 

上条の胸元には可愛い寝息をたてながら眠っているレティシアがいた。レティシアに腕枕をし、さらに抱きしめている。学園都市にいる第1位でさえ顔が真っ青になる状況にいた

 

「(待て待て待て待て!上条さんは何でレティシアを抱きしめているんだ⁉︎てか左腕が枕にされてるし!落ち着け……いい匂い、じゃねーよ!)」

 

状況を確認する為に何とかして周りを見渡す。すると扉が少し開いていることに気づく。誰か居るのかと思い見ると十六夜が覗いていた。なぜ覗いているかは置いといて、上条はこの状況を打破するべく十六夜に助けも求めるような視線を送る

 

「(十六夜!お前なら助けてくれるよな!)」

 

十六夜が軽薄な笑みを浮かべて、右手の親指を立て、それを口を動かす。

 

「(や く と く 。 知るかよ!いや確かにいい匂いするけども!)」

 

十六夜の口パクをなんとか読み取る、上条は役得と言われ気にしないようにするが、レティシアの髪からはとてもいい匂いがして悶々とする。髪の匂いに気を取られていると、既に十六夜は扉から居なくなっていた

しかし今度は、耀が覗きに来る

 

「…。」

 

覗いていた耀は上条たちを見て、遠い目をし立ち去るのであった

 

「(無視かよ!何だよ今の、これだから上条は、みたいな表情すんなよ!そして立ち去るのはえーよ‼︎そうだ、右手さえ動ければ!」

 

上条は左腕が枕にされ、右手は抱きしめている。左腕は後回しにし、まずは右手を起こさないように取ろうとする

 

「ん…」

 

しかし運悪く、上条の右手はレティシアの脇に挟まっており、取ろうとして脇をくすぐってしまった

 

「(脇ィィィィィィ‼︎レティシアも変な声出すなよ!頼むから‼︎)」

 

上条が右手を取ろうと動かするとレティシアの脇にあたってしまう

 

「(マズイ、早くしないとレティシアが起きちまう。何とかしないと。」

 

度重なる右手の猛攻により、ついにレティシアの目が覚めてしまう、上条とレティシアの目が合う

 

「「え?」」

 

見つめ合う2人、上条からは汗が大量に出る

 

「(起きちゃったぁぁぁァァァ!)」

 

「(…そういえば抱きしめられていたんだったな。)」

 

両者共に考える事は全く別だった。上条はどうにしかして、この最悪な状況を打破するか考える。レティシアは少しの恥ずかしさはあるもの冷静でいた、このままでも良いと感じている程だった

 

「す、すみませんでしたぁぁぁ‼︎」

 

上条の行動は速かった、レティシアが目で追えない速度でベットから降り土下座をしていた

 

「⁉︎」

 

突然の土下座により驚くレティシア。

 

「いや、だって目が覚めたらレティシアを抱き締めているとか、どう考えてもアウトだろ!」

 

「あぁ…私は気にはしていないから。」

 

しかし話きいてないのか頭を下げ続ける上条は何故か粛清を待っている様にも見えた

 

「とか言ってビリビリとか、ガブリとかされるんだろ⁉︎あぁ、不幸だぁぁぁぁ。」

 

「い、いやそ」

 

レティシアがなだめようとするが、上条の耳には届かずにいた。すると騒ぎが聞こえたのか黒ウサギが入ってきた

 

「おや、もう起きたのですか?」

 

「…黒ウサギか。」

 

黒ウサギを見て目を細めるレティシア、上条は黒ウサギに気づかず、ひたすら土下座をしていた

 

「レティシア様おはようございます。お食事とお茶の用意は出来ていますよ。」

 

「あぁ、おはよう。食事後に話があるんだがいいか?」

 

黒ウサギは何事もなかった様に話しかけるが、レティシアは朝の事を恨んでいるのか笑顔ではいるが、全く笑っているようにはみえなかった

 

「え、大変ありがたいんですが、えんり」

 

黒ウサギは朝の事を思い出したらしく、目を逸らしながら部屋から出ようとするが、レティシアに止められてしまう

 

「まぁ、遠慮するなよ。な?」

 

「ハイ。」

 

「それと土下座はもういいから食事にしないか。」

 

黒ウサギと話をつけたレティシアは、いまだに土下座をしている上条を少し呆れる

 

「許してくれるのか…?」

 

上条はおそるおそる顔をあげて様子を伺う

 

「今回は黒ウサギ達に非がありそうだからな。なぁ黒ウサギ?」

 

「ソンナコトハナイデス。」

 

上条の隣で正座している黒ウサギは小刻みに震えながら答える

 

「やっと起きたか。」

 

「十六夜…何でさっき無視したんだよ⁉︎」

 

十六夜が部屋に入ってくる、上条は十六夜をみて朝の事を思い出したのか立ち上がり詰め寄る

 

「その話はもういいだろ。良いニュースがあるから飯食ったら談話室に来いよ。」

 

「良いニュース?はぁ、わかったよ。」

 

自由奔放な十六夜に上条は肩を落とす

 

 

 

上条とレティシアは食事を取り、談話室に入る、談話室には十六夜、ジン、飛鳥、耀、黒ウサギと"ノーネーム"の主力陣が集まっていた

 

「で、良いニュースって何だ?」

 

椅子に座り、黒ウサギが淹れてくれたお茶をすする

 

「"ペルセウス"とギフトゲームをする事になりました。」

 

「ゴホッ!ゴホッ⁉︎それの何処が良いニュースなんだよ⁉︎」

 

ジンの言葉に飲んでいたお茶を喉まらせる

 

「まぁ、話を最後まで聞け。ゲームに勝てたらレティシアは自由の身になるんだぞ?」

 

「ゲームの報酬って訳かよ。」

 

上条の顔が険しくなる

 

「レティシアは"ペルセウス"の所有物扱いだからな。」

 

「…話はわかったよ。それで何時やるんだ?」

 

レティシアの扱い納得がいかない上条は、自分を無理やり納得させる

 

「今日。」

 

「は?」

 

「これから"ペルセウス"に乗り込むんだよ。」

 

「はぁぁぁぁ⁉︎」

 

十六夜は口元に笑みを浮かべ立ち上がる。扉の前に立ちドアノブを握ると振り返り告げる

 

「今あっちは準備で大忙しだろうよ。それがチャンスでもあるけどな。あぁ、それと負けたら黒ウサギとお嬢様とお前が"ペルセウス"に移ることになるから。」

 

最後に重要な事を言い残し部屋を出る。黒ウサギ達も部屋を出るが上条だけが残り頭を抱える

 

「……不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム名 "FAIRYALE in PERSEUS"

 

・プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

上条 当麻

久遠 飛鳥

春日部 耀

・"ノーネーム"ゲームマスター

ジン=ラッセル

・"ペルセウス"ゲームマスター

ルイオス=ペルセウス

・クリア条件

ホスト側のゲームマスターを打倒

・敗北条件

プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

プレイヤー側のゲームマスターの失格

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

・舞台詳細,ルール

ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の最奥から出てはならない

ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない

プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない

姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う

失格となった挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ペルセウス"はギフトゲームに参加します

"ペルセウス"印』

 

契約書類に承諾した直後、五人の視界は間を置かずに光へと呑まれた

 

そして契約書類により上条達は強制移動させられる

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろって事か?まぁ寝てる訳無いと思うが。」

 

白亜の宮殿を見上げ、十六夜は興奮しているのか、いつもの軽薄な笑みとは違う。本気で楽しみにしている、このゲームを。箱庭に来てからの大規模なギフトゲーム、それが楽しみなんだろう

 

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずです。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。しかし黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です。」

 

黒ウサギは人差し指を立てて説明する。今回のギフトゲームは、ギリシャ神話にあるペルセウスの伝説の一部をかたどったものだ

 

「見つかった者はゲームマスターへの挑戦資格を失ってしまう。ジンくんが見つかったら、私たちの負け。ならこのゲームには大きく分けて3つの役割分担が必要になるわ。」

 

飛鳥の隣にいる耀が頷く。本来ならこのゲームは大多数の人員で攻略するゲーム。少なくても10人単位で挑むものだが、それを5人で挑まなければいけないとなると役割分担は必須となる

 

「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割。」

 

「春日部は鼻が利くし、耳も目もいい。不可視の敵は任せてもいいか?」

 

上条の提案に十六夜が続く

 

「飛鳥には悪いけど囮の方をお願いできるか?」

 

「…別にいいわよ。」

 

飛鳥は囮に選ばれる理由はわかってるつもりだか、不満そうな声で頷く

 

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですからゲームマスターを倒すのは上条さんと十六夜さんにお願いします。」

 

「悪いなお嬢様。俺も譲ってやりたいのは山々だけど、上条は多人数にも索敵にもできない、正直に言って相性が悪すぎる。だったらルイオスに挑む時の人員として使うしかないからな。」

 

上条の右手は確かに使える、が今回のゲームには相性が悪い。右手では索敵も大人数の相手をするには余りにも不向きだからだ。

 

「えぇ、今回は譲ってあげる。ただし負けたら承知しないから。」

 

黒ウサギは神妙そうな顔である事を口にする

 

「残念ですが、必ず勝てるとは限りません。相手が慢心している間に倒せねば、厳しい戦いになるでしょう。」

 

5人の目が一斉に黒ウサギにしゅうちゆする。上条が黒ウサギに質問をする

 

「ルイオスってそんなに強いのか?」

 

「いえ、ルイオスさんご自身の力はさほど。問題は彼が所持しているギフトなのです。もし推測が外れてなければ彼のギフトは」

 

「「アルゴルの悪魔だろ?」」

 

十六夜とオティヌスが同時に答える

 

「へぇ、オティヌスにも分かるのか。」

 

「言っておくが、この世に私が知らない事は殆どないぞ?」

 

互いに睨み合うが、十六夜は笑っていた

 

「へぇ、流石に名前は伊達じゃないって事だな。」

黒ウサギだけがは驚愕していた

 

「御二人は箱庭の星々の秘密に?」

 

「まぁな。昨日の内に白夜叉から機材を借りて星を観測しただけだけどな。」

 

「神話を齧ってさえいれば誰にだってわかることだろ?」

 

オティヌスも上条の肩に乗りながら自慢げな顔をする。黒ウサギはそんな2人を見て笑う

 

「オティヌスさんはともかく、十六夜さんは知能派でございます?」

 

「何を今更。俺だって生粋の知能派だぞ。部屋の扉だって、ドアノブを回さずに開けられるぞ。」

 

「………。参考までに、方法をおききしても?」

 

冷ややかな視線で黒ウサギは見つめる。十六夜はそれに応えるように笑い門の前に立つ

 

「そんなの…こうやって開けるにしまってんだろッ!」

 

轟音と共に、白亜の宮殿の門を蹴り破るのだった

 

 

飛鳥と二手に分かれた上条達は、息を殺しながら進んでいた。耀は耳を澄まして周囲の気配を探る

 

「飛鳥…心配だな。」

 

飛鳥は1人で宮殿を破壊しながら騎士達の囮をしている、上条も飛鳥が適任だとはわかる、しかし十六夜や、耀とは違い身体能力は普通の人間以下である彼女、もしものことがあると考えてしまう

 

「お嬢様なら大丈夫だろ。それとも上条が代わりにあの人数を相手にするか?」

 

「それが出来たら苦労してねぇよ。」

 

「情けねぇな。」

 

「うっせ。」

 

先頭に立っていた耀が、小声ながらも話している2人とジンに視線を向ける。耀が振り返った事で2人は会話をすぐに止める

 

「人が来る。皆は隠れて。」

 

緊張した声で警告をする。腰を落とし、まるで狩りをする獣のように奇襲を仕掛ける

 

「な、なんだ⁉︎」

 

突然襲われたので驚愕する騎士だが、すぐさま耀が後頭部を強打し、失神する。すると何かが倒れこむ音がし、何も無かった廊下から騎士の姿が現れる。騎士の近くには少し凹んだ兜があった

 

「この兜で間違いなさそう。」

 

「上条が兜を被っても無意味となると護衛を叩く必要があるな。」

 

十六夜が兜を拾い上げる。

仮に兜を人数分集めたとしても、上条の右手がある限り不可視のギフトは無効にされるため、透明化をしている敵を叩く必要が出てくる。その事を愚痴る十六夜だが、上条は特に気には止めていなかった

 

「それに関しては上条さんにではなく、右手に文句言ってくれ。」

 

「俺と春日部で透明の奴を叩くしかないか。」

 

透明になる兜は1つしかないため、1人で敵を叩きたいところだが、だが1人だと効率が悪く飛鳥もいつまで持つかわからない

 

「こんなとこで手間取ってられないしな。春日部には悪いけど」

 

「気にしなくていい。」

 

首を横に振る。敵を叩くとなれば派手に動くことが必要となる、それを実行してしまうと失格になってしまう、十六夜か耀で戦力的にどちらかを残すとなると答えは明白だった

 

「悪いな、いいとこ取りみたいで。これでも2人には感謝しているぞ。今回はソロで攻略出来そうにないし。」

 

「だから気にしなくていい。埋め合わせは必ずしてもらうから。」

 

耀は平淡な声で、断言する

 

「おう、上条に埋め合わせさせるから任せろ。…御チビは隠れとけ。死んでも見つかるな。」

 

「はい。」

 

さらっと埋め合わせを上条は自分に押し付けられ、文句を言いたくなった

 

「…埋め合わせの件については後で問い詰めるとして、ジンは俺が守るから安心しろ。」

 

「任せたからな。」

 

兜を被った十六夜の姿が消える

そして耀と、姿が見えない十六夜も宮殿の物陰から飛び出していった

 

「いたぞ!名無しの娘だ!」

 

「これで敵の残りは3人だ!」

 

「よし、その娘を捕らえろ!人質にして残りを炙り出せ!」

 

耀に襲いかかろうとする騎士達。それを宮殿の外まで殴り飛ばす

 

「これで春日部も失格か…。」

 

「大丈夫でしょうか…。」

 

上条と人は物陰から2人の様子を見ている。探知役の2人がいなくなったため上条は最大限にまで警戒心を高める

 

「十六夜も春日部も強いからな。大丈夫だと…ッ!」

 

瞬間、上条は腰を落とし物陰の奥に行こうとする

 

「どうし」

 

「しっ!」

 

話しかけてきたジンの口を抑える。足音も何も聞こえなかった、しかし上条は何かが居ると予感した。すると耀が吹き飛ばされ壁に叩きつけられてた

 

「(春日部が吹き飛ばされた⁉︎あの2人でも感知出来ないのか?)」

 

「恐らく本物のハデスの兜だろうな。」

 

前触れもなく吹き飛ばされた耀を見て耀の五感と、あの十六夜が近くまで人間を感知出来ないのは不自然だった、上条は何故と思考する

心でも読んだかのようにオティヌスがギフトから実体になり、上条の考えていた答えを教える

 

 

「レプリカとどんな差があるんだ?」

 

「簡単に言うと姿だけでなく、完全なる気配消失をする。中々に厄介な代物だな。」

 

ギリシャ神話でペルセウスが受けた恩恵。神仏でさえ感知できない不可視のギフトを騎士は託されていた

 

「本当に厄介だな。」

 

「さてお喋りも此処までだ、いつ敵が出てくるか分からんからな。」

 

「助かったよ。」

 

オティヌスはギフトカードの中に戻る

物陰に隠れていても、見つかるのは時間の問題。見つかった時は何としてでもジンを逃がす準備だけはしていたが、爆音が起きた

耀は十六夜に肩を借りながら上条達の所に戻ってきた

 

「どうやら無事倒したみたいだな。」

 

「まぁな、だけど春日部が少し負傷してるから、あまり無理はできない。」

 

上条は耀の方を見る、足が赤く腫れていた

 

「…私は大丈夫。護衛も全員倒したから先に行って。」

 

肩で息をする耀を見て、強がって見せているのがバレバレだった

 

「ありがとうな。」

 

「別に、埋め合わせはしてもらうから。」

 

耀は壁にもたれかかり、こんな時でも表情を崩さないようにする

 

「やっぱり俺がしないといけないのか…。」

 

「今の所、何もしてないし妥当だろ。」

 

「うぐっ、わかったよ。」

 

今の所、飛鳥は囮、十六夜と耀は不可視の相手を蹴散らした。上条だけが何もやっておらず、ジンの護衛だけで納得せざるを得なかった

 

 

あの後、耀は体力を回復するためその場に残った。上条と十六夜とジンは白亜の宮殿を進み最上階に着く。最上階は天井はなく、とても簡素な造りだった

 

「十六夜さん、上条さん、ジン坊ちゃん…!」

 

最上階で待っていた黒ウサギは安堵したようにため息をもらす

 

上空には上条達を見下ろす人物がいた

 

「ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと。」

 

ルイオス=ペルセウス

このギフトゲームのゲームマスターである彼はロングブーツからは光り輝く翼があった、その翼を羽ばたかせ上条達の前に降り立つ

 

「何はともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階は。ゲームマスターとして相手しましょう。…この台詞を言うのって初めてかも。」

 

それは全て騎士達のおかげであった。しかし突然のゲームにロクな準備できずにいたのだ、もし万全の状態ならまた結果は変わったであろう

 

「突然の決闘だからな、勘弁してやれよ。」

 

「ふん、名無し風情を僕の前に来させた時点で重罪さ。」

 

ルイオスの翼がもう一度羽ばたく。彼はギフトカードを取り出し、光と共に炎の弓を取り出す

 

「お前みたいな、仲間を大切にしない奴なんかには絶対に負けねぇよ。」

 

上条は拳を握る、目の前の敵を倒す為に

 

「たかが名無しに何が出来るっていうんだ。」

 

そういい弓を引き放つ

普通の弓の軌道とはかけ離れていた、それはまるで蛇が獲物を狩る為に近づくかのようにだった

上条はそれを右手で壊す

 

「へぇ、たかがレプリカだけど、石化の光を無効化したのは本当のようだね、いい商品になりそうだ。」

 

上条を品定めするかのように矢を放ち、打ち消したのを見ると笑う

黒ウサギは炎の弓のギフトをまて顔色が変わる

 

「…炎の弓?ペルセウスの武器で戦うつもりはない、という事でしょうか?」

 

「当然、空が飛べるのになんで同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ。」

 

小馬鹿にするように上空に舞い上がる。首にかかるチョーカーを外し、付属している装飾を掲げる

 

「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま"ペルセウス"の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろう?」

 

ルイオスの掲げた装飾が光り始める。十六夜と上条は臨戦態勢をとる

 

光が強くなり、ルイオスは叫ぶ

 

「目覚めろ "アルゴールの魔王"‼︎」

 

光は褐色になり、上条達の視界を染める

白亜の宮殿に甲高い声が響く

 

「ra……Ra、GEEEEEYAAAAAaaaaa‼︎‼︎」

 

それは、人の言語ではなかった。現れた女は身体中に拘束具と捕縛用のベルトが巻かれていた。女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立て叫ぶ。両腕の拘束具をひきちぎり、更に絶叫をあげる

 

「ra、GYAAAAAaaa‼︎」

 

「な、なんて絶叫を」

 

「避けろ、黒ウサギ!」

 

耳を抑えていた黒ウサギは、十六夜の声に反応できず硬直してしまう。

舌打ちをし、十六夜は黒ウサギ抱きかかえ飛び退く

上条はジンを庇うように前に立ち、右手を上空に構え巨大な岩塊に触れると、岩から白い靄が漂うが直ぐに消えた

 

「…‼︎へぇ、石化のさせた物でさえ無効化するんだ。ますます価値があがるね。」

 

アルゴールはこのギフトゲームの為に用意された世界に対して石化の光を放ったのだ

 

「まぁ、今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。無能達にはいい体罰だろ?」

 

不敵に笑うルイオス。なんも防御もしていない十六夜と黒ウサギが石にならなかったのはルイオスがそうならないように調整したからだろう

 

上条は雲を打ち消すと、十六夜に近づき声を掛ける

 

「俺はルイオスを叩く、十六夜はアルゴールを頼めるか?」

 

「いいのか?アルゴールじゃなくて。」

 

上条の提案は、十六夜にはありがたい話だが、相性的に見れば上条がアルゴールと戦い時間を稼ぎ、十六夜がその間にルイオスを叩くのが手っ取り早い。しかし上条はそれを許さない

 

「俺はアイツを殴らないと気がすまなねぇからな。」

 

「そっ、じゃあ俺は楽しませて貰おうかな。」

 

十六夜からすれば邪魔者がいない状態で元・魔王と戦う事ことが出来るので異論はなかった

 

「ん、話し合いは終わりかい?どのみちアルゴールにやられるんだから無駄だろうけど。」

 

「テメェの相手は俺だ。」

 

上条は足を一歩踏み出し前に出し、その目はルイオスをはっきりと捉えていた

 

「はっ。話聞いてなかったの?君たちのあいてはアルゴールがするの。それに空も飛べなければ身体能力も凡人。そんな名無しの君に僕の相手が務まるかな?」

 

「ごちゃごちゃ言ってないで、かかって来いよ三下。」

 

挑発するルイオスを、それを挑発で返され表情が変わる

 

「僕が三下…だと?名無し風情のくせに…‼︎後悔するなよ!僕が相手をしてやる。アルゴール‼︎お前はさっさと、そいつを潰して援護しろ。」

 

「RaAAaaa!!LaAAAA!!!」

 

ルイオスはさらに上空に飛び、炎の弓を連続で引き放つ。蛇のように蛇行する軌跡の炎の矢を上条は右手一本で凌ぐ。攻撃を塞がれたのを見ると再び矢を放つ、しかし上条に弓が届くことはなかった。

 

「チッ、使えない。お前なんか空を飛ばなくても倒せるんだよ!」

 

ルイオスは無駄を悟ったのか、弓をしまい。"星霊殺し"のギフトを付与された鎌のギフト・ハルパーを手に取り、空を舞いながら上条に接近するが、轟音が響く。隣ではアルゴールがねじ伏せられ、十六夜は獰猛に笑いながら腹を踏みつけていた

 

「GYAAAAAAaaaaa!!」

 

「なっ、アルゴール‼︎」

 

アルゴールが一方的にやられているのを見て明らかに動揺をするルイオス。その隙を見て上条は跳躍する

 

「よそ見すんじゃねぇ!」

 

上条の右ストレートがルイオスの顔面に沈む

 

「ガッ!」

 

殴られた衝撃で地面に打ち付けられる、その衝撃で周りの石が砕ける。しかしルイオスはすぐに立ち上がり空に飛び距離を取る。上条は追撃が出来ない為に立ち尽くすしかない。そこにアルゴールを一方的に殴打していた十六夜が近づいてきた

 

「何だよ、追撃しないのかよ」

 

「空を飛ばれたら何も出来ないんだよ。」

 

十六夜は自分が相手をしてもいいがと考えたが、それだとつまらないと、自分の考えを却下する。どうするかと考えていると、あることを思い出す

 

「上条。」

 

十六夜は愉快に笑いながら上条の肩に手を置く。手を置かれた上条は沈鬱な表情をする

 

「嫌な予感しかしないのは何故。」

 

そんな上条を無視して、十六夜は上条を持ち上げ

 

「飛んで行きやがれー‼︎」

 

投げ飛ばした

 

「やっぱりかぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

十六夜が投げた方向にはルイオスが浮かんでいた。ルイオスは突然飛んできた何かに反応できなかった。投げ飛ばされた上条はなんとかルイオスの足を掴む。すると翼が生えていたロングブーツがガラスが砕ける音と共に散っていく

 

「なっ、ブーツが壊された⁉︎」

 

ロングブーツを破壊されたことにより、空に浮かぶことができなくなったルイオスは落ちていく

 

「へ、ちょっと待て。これって結局落ちるじゃねぇかァァァァァァ⁉︎」

 

上条は落下していく中でルイオスを下敷きにする形で衝撃を和らげ、すぐさまに立ち上がり距離を取る。地面に叩きつけられたルイオスは肩で息をした。そこにアルゴールがルイオスと重なるように再び叩きつけられる

 

「ガッ!」

 

「Gya…!」

 

2つの呻き声。主に暴れているのは十六夜だが、ギフトを壊された事に動揺が隠せなかった

 

「クソッ…名無しの癖に!アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!もう商品とかどうでもいい殺せ!」

 

歌うような不協和音が世界に響く。途端に白亜の宮殿が黒く染まり、壁は生き物のように脈を打つ。しかし上条は申し訳無さそうに頬を掻いていた

 

「…なんか可哀想なんだけどいいのかな?」

 

「気にするな。」

 

「んじゃ遠慮なく。」

 

上条は脈打つ宮殿に触る。それだけで宮殿の悪魔化が解かれた

 

「は?」

 

あまりの事に声が出ないルイオス。十六夜はまだ遊び足りない子供のように声をかけた

 

「おい、ゲームマスター。まさかこれで終わりじゃないよな?」

 

ルイオスは屈辱で顔を歪ませる。初めての公式なゲームとはいえ、ここまで一方的に押されるなど、考えもしなかっただろう。何代をも受け継がれてきた、伝統ある"ペルセウス"が名無しである"ノーネーム"に完敗するなど許されない。そんなルイオスは悔しい表情から一変、凶悪な笑顔を見せる

 

「も、もういい。終わらせろ‼︎アルゴール。」

 

石化のギフトを解放する。先程はルイオスが遊び心で上条達を光の干渉外にまで外したが、今度はそうはいかない。星霊・アルゴールは謳うような不協和音と共に、褐色の光を放つ。これこそアルゴールを魔王に至らしめた根幹。天地に全てを光で包み、灰色の星へと変えていく星霊の力。それを十六夜は瞳を伏せて後ろに振り向く

 

「俺が出る幕でもねぇな。」

 

入れ替わりに上条が前に立ち、神様の御加護でさえも無効する、その右手で褐色の光を薙ぎはらう

 

光は右手に触れた瞬間に全て消えていく。褐色の光で埋め尽くされた空は、綺麗な星空に戻る

 

「ば、馬鹿な⁉︎せ、星霊のギフトだぞ⁉︎」

 

レプリカの石化の光を無効にする、それならまだわかる。所詮はレプリカ、紛い物だから無効にするギフトはあってもおかしくはない。靴を破壊された。それも考えらなくはなかった、装備品を無効化するギフトなら聞いたことはある。宮殿の悪魔化を強制解除した、呪いに特化したギフトを持っているならわかる。しかし星霊であるアルゴールの、オリジナルの石化の光を無効にするなど聞いたことない

 

「さぁ、続けようぜゲームマスターさん。」

 

軽薄そうに挑発する十六夜。だがルイオスの膝をつき戦意はほとんど枯れてい。そんなルイオスを見て黒ウサギはため息まじりに割って入る

 

「十六夜さん。残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」

 

「何?」

 

「アルゴールが拘束具に繋がれて現れた時点で察するべきでした。ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです。」

 

「っ⁉︎」

 

ルイオスの戦意がない瞳から灼熱の憤怒が宿る。今すぐにでも殺しにかかろうとする眼光を放つルイオスだが否定しないのは黒ウサギの言葉が真実だからだろう

 

「ハッ、所詮は七光りと弱体化した元・魔王様って事か。」

 

ルイオスは十六夜の七光りという言葉は聞き流すことができなかった

 

「うるさい…名無しのお前等に何がわかる‼︎親が偉大?知るか‼︎僕だって一生懸命にやったさ!それなのに周りの奴らは親父と比較した挙句、七光りや、"ペルセウス"も落ち目だなんて言われた、僕の気持ちなんか分かるものか!」

 

ルイオスは初めて胸の内に溜めていた想いを吐き出す。そんな彼に上条は近づくわ

 

「だから人身売買にまで手をつけて、コミュニティを無理やり大きくしようとしたのか?」

 

ルイオスはその憤怒の瞳を上条に向ける

 

「あぁ、そうさ!七光りと蔑まれるなら、親父の時よりコミュニティを大きくしようとした。それの何処が悪いっていうんだ!人身売買の何がいけない、立派なビジネスだろ!箱庭に来たばかりの奴が何もわからないくせに…!」

 

ルイオスは立ち上がり思い出す、自分の敗北はコミュニティの負けだということを。今まで積み重ねてきた事が一気に無駄になる、それだけは許されなかった。汚い手を使ってまで今の地位を維持している、もし名無しのコミュニティである"ノーネーム"に負けるなんてことがあると、その地位が一気に崩れてしまう

 

「僕は負ける訳にはいかないんだ‼︎‼︎ペルセウスの為にも、僕自身の為にも‼︎アルゴール、お前はあの金髪を殺れ!俺はアイツを殺る!」

 

「GEEEEEYAAAAAaaaaa!!!!!!!」

 

アルゴールは十六夜に対して真っ向対決を挑む、勝てないとわかっていたとしても。ルイオスは上条に向かって駆け出す、その手にはハルパーが握られていた

 

「お前だって真面目にやってたんじねぇか、何で諦めるんだよ。七光りとか呼ばれるんだったら、ちゃんとした方法で見返せばいいじゃねぇか!人身売買なんて事して、大きくしても周りはお前を認めるのかよ⁉︎違うだろ!そんな事したって誰も認めたりしない!だったら、お前が誰もが納得できるやり方で認めさせてみろよ!」

 

上条も駆ける

 

右手を振りあげる

 

「うるさぁぁぁぁぁぁい‼︎」

 

ハルパーと右拳がぶつかり合う、ルイオスの手は弾かれハルパーは砕ける

上条は右拳を握り直し、ルイオスの顔面を捉える。殴られたルイオスは吹き飛び、そのまま動かなかった

 

ギフトゲーム "FAIRYALE in PERSEUS"は終わりを告げる

 

 

上条達はコミュニティに戻る。そこではレティシアが静かに帰りを待っていた。しかし、そんなレティシアに十六夜、飛鳥、耀の3人は口を揃えて言う

 

「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん。」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…え?」

 

突然の提案に呆れ声しか出ない上条、ジン、黒ウサギ、そしてレティシア

 

「え?じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したの私達だけじゃない?貴方達はホントにくっ付いただけだったもの。」

 

「うん。私なんて殴られたり、石になったりした。」

 

「それに挑戦権だって、俺が取っただろ。上条はレティシアを石化の光から守ったり、ルイオスを倒したから所有権を等分すると、2:2:3:3で話はついた!」

 

「何を言っちゃってんでございますかこの人達は⁉︎」

 

「いや、そんな話は聞いてねーよ⁉︎」

 

上条と黒ウサギはツッコミを入れるどころではなく混乱していた

 

「話していなかったからな。」

 

十六夜は上条に向かって右手の親指を立てて、ドッキリ大成功!と言わんばかりのドヤ顔をしていた。だが当事者であるレティシアだけが冷静だった

 

「ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。正式にコミュニティを帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき中にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか。」

 

「れ、レティシア様⁉︎」

 

黒ウサギは今までにないくらい焦っていた。まさか尊敬していた先輩がメイドになるなんて夢にも思わなかったからだ。飛鳥は言うと既に持ってきてたメイド服をレティシアに渡す

 

「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。これからよろしく、レティシア。」

 

「よろしく…いや、主従なのだから『よらしくお願いします。』のほうがいいかな?」

 

「あまり無理しなくていいんだぞ?」

 

上条はもう何も言う気力はなく、流れに身を任せることにした

 

「そ、そうか。…いや、そうですか?んん、そうでございますか?」

 

「黒ウサギの真似はやめとけ。」

 

ヤハハと笑う十六夜。すっかり打ち解けたごにんをかみて、黒ウサギは肩を落とすしかなかった

 

 

 

 

"ペルセウス"との決闘から翌日の夜

上条はレティシアの部屋を訪れていた

 

「レティシア、ちょっといいか?」

 

「主殿か、どうかしたのか?」

 

「いや、俺と接する時はメイドみたいにしなくていいから。」

 

「ん、どういう意味だ?」

 

上条の言葉に首を傾げる

 

「折角、仲間になれたんだから普段通りに接してくれよ。」

 

上条としてはレティシアとは語り合った(何とは言わない)仲なのでメイドとして接しられるのは違和感しかなかった

 

「しかし、これは私が主殿達に恩義を感じているからやっているのだぞ?」

 

レティシアとしても自分を助けてくれた上条達に恩を感じ、メイドはそれを返すためにと自分で納得してやってる。しかも所有権が"ノーネーム"に移っただけなので命令を聞かないといけない。確かにメイド業は未だに慣れないが、これも命令なので仕方ないと割り切っていた

 

「じゃあ主として命令。俺といる時くらいメイドの事は無しにしてくれ。」

 

「……んっ、ふむ。主殿の命令とあらば従うしかないか。全く主殿も物好きだな。」

 

所有者の1人である上条に命令されては従うしかないと諦める

 

「あと主殿はやめてくれ。名前なら好きに呼んでいいから。それに物好きじゃなくて、メイド好きの友人に知られたら殺されそうで嫌なんだよ。」

 

上条の脳裏に浮かぶグラサンアロハの親友。もしバレでもしたら地の果てまで追ってきそうで怖かった

 

「では親しみを込めて、当麻と呼ばせてもらう。」

 

「おう、改めてよろしくな。」

 

上条とレティシアは改めて握手をする

 

「あぁ。よろしく、当麻。もうパーティが始まるから行くとするか。」

 

「おう、しかしパーティ用に作られたメイド衣装なんてあるもんだな。」

 

そういいながらレティシアのメイド服を触る。彼女の服は普段着る普通のメイド服ではなく、なんらかの礼装が施されたメイド服だった。そんな事を知らない上条は右手で触ってしまった

 

レティシアのメイド服が弾ける。慎ましい胸を隠す黒のブラジャーと黒のパンツが上条の目の前に晒されていた

 

「あっ……。」

 

やってしまった、しかし後悔するには遅かった。既にメイド服はただの布の切れ端となり原型などなかった

 

「なっ……⁉︎」

 

突然の裸にされたレティシアは顔を真っ赤にする

 

「レティシア様、しつれ」

 

タイミングが悪かったとしか言えない、黒ウサギが上条と全裸のレティシアが向かい合っているのを見て

 

「………イシマシタ。」

 

何事もなかったかのように扉を締め、部屋を後にする

 

「ふ、ふこ」

 

「不幸なのは私だからな⁉︎」

 

その後上条がどうなったのかは語るまでもない




なんと今回は15000文字…分割にすればもっと早く投稿できたじゃん!!

あほや!!
誤字脱字は随時見つけ次第修正したいと思います泣

2015/04/14
誤字訂正

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