Epilogue.絶望の廉には希望来たる
固い感触、張り詰めた静寂、冷たい鉄の温度。少しずつ覚醒する私の意識を、それらの世界が取り巻き始める。
「・・・?」
眠っていた、にしては気怠い感覚。それに私はこんなところでは寝るはずがありません。これではまるで、授業中に居眠りをして放課後まで放って置かれたようではありませんか。私が目覚めたのは、よく見慣れた教室でした。
「ここは・・・」
並んだ机、無地の黒板、監視カメラに鋼鉄の窓枠。見慣れた景色の中に異質なものが混ざっています。なぜ窓に鉄板をはめているのでしょう?監視カメラにマシンガンなど付ける意味があるのですか?それに、私はなぜこんな場所で眠っているのでしょう。服装は普段着と変わりませんのに、この状況が全てを奇妙なものに変えているようです。
「!」
足下にひらひらと落ちた一枚の紙に目が留まりました。拾ってみると、クレヨンで書いたような形の崩れた字で埋め尽くされていました。
ーーオマエラ、おはようございます。8時に全体ミーティングを行ないます。体育館に集合してください。ーー
ところどころ間違っているのはわざとでしょうか。それより、全体ミーティングとはなんでしょう。現在時刻は7時55分。ギリギリですね。集合というからには、私以外にも同じような状況の方がいるということですね。
取りあえず、描いてある地図に従って体育館にやってきました。時刻は8時を少し過ぎたころ。時間には遅れてしまいましたが、現れるのがこの私なのですから、許されてしかるべきでしょう。それにしても、私が到着したのにドアも開けないとは、どういうつもりなのでしょう。試しに、ドアをコンコンと叩いてみました。
「おや、また誰か来たようだね」
「えー、なんで開けないのかな?恥ずかしがり屋さん?」
「きっと女性で重たい扉を開けることができないのですね!開けてさしあげましょう!」
何人かの声が聞こえてきたかと思うと、鉄の扉が重い音を立てて開かれていきました。その向こうには、こちらへ視線を向ける顔が15人分ありました。怯えた顔も、好奇の目を向ける顔も、心配そうな顔も、敵意を剥き出しにした顔も、様々です。私を見て、驚いたように目を見開くものもありました。
「これはこれは・・・またとんでもないビッグネームが来たものだ」
「な、なな、なによ・・・!穂谷円加なんてきたら・・・またあたしの影が薄くなるじゃない・・・!」
「・・・」
どこを見ても、全員同じくらいの年頃の高校生ばかり。誰もかれも、我の強そうな方ばかりですね。
「これで16人か。なかなかの人数になったもんじゃな!」
「全員・・・揃った・・・」
一様に、この不可解な状況に警戒している様子です。場所は、よく知った希望ヶ峰学園であるにも関わらず、窓の鉄板や監視カメラについたマシンガンが奇妙さを引き立てています。そんな奇妙な状況の中におかれた16人の高校生。
「アーッ!アーッ!マイクテスト!マイクテスト!」
「!!」
突然、体育館中に大きなハウリング音と不快な声が響き渡りました。急なことに思わず耳を塞ぐ人もあれば、より一層警戒を強めて周囲を見回す人もいます。空気が震えるような爆音の中、奇天烈な音楽は止むことなく私たちを取り囲み続けます。
「これ、聞こえてるよね?大丈夫だよね?よーし!それじゃ、早速はじめちゃいましょーか!」
「な、なんだなんだ!?誰だこの声は!?」
「狼狽えるな、見苦しい。それより・・・あそこを見ろ」
誰かが指さした先は、スピーチなどを行うための壇。その一言に吸い寄せられて、私たちの視線が一箇所に集まりました。それを見計らったかのように、それは姿を現しました。
「じゃじゃじゃじゃーーーん!!オマエラ!おはようございます!」
「・・・は?」
「うぷぷぷぷ!!あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「なっ・・・!?なんだ・・・これ・・・!?」
「うぷぷ!それではオマエラ!はりきっていきましょーーーう!!」
「コロシアイ第二回戦、開会なのだァーーーーッ!!」
見たこともない白と黒のそれは、高らかにそう宣言しました。
16人の“超高校級”の生徒たち。これから彼らに待ち受けているのは、悲劇か、喜劇か、惨劇か。何も知らない16人は、しかし各々に物語を持っている。物語の勝者として、新たな戦いを強いられる。かつて同じ舞台に立った15人の命を背負いながら。
これは、16分の1の物語。
『コロシアイ合宿生活』
卒業生:穂谷円加
【清水翔】 【六浜童琉】 【晴柳院命】 【明尾奈美】
【望月藍】 【石川彼方】【曽根崎弥一郎】 【笹戸優真】
【有栖川薔薇】 穂谷円加 【飯出条治】 【古部来竜馬】
【屋良井照矢】【鳥木平助】 【滝山大王】【アンジェリーナ】
【コロシアイ学園生活】
生き残り人数:残り16人
これにて『ダンガンロンパQQ』は完結です!ご愛読ありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう!
ちなみに最後に喋ってる彼らは没キャラ達です。