Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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まーた分割コースになっちまったなぁ!

今回の話の前半では本作での独自設定が語られてます。アニメ版やベルセリアで明かされた設定とは異なるのでご了承ください

ではどうぞ






29話 悪夢を止めて 中篇

「ここが、マオテラスが祀られている教会神殿……」

 

ペンドラゴの教会神殿内、真夜中の礼拝堂。その中にスレイ達一行は足を踏み入れていた。

 

真夜中という事もあり礼拝に訪れている者はおらず、それどころか教会関係者すら姿が見当たらない。

 

「あっちから来いって言った癖に見当たらないわね」

 

「恐らくは最深部に来いって事なんだろうさ」

 

「最深部?」

 

「あぁ。この教会神殿はマオテラス信仰が始まった千年前に建造された神殿でな、その後も時代毎に増築を続けて今の巨大な教会神殿になったのさ」

 

「なるほど、この礼拝堂は一般の信者の為のもので、更に奥があるって事か」

 

「そう言う事だ。恐らく枢機卿は今度こそ俺たちを逃したく無いんだろうさ。この前も確実に包囲した筈がハルトの魔法で逃げられたからな。今度は最深部におびき寄せて確実に捕らえる気なんだろうよ」

 

「手の込んだ話だな」

 

「同感だね。人気者は辛いなハルト」

 

一同は礼拝堂の奥の扉を抜け、さらに奥へと足を進めていく。そんな中で軽口を叩き合う晴人とザビーダだが、そこで晴人がある事に気がつく。

 

「なぁ、此処には本当にマオテラスってのが祀られてるのか? 火の試練の時はあの場所に妙な力を感じたけど、この教会神殿からはそういう物は感じないぞ?」

 

その問いかけにザビーダ、ライラ、エドナの表情が険しくなる。

 

「……お前さんの言う通り、今のペンドラゴにマオテラスはいない」

 

返答となるザビーダの言葉にスレイ、ミクリオ、アリーシャが強く反応する。

 

「いない?! この神殿にはマオテラスが祀られているんじゃないの?」

 

「ローランスのマオテラス信仰は形だけのもので、最初からマオテラスはこの地にいなかったという事か?」

 

「いえ、ミクリオ殿。今のザビーダ様の言い方だとこのペンドラゴに嘗てマオテラスが存在したのは事実なのでは?」

 

「その通り。確かにこの教会神殿にマオテラスがいたのは事実さ」

 

アリーシャの言葉をザビーダは肯定する。

 

「へぇ~、でもそれならマオテラスは一体何処に消えたのさ?」

 

「……さぁな。わかってんのは20年前に何かがあってマオテラスがペンドラゴから消えたって事だ」

 

「…………」

 

そう言ったザビーダの言葉に後ろを歩くライラの表情が更に曇る。

 

「ふぅん……あ、そう言えば五大神の内、地水火風の四属性は導師に秘力を与えてくれるけどマオテラスはどうなの?」

 

試練神殿の事を思い出しながらロゼが疑問を口にする。

 

「マオテラスは『無』を司る。契約した相手に穢れを浄化する『白銀の炎』の力を与えるのさ」

 

その言葉に晴人は疑問を覚える。

 

「ん? でもお前、確かこの前ペンドラゴに来た時に浄化の炎は力を極めた火の天族が使うとか言ってなかったっけ? ほら、土は封印で風が守護とか言ってたろ?」

 

「間違いでは無いぜ。正確に言えば『嘗てマオテラスの陪審だった天族』ってのが前提条件だけどな」

 

「どういう意味だ?」

 

「千年前には浄化の力ってのは存在しなかった。当時は色々あって今よりかは霊応力の高い人間も多くてな。『対魔士』なんて呼ばれてた奴らが特殊な製法で作られた武器と天響術で憑魔を倒してたのさ」

 

「つまり……憑魔となった者はその対魔士に討たれ……」

 

「殺された。当時の人間の間では人が凶暴化する奇病として扱われてたからな……まぁ殺せるといっても穢れそのものが消える訳じゃねぇ。例え憑魔を殺してもその穢れは残り、死体や周辺の動植物に影響を与える。そこに浄化の力を持ったマオテラスが現れた訳だ」

 

その言葉にスレイとミクリオが反応する。

 

「文献にも僅かに残っているよな。確か五大神には『マオテラス』の前任が存在したんだっけ?」

 

「『カノヌシ』だね。殆ど記録が存在していない謎の多い存在だけど」

 

2人がそんな会話から楽しそうに歴史についてあーだこーだと話始め、晴人は「やれやれ」と苦笑いを浮かべながらザビーダへと視線を向けるが……

 

「……………」

 

当のザビーダはいつもの軽い調子が消え去り険しい表情を浮かべていた。

 

「ザビーダ? どうかしたのか?」

 

「……いや、ワリィなんでもねぇ」

 

らしく無い反応を見せるザビーダを晴人は訝しむが、ザビーダは誤魔化す様に話を再開する。

 

「まぁ、なんやかんやあって五大神の座に就いたマオテラスは、大陸に存在する天族達を自分の陪審にする事で浄化の力を分け与えた訳だ」

 

「ん? でもマオテラスとの契約は今どうなってるんだ?」

 

「20年前にマオテラス側から契約は強制的に解除された。契約の権利は主審であるマオテラスにあるからな。今の俺たちはその時のマオテラスが与えてくれた浄化の力の残滓を使ってやりくりしてんのさ」

 

「なるほどね。要は力の高い天族なら残されたマオテラスの力をいろんな形で引き出せるってのが正確な答えな訳だ」

 

「そういうこった。ま、残された力でやりくりすんのも簡単じゃないんだがな」

 

そういってザビーダはライラへと視線を向けるが、当のライラは黙ったまま視線を外す様に俯いてしまう。

 

それを見た晴人はライラの浄化の力にまだ何かあるのだと察しつつも、ライラの悲痛な表情からそれ以上踏み込もうとはしなかった。

 

「そう言えば1つ聞きたいんだけどさ。枢機卿は特殊な術で長雨を降らせてるよな? 憑魔ってのは強い奴はそんな事までできるのか?」

 

話題を切り替える為、晴人はこれから相対するであろうフォートンの事を尋ねる。晴人の意図を察したのかザビーダもまた何もいう事なくその質問に答える。

 

「憑魔ってのは人間・動植物や自然物・天族によって穢れの影響のしかたが違ってくる。わかりやすく言うと____ 」

 

ザビーダが語った人間の憑魔化の段階分けは以下の様なものだった。

 

一段階目は、憑魔となり身体能力が強化され強い穢れを生む様になるが、自身の変化への自覚は薄く人格も人間だった頃のものがある程度維持できている。

 

二段階目は精神が歪み始めると同時に霊応力が高まり、天響術などの力が行使可能となり自身の変化に明確な自覚を持つ。

 

そして最終段階は更に精神が歪み本能や衝動で動く化け物となり、その中でも力の強い憑魔は極めて高い戦闘能力や特殊な術を行使する事が可能となるのだという。

 

「動植物や天族の方達は憑魔化した時点で正気を失う事が多いが、人間は精神の歪みが憑魔化のわかりやすい目安になるという事ですね」

 

アリーシャはラストンベルで出会った憑魔と化しても意識を保っていたマーガレットや、徐々に人としての意識が歪んでいったランドンを思い出しながらザビーダの言葉を反芻する。

 

「けど、フォートンは長雨を降らせる様な力を持ってる割には人としての意識を保っていたよな?」

 

「あぁ、力の段階だけで見れば間違いなく最終段階だろうよ」

 

「え、ですが枢機卿は意識を保って……」

 

「前にも言ったろ? 憑魔の中には稀に最終段階になっても人としての意識を保ってる奴もいるのさ」

 

「つまり枢機卿もそうだと?」

 

「そこに関しては断言はできねぇな。パッと見でヤバそうに見えても意外と話せる奴もいれば、まともに見えて実はヤバイもんが爆発寸前の奴もいるのが人間だからな」

 

そう言って肩を竦めるザビーダだが……

 

「けど、今回は少しばかり腹を括った方がいいと思うぜ」

 

ヘラヘラした態度が消えた真剣な声音。それにスレイが反応する。

 

「それってどういう意味?」

 

「最終段階に達した人間の中には精神と穢れが強く結び付き過ぎる奴ってのが稀にいるのさ。そういうやつは例え浄化してもすぐにまた憑魔化しちまう。心そのものが穢れに飲まれちまってるからな」

 

ザビーダのその言葉を今度はエドナが引き継ぐ。

 

「自ら穢れを放たない動植物や天族と違って、穢れを生み出す人間だからこその特性ね……例え浄化しても心が穢れに完全に飲み込まれていたら何度浄化しても穢れを生み出して再び憑魔になるわ」

 

「一時の感情の爆発で発生した負の感情であるならば浄化すれば穢れの発生は落ち着きます。ですがもし、穢れを生み出した原因がその方の心の根底にある強い感情であったとしたら……」

 

「ッ!!」

 

その言葉にスレイ、アリーシャ、ミクリオ、ロゼが強く反応する。

 

「それって……」

 

スレイが恐る恐るザビーダにその言葉の意味を問おうとすると……

 

「もし枢機卿がそうだったなったら、その時は悪いがコイツを使わせて貰うぜ……」

 

腰にねじ込んであったジークフリートを抜きながらザビーダは迷わずそう言い切った。つまり、浄化不能であればフォートンを殺すと言うのだ。

 

「ッ!! そんな事!!」

 

ザビーダの発言に怒りを見せるスレイ。たが、それを制する様に晴人が両者の間に割って入る。

 

「ザビーダだってキッチリ浄化して見せれば文句はないさ……俺たちでキッチリ助けようぜスレイ」

 

ザビーダと同じ様に晴人は迷わずにそう言い切る。

 

その言葉にザビーダはニヤリと笑う。

 

「おう、その調子で頼むわ。俺だって無駄弾は撃ちたくないからな……さて、お喋りしてる内にそろそろ到着みたいだぜ」

 

薄暗い石造りの通路を進み続けていた一同は、礼拝堂と同じく開けた空間へと到着する。

 

「ここが教会神殿の最深部……」

 

薄暗く辺りが見えない大広間に到達した一同。そこに……

 

「逃げるかとも思いましたが来てくれて安心しました」

 

「ッ!! フォートン枢機卿……」

 

暗闇の中から白い修道服を纏い、その手に身長と同等の長さの杖を持ったフォートンが一同の前に現れる。

 

「物騒な呼び出し方しておいて随分な言い草ね」

 

皮肉げに言葉を発するエドナだが、フォートンは意に介さず表情を変えない。

 

「これは失礼。ですが、先日はそこにいる魔法使いのお陰で取り逃がしてしまいましたから、今回は念には念を入れてこの場に招待いたしました」

 

「用意周到じゃん。そこまであたし達を始末したい訳?」

 

「始末? それは大きな誤解です。私は貴方達の力を大きく評価しています。どうかその力を我がローランスの為に役立てて頂けませんか? 其れ相応の対価は約束しますよ」

 

「悪役っぽい台詞だね」

 

「なんとでも……ローランスが災厄の時代を越える為ならどんな手段も使うまでです」

 

「それがローランスの民を苦しめる事になってもですか?」

 

「言った筈ですよアリーシャ姫。全ては国をひとつに纏め、災厄の時代を越える為に必要な事なのです」

 

「国を救いたいと思っているのは貴方だけではありません! セルゲイ殿達も____ 」

 

「それも言った筈です。騎士団に政治など理解出来ないと。綺麗事を並べるだけで仕える者すら見定められない愚か者達に何を期待しろと?」

 

逃げ出したマシドラの事を思い出したのか、フォートンは苦虫を噛み潰した様に苦々しげな表情を浮かべる。

 

「確かにセルゲイ殿とマシドラ様の間にはすれ違いがありました。ですが、過ちを認めお互いを知る事で分かり合えたんです。貴女だって……」

 

「わかり合う必要などありません」

 

尚もフォートンはアリーシャの言葉を否定する。

 

「あの者達には相応しい罰を用意します。愚かな部下と同じ末路に送って差し上げましょう」

 

「同じ末路? 騎士団の人達に何をしたんだ!?」

 

「心配せずとも殺してはいません。その様な生温い刑では不十分ですから」

 

「ッ!! 何を……」

 

フォートンは手に持った杖を軽く上げる。すると薄暗かった広間に明かりが灯り周囲の光景を露わにした。

 

「ッ!?」

 

「これは……」

 

「石像? でもこれって……」

 

明かりが灯った最深部の大広間。フォートンが立つ場所の背後には無数の人間の形をした石像が立ち並んでいた。

 

石像の人間達はまるで本物の様に精巧な作りであり、特にその表情は怪物を見たとでもいう様な恐怖の表情をまざまざと浮かべている。

 

どれも到底、ただの石像などという言葉で片付けられない程の何かを感じさせるものだ。

 

そしてスレイはある事に気がつく。

 

「あの石像達、白皇騎士団の鎧を……まさか!?」

 

石像の多くが白皇騎士団の鎧を纏っている事に気がついたスレイは、この場にある石像の正体に気がつく。

 

「気付いた様ですね。そうです。ここにある石像は全て、私の祈りを邪魔した者達の成れの果てです」

 

「ッ!! 酷い……」

 

「ハッ! 悪趣味な聖女もいたもんだな」

 

「酷い? 心配しなくても石化からは解放してあげますよ? 彼等はローランスの貴重な戦力となるのですから。まぁ、石化から解放するのは穢れに飲まれ憑魔となり私の手駒となったらですが」

 

ライラは悲痛な表情を浮かべ、デゼルはフォートンに皮肉を飛ばす。だがフォートンは意に介さずスレイへ視線を向ける。

 

「導師、そして姫よ。最後の確認です。私に協力しローランスに____」

 

 

 

 

「悪いけど断るよ。貴女にどんな想いがあるのかは知らないけど、こんなやり方オレは認められない」

 

「同じく、私も貴女には協力できません」

 

しかし、フォートンが言い切るよりも早く2人はその言葉を両断した。

 

「………そうですか。では貴方はどうですか? 魔法使い、ソーマハルト」

 

フォートンは次に晴人へと視線を向け問いかける。

 

それを受けた晴人は静かに口を開いた。

 

「俺もアリーシャ達に同感だ。この力を戦争に利用するつもりはないよ。それに……この力は現在(いま)を切り開いて明日(まえ)に進む為の力だ。だから今のアンタには協力できない」

 

その言葉にフォートンがピクリと反応する。

 

「……妙な事を言いますね。ローランスの未来を切り拓こうとしている私が明日(まえ)に進もうとしていないと言うのですか?」

 

その言葉に、晴人はフォートンの瞳を見透かす様に見つめながら静かに返答する。

 

「魔法使いなんて言ってもさ、俺は相手がどんな人生を送ってきたとか何でもかんでも手に取る様にわかるわけじゃない……だけど、昔アンタと同じ様な目をした人間を見た事がある。なぁフォートン……アンタは何で憑魔になってまでローランスを救おうとするんだ?」

 

その言葉にフォートンは言葉を詰まらせる。

 

「……何が言いたいのですか?」

 

 

 

「聞き方を変えようか? アンタは……何を取り戻したいんだ?」

 

「!!」

 

その質問の直後、突如として穢れの領域が展開された。

 

「なッ!? 」

 

「オイオイ、いきなりだな……」

 

突然、戦闘態勢に入ったフォートンに対して、一同は驚きながらも武器を取り構える。

 

「驚きましたね。穢れの領域を展開すれば導師達と姫は無力化できると踏んでいたのですが……」

 

「お生憎様でした〜! こっちは秘力でパワーアップ済みなんだよ〜だ」

 

フォートンに向けベェーと舌を出し挑発するロゼ。それを見てデゼルが呆れた声を零す。

 

「やめろ、はしたない上にガキっぽいぞ」

 

「だってさぁ!? アイツ、あたしの事だけスルーしたよ!? そりゃあたしだけ肩書き商人だけどさ!? 流石に舐め腐り過ぎじゃない!?」

 

「言葉遣いが汚いぞ……はぁ……まぁ怯まないだけマシか」

 

「当然! こうなったら導師のオマケその①として扱った事を後悔させてやる! いくぞオマケその②!」

 

「誰がオマケその②だ! 来るぞ!」

 

デゼルのその言葉と同時に、今まで何も気配を感じなかった広間の中と後方の通路から大量の憑魔が現れる。

 

「リザードマンにリザードプリーストにデビル……教会関係者や兵士を憑魔にして手駒にしやがったな……」

 

『ガォオォォォォオオオオ!!!』

 

更に大型の虎の獣人型憑魔『虎武人』が背後の通路を塞ぐ様に現れる。

 

「今度は逃がしませんよ。こうなれば仕方ありません。貴方達も憑魔にして私の手駒とさせてもらいます」

 

「ハッ! 誰が逃げるかよ! ハルト! アリーシャ! こうなったからには戦うしかないぜ! わかってんな!」

 

「あぁ、騎士団の人達をこのままにはできない」

 

「止むを得ません……戦う以上、迷いは捨てます……」

 

大量の憑魔に囲まれた一同は背中を向け合い、円陣を組む様に周囲を警戒する。

 

【ドライバーオン! プリーズ!】

 

「変身!」

 

【フレイム! プリーズ!】

 

「さぁいくぜ……ショータイムだ!」

 

展開された魔法陣によりウィザードへと姿を変えた晴人の言葉が開戦の合図となった。

 

 

___________________________________

 

大量のリザードマンが押し寄せる中、一同は背中を預け合いながら迎撃を開始する。

 

【コネクト! プリーズ!】

 

「ハァッ!!」

 

ウィザーソードガンを魔法陣から取り出したウィザードはリザードマンの斬撃を軽くいなし、ガラ空きになった腹部に回し蹴りを叩き込み吹き飛ばす。

 

更に押し寄せるリザードマン達をウィザードソードガンで切り裂いていくが……

 

「ッ!!」

 

その時、ウィザードの視界に数体の敵に囲まれたエドナの姿が映る。

 

「(マズイ!?)」

 

エドナの手に持っているものは傘。晴人はエドナが神衣以外で戦っている姿を見た事は無いが、見た限り接近戦に対応できる様には見えない。ウィザードは慌てて彼女の盾となるべく駆け出そうとするが……

 

『ガァォォ!!』

 

リザードマンはエドナの小さな身体を切り裂くべく、雄叫びを上げながら剣を振り下ろし……

 

「くうちゅうあしげり〜」

 

『ごぁぁぁぉぁぉあ!?』

 

やる気の無いエドナの声の後、叫び声をあげ吹き飛んで言った。

 

「……え」

 

その光景にウィザードから間の抜けた声が溢れた。

 

無理もない。エドナは横振りの一閃をピョンと軽くジャンプで躱し、空中で傘を開いて滞空しながらリザードマンを蹴り飛ばしたのだ。

 

150cmにも届かない少女の蹴りでトカゲの怪物が吹き飛んでいくかなりシュールな光景に、流石の晴人も驚きを見せる。

 

尚も残りの数体のリザードマンが滞空し続けているエドナを攻撃しようとするが……

 

「かいてんふゆう〜」

 

『『『ガァォォ!?』』』

 

エドナは滞空しながら傘を回転させると周囲に粉雪を思わせる白い霊弾を降り注がせ、動きを止める。

 

そして……

 

「かいてんストーム」

 

『『『ごぁぁぁぉぁぉあ!?』』』

 

着地と同時に閉じた傘を回転し振り回すと、周囲のリザードマンを全て吹き飛ばしてしまった。

 

「……マジか」

 

目の前で繰り広げられたバイオレンスなメリーポピンズ染みたシュールな光景に、流石の晴人も驚きを通り越してフリーズする。

 

「ん? なに見てんのよ? 固まっている暇があるならさっさと前衛してくれない? か弱いワタシは後衛専門なんだから」

 

「か弱い……? エドナちゃんが……?」

 

「は? 何か文句でも? あとエドナちゃん言うな」

 

「いえ、なんでも……危ないっ!」

 

「え、きゃあ!?」

 

何かに気がついたウィザードは咄嗟にエドナを抱えその場を飛び退く。

 

直後、2人が立っていた場所に風の槍が数発着弾した。

 

「ッ!! エドナちゃん! 援護頼んだ!」

 

着地したウィザードはエドナを下ろすと術を放った憑魔に向けて駆け出す。

 

「だからエドナちゃん言うな! ったく、しょうがないわね……」

 

エドナは渋々といった風に詠唱を開始する。

 

「《漆海、集う、二十の明けに! グラヴィトリガー! 》」

 

『グぁぁぁぉぁぉあ!?』

 

エドナの詠唱が完了すると同時に青白く輝く球体状の重力場が発生し、周囲の憑魔達を吸い寄せ拘束する。

 

【チョーイイネ! キックストライク! サイコー! 】

 

その隙を逃さず、ウィザードは密集状態の憑魔目掛けて駆けながらウィザードリングをベルトにかざし、右足に強力な炎を纏いながらローンダートを決め空中に飛び上がる。

 

【ドリル! プリーズ! 】

 

「ハァァァァァァア!!」

 

『グギァァォァァァァァ!?』

 

空中で更にベルトに指をかざし、ドリルの魔法により回転を加えたウィザードは右足から発生する炎を螺旋状にして纏いながら憑魔の群れに突っ込み、まとめて浄化する。

 

だが憑魔は続々と現れ続ける。

 

「新しいお客様よ。キリキリ働きなさい」

 

「ふっ……お嬢様の仰せのままにってね!」

 

足元に魔法陣を展開させたエドナの盾となるべく、ウィザードは再び憑魔の群れに飛び込んだ。

 

___________________________________

 

一方、別方向ではスレイ、ミクリオ、ライラの三人が憑魔を迎撃していた。

 

「地竜連牙斬!」

 

スレイは襲い来る憑魔達の間を駆け抜けながら斬撃と蹴りを叩き込む。

 

だがその隙を突き数体の憑魔が背後から襲い掛かる。しかし……

 

「《氷刃断ち切れ! アイスシアーズ!》」

 

『グギァウ!?』

 

突如、地面に発生した二本の氷の刃が左右から憑魔を断ち切る様に交差し怯ませる。

 

そこに振り向いたスレイが剣を振るう。

 

「雅流炎舞!」

 

炎も纏った儀礼剣を叩き込み、憑魔を吹き飛ばしたスレイ。そんな彼に駆け寄ったミクリオはスレイの背中を守る様に背中合わせで敵に警戒しながら得物の長杖を構える。

 

「スレイ! 少しは背後に気をつけろ!」

 

「大丈夫だって! 背後はミクリオがなんとかしてくれるだろ?」

 

「簡単に言ってくれるよ……」

 

2人は軽口を叩きながら襲いくる憑魔に応戦する。

 

「三番叟!」

 

そこに何枚もの紙葉が投げられ、憑魔に接触すると同時に発火し怯ませる。

 

「スレイさん! ミクリオさん! 敵の数が多いです! この場はお二人の神衣で! 私が援護します!」

 

そう叫びながらライラは襲い来る憑魔に対して詠唱を開始する。

 

「《我が火は狂おしき緋弾! ブリッツフレイム!》」

 

ライラは天響術で自身の周囲に爆炎を発生させ、憑魔を吹き飛ばす。

 

「わかった! いくぞミクリオ!」

 

「了解!」

 

「「ルズローシヴ=レレイ(執行者ミクリオ)!」」

 

真名を叫び水の神衣を纏ったスレイはその手に持った弓を構える。

 

「「蒼穹の十二連!」」

 

『グギァァァァァア!?』

 

横構えの大弓に収束され放たれた霊力の矢は12本に拡散し、意思を持つかの様な歪曲した軌道を描き次々に憑魔を撃ち貫く。

 

「まだまだ来ますわ」

 

「数で勝負と言う訳か!」

 

「ここまで来て退く訳にはいかない! 行こう! 2人とも!」

 

尚も沸き続ける憑魔に三人は臆せず立ち向かう。

 

___________________________________

 

更に別方面ではアリーシャとロゼ、ザビーダとデゼルが憑魔へと応戦する。

 

「《踊れよ風刃! エアスラスト!》」

 

「《八つ裂け風刃! エアスラスト!》」

 

ザビーダ、デゼルの2人の詠唱。それにより発生したソーサー型の風の刃が憑魔達をあらゆる方向から切り裂いていく。

 

「魔神剣!」

 

「魔神剣・双牙!」

 

更にそこにアリーシャの槍とロゼの二本の短剣から放たれた衝撃波が直撃し、憑魔達の動きを鈍らせる。

 

牽制で足を止めた憑魔達、それを見たデゼルとザビーダは透かさず詠唱を開始する

 

「《噛み尽くせ! 腐れ狼!》」

 

「《急襲、猛牙、噛み付くよ!》」

 

「「《アベンジャーバイト!》」」

 

重なる2つの声。

 

それと共に同時に発生した2つの風の顎がその牙で敵を喰らう。

 

「ザビーダ様! 力をお借りします!」

 

「いくよデゼル! ルウィーユ=ユクム(濁りなき瞳、デゼル)!」

 

堪らず膝をつく憑魔にアリーシャとロゼは勝負を畳み掛けるべくザビーダとデゼルに叫ぶ。直後、2人の足元に魔法陣が展開されその姿を変える。ロゼは風の神衣を、アリーシャも風の魔力を纏う。

 

「よっしゃ! 一気にいくよアリーシャ!」

 

「あぁ、わかった!」

 

ロゼの言葉にアリーシャは相槌をうちつつも、初めて見る風の神衣に一瞬視線を向ける。

 

風の神衣を纏ったロゼは瞳を緑に染め、自身の周囲にも同色の大型ブレードが複数、まるで翼の様に展開されている。

 

「(これが風の神衣……ん? 気のせいだろうか……以前見たエドナ様との神衣の時よりもロゼから大きい力を……いや、今は目の前の敵に集中しなくては!)」

 

神衣を発動したロゼから感じた力にアリーシャは一瞬疑問を覚えるが、すぐに思考を切り替える。

 

「「翼よ切り刻め!」」

 

「「刃よ乱れ飛べ!」」

 

ロゼは複数のブレードを背後に翼を広げるように展開し、その刃に風の霊力を纏わせる。それに合わせアリーシャもまた槍に強力な風の刃を展開させ……

 

「「千の毒晶!」」

 

「「龍爪旋空破!」」

 

『ギィァァァォァォァ!?』

 

叫びと共に放たれた無数の風の刃が纏めて憑魔達を浄化する。

 

「よし! この調子で『グォオオオオオオ!!』……うわっ!?」

 

憑魔を浄化した事にガッツポーズし喜ぶ表情を浮かべるロゼ。だが、巨体の獣人型憑魔『虎武人』が叫びを上げながら襲い掛かり、その巨大な拳の一撃をロゼは驚きながらも回避する。

 

「あっぶな!? あんなん食らったらシャレにならないよ!?」

 

「ロゼ! 私が正面から打ち合う! 君は風の神衣のスピードで隙を突いてくれ!」

 

「りょーかい!」

 

アリーシャは纏う魔力をパワータイプの地属性へと切り替え、拳を振り上げた虎武人に正面から退かずに突きを繰り出す。

 

ガギィン!!

 

虎武人の籠手とアリーシャの槍の切っ先がぶつかり合い、激しい火花が散る。

 

「ぐぅっ!?」

 

力に優れる地属性の魔力を纏った状態でさえパワーは相手が優っているのか、アリーシャの口から苦しげな声が漏れる。

 

『グォオ!!』

 

虎武人は合間を置かずもう片方の腕を握りしめ、アリーシャを叩き潰すかの様に振り下ろす。

 

アリーシャの胴体を締め上げられる程巨大な拳がハンマーの様にアリーシャに迫るが……

 

「ハァッ!!」

 

アリーシャは拮抗していた槍に込めていた力を抜き、受け流す様に横にステップを踏み回避する。

 

「「《瞬天流身! ゲイルファントム!》」」

 

そこに虎武人から距離をとっていたロゼが詠唱を終え、放たれた真空波が虎武人に命中し……

 

『グァア!?』

 

次の瞬間、虎武人とロゼの立っていた場所が瞬時に入れ替わった。天響術『ゲイルファントム』は対象と自身の位置を瞬時に入れ替えるという特殊な術であり、ロゼはそれを利用したのだ。

 

虎武人は拳を床に振り下ろした状態でアリーシャとロゼの2人に背を向けた状態であるにも関わらず、すぐに事態を飲み込めず混乱した様に叫びをあげる。

 

「隙あり! いくよアリーシャ!」

 

「わかった!」

 

アリーシャは再び風の魔力を展開して風を纏い、ロゼはブレードを翼の様に広げ、浮遊した状態で一気に距離を詰める。

 

「烈駆槍!」

 

「「爆ぜぬ矛槍!」」

 

『グォァァァァァァア!?』

 

風で加速した槍による突きと脚に取り付けられた小型のブレードを突き出した蹴りが虎武人の背中に叩き込まれ、その巨体を吹き飛ばし壁に叩きつける。

 

「よし! このまま一気にあいつも浄化して……」

 

ロゼは勢いに乗って虎武人を浄化しようとするが……

 

『ガァァァァ!!』

 

「ちょっと!? 邪魔すんなっての!」

 

再び現れた憑魔の集団が2人に襲い掛かり追撃を阻んでしまう。

 

2人は止むを得ず憑魔への応戦を始めるが……

 

 

「成る程……素晴らしい力です……やはり欲しい……少しばかり手荒な手段になりますが致し方ありませんね」

 

離れた場所でスレイ達の戦いを何もせず観察する様に見ていたフォートンは口角を上げ笑みを浮かべると、突如その身体から強大な穢れが発生しフォートンの姿を覆い隠す。

 

「ッ! ……あれは!?」

 

戦いの中でいち早くその事に気がついたウィザード。そんな彼の視線の先で噴出した穢れが搔き消え……

 

「先ずは……姫から脱落して貰いましょうか」

 

そこに現れたのは最早人では無かった。

 

顔つきこそフォートンの名残りがあるものの、修道服は消え去り白く美しい肌は人とは異なる緑色に染まる。

艶やかな黒髪は形を変え、代わりに巨大な4匹の蛇が頭部から生え此方を威嚇する。

そして下半身もまた二本の足から巨大な蛇の尾へとその形を変化させた。

 

今の彼女を見て聖女と言える人間は1人もいないだろう。禍々しさを隠そうともせず狂気に染まった瞳が視線の先で憑魔達と戦うアリーシャを捉える。

 

「憑魔『メデューサ』!?」

 

変わり果てたフォートンの姿を見てライラが驚きの声をあげる。

 

「『メデューサ』……ね。厄介そうな名前だ」

 

『メデューサ』の名を聞いて晴人の脳裏には嘗て、幾度となく戦い苦しめられた同じ名を持つファントムの姿が過ぎる。

 

「さて……先ずは1人……」

 

姿を変えたメデューサは何を思ったのが両の目を閉じる。

 

「っ!? あれはフォートン枢機卿なのか!?」

 

憑魔との戦いで反応が遅れたアリーシャはメデューサへと姿を変えたフォートンに気が付き、視線を外さず警戒し槍を構えるが……

 

「なんだ……あれは?」

 

瞳を閉じたメデューサの前に、壁画を思わせる輝く閉じられた巨大な2つの瞳が現れる。

 

「ッ!? いけません!! アリーシャさん!! その瞳を見ては……」

 

ライラが警告するように叫び声をあげる。だが……

 

「もう遅いですよ」

 

そう言い、メデューサの瞳がゆっくりと開かれ、それと同時に目の前に現れた巨大な瞳も連動するように開かれていく。

 

アリーシャは咄嗟の事に反応できず開かれる瞳と視線がぶつかり……

 

【コネクト! プリーズ!】

 

「え!?」

 

突如、アリーシャの横に展開された魔法陣からウィザードの腕が現れ、アリーシャの服を掴むと魔法陣の中に引っ張り込む。

 

次の瞬間……

 

『ガァァァァ………!?』

 

アリーシャの付近にいた憑魔が完全に開かれた瞳に視線を合わせた瞬間、身体が突如として石化し、完全に動きを止めた。

 

「危機一髪だな……」

 

「は、ハルト!? 一体何が……!?」

 

離れた位置から空間を繋げるコネクトの魔法陣で咄嗟にアリーシャを引き寄せたウィザードはその光景に焦りを感じさせる声を漏らし、アリーシャは事態が飲み込めず戸惑いの声をあげる。

 

「憑魔メデューサは特殊な瞳術を使います! あの巨大な瞳は視線を合わせた者を石化させる呪いを持っているんですわ!」

 

ライラのその言葉に一同に緊張が奔る。

 

「ちょ、それって一発でアウトじゃんか!?」

 

「あの巨大な瞳を視界に入れずに戦うしかないのか!」

 

「簡単に言うがこの乱戦だぞ!? 例え、あの瞳に注意しても他の憑魔への警戒が甘くなる!」

 

ミクリオの言う通り、部屋にはまだ憑魔の群れと上位憑魔の虎武人も残っている。目を瞑るなど論外、メデューサの瞳に視線を合わせない様に注意を傾け過ぎれば逆に襲い来る憑魔達に致命傷を与えられかねない。

 

「さっさとメデューサを倒すべきなんでしょうけど、向こうもそれは理解しているみたいね」

 

そう言ったエドナの視線の先には、メデューサを護る様に展開された憑魔の一団が立ち塞がっている。

恐らくはフォートンの指示によるものだろう。

 

「このままじゃジリ貧だぜ……」

 

先程はギリギリでアリーシャを助ける事に成功したが、手の内がバレた以上、早々同じ手段など通用しないだろう。

 

何とかして石化の瞳を持つメデューサを先に倒すか、或いは瞳に警戒しながら先ずは周囲の憑魔を一掃しメデューサを討つのか……

 

そう考えたその時……

 

「俺が時間を稼ぐ。お前らはその隙に憑魔共を一掃しろ!」

 

「デゼル!?」

 

突如そう言い放ったデゼルが単独で駆け出し。

 

「ハァ!」

 

デゼルは空中を飛ぶデビルに向けペンデュラムをロープの様に放ち巻きつけると風の力を操り加速。

 

メデューサへの接近を阻もうとする憑魔達の頭上をまるでサーカスの空中ブランコの様に飛び越すとメデューサの正面に着地する。

 

「1人で正面から挑むとは……そんなに石になりたいのですか?」

 

呆れた声音でメデューサは再び石化の瞳を発動し、その瞳がデゼルに向けて開かれ、その視線が合わさりデゼルの身体が石に_____

 

 

 

 

 

「残念だったな」

 

____なる事は無かった。

 

「そんな馬鹿な!? 何故私の術が効かない!?」

 

驚愕するメデューサ。そんな彼女の事情など知らんと言わんばかりにデゼルは攻撃を仕掛ける。

 

嫉妬者(ジェラス)!」

 

デゼルは風を纏ったペンデュラムを頭上で振り回し、勢いのままに前方を薙ぎ払う様に振るう。

それにより発生した小型の竜巻がメデューサに襲いかかるが……

 

「《赤土目覚めよ! ロックランス!》」

》」

 

メデューサは手に持った杖を構え魔法陣を展開すると、目の前に岩の槍を生やし盾の様に展開し竜巻を防ぐ。

 

「チッ!」

 

動揺した隙を突いた攻撃を防がれ、デゼルの口から舌打ちが溢れる。

 

「石化が通じぬとは……何故?」

 

「答えてやる義理は無いな!!」

 

困惑するメデューサに、デゼルはペンデュラムを鞭の様に振るい追撃を仕掛けるが……

 

「ッ!?」

 

「まぁ、いいでしょう……先ずは厄介な貴方を排除するだけです」

 

振るわれた二本のペンデュラムをメデューサの頭部から生えた蛇がその牙で受け止め、メデューサは涼しい声でデゼルを見据える。

 

「ハッ! やってみな!」

 

その言葉を受けデゼルは力強く吠えた。

 

 

___________________________________

 

「デゼル!! アイツ1人で突っ込むなんて無茶して!」

 

1人でメデューサの注意を引き付けるべく敵陣の奥に飛び込んだデゼルに、ロゼは思わず声をあげる。

 

「だが、デゼル殿が時間を稼いでくれる今が好機だ! 今のうちに一気に憑魔を一掃するしかない!」

 

「だろうな! 出し惜しみは無しだ! 行くぜドラゴン!」

 

デゼルの行動に応える様に、晴人は左手の指輪を交換しベルトに翳す。

 

【フレイム! ドラゴン! ボー! ボーー! ボーボーボー!】

 

展開された赤い魔法陣から現れた燃え盛る龍の幻影を纏い、強化形態フレイムドラゴンスタイルへとウィザードは姿を変える。

 

だが、次の瞬間……

 

「なっ!?」

 

「うぉ!?」

 

ウィザードがフレイムドラゴンスタイルに姿を変えた瞬間、風属性の魔力を纏っていたアリーシャが強制的に炎属性へと切り替わり、融合状態が解除されたザビーダが弾き出されるように現れる。

 

「ザビーダ様!?」

 

「(チッ! なんだ!? 急に力のバランスが崩れて制御出来なくなりやがったぞ!?)」

 

融合が解除された事に内心で戸惑うザビーダだが、今は理由を考える時間は無いとすぐに思考を切り替える。

 

「しょうがねぇ! ハルト!アリーシャ! ロゼ!お前らは虎武人を浄化しろ! 残りはこっちで引き受ける!」

 

「わかった! そっちは頼むぜ!」

 

そう言ってザビーダは憑魔の群れに駆け出しながらスレイに叫ぶ。

 

「スレイ! 神衣をエドナちゃんに切り替えろ! 雑魚どもを纏めて片付ける!」

 

ザビーダのその言葉に、スレイは素早く反応し神衣を解除する。

 

「ミクリオ! ライラとザビーダと一緒に時間稼ぎを頼む!」

 

「任せてくれ! 」

 

「お任せを!」

 

そう言ってスレイから敵を引き剥がす為、3人はそれぞれ憑魔の群れに飛び込み注意を引き付ける。

 

「いくよエドナ! ハクディム=ユーバ(早咲きのエドナ)!」

 

「派手なのかますから少し時間がかかるわ。気合いを入れて守りなさいよ……」

 

スレイは土の神衣を展開させるとすぐに魔法陣を展開し、術の準備に取り掛かる。

 

「おらよ!何事も距離が大事ってな!」

 

ザビーダはペンデュラムを鞭の様に振るい、憑魔達を牽制しスレイへの接近を妨害する。

 

「スレイさんへは近づけさせませんわ!」

 

離れた場所ではライラが大量の紙葉を発火させ憑魔達の進行を防ぐ。

 

「そういう事だ!《白き水よ! 崩落せよ! スプラッシュ!》」

 

そしてミクリオもまた天響術による水流で憑魔の群れを押し流す。

 

そしてスレイの詠唱が完成する

 

「……準備完了! みんな退いて!」

 

スレイの掛け声と共に3人が動く。

 

「待ってましたってな! おらよ! 置き土産だ!」

 

「スレイさん! 頼みます!」

 

「きっちり決めろよ! スレイ!」

 

3人はそれぞれ自身に対応する属性の力を操り、憑魔の群れを風、火、水の力で作り上げた壁で囲い、動きを封じその場を離脱する。

 

「よし!いくよエドナ!」

 

「えぇ、これで終わりにしてあげるわ」

 

「「《晶石点睛! クリスタルタワー! 》」」

 

完成する詠唱。同時に三方向からザビーダ達に動きを封じられた憑魔達の足元から巨大な水晶の柱が恐ろしい勢いで隆起し、憑魔達を纏めて吹き飛ばし浄化した。

 

「よし! やったねエドナ!」

 

「ふん……この程度なら当然よ」

 

襲い来る憑魔達を一掃し神衣を解除したスレイはそう言って笑いかけ、それを見たエドナはいつもながらのマイペースなテンションで応じた。

 

一方でウィザード達は襲い来る虎武人へと立ち向かう。

 

『グォォォォォォォオ!!』

 

ウィザードへと突撃し虎武人の剛腕が繰り出される。

 

「ッ!!」

 

だがウィザードはその一撃を受け流す様に拳で弾き、懐に飛び込むと肘打ちを叩き込み、流れる様に後ろ蹴りを放ち後退させる。

 

「夢双香!」

 

そこに空中に飛び上がったロゼが霊力で作られた短剣を両の手で投げつける。

 

『グゥ!?』

 

虎武人は両手で顔を護る様にし、装備された籠手で投げられた短剣を弾くが……

 

「今だよアリーシャ!」

 

「あぁ! 助かる!霧氷裂火!」

 

頭上へのガードで隙だらけになった虎武人の右脚に、アリーシャは炎を纏った槍の連撃を叩き込む。

 

『ガァア!?』

 

その一撃に虎武人は堪らず地面に膝をつく。

 

「ハルト! 後は頼む!」

 

【コピー! プリーズ!】

 

「あぁ! こいつで決める!」

 

コピーリングにより複製したウィザードソードガンを両手に持ち、ウィザードはハンドーオーサーを起動する。

 

【【フレイム! スラッシュストライク! ボー! ボー! ボー!】】

 

指輪を翳し、両手に持ったウィザードソードガンの刀身が強力な炎を纏うと同時にウィザードが駆け出す。

 

『ガァァォア!!』

 

「ハァ!」

 

数体の憑魔がウィザードを妨害するべく立ち塞がるが、ウィザードは燃え上がる二刀で駆ける速度を緩める事なく憑魔達を切り裂いていく。

 

そして虎武人へと肉薄し、両手の剣を上段からX字に切り裂く様に振り下ろす。

 

「ハァァア!!」

 

『グォォォォォォォオ!?』

 

更にウィザードは剣を振り抜くと同時に前蹴りを放ち、敵を蹴った勢いで宙返りで後退する。

 

「フィナーレだ!」

 

着地と同時に再び二刀を返す様に下段から上段へX字に斬り上げ、放たれた炎の魔力の斬撃が虎武人に直撃する。

 

『グォォォォォォォォオォォ!?』

 

絶叫を上げ爆発する虎武人。爆炎が晴れた先には、浄化が完了したのか1匹の猫が倒れていた。

 

倒れていた猫はヨロヨロと立ち上がると、困惑した様に周囲を見回す。

 

「うっ……私は……」

 

「のわ!? 喋った!? ……って、もしかして天族?」

 

明らかに標準体重を越えた肥満気味の白猫から予想もつかない女性らしい綺麗な声が溢れ、ロゼは驚いた声をあげる。

 

「もしかして……加護天族のムルジム様ですか?」

 

「えぇ……そうだけど。貴女達は……?」

 

「悪いけど説明は後回しだ。すぐ終わらせるから隠れててくれよ猫さん」

 

「え、えぇ……わかったわ」

 

状況が完全に飲み込めていないもののムルジムは周囲の状況から今の自分に出来ることは無いと判断したのか、憑魔のいない部屋の隅へと退避する。

 

一方で、時間稼ぎの為メデューサと相対していたデゼルは口元に笑みを浮かべ言い放つ。

 

「残すはテメェと取り巻きだけだ。勝負は見えたな」

 

事実、デゼルの言う通り形勢はスレイ達へと傾き始めている。

 

フォートンに残された戦力は自身と自身への接近を防ぐ為に配置した護衛の為の憑魔のみ、その程度ならスレイ達の敵では無いし、周りからの攻撃が完全に無くなり、メデューサ1人の石化の瞳への対処に集中できる状況であれば脅威は激減する。

 

だが、メデューサは不敵に笑う。

 

「そうですね……では、その前に手を打ちましょうか」

 

「何……?」

 

直後、デゼルの周囲の地面が一斉に隆起し、岩の槍が檻の様にデゼルを取り囲み動きを封じる。

 

「ッ!!テメェ!?」

 

叫ぶデゼルにメデューサは嘲笑う様な笑みを浮かべ、視線を他所に向ける。

 

その先には、敵を一掃しメデューサへ向かって走ってくるスレイ達の姿があった。

 

「ッ!! 馬鹿野郎が止まれ!」

 

デゼルが叫ぶが既に遅い。メデューサは石化の瞳を展開し、その瞳は既に開き始めている。

 

当然、石化の瞳の対象はスレイ達だ。

 

今ならデゼル以外を纏めて石化し形勢を逆転させられる。

 

「(勝った! これで導師や魔法使いという、戦力が手に入る!そうすれば私は……)」

 

内心で勝利を確信するメデューサ。

 

そして石化の瞳が完全に開かれ………

 

 

 

 

 

 

【ライト! プリーズ!】

 

直後、薄暗い部屋の中を閃光弾に匹敵する強烈な光が照らした。

 

 

「ギャアァァァァァァァ!?」

 

両手で目を抑え叫び声をあげるメデューサ。瞳が完全に開かれる瞬間、発生した閃光を直視してしまい一時的に視力を奪われたのだ。

 

「な、なんなのですかコレは!?」

 

閃光に視力を奪われ混乱し叫ぶメデューサ。

 

そんなメデューサに閃光を発生させた張本人、ウィザードが静かに返答する。

 

「道を照らす光、前に進む為の魔法だ……! 行け! アリーシャ!ロゼ!」

 

ウィザードやスレイ達の援護射撃によりメデューサの護衛の憑魔は倒され、開かれた道をアリーシャとロゼが駆け抜ける。

 

「決めるよ! アリーシャ!」

 

「わかった!」

 

勝負を決するべく、ロゼとアリーシャの得物から強力な霊力が噴き出す。

 

「くっ……させるものか!」

 

尚もメデューサは悪足掻きに天響術を発動させようとするが……

 

「いや、テメェはもう終わりだ」

 

霊力を全開にし、岩の檻を突き破り風を纏ったデゼルがメデューサへと迫る。

 

「無惨に果てな! ブルタリティウィップ!」

 

「グゥゥァァァ!?」

 

両手のペンデュラムに強烈な風を纏わせ放たれる連続攻撃がメデューサに炸裂する。

 

「でかした! オマケその②! 」

 

「くだらねぇ事言ってないで終わらせろ! オマケその①!」

 

「言われなくても!そのつもり!」

 

その言葉と同時にロゼが一気に加速しメデューサへと追撃をかける。

 

「阿頼耶に果てよ! 嵐月流・翡翠!」

 

「ガァっ!?」

 

ロゼは凄まじいスピードで蹴りと斬撃を叩き込み、メデューサへの背後に回ると勢いをそのままにUターンし背後から両手の短剣を交差させて切り抜ける。

 

「あの剣技……嵐月流!? あの娘……」

 

ロゼの剣技を見たムルジムから驚きの声が溢れる。

 

「アリーシャ! 締めはヨロシク!」

 

「任せてくれ! ここで勝負を決める!」

 

ロゼの横を駆け抜けながらアリーシャは霊力を纏った槍の連撃をメデューサに叩き込む。

 

「この一瞬に全てを賭ける!」

 

「ぐぁ……」

 

連撃からの打ち上げで空中に浮き上がったメデューサにアリーシャは槍を構える。

 

「翔破! 裂光閃!」

 

「がぁぁぉぉぉぁぉぁ!?」

 

閃光の如く放たれた目にも留まらぬ連続突きが打ち上げられたメデューサに炸裂し大きく吹き飛ばす。

 

そして地面に落ちたメデューサはその姿を人間であるフォートンへと戻す。

 

それがこの戦いは決着だった。

 

___________________________________

 

「ふー……やったねアリーシャ!」

 

「ロゼや皆のお陰だよ。デゼル殿もご助力ありがとうございます」

 

「……ふん」

 

「あー! 照れてるよコイツ!」

 

「……照れてない」

 

「いーや照れてる!」

 

「照れてねぇよ!」

 

「どう見ても照れてる!」

 

「ちょ、二人とも……」

 

ギャーギャーと言い合い始める2人にアリーシャは戸惑いオロオロとする。

 

そこにウィザードやスレイ達も歩み寄ってくる。

 

「戦いが終わったばっかりなのに元気だな」

 

「ハルト……どうしよう?」

 

「……まぁ、喧嘩する程何とやらだ。放っておこう」

 

「わ、わかった」

 

そう言って一同は2人が落ち着くのを待つ。

 

「全く素直じゃないんだから……あ! そう言えば。なんでデゼルには石化の瞳が効かなかった訳?」

 

言い合いをしていたロゼは先程の戦闘でデゼルに石化が効かなかった事を思い出し質問する。

 

「あ? それは……」

 

いきなり話題を切り替えられ、デゼルは少しばかり調子を崩しながらも質問に答えようとするが……

 

 

 

 

「いや!いや! いやぁぁぁぁ!!」

 

突如、叫び声をあげたフォートンに一同は驚き会話を止め視線を向ける。

 

「な、なんだ!?」

 

「枢機卿? まさかまだ浄化し切れていなかったのか!?」

 

「いえ、穢れは収まっていました。確かに浄化できた筈です!」

 

そう言って一同はフォートンに駆け寄るが……

 

「いや……守らなきゃ……姉さん達との約束……私が……ローランスを……」

 

うつ伏せに倒れながら、フォートンは何かを求めるように腕を伸ばし何かを掴もうとしている。

 

だがフォートンの手は虚しく空を切るばかり。明らかに錯乱しているフォートンに一同は困惑する。

 

「姉さん達が帰って来る場所……私が守るの……約束……守れば……みんなで……もう一度一緒に……」

 

アリーシャ達など視界に映っていないとでも言うように、フォートンはブツブツと言葉を零し続ける。

 

そして……

 

「あぁ……ああああああぁぁ!?」

 

「なっ!?」

 

「嘘でしょ……」

 

完全に浄化した筈のフォートンの姿が少しずつメデューサの姿へと変わり始める。

 

まるで明滅する切れかけの電灯の様に、フォートンとメデューサの姿が何度も切り替わる。

 

「なんで!? 確かに浄化したのに!?」

 

「まさか……これがザビーダ様が言っていた……」

 

困惑し叫ぶロゼ。アリーシャはフォートンの状態を見てこの場に来る途中でザビーダ達が語った言葉を思い出す。

 

「穢れと心が強く結びついた人間は浄化しても再び憑魔になる……まさか……では枢機卿は……!」

 

ザビーダが語った最悪の展開が現実のものとなり、アリーシャは言葉を失う。

 

「いやぁぁぁぁ!! ……1人にしないで! ……何処にいるの姉さん!? ……姉さん達も私の前からいなくなるの!? ……捨てないで! 私を1人にしないで!」

 

フォートンはまるで迷子の子供の様に叫び声をあげる。

 

「いやぁ! 姉さん! どうして帰ってきてくれないの!? 私が約束を守れないから!? ……私頑張るから!ローランスを守るから! だからまた皆で一緒に暮らそうよ!?」

 

錯乱し子供の様に泣き噦るフォートン。その姿をスレイ達は悲しげに見つめる。

 

「やはり、この方が穢れを生んだ原因はいなくなったお姉様達と関係していたのですね……」

 

「家族ともう一度会いたい、家族との居場所を守りたい……それがフォートンがローランスを守ろうとした理由だったのか……」

 

国や民。多くの人間を巻き込んだフォートンの計画。その根底にあった彼女の願いはちっぽけでありふれた物だった。

 

だが誰もそれを嗤う事など出来ない。例え他者から見てちっぽけな願いだとしても、本人にとってそれは縋りつく事のできる唯一の希望だったのだ。

 

「だからフォートン枢機卿は……」

 

「でもこれじゃあ……」

 

「精神が呑まれかけていやがる。まさか本当に爆発寸前の状態だったとはな……」

 

「どうするの? このままじゃあ何度やってもフォートンは憑魔化するわよ」

 

その言葉にスレイの表情が険しくなる。拳を強く握りしめフォートンを見つめるスレイの瞳には有り有りと苦悩の色が浮かんでいた。

 

それを見守っていたザビーダは一瞬、憂い顔を浮かべるも何かを決心した様に腰にねじ込まれていたジークフリートに手を伸ばし……

 

 

 

 

 

 

「まだだぜザビーダ」

 

その腕をウィザードが掴み静止した。

 

「ハルト……何か手があるってのか……?」

 

その言葉にウィザードは小さく頷くと倒れ伏したフォートンの傍で片膝をつき、しゃがみこむと彼女が虚空へと伸ばす手を優しく握りしめる。

 

「あ……姉さ…ん?」

 

錯乱し穢れにより正気を失いつつあるフォートンは手を掴んだ相手がウィザードだと言う事を認識できず、自身の手を掴んだ相手が自分の姉だと思い込み嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

だが……

 

「違う……俺はアンタのお姉さんじゃない」

 

静かに、しかしハッキリと晴人はフォートンの言葉を否定する。

 

その言葉にフォートンの笑顔が崩れ去る。

 

「はは……ははは……嘘よ……だって姉さん達は帰ってくるって……もう一度一緒にみんなで暮らそうって……どうしてなの……? 私はただ……あの頃に戻りたいだけなのに……」

 

弱々しく項垂れたフォートンの瞳から一筋の涙が地面へと落ち____

 

 

 

 

 

 

「本当に取り戻したい物があるなら現在(いま)から目を背けるな」

 

その涙を掌で受け止めながら晴人はフォートンにそう告げた。

 

「……え?」

 

晴人の言葉に困惑した声を漏らし、フォートンが顔を上げる。

 

「あんたにとってお姉さん達との再会の約束は希望だったんだろ? 絶対に守りたい大切なものだったんだろ?」

 

優しく晴人はフォートンへと問いかける。

 

「そ、それは……」

 

「だったら目を逸らしちゃダメだ。辛いかもしれない……苦しいかもしれない……それでも、その希望(やくそく)が大切なら『過去ばっかり見て、現在(いま)を捨てるな』」

 

その言葉にフォートンの瞳に僅かな光が灯る。

 

「でも……私はもう……」

 

だがフォートンは理解していた。自らの心の内から湧き上がるドス黒い感情は、最早自分でも止める事は出来ないのだと……。

 

「大丈夫だ」

 

それでも尚、晴人は断言する。

 

「こんな所で終わらせやしない。約束する、俺が……最後の希望だ」

 

そう告げたウィザードはフォートンの指にウィザードリングをはめ、ベルトにかざす。

 

【エンゲージ! プリーズ!】

 

ベルトの音声と共に大きな赤い魔法陣が展開される。

 

「ハルト、この魔法は……?」

 

晴人の意図が掴めないアリーシャが問いかける。

 

「この魔法は精神世界……アンダーワールドへ行く為の魔法だ。本来は絶望してファントムが生まれそうになっているゲートを救う為の緊急用の魔法だよ」

 

「アンダーワールドってハルトがドラゴンを飼ってる場所の事だよね? けどそれが今の状況と何の関係してるんだ?」

 

「ザビーダ達が言ってただろ? 憑魔化が再発する人間は、心の根底にある想いと穢れが強く結びついて何度でも穢れを生み出してしまうって。アンダーワールドはその人間にとって大切な想いで形作られてるんだ」

 

その言葉にアリーシャが晴人の狙いに気がつく。

 

「そうか……精神世界であるアンダーワールドに突入して大切な想いと結びついた穢れを直接浄化すれば!」

 

「あぁ、フォートンの憑魔化の再発を止められるかもしれない」

 

そう言った晴人の言葉に天族達も驚いた表情を見せる。当然といえば当然だ。

永い年月を生きてきた彼女達にとっても、晴人が提案した作戦は完全に未知の領域なのだから。

 

「ほ、本当にその様な事が可能なのですか?」

 

「確証がある訳じゃない。けど、例えどんなにちっぽけな希望でも、そこに助けられる可能性があるのなら俺は賭けてみたい……それに____ 」

 

僅かに見えた希望を掴む為、彼は立ち上がる。

 

「『あり得ない事すんのが魔法使いだろ』」

 

さぁ、記憶のルーツに潜り込み希望を救い出せ。

 






後書き

王蛇の浅倉復活嬉しいなぁ!
所でビーストはいつから死人ライダー枠に?(小声)


次回は遂に今作初のアンダーワールド戦!

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