Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
ほとんど書き上がってたので更新しちゃいます。
後篇は、明日にでも更新します
本編では、バルトロに処分されたらしいランドンさん。今作では改心要員として地味に美味しいポジションになったりします。(チュートリアル回でボコった詫び)
「ランドン師団長! ご無事ですか!」
憑魔と化したランドンを浄化したアリーシャはすぐに倒れたランドンへと駆け寄り声をかけた。
「あ……ぐぅ……わ、私は……? ア、アリーシャ殿下? な、何故、ここに?」
意識を朦朧とせながらも、ランドンはアリーシャの声に反応する。
大事は無いと分かり、アリーシャは思わず安堵の息を漏らした。
「説明は後ほど……今は本陣で休まれてください」
「本陣……だと? ……何故、私はこんな場所にいる? 私は敗走するローランス軍を追って……わ、た、し……は、何を……していた?」
何故、ハイランド軍の本陣へ続く道で自分が倒れているのか理解できない、ランドンは混乱する頭で、記憶を辿る。
そして……
「師団長……?」
「アリーシャ殿下……今まで、私は何をしていた? 何をしてしまったんだ!?」
ハイランド軍の歴戦の戦士である筈のランドンは、怯える子供の様に体を震わせながら、大声をあげた。
「(憑魔化していた時の記憶が曖昧で混乱しているのか! だが、これは……)」
記憶は曖昧だが、自身の思考が少しずつ崩れ、狂気に支配されていく感覚はランドンに確かに刻み込まれていた。その証拠に、ランドンは自身がおかしくなっていたことを本能的に察している。
「師団長、信じては貰えな「おーい! 無事か!」 ルーカス殿!」
ランドンの言葉にアリーシャが答えようとするとその言葉を遮るように声をあげながら本陣から木立の傭兵団を従えたルーカスとハイランドの騎士達が此方へ駆けてきた。
「大丈夫かよ? アンタの言う通り、あのウィザードとか言う奴が、おかしくなった連中を何とかするまでは、本陣を守るようにしていたが、もう大丈夫なんだよな? 倒れてるコイツらも本陣に運んだ方がいいのか?」
穢れを浄化され倒れている兵士達を見回しながら、ルーカスはアリーシャにどうすればいいのか問い掛ける。穢れや憑魔について知らない彼等からすれば、今何が起きているのか理解できているのはアリーシャとウィザードだけなのだ。
「あぁ、済まないが手を貸してもらいたい。頼めるだろうか」
「おう、まかせな」
ルーカスはアリーシャの頼みに頷くと、部下達に指示を出し倒れた兵士達を本陣へと運ばせる。そして、それに続くようにハイランドの騎士達も倒れた兵に手を貸し始めた。
「さっき、襲ってきた兵達が何人か目を覚ましたよ。どいつもこいつも襲ってきた時の記憶が曖昧になってたが、正気を取り戻した」
部下に指示を出し終えたルーカスは、先程、浄化された兵士達が目を覚ましたことをアリーシャに告げた。
「っ! ……そうか、良かった」
「……やっぱり、アンタは連中が何故襲ってきたのか知ってるんだな。……しかし、その姿はなんだ? ウィザードって奴といい今のアンタの姿といい、襲ってきた連中が正気を取り戻した事と何か関係してるのか?」
ルーカスのその問いかけにアリーシャは一瞬、驚いた表情をする。
「……見えるのか?」
「は? アンタの格好が変わった事か? そりゃ見えるだろう? なんかおかしいのか?」
「い、いや、その通りだ。忘れてくれ」
ルーカスの言葉を肯定しながらアリーシャは思考を巡らせる。
アリーシャが驚いた事には理由がある。導師であるスレイが使う本来の神衣は天族と融合し、その力を引き出すもので、使用した際はその使用者の姿は大きく変化するのだが、天族や憑魔を知覚できない人間には同じように神衣への変化も見えない為、スレイが神衣を使用してもその事に気づく者はいなかったのだ。
「(考えてみれば、ウィザードの姿は霊応力の有無に関係なく見えているんだ。彼から力を分け与えられた私の変化が同じように知覚できてもおかしくはない)」
魔法使いと導師の力の違いをアリーシャは頭の中で整理する。
その時、再び獣のような叫びが響き渡った。
「!? またか!」
数体ではあるが、リザードマンの群れが現れたのだ。槍を構えようとするアリーシャだが、そこにウィザードから声がかかる。
「アリーシャ! あれなら俺一人で大丈夫だ! お前はそこの師団長さんを頼む!」
そう言ってウィザードは憑魔に向かい駆けて行く。
「頼む、ウィザード! 師団長、私達も本陣へ……」
ウィザードのその場を任せアリーシャはランドンを本陣へ連れて行こうとその体を起こそうとする。しかし肝心のランドンが立ち上がろうとしない、その視線は憑魔と戦うウィザードを見つめている。
「師団長?」
その表情に違和感を覚えたアリーシャはランドンに声をかける。するとランドンが恐る恐る口を開いた。
「アリーシャ殿下……あの仮面の男が戦っている相手はなんだ?」
「……え?」
「あれはなんだ!? なぜトカゲの化け物が我が軍の鎧を着ている!?」
「!! 師団長……あなたは」
明らかに憑魔を知覚しているランドンの台詞にアリーシャは、彼を立ち上がらせようとするのを止め、体から手を離した。
すると……
「!? なんだ!? 化け物が人間に……どうなっている!? 頭がどうにかしてしまったのか私は!?」
今度は、憑魔が見えなくなったのだろう、ランドンは事態に着いていけず、混乱しながら叫ぶ。
「っ!……まさか」
一瞬、憑魔を知覚したランドンの反応をみて何かに気づいたアリーシャは再びランドンに触れる。
「!? また、トカゲの化け物が」
「 ……やはり」
再び憑魔を知覚したランドンにアリーシャは確信する。
「オイオイ、どうしたんだ? 何、勝手に納得してるんだよ」
そんな彼女の反応が理解できず、ルーカスはアリーシャにどうしたのか問い掛ける。
「……ルーカス殿、私の肩に触れて、ウィザードと戦っている兵を見てくれ」
「は? アリーシャ姫、何を……」
「頼む! 確かめたい事があるんだ!」
「お、おう、わかったよ」
困惑するルーカスに対して言葉を強めるアリーシャ。その剣幕にルーカスはその言葉に従い彼女の肩に手を触れる。
そして……
「なんだよ、アレは……」
彼もまた憑魔を知覚した。
「(これは……ハルトが与えてくれた魔力の影響なのか?)」
今と似たような事をアリーシャは知っていた。まだ、天族を知覚できなかった頃、導師の力を得たスレイがライラの指示で、アリーシャと手を繋ぎ自らの五感を封じることで、アリーシャに天族の声を届けた事があったのだ。
アリーシャは思考しながら自らの体に目をやる。ウィザードから与えられた魔力により変化したアリーシャの体からはうっすら赤い揺らめきが発せられている。
「(この魔力がなんらかの形で作用しているのか?)」
そんな考えが頭をよぎるが、今、重要な事はそんな事ではないとアリーシャは口を開く。
「師団長…ルーカス殿、あれこそが、今、人々を苦しめている災厄の正体です」
その言葉にランドンは、小さく声を漏らした。
「……あの化け物が、災厄の正体だと?」
「そうです。怒り、悲しみ、妬み、憎しみ、絶望、そんな人の負の感情から発生する『穢れ』が生み出す怪物、それが憑魔です」
「負の…感情……」
「憑魔は本来、普通の人間には知覚できません。憑魔となった物を救えるのは導師や魔法使いの持つ浄化の力のみです」
「……浄化……なら、スレイの奴はあんなのと戦っていたのか!?」
アリーシャの言葉を聞き、ルーカスはマーリンドで出会ったスレイが何と戦っていたのかを理解する。
そして、アリーシャ達が言葉を交わしている内にウィザードは憑魔を全て浄化してしまった。
そんなウィザードの姿を見たランドンはアリーシャに問い掛ける。
「アリーシャ殿下……私も、あの化け物のようになっていたのか?」
その言葉をアリーシャは黙って頷き肯定した。
「……そうか」
人の負の感情が形になった姿を見たランドンが何を思ったのかアリーシャにはわからない。自身の身に潜む負の側面を真っ向から突きつけらたのだ、思う所もあるだろう。しかし、今は迷っている暇は無い。
「師団長……私はこれからウィザードと共に、この戦場に穢れを撒き散らした存在の元へ向かいます。貴方には、正気のハイランド兵を退かせて欲しい。戦闘が続き負の感情が蔓延すればするほど、被害は大きくなります。どうか力を貸して欲しい……」
そう言ってアリーシャはランドンに頭を深々と下げた。そんなアリーシャを見たランドンは一度、目を閉じ何かを考えると。口を開いた。
「……わかった。全てを信じた訳ではないが……この事態は明らかに異常だ。戻って来たら。詳しく説明してもらうぞ」
その言葉にアリーシャは、表情を明るくし、もう一度頭を下げる。
「感謝します!」
「チッ……いいから行け」
アリーシャの言葉にランドンは複雑そうに表情を歪ませるが、アリーシャは気にする事なく立ち上がり、ウィザードの方へと駆けていく。
「……あんな小娘に借りができるとはな」
その後ろ姿をランドンは忌々しげにみつめた。
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「話は済んだ?」
「あぁ、大丈夫だよハルト」
アリーシャが話し終えるのを待っていたウィザードは駆け寄ってきたアリーシャに用は済んだか問いかけ、アリーシャは肯定する。
「そっか、なら行こう。多分、戦場の何処かにこの状況を作り出した元凶がいる」
「あぁ、恐らくは『災禍の顕主』だ」
「『災禍の顕主』? 」
「ライラ様が言っていた、災厄の時代の元凶と言える存在だ。膨大な穢れを生み出すといわれているらしい」
「なるほど……なら余計に急がないとな」
納得するウィザードにアリーシャは言葉を続ける。
「ルーカス殿から聞いた話では、災禍の顕主は恐らく、戦場の南西部にある高台にいる可能性が高い。恐らくはスレイ達もそこに居るはずだ」
その言葉を聞いて、ウィザードは左手の指輪を交換し、ベルトにかざす。
【ハリケーン! プリーズ フー! フー! フーフーフーフー!】
そしてハリケーンスタイルへとスタイルチェンジしたウィザードの影響を受けアリーシャも姿を変える。
「こいつで目的地まで一直線だ」
飛行能力持ちのハリケーンスタイルで南西部の高台を目指そう浮き上がるウィザード。だが、アリーシャは気まずそうに言葉を返す。
「す、済まないハルト、まだこの力に慣れていなくて……その、飛行までは……」
無理もない、魔力を用いた戦闘は、先ほどが初めてだったのだ。むしろ彼女はよくやった方だろう。
その言葉を聞いて、ウィザードはアリーシャの側に近寄る。
「それじゃあ、しょうが無い。失礼するぜアリーシャ」
「えっ? きゃっ!?」
一瞬、ポカンとしたアリーシャをウィザードは背中と膝裏に手を回し抱えあげた。
「ハ、ハルト!?」
予想外の流れに口調が崩れるアリーシャ。まぁ、一言で言えば、お姫様抱っこ(比喩ではない)というやつである。
「文句なら後で聞くさ。急ぐぞアリーシャ」
「わ、わかった! 頼む!」
そうして、ウィザードは空中へと舞い上がった。
「スレイ…ミクリオ殿…ライラ様…エドナ様、どうか無事でいてくれ」
戦場の、上空を舞うウィザードに抱えられたアリーシャはスレイ達の身を案じ、言葉を漏らす。
グレイブガント盆地の東部から南西部に向けて飛行するウィザード。そんなときウィザードの視界の端に奇妙な物が写った。
ウィザードの右方向、グレイブガント盆地の北西に小さな集落のような物が見えたのだ。
「(村? こんな所に? 戦場からは離れているし、大丈夫そうだけど……)」
しかし、その思考は中断された。突如、彼の頭に響いた声と共に……。
『操…晴…! 聞こ…る…!』
「ッ!」
突如響いた声に反応する。晴人、しかし、その声はノイズがかかったように聞き取れず、すぐに聞こえなくなってしまう。
「(今の声は……)」
僅かだが、聞き覚えのある声。それは彼の中に潜む力の源……。
「いたぞ! ハルト!」
「ッ!……了解! 行くぜ!」
気づけば南西部に到着していたウィザード。アリーシャは眼下に見覚えのある人影を捉え、ウィザードへと伝える。思考を切り替えた晴人は高度を下げながら、アリーシャから手を離し、左手の指輪を交換しバックルにかざす。
【フレイム! プリーズ! ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】
落下しながらフレイムスタイルへとチェンジした2人は、真下で相対していた者達の間へと着地した。
「え? なんだ!?」
「ッ! 新手か!?」
「アリーシャさん!? その姿は!?」
「……何あれ、指輪怪人?」
2人の登場に背後にいる四人からそれぞれ驚きの声が上がる。
だがウィザードは振り返らず自身の眼前にいる相手から視線を逸らさない。
「…………」
ウィザードの視線の先には圧倒的な威圧感
を放つ獅子の怪人が立っていた。
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友人との雑談
友「ファミ通のインタビューで新たな燃料が投下されたな」
フジ「下の下ですね」
友「素直に謝ればいいのにな」
フジ「『全部、私のせいだ! ハハハハハハッ!』って感じか」(プロフェッサー並みの謝罪)
友「それ、煽り台詞」
鎧武外伝、第二弾、デューク、ナックルが楽しみです。(馬場pインタビュー記事から目を逸らしながら)