ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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第三章「白羽の矢に射貫かれる 後編」

 

 こちらは、『ダンガンロンパQQ』の解説になります。

 本編を読了していることを前提に執筆しているため、本編についてのネタバレが多分に含まれています。

 まだ本編を読まれていない方はご注意ください。

 


 

 「ハァイ、お久しぶりね。みんなおぼえてるかしら?アンジェリーナ・フォールデンスよ。ワタシといっしょにカイセツをしてくれるのは、この人」

 

 「アニー!ごめん!」

 

 「ジャパニーズ土☆下☆座、できれいにまとまってる、カナタよ。よろしくね」

 

 「すんなり受け入れないで!あたしなりに精一杯やってるからネタ的に処理しないで!」

 

 「そうは言ってもねえ。ワタシ今までドゲザなんて何回かしかされたことないから、どうすればいいかわからないわ」

 

 「何回かはされてるんだ!?どんな人生歩んできたの…今のは失言でした!!」

 

 「ちょっとカナタ、一回かおをあげてよ。ふつうにトークしましょ。このままじゃなんだかいつものカナタらしくないわ」

 

 「だってあたし、アニーにすごくひどいことした…!謝っても謝りきれないくらいのことを…!全部あたしが悪いの!あたしが自分の気持ちをもっとおさえられてたらあんなことには…!」

 

 「もういいのよ、カナタ。とうのむかしにおわったことなんだし、あなたはその分のおしおきをされたわ。だからいつまでもワタシにあやまらないで。過去は過去として受け入れて、今はトークをたのしみましょう。そうでないとワタシたち、いつまでもベストフレンドにもどれないわ」

 

 「なに?天使?聖人?御仏?」

 

 「カナタのきもちが分かるから言ってるのよ。どこかのしらないだれかにいきなりころされたわけじゃないもの。カナタが苦しんで、辛くって、泣いてしまうほどくやんでることが分かってるから、あなたをゆるせるの」

 

 「本当にさ、アニーってあたしたちの中で一番希望的な存在だったんじゃないかって、今更だけど思うよ。笹戸は晴柳院ちゃんを推してたけど、こんなこと言ってくれるのアニーだけだもん。本当に…許されない方がまだ救われるのに…!」

 

 「ヘビーよカナタ!空気がヘビーになる!もっとリラックスして、笑いましょ。コーヒーでものんでおちついて」

 

 「アニーのコーヒー…なんだか懐かしい感じがする…。ほっとするし、あったかい気持ちになる…」

 

 「ワタシのスペシャルブレンドだもの。カナタのために元気が出るブレンドにしたのよ」

 

 「コーヒー豆に精神安定効果なんかあったっけ?」

 

 「コーヒーをどうやってのむかでこうかはかわるわ。おちつきたいときにもピッタリだし、これからがんばろうってきもちのときにも。あとはリフレッシュしたいときにもね」

 

 「うん、なんかちょっと落ち着いた」

 

 「そう?じゃあここからワタシたちはいつものワタシたち。カイセツもだいじだけど、ガールズトークをたのしみましょう」

 

 「うん、ありがとアニー!あー、でもガールズトークになるかはちょっと保証できないな」

 

 「そうなの?どうして?」

 

 「話す内容がないようだし、何よりガールじゃないし…何がとは言わないけど」

 

 「それもそうね」

 


 

 「ところでアニー。いっつも冒頭でやってた、こちらはQQ解説編ですっていうアナウンスはしなくていいの?」

 

 「それはもういいみたいよ。ここをよんでる人に言うことじゃないもの。もしまちがえちゃった人は、タイトルをきちんとかくにんしてよむのよ」

 

 「本編未読で間違えて読んでる人がいたら、既に結構なネタバレ食らってる気がするけど…まあいっか」

 

 「ワタシたちはふたりとも、カイセツをするのは二回目ね。ワタシははじめてはナミといっしょだったわ。ナミとはああやってじっくりトークしたことなかったから、たのしかったわ」

 

 「そうなんだ。アタシは滝山とだったから…大変だったわ。あいつ好き放題するし全然解説しないしで、言わなくちゃいけないことほとんど任せだったし」

 

 「おつかれさまね。コーヒーでもいかが?」

 

 「ありがと。やっぱりアニーのコーヒーはおいしいね」

 

 「おかしもあるわよ」

 

 「うっ…ヤバい、この感じ、あたしが滝山みたいになってくかもしれない。解説しないでコーヒー飲んでお菓子食べて…」

 

 「うふふ。カイセツだからってそんなに気負わなくていいのよ。リラックスして、しぜんなトークの中でひつようなことを言っていけばいいの」

 

 「アニーはいつでも落ち着いてて、なんか達観してるっていうか、大人だよね」

 

 「そうかしら。みんなとおないどしよ。きっと」

 

 「なんかちょっとした所作とか振る舞いが大人びてるのは、アニーの生い立ち考えたらなんとなく分かる。でもその言葉遣いとか、どこで覚えてきたの?めちゃくちゃ流暢だし」

 

 「そうね…どこでおぼえてきたことにしたらいいのかしら?フォールデンスさんがやとった先生がこういう口調だったとか、使ってた教材がこんなかんじだったとか、ジャパンに来てからこうなったとか…」

 

 「とか、ってどういうこと?」

 

 「決めてないのよ」

 

 「うわ!設定面から答えてきた!解説編っぽい!」

 

 「リアルなこと言ったら、ジャパニーズってすごくむずかしい言葉だから、もっとかたいイメージの口調になると思うのよね。だけどそれじゃあキャラクターとしてイメージがつかみづらいから、ワタシっていうキャラクターのイメージからこうなったのよ」

 

 「いやまあそう言われると納得するというか、分かるんだけど…もっとアニーのキャラを深掘りしてくるのかと思いきや、全然違う方から返ってきたからびっくりしたよ」

 

 「一つクリアにさせておくことがあるわ。こうやって書いてあることのほとんどは、作者がその場の思い付きで書いてることよ。カイセツしなくちゃいけないこと以外は全部アドリブなの。だからこうしてる今も、この後どうやってトークしていけばいいのか分からないまま書いてるの」

 

 「そこまで全部ぶっちゃける必要ある!?ってかそれダメじゃん!アドリブ垂れ流すってどういうつもりよ!」

 

 「それくらいゆるくいきましょうってことよ。いつもガチガチだとつかれちゃうでしょ」

 

 「うん…それはまあ納得できないこともないけど」

 

 「それじゃ、こんなまったりゆったりしたムードのまんまカイセツしていくわよ。コーヒーでものみながらいきましょう」

 

 「ブレない…」

 


 

 「ねえアニー」

 

 「なあにカナタ」

 

 「本編の解説に行く前にちょっと気になったんだけど、毎章でやってる章タイトルの解説って、三章でやってたっけ?」

 

 「どうだったかしら。三章のカイセツは1年くらいかけてやってるから、あんまりおぼえてないわ。このばあい、おぼえてないのはワタシじゃなくて作者だったりするのだけど」

 

 「いちいち立場明確にしなくていいよ。アニーはもっとしっかりしてるってあたし知ってるから」

 

 「うふふ、ありがと」

 

 「で、どうだったかしら?実際のところ」

 

 「ローズとヘースケのときにはそんなテーマにはなってなくて、ランとダイオのときにはそれどころじゃなかったわね。だからきっとしてないわ」

 

 「有栖川ちゃんと鳥木の回は意外に盛り上がったもんね。あの二人って案外良いコンビなのかも。って、そうじゃなくて、やっぱり解説してなかったのね」

 

 「やっとく?」

 

 「やっといた方がいいと思う。やっぱり一番解説が必要なのってそこだと思うし」

 

 「そうね。えっと、三章のタイトルはなんだったかしら?」

 

 「『白羽の矢に射貫かれる』ってヤツね。QQのタイトルはことわざをもじったヤツだから、アニーにはちょっと馴染みないかもね」

 

 「そうね。もとのことわざがあるっていうのは知ってるけれど、いまいちいみわかってないわ」

 

 「一応その辺から解説しておくね。元ネタは、白羽の矢が立つってことわざね。何かの役目に決まるって意味だけど、もともとは生贄とか供物に捧げられる人の家に神様から白い矢が射られるって伝説からできた言葉だから、最初っから良い意味じゃないんだよね」

 

 「Oh…とってもこわいことばなのね」

 

 「今では良い意味でも悪い意味でも、人が何かの役目を任されるときに使うね。で、三章のタイトルではその白羽の矢に射貫かれてる、つまり貫かれてるわけ」

 

 「矢がつらぬいたらいたいわね」

 

 「痛いっていうか普通に死んじゃう。一章のタイトルは身を焦がした飯出のこと。二章のタイトルは爪が尖ったあたしのこと。そして三章のタイトルは射貫かれた滝山のことが表されてるのよね」

 

 「なんだかそれぞれの事件で、立場のちがう人たちにスポットをあてているみたいだけど」

 

 「それは作者も意図していたことよ。被害者と、犯人と、共犯者。四章以降はもっと込み入った事件になるから、立場が違うと英場違うし違わないと言えば違わないような…そんな曖昧な感じ」

 

 「もし連載中にそこに気付いた人がいたら、推理のヒントになったりするかも知れないわね」

 

 「うちの作者はよくやるわよねそれ。タイトルでネタバレしちゃうパターン。ま、とにかくそんな感じで、三章のタイトルは滝山を表してたってわけ」

 

 「4章から先のタイトルではだれのことを言ってるのか、みんな予想してみてちょうだいね」

 


 

 「さ、それじゃ本格的に本編の解説に行こうかしら」

 

 「OKよカナタ。まずは何から話しましょうか?」

 

 「三章の特徴は裁判の途中でコロシアイが起きて、捜査を挟んでまた裁判を始めるっていうところよ。少なくともこれを書いてた時点では、まだなかったパターンだと思うわ」

 

 「なかったかも知れないけれど、それよりもっと複雑だったり斬新なパターンがでてきてるんじゃ…」

 

 「そういうの自分で言ったらおしまいなのよ。自分で作ったものは誇張してでもアピールしなくちゃ!原作でもやったことのない超展開を成立させた二次創作!!それがこれよ!!ってね」

 

 「ダイオが死んじゃっって、代わりにヤイチローが戻ってきたから、トータルの人数は変わらないのね」

 

 「そう。この戻って来た曽根崎が、やっぱり曲者だったのよね。シロにとってもクロにとっても。もし曽根崎が戻ってきてなかったら…みんな滝山がクロってことで納得しちゃってたかも知れないわね」

 

 「みんな運が良かった…って言ったらいけないのかしら。投票がはじまる前で、ヤイチローが戻ってこられるように回復したくらいまでダイオが生きてたのは、きっと偶然じゃないわ。神様が見ていたのよ」

 

 「いや、普通に滝山がクロで投票してたら話終わるからだと思うけど」

 

 「そういうのメタ発言っていうのよカナタ。いいこと言ってるんだから台無しにしないでちょうだい」

 

 「結構ご都合主義っていうか、メタ視点で明らかに調整入ったなっていうことってよくあるわよね。これは創作の上手い下手にかかわらず」

 

 「そりゃあ物語だもの。リアルとはちがってファンタジーだもの。リアリティっていうものをまちがえてかんがえちゃったら、リアリティじゃなくてただつまらないだけのお話になっちゃうわ」

 

 「うん。まあ“超高校級”の“才能”とか、コロシアイっていう舞台設定から既にファンタジーなんだけどね」

 

 「フィクションなんだけどリアルに近い…究極のリアルフィクションってこういうことかしら?」

 

 「違うわよアニー。あとそれもメタだから」

 

 「あともしかしてだけど、前の裁判の時からクロってチェックメイトされてなかった?あのままダイオが生きてたら自分がクロだってダイオにバラされちゃってたし、ダイオがいなくなっても代わりにヤイチローが戻って来て…」

 

 「だから、さっさと滝山に投票させられなかった時点で、あるいは滝山が死ぬタイミングを調整して曽根崎が回復しきる前に殺すようにしておかないと、クロは負け確定だったわけ。そう考えると、周到な感じしてて詰めが甘かったってわけね」

 

 「本当にギリギリの戦いだったのね」

 

 「緻密に組み立てたトリックほどそういうものよ。あたしのは突発的だったけど、今回のクロみたいに全部を計算しようと思ったら、ちょっと狂うだけで大きく変わるもの」

 

 「ヤイチローは特にそういうボロをつっつくの上手そうよね」

 

 「性格悪いからね」

 

 「でもワタシたちの中でいちばん人気高いのってヤイチローよね。レディにウケるっていうか。ちょっと分かるけれど」

 

 「あんなのより笹戸とか滝山の方がまだ可愛げあるわよ!リアルに相対したら絶対イヤだからあんなタイプ」

 

 「ダイオは分かるけれどユーマは…ちょっとね」

 

 「うん…あたしもいま考え直したら笹戸はナシだったわ」

 


 

 「ダイオがクロじゃないっていう推理の根拠は、ダイオにはクラッカー爆弾を作るのは難しすぎるっていうことだったわね。ダイオはそんなに器用じゃないものね」

 

 「器用とかそういう問題じゃないわよ。あいつの“才能”、野生児よ?爆弾作れる野生児ってなんのこっちゃ分からないじゃない」

 

 「その気になればできるんじゃないかしら?」

 

 「いやあ…ムリでしょ。っていうか爆弾作る以前に、その材料の調達に必要なダイヤル錠の解錠すらできなかったんだから。あいつに4桁の数字は覚えられないって」

 

 「みんなからのダイオの評価ってすごく低いのね。おべんきょうは苦手かも知れないけれど、やさしくて力持ちで素直な良い子よ」

 

 「まあ言われたらアタシたちの評価があんまりってのは分かるけど、アニーだって大概よ。滝山のこと過大評価してない?なんなの?好きなの?」

 

 「好きよ?だってかわいいじゃない。それにカナタだってダイオと同じで、落ち込んだり悲しいことがあったらワタシに甘えにきたり──」

 

 「ごめん!!やめよっかこの話!!あとそういう好きでは聞いてない!!」

 

 「そうなの?ワタシはもっと可愛いダイオやカナタをみんなに知ってほしいけれど」

 

 「やめてもう…恥ずかしいから…。裁判の解説しよ!裁判の解説!今のところ無駄話の比重大きいから!」

 

 「これってそういう企画じゃないの?前にもそんな話になってたと思うわよ」

 

 「実際、解説することそんなにないからかさ増ししてるだけだから。話したい箇所はあるけど全部が全部そうじゃないのよ」

 

 「ぶっちゃけすぎよカナタ。ワタシとしてはもっとさっきの話したいけれど、カナタがイヤだったらもうしないわ」

 

 「じゃあ本編の解説に戻ろうよ。滝山の話でいえばもう一個、曽根崎が滝山に襲われたときの話をするときに、滝山のパニクったところが描かれてるわね。普段のあいつ見てたら、殺すとかなんとかって言葉が出るなんて思わなかったわ」

 

 「だってそうしなくちゃ自分が死んじゃうんだもの。かわいそうだったわ…あんなことさせられて…」

 

 「まあ確かに、背景事情知ったらあのときは滝山もいっぱいいっぱいだったからね。それもこれも全部真犯人の思惑通りってワケね」

 

 「さっきチェックメイトだったって言ったけれど、やっぱり先の先まで考えたすごい犯人だったのね。カケルもドールも、それ以外のみんなも、すっかり振り回されちゃってるものね」

 

 「そうよね、めちゃくちゃ手の平の上で転がされてるのよ。だって3章の裁判編って3本あるじゃない?前半に1回やって、後半のこの1回で分かったのって、滝山は真犯人に共犯にされて曽根崎と六浜ちゃんを襲ったっていうことだけだもん。真犯人に繋がる手掛かりなんか一個も見つかってないのよ。現状」

 

 「ヤバいわね」

 

 「ヤバいのよ。真犯人にしたらここはまだいくらでも言い逃れや誘導ができる段階だから。よく勝てたわよね」

 

 「意外とみんな学級裁判ってギリギリで勝ってないかしら?ラッキーな目撃情報とか、ラッキーなハプニングが犯人の正体に繋がることなんてよくあるじゃない」

 

 「それも言っちゃえばご都合主義の一部なんだけどね。敢えて3章くらいで急に犯人が勝つなんてパターンがあったりしても面白いかも知れないわね」

 

 「面白くないわよ…どうやって収集つけるのよそんなの」

 

 「いやまあ、QQ自体がそんなような結末だし、そんな感じで収まるんじゃない?」

 

 「カナタ、眠くなってない?コーヒーいかが?」

 

 「うん、もらうわ」

 


 

 「コーヒーをのんでちょっとブレイクしたことだし、いよいよ学級裁判のラストの解説にいくわよ、カナタ」

 

 「ええ。今はまだ真犯人について分かってることはほとんど無い状況なのよ。コトダマ自体も、ほとんどが滝山の犯行の形跡を示すだけで、真犯人が残した証拠ってクラッカー爆弾くらいなの」

 

 「原作でも感じたけれど、明らかに回収できそうな証拠をそのままにしちゃう犯人もどうかと思うわよね。その点、この真犯人はすごく慎重よね」

 

 「急な原作ディス!?どうしたのアニー!?」

 

 「ディスってるわけじゃないのだけど、ちょっとその辺りが雑なときがあると、残念な感じがするわよね」

 

 「ディスってるからそれ!雑な犯人なんかいないってば!今回の犯人は、古部来に匂いを付けるために使ったドリアンジュースや、滝山に使った毒からも手掛かりを途絶えさせてるくらい慎重だから際立ってるだけだって!」

 

 「そうよね。ジュースは自分じゃなくてダイオに渡させて、毒もみんながいないうちに医務室からこっそり持ち出して…だけど、ユーマのおかげでいつぐらいに使ったかは分かったのよね」

 

 「まさか湖の魚の死体でそんなことが分かるなんて、犯人も予想できないわよね。でもそこから犯人の正体に繋がったかしら?」

 

 「正直あんまり…むしろ、その後にクラッカー爆弾を作った技術を持ってること、つまり“才能”面からせめてって辿り着いた感じよね」

 

 「また“才能”…カナタもそうだけど、みんなにとって“才能”ってそれほど重要なことなのね」

 

 「やっぱりそれがかなり大きな要素だからね。爆弾関係を扱える“才能”で言うと、ダイナマイトをよく使う考古学者の明尾ちゃん…考古学者がって言うより明尾ちゃんが特殊なんだと思うけど。あとは演出で火薬を扱う鳥木ね」

 

 「ナミもヘイスケも頭良いものね」

 

 「鳥木はともかく、明尾ちゃんもああ見えて学者だからね。手先も器用で頭も割と良くて、きちんと化粧して着飾れば可愛くなるのに…あの喋り方で損してるわよね」

 

 「そうよね。恥ずかしがりなんだから。またみんなで捕まえてメイクアップしちゃう?」

 

 「曽根崎に見られたのがトラウマになってるらしくて、ツルハシを離さなくなっちゃったのよ」

 

 「前からツルハシはずっと持ってたと思うけれど」

 

 「そんで裁判の流れに戻るけど、この火薬を扱える“才能”の件でついに曽根崎が『もぐら』について触れるのよね。やっとようやく。一章のころから伏線張ってて、捜査編でもまた名前を出して、それでようやく」

 

 「長かったわね。ヤイチローはどうしてここまで言わなかったのかしら」

 

 「重要な証拠や説を敢えて最後の方まで言わないのって、結構相手の反応を見るためっていう意味があるけれど、反応見極められるほどの目を持ってから言うべきよね。安易に使うんじゃないっつうの」

 

 「どうしたのカナタ。まるで経験があるみたいに」

 

 「カマかけられるともう一気にパニックになるのよ。どうやっても挽回できない上に騙された悔しさとか恥ずかしさとかがこみ上げてきて…」

 


 

 「でもま、裁判組み立てるときに作者もよく考えることだけど、犯人が明らかになる証拠っていうのは大事よね」

 

 「やっぱりダイイングメッセージとか、ちょっと口を滑らせるとか、そういうのになるのかしら」

 

 「その二つは強烈よね。特に今回の場合はダイイングメッセージが重要な証拠になったわ。でもそれはきっかけであって、確定的な証拠じゃないけどね」

 

 「たった1つの決定的な証拠でおいつめるのもクールだけど、一見関係ない証拠を積み重ねてロジカルにおいつめるのもスマートよね」

 

 「犯人が周到であるほどクールな方の詰め方がきいてくるのよね。動揺したら失言とかも出やすくなって、芋づる式に証拠が出てくるってこともあるし」

 

 「リョーマののこしたダイイング・メッセージのおかげで、今回の事件の犯人がだれかも目星がついた。もしあのダイイング・メッセージがなかったり、犯人が先に気付いてけしてたりしたら、きっとこうはならなかったわよね」

 

 「うん。古部来のダイイング・メッセージとか、六浜ちゃんの真摯な想いとか、あとは曽根崎の過去の実績とか。屋良井が一番警戒していた人たちの連携で追い詰められてるってのは皮肉よね」

 

 「あら、もうテルヤの名前は出していいの?」

 

 「もう、っていうか最初っから出してよかったと思うよ。本編読んでること前提の解説編だし、そもそも滝山か望月ちゃんがもう言ってたはずだから」

 

 「あ、そうなの」

 

 「一応主人公であるはずの清水を差し置いて、この裁判ではその3人の活躍が目立ったね。あと、この章から先はクライマックス推理をそれぞれ清水以外がやるの。ちょうど、6章でキーパーソンになる人たちね」

 

 「それってネタバレになっちゃう演出じゃないの?」

 

 「でもま、清水と望月ちゃんと曽根崎は3人セットみたいなところあるし、この章で六浜ちゃんはある程度生き残りとしてのポジション確立したし、いいんじゃない?」

 

 「生き残り…ね」

 

 「生き残りね」

 

 「ま、まあそこのお話はあとの人に回しましょう。ワタシたちは3章裁判のお話しましょう」

 

 「う、うん。そうだね!えっと…古部来のダイイング・メッセージのおかげで、犯人は屋良井じゃないかっていうことに気付いたのね。古部来のダイイング・メッセージのナゾトキはどうだったかしら?」

 

 「どうっていうのは?」

 

 「強引じゃなかったかしらってこと」

 

 「別にそんな感じはしなかったわよ?ネックレスにしてある駒の伏線も自然だったし、シンプルな形でダイイング・メッセージとしても自然だし、何よりリョーマの頭の良さと執念深さがよく出てて…」

 

 「なんだろう。ここまで来たら胸張って自画自賛すればいいのにって思う」

 

 「なんのこと?」

 

 「アニーには言ってないわ」

 

 「そう。それで、えっと、ダイイング・メッセージね。いきなりやられたっていうのに、リョーマは学級裁判場の席順を使おうと思い付いて、シンプルな丸と駒と血で表したわけね。なんだか、リョーマの執念深さがこわいわ」

 

 「もし古部来以外をターゲットにしてたら、こんなダイイング・メッセージは遺されずに済んだのかもね。そうしたら屋良井の勝ちもあったかも」

 

 「もともとはヤイチローをターゲットにしてたんでしょ?ヤイチローのことだから同じことを思い付いても、メッセージにしてのこすまではできなかったんじゃないかしら」

 

 「曽根崎が古部来にドリアンジュースを渡した時点で、古部来を狙わざるを得なくなってたもんね。あいつ、トリックとか身の隠し方は一級品だけど、運がなかったのね」

 

 「だけど自分の“才能”をずっと隠してたじゃない?ウソでも何か別の“才能”ってことにしてれば、そこを突っ込まれることはなかったんじゃないかしら」

 

 「それはそれで、ウソの“才能”に即した技術がないとまた不審がられちゃうのよ。だからこそ屋良井は、“超高校級の忍”っていう切り札を持ってたのね。“才能”を隠していても不自然じゃなくて、爆弾魔の“才能”や目立たない体質なことを上手く説明できて、実際にあり得そうなの」

 

 「そうよね。ミコトとドールのおかげでそれもウソだって分かったけど、たまたま詳しい人がいたから分かっただけだものね」

 

 「最初からヘンにウソ吐くよりも、隠してた理由を説明できるカムフラージュがあった方が、人を騙しやすいものなのよ。その辺を理解してああいう切り札を用意してたり、滝山に手伝わせて自分の姿を眩ませたり、ホントずる賢いわよね。もぐらって言うより狐よね」

 

 「占ったら溶けちゃうのかしら?」

 

 「そういう狐?」

 

 「ちなみにだけど、ここから先はテルヤが犯人バレしたシーンの解説になるわ。ここは作者がすごく楽しんで書いたところだから、ちょっとはちゃめちゃになってるわね」

 

 「たぶんだけど、QQ全編通して一番楽しかったところじゃないかしら」

 


 

 「テルヤがドールの質問に答えられなくてあわあわした時点で、もうテルヤがクロだっていうのはほぼ確定していたのよね」

 

 「今のところ古部来のダイイング・メッセージしか証拠はないけど、結構確定的よね。本家だったらここからのどんでん返しもあり得るんだけど」

 

 「これちょっとはずかしいんだけどね。書いてるとき作者の頭の中でゲーム画面が再現されてたのよ。原作やって間もないころだったから、余計鮮明にイメージできてたのね」

 

 「そりゃ創作やってる人、しかも二次創作やってる人は誰だって、原作に自分のキャラが出たらなんて想像するでしょ。しないわけないでしょ。ちっとも恥ずかしいことじゃないわよ。むしろしない方がおかしいくらいよ」

 

 「カナタ…フォローが下手ね」

 

 「…ごめん」

 

 「いいのよ。とにかくここは作者にとって思い入れの強いシーンだっていうこと。パロディももりもりだしね」

 

 「爆弾魔COしてからいきなりアリーヴェデルチとか言ってるし、才能絵のポージングとか、ジョジョネタ好きね。うちの作者」

 

 「このころはろくに読んだこともなかったのにね」

 

 「あいたたたたたた」

 

 「あとはムスカ大佐のパロディもしてるわね。ネットに毒されすぎよ」

 

 「ここで本性明かしてからまだもうちょっと食い下がるんだけど、それもまた六浜ちゃんにあっさり論破されちゃうのよね。一応伏線は張ってあるけど、納得できるかっていうとなんとなく微妙なラインの証拠が多いかもね」

 

 「いいんじゃないかしら?何年も前に書いたものでしょう?」

 

 「当時は最新だから。で、丸っきり論破されてもう言い逃れができない状況になったときに、それでも六浜ちゃんにちゃんと事件を振り返るように言ってたでしょ」

 

 「そうね。そんなことしてもテルヤが犯人だっていうのが確定するだけなのに、どうしてかしら?」

 

 「単純に目立ちたかったのよ。もともと屋良井が『もぐら』になったのは、自分の存在をどうにかして周りに認めさせたかったから。事件の犯人として追い詰められるなんて、あいつにとってこれ以上ないくらい注目されて、存在を認められてる瞬間でしょ。だから興奮してんのよ」

 

 「クライマックス推理の後でも笑ってるものね。テルヤって本当はこんな子だったのね」

 

 「ちなみに、あいつ序盤からずっと目立ちたがる行動があったでしょ。それもこういう本性の一端だったのよ」

 

 「ただのちょっと残念な男の子じゃなかったのね」

 

 「残念だと思ってたんだ…アニー…」

 

 「爆弾魔のことさえなければ、よくいる普通の男の子っていう感じだと思ってたのよ。もしワタシ、本編の中でテルヤの本性を知ってたらショックだったわ」

 

 「そんな風に思ってたんだ。なんか意外」

 


 

 「ドールが泣いてるわ」

 

 「そりゃ古部来を特に理由もなく殺されたんだもん。自分と曽根崎も含めて、屋良井も含めてみんなの命を守るために裁判で活躍したことがきっかけで屋良井にターゲットにされたら、そりゃやり切れないわよ。合理的ではあるけどね」

 

 「よくあるミステリーもののおかしなところよね。有名な探偵がいるのに、その探偵を狙わずに周りの人を狙うっていう」

 

 「メタ的なこと言うと探偵が殺されでもしたら話にならないからね。でも、自分の目的を遂行するのに脅威になるなら排除するのが理に適ってるわよね。実際その場になったらまた違うのかもしれないけど」

 

 「それ以前に、テルヤったらモノクマが新しいルール決めなければ皆殺しなんてしようとしてたわよね。こわいこと考えるわ」

 

 「なまじできるからシャレになってないのよ…。限られた材料使って爆弾作るなんてさ。今回は花火があったけど、あれがなくてもどうにかして爆弾かそれに近いものは作ってきそうよね」

 

 「原案では目覚まし時計を改造して爆弾にしてたそうよ。で、それがリョーマにバレて自分のと入れ替えられて、自分で作った爆弾で自分が吹き飛んじゃうっていう」

 

 「どっちにしろ古部来と屋良井は因縁があったんだ」

 

 「リョーマは頭が良い上に隙がなくて、後半に残しておくには強すぎたのよ。テルヤも言ってたけど、メタ的な理由でも、この辺りで退場させておかないと困るキャラだったわけ」

 

 「自分でそういう設定にしたくせに!作者サイコパスか!」

 

 「創作論破書いてる人たちなんてそんなものよ。これを読んでるアナタだってそうよね?」

 

 「急に第四の壁の向こうに語りかけないで。突き破ってもいいけどコミュニケーション取ろうとしないで。こわい」

 

 「サイコパスで言えば、テルヤもなかなかよ。ダイオをとことん使い倒して、そのうえ毒までのませて」

 

 「解毒剤だってウソ吐いてただの水飲ませたりね。滝山の死に際の言葉とか、裁判直前の必死な様子とか思い出すとすごい痛々しくて…。あたしも屋良井側だって分かってるのに、すごい辛くなってきちゃって…」

 

 「ダイオってばすごく無邪気だからね。余計に絶望感が強いわよね」

 

 「どうして屋良井がここまでヤバいテロリストになったかっていう過去も語られるわね。でもね、実際どうなのかしらこれ」

 

 「これってどれ?」

 

 「犯人の過去とか、犯行に至るまでの過程とか、そういう部分をやたらとドラマチックにするのもどうなのかしらって思うのよね、あたし」

 

 「カナタもまあまあドラマチックだったじゃない」

 

 「うん。だからこそなのかな。なんか、こういう理由があったからクロになったのも仕方ないみたいな。同情誘うようなのって、それはそれでいいんだけど、みんながみんなそういうのだとなんか…後半の人たち、損じゃない?」

 

 「損かしら?」

 

 「またか、って思われない?」

 

 「う〜ん…というより、損得で考えるところじゃないと思うわ。ワタシは」

 

 「いや、それは大前提なんだけど。なんというか、印象薄れるというか、同情させたいならその前に同じ様なタイプの犯人出すんじゃないわよっていうか」

 

 「でもちょっと分かるわ。みんながみんな仕方ない理由だったり、誰かのためにとか、良かれと思ってとか、そんな理由でクロになるわけじゃないと思う。ただ外に出たかったから、みたいに欲望に素直な形でクロになった人がいるのも、リアルよね」

 

 「屋良井はたぶんそっちのタイプだと思われたいのよ。自分は生粋のサイコパスでテロリストでヤバいヤツなんだって。だからみんなが恐怖して、正体が分かった後も恐れられたいのよ。だけど、過去の話をしたらそうじゃないって思う人も何人か出てくるの。屋良井だって自分なりに理由があって、歪んだ形だけど自分の存在を誰かにアピールしたかっただけなんだなって」

 

 「そうなると、『もぐら』っていうテロリストのイメージは薄れちゃうわね」

 

 「あいつにとっては、自分が『もぐら』であるっていうのが一番興奮するところなのに、それが別物なんだって思われたら『もぐら』として活動する意味がなくなっちゃうのよね。それもあいつにとっての罰になるかも知れないけど」

 

 「だけど、あんなインパクト残されたら忘れるものも忘れないわよね」

 

 「それが屋良井の狙いでもあったからね。裁判に勝ったら出て行ってまた『もぐら』としてテロ三昧。負けてもその場にいる全員の記憶に自分のことを刻みつければ、誰かが外に出たときにまた『もぐら』の脅威が広まるはず。どっちにしろ『もぐら』という存在はまた恐怖の対象になる。それだけで満足だったのね」

 

 「何をしてもちっとも目立たないなんて、それをもっと違う形で使えてれば、テルヤはきっと幸せになれたのにね」

 

 「ある意味そこはあいつの能力よね。ずっと石ころ帽子状態だから、ろくな活用方法が思い付かないけど」

 

 「あら、今度はカイジのネタやってるわね。ジョジョとかカイジとかラピュタとか、ホント、テルヤってパロディ好きね」

 

 「原作もパロディまみれだったからね。ここぞとばかりにあれこれ詰め込んだのよ」

 

 「それから、最後のこの台詞ね。これは三章の構想を練っていてテルヤがクロになったときからずっと決めてたそうよ」

 

 「愛してるぜアリ共!てヤツね。アリはともかくとして、愛してるぜ、なんて台詞アイツが吐くとは思わなかったわ。意味は分かるけど」

 

 「むしろここまでのパロディとか無茶苦茶なキャラクターとかは、この台詞を違和感なく成立させるためのフリとも言えるわね」

 

 「長いフリだったわね…」

 


 

 「さ、おしおきの解説よ」

 

 「毎回だけどおしおきは作者がこだわってるところだからね。ここもじっくり解説していくわよ」

 

 「そもそもこの解説編が始まったのって、おしおきの解説がしたいからよね」

 

 「うん。実はロンカレでは後書きで解説してるんだけど、QQはおしおき以外にも語りたいところがいくつかあったから、解説編っていう形で書くことにしたんだって。今じゃロンカレの本編とか番外編と並行して書いてるからヒィヒィ言ってるそうだけど。いい気味ね」

 

 「いい気味なのかしら…」

 

 「おしおきのタイトルは『天罰へのカウントダウン』。またパロディね」

 

 「ちなみのこの元ネタになった映画は、作者がはじめて映画館で観た映画だそうよ」

 

 「まだ小さかったから推理パートとか何がなんだか分からなかったらしいけどね。改めて見てみようかしら」

 

 「カナタ、作者の声が出てるわよ」

 

 「おっといけない。えーっと、おしおきの解説よね。QQのおしおきの中でもかなり色々詰め込まれてるおしおきよ、これ」

 

 「ひとつひとつ解説していきましょう。まずスタートは、テルヤがおっきなダルマ落としの天辺に縛り付けられてるところからよ」

 

 「ダルマ落としそのものにはそんなに意味はないのよね。ただ、一段ずつ破壊されて自分の死がどんどん近付いてる実感を与えられる装置としてちょうどよかったってだけ。おしおきっていうものの常軌を逸してる感の演出にもなるしね」

 

 「その爆破シーンの描写にもこだわりがあるわ。最初の二段は普通に爆破されてるだけだけど、3つめの爆破からはちょっと違うのよね」

 

 「これは是非ブラウザで見てほしいわね。ケータイの画面だともしかしたら上手いこと表示されてないかも知れないから。8の段から3の段までの爆破は、爆破の描写と屋良井の反応の描写が1文字ずつ短くなってるの。段々と死期が迫ってることをイメージしてるのね」

 

 「もっとたくさんの段でやりたかったわね。さすがに言葉が思い付かないかも知れないけれど、できたらキレイだったわよね」

 

 「そして屋良井が死を覚悟して目を閉じた瞬間、おしおきの後半に突入するわ。2の段が急に炎を噴いて、ロケットみたいに打ち上がるの」

 

 「ダルマ落としがロケットになるってどういうこと?」

 

 「ヘンでしょ?おしおきだもん」

 

 「そうね。おしおきだものね」

 

 「そのまま屋良井は生身で大気圏突入ね。空気との摩擦で周りは高温になるし、呼吸もできないくらい空気は薄くなるし、反動で体は引き千切られそうになるし、これだけでそうとう苦しいはずよ」

 

 「むしろここで死んじゃわないのが不思議ね」

 

 「そこはおしおきだから」

 

 「おしおきだものね」

 

 「そんで、最後は宇宙空間のシーン。ふと目を開いた屋良井の視線の先にあったのは、炎の球、まあ太陽ね」

 

 「音もなく爆発するシーン、ワタシどこかで見たことあるのよね。なんだったかしら」

 

 「ルパンVS複製人間でマモーの本体が宇宙空間に放り出されるシーンでしょ」

 

 「ああ。それね。ルパンまでパロディしてたの」

 

 「とことんって言ったでしょ。とことんよ。あとこのシーン、屋良井は『もぐら』だから、『もぐら』は太陽の光を浴びると死ぬっていう俗信をモチーフにもしてるのよ」

 

 「意味持たせすぎて解説が追いついてないわ。というか、そんな俗信だれが信じてるのよ」

 

 「たぶん小学生くらいしか信じてないと思う…いや、いまどき小学生も信じないわよこんなの…」

 

 「これにておしおきは終了。最後に屋良井は笑ってたけど、そのとき何を思ってたのかは特に決めてないわ。こんだけ大袈裟に死んだ自分の生き方に満足してたのかも知れないわね」

 

 「カケルたちはちっとも納得もスッキリもしてないけど」

 

 「おしおきの後にモノクマがベジータのパロ台詞言っておしおきはホントに終了。ここまででいくつパロディしたのかしら」

 

 「えっと。ジョジョでしょ。ラピュタでしょ。コナンにルパンにドラゴンボール、あとカイジ」

 

 「ラインナップが男臭い!コナンとかラピュタはともかくカイジの男臭さ!」

 

 「仕方ないでしょ。これ書いてたとき、作者は男子大学生だったんだから。そりゃ男臭い趣味にもなるわよ」

 

 「そう言えばそうね。時が経つのは早いわね…」

 

 「カナタ、作者の声またもれてる」

 

 「おっと」

 


 

 「まだ三章はちょっとだけ続くわ。あと話すことが3つ」

 

 「もう終わりが近付いてきたのね」

 

 「まずは清水の心境の変化ね。有栖川ちゃんとあたしの裁判のときは、おしおきの後に爽快さを感じてたみたいだけど、屋良井のおしおきの後ではっきりと、胸糞悪いって言ってるのよ」

 

 「これはどうしたのかしら?」

 

 「単純に、あたしとか有栖川ちゃんみたいに“超高校級”の生徒を打ち破ったから爽快感を覚えてただけで、屋良井は“超高校級”にとっても敵っていう存在だったから、あんまり爽快さはなかったの。ムリヤリ理由付けするとね」

 

 「ムリヤリ理由付けしないと?」

 

 「最初の頃のプロットの名残」

 

 「名残」

 

 「“超高校級”を裁判で破ることに爽快さを覚えた清水が、周りの人に事件を起こさせて自分でそれを推理しておしおきさせるっていうマッチポンプを仕掛ける展開を考えてたわけ。でも話の大筋と合わせづらいし、主人公でそれはさすがにナシよりのナシだし、何よりそんなことできるほど清水は賢くないし、色々な理由があって止めたのよ。でも、清水っていうキャラクター的に爽快さを覚えるのはまだあり得るから、そこだけ残したの」

 

 「っていうことは、ここがカケルにとってのターニングポイントにもなったわけね。“超高校級”を裁判で倒すよりも、事件と裁判とおしおきで感じるストレスの方が大きいって気付いた。だから黒幕と戦おうと思うようになったっていう」

 

 「アニーは清水のこと信用しすぎよ。そこまで崇高なことあいつが考えるはずがないじゃん」

 

 「じゃあどう思ったの?」

 

 「学級裁判が胸糞悪いから、やらなくて済むならそうしよう、くらいのもんよ。具体的な解決策なんか何にも考えちゃいないわ」

 

 「ああ…そんな…」

 

 「アニーは今まで清水の何を見てきたのよ…」

 

 「もう三章だから、そろそろカケルも主人公らしいことし始めるかと」

 

 「まあ、そこは実際そうね。四章くらいから清水はちょっと主人公っぽいことし始めるわ。ちょっとだけだけど」

 

 「真相に繋がるヒントも出始めるわよね。ここでのモノクマの発言とか」

 

 「絶望を乗り越えた先にある大いなる希望ね。黒幕の正体と目的を知ると、この発言も意味が分かるのよね。というか原作をプレイした人なら、これと同じようなこと言ってる人知ってると思うけど」

 

 「その人と関係ある人もまだいるしね」

 

 「生きてる側の人たちからしたらたまったもんじゃないけどね」

 

 「だから、黒幕にとって絶望は手段であって目的じゃない。ワタシたちが上手いこと“才能”を発揮できる環境を整えないと意味がないのよね。だからQQの事件は結構、“才能”を意識したトリックとか仕掛けを作るようにしてあるわ」

 

 「そういう隠れたテーマを仕込むのって、作者が一番苦手なところなんだけどね」

 

 「原作であんまり“才能”が絡んだトリックがなかったから、やってみたくなったのよ。結果的にテーマになったっていう感じかしら」

 

 「ふぅ。あとちょっとね。あと話すことひとつ」

 

 「いよいよね。これが終わったらコーヒーブレイクにしましょう」

 

 「そうね。じゃあラストの解説いくね。裁判場から合宿場に戻って来てからの六浜ちゃんの独白シーン」

 

 「リョーマとの思い出を振り返って、決意を固めるシーンね」

 

 「実際、ここからまだまだ六浜ちゃんの受難は続くんだけどね。それでもやっぱり、この章で前半と後半を切り替えるために、この一幕は必要なのよ。ある意味ここは六浜ちゃんの章ね」

 

 「ドールはみんなのことを考えて、誰かのためにがんばることができる子だったけど、そのせいで自分ひとりで抱え込んでしまいがちだったわね。リョーマは自分のやりたいことを優先するから周りに合わせられなかったけど、しっかり自分の考えに基づいてたわね。だから、ドールはリョーマのことを尊敬してたのね。自分の意思をしっかり持って、その上で人をまとめられるようになったら、それは立派なリーダーだもの」

 

 「六浜ちゃんに足りなかった、意志の強さというか、わがままさを古部来を見て学んだって感じかしら。結局、そのわがままさというか自分勝手さを六浜ちゃんが発揮できたのはもうちょっと先になるんだけど」

 

 「リョーマはリョーマで、もうちょっと早くみんなに合わせることを知ればよかったのにね」

 

 「でもあいつがいきなりみんなで仲良くしよう、的なこと言いだしたらそれはそれで…なんかキモい」

 

 「最後の最後でリョーマに悪口言っちゃうの?」

 


 

 「と、いうわけで三章の解説編もこれにて終了よ!いやー長かったわね!」

 

 「毎回毎回長くなっちゃうから、ポイント絞って短めにしようって言ったそばからね」

 

 「いいのよ!楽しいから!それにさ、一言一句漏らさず読んでる人なんているの?みんななんとなく斜め読みしてるんじゃない?」

 

 「いきなりなんてこと言うのよカナタ!そんなことないわ!みんなちゃんと一文字一文字じっくりかみしめるように読んでくれてるから!」

 

 「かみしめるように読まれたらそれはそれで困るけど…。そうでなくても長いから、ま、休憩も挟みつつ気楽に読んでよね」

 

 「これラストに言うことじゃないわよね」

 

 「ホントだ。間違えた。シメの雰囲気っぽいこと言わなくちゃ」

 

 「みんな、ここまで『ダンガンロンパQQ』解説編、後のお祭りを読んでくれてありがとうね」

 

 「それは解説編全体のラストに言うヤツ!まだ言っちゃダメだから!えっと、あ!次の解説編の話しようよ!」

 

 「次は四章の前編ね。物語の後半に入ることもあって、日常編とか事件の雰囲気もガラッと変わるわね」

 

 「うん。あとこっから先は、作者が事前に考えて執筆したんじゃなくて、書きながら考えてた部分にもなるのよね」

 

 「見切り発車区間ってことね」

 

 「アニー、ヘンな日本語覚えないで。合ってるけども」

 

 「うふふ。それじゃ、そろそろ終わりにする?これでワタシたちの出番もおしまいね。楽しかったわ」

 

 「まさか本編の後にもこんな形で動くことになるとはね…」

 

 「きっとこの後も何かにつけてかり出されるわよ。ンwitterとかで」

 

 「そ、そうね…」

 

 「それじゃ、いつものおしまいのヤツやりましょ」

 

 「改めて言われると小っ恥ずかしい…じゃ、あたしから。QQ解説編、後のお祭り、三章後編はここでおしまいよ。みんな、ここまで読んでくれてありがとう」

 

 「ありがとうね」

 

 「お相手は、欲しいものは絶対ゲット!石川彼方と!」

 

 「疲れたあなたにコーヒーを、アンジェリーナ・フォールデンスがお送りしたわ」

 

 「お疲れ様でしたぁーーー!!」




解説編です。これで半分だと思うと気が遠くなる。
企画を始めたことを若干後悔していますが、最後まで書ききりますよ。
じゃんウソ吐かない。

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