Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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久し振りの四分割パターン(震え声)

あれだよ、CM突入を再現しただけだよ(1年半ぶり2回目)

ではどうぞ


26話 諸刃の希望 後篇①

「すごい……これが古代アヴァロスト時代の遺跡……」

 

「あぁ……まさか溶岩が流れているとはね」

 

火の試練神殿イグレインへと足を踏み入れた一同。そのさきで彼らを待ち受けていたのは、洞窟内と感じさせない巨大な空間だった。

 

更に奥へと進むと、遺跡の中央部と思わしき吹き抜けを見渡せる場所にたどり着く。

 

そこから見下ろした先には溶岩がまるで池のように溜まっており、その中に石で作られた足場が点在していた。

 

その光景を見てスレイとミクリオは感嘆の声を漏らす。

 

「今まで見てきた遺跡も凄かったけど今回は更に凝った造りだな」

 

「流石は五大神の試練神殿といったところだね」

 

興味津々で遺跡を見渡す2人。その一方であまり遺跡に興味が無さそうな人物が一名……

 

「どうでもいいけど、あっつ! なんでこんな暑いわけ!?」

 

「溶岩があれだけ大量にあるんだ。そりゃあ暑いだろう」

 

「確かに……火の試練、というだけはありますね」

 

遺跡内に立ち込める熱気にロゼは文句を漏らす一方、アリーシャはこの遺跡が火の試練である事に納得する。

 

「……それよりも、いい加減話して貰ってもいいかしら? アンタどうやって教皇を助けるつもりなの?」

 

会話を遮りエドナは晴人に問いかける。他の面々もそれに口を挟む事は無く、この場にいる全員がエドナと同じ疑問を持っていた様だ。

 

それに対して、晴人は手をつき出しその手に握られた2つの指輪を一同に見せる。

 

「えっと……この指輪が関係してるのか?」

 

「あぁ、村長を救うには黒縁の方の指輪の魔法を使う必要がある」

 

その言葉を聞きアリーシャとザビーダが疑問を口にする。

 

「え? だがハルト、確かこの指輪はペンドラゴで逃げる時に使ったものではなかっただろうか? 」

 

「地面の中に潜った時の指輪だよな? 村長さんの解毒の役に立つとは思えねぇけど?」

 

普段晴人が使っている指輪とはデザインが異なっていた事もあり、2人はその指輪がペンドラゴで逃亡する時に使われたものだと憶えていた。

 

あの時は3人の危機を救った指輪ではあるが、その効果が今の状況を打開するものとして繋がらず一同は困惑する。

 

「あぁ、確かにこの指輪はあの時と同じものだ。効果の認識も間違っちゃいない。けど、それはこの指輪が持つ本来の効果じゃないんだ」

 

「本来の……? どういう意味でしょうか?」

 

「この指輪は借り物でね。本来の持ち主が使った時の効果は別物なんだよ」

 

「その指輪は君以外の魔法使いのものなのか?」

 

「あぁ、マヨネーズ……じゃなくて『古の魔法使い』のな。本来は毒を解毒する効果があるんだ。俺もそれで一度助けられた事があるから効果は保証する」

 

「『古の魔法使い』……ハルトと同じ魔法使い……」

 

「へぇ〜! まだ別の魔法使いがいるのか! いつか会ってみたいな!」

 

「フッ……スレイやミクリオとは気が合うかもな。アイツは遺跡巡りとか好きそうだし」

 

もしも戦友である彼がこの世界に来たならば間違いなく目を輝かせて遺跡巡りの冒険を始めるだろうなと想像し、晴人は笑みを浮かべる。

 

「マヨネーズの部分には敢えてツッコまんが、それなら何故この遺跡に足を運んだ? この遺跡は導師の為のものなんだろ? その指輪で教皇を助ければいいだけじゃないのか?」

 

「言ったろ? 解毒は本来の持ち主の力だってな。今の俺じゃあその力を使えないんだ」

 

「それが導師の試練神殿にくるのとどう関係してるのよ?」

 

「その理由がもう1つの指輪だ」

 

その言葉に一同は晴人が取り出したもう1つの指輪へと目を向ける。

 

「さっきからチカチカ光ってるその指輪? それがどうかしたの?」

 

「この指輪は俺の中の魔力を更に引き出す為の指輪だ。俺がウィザードに変身する時に使ってる4つの指輪を更に強化したものだとでも思ってくれればいい」

 

その言葉に一同は驚きの表情を浮かべる。

 

「更に魔力を引き出す? そんな指輪があったのか……」

 

「おいおい、人が悪いぜハルト。そんなもんがあるなら出し惜しみしなくてもよかっただろ」

 

「いや、使わないんじゃなくて使えなかったんだ」

 

そう言って晴人はもう片方の手で3つの指輪を取り出す。

 

「この四つの指輪はウィザードの各属性の力を更に引き出す為の指輪だ。だけど……」

 

「なんか黒ずんでるね。そっちの赤く点滅してる指輪とちがって他の3つは何も反応してないし」

 

「そうだ。どうやらこの大陸に来た時に指輪に使われてる魔宝石の力がこの大陸の『ナニカ』に共鳴して、俺の中の魔力ごと引き抜かれたみたいなんだ」

 

「共鳴……確かウィザードが使う指輪の属性は神衣と同じ地水火風の四属性……!! 待ってくれ! それって!?」

 

「あぁ、五大神の内の四属性を祀る試練神殿の事をティンダジェル遺跡で聞かされた時はまさかと思ったけど、どうやら当たりだったみたいだ。力を取り戻して引き出せる力が増えれば解毒の魔法の方も使える様になる筈だ」

 

「それじゃあ、この遺跡でハルトもパワーアップできるって事? いいじゃんソレ! スレイもハルトも強くなって村長さんも助けられる! 一石三鳥だよ!」

 

「だが、そう簡単には行かないだろう。何せここは『試練』を与える場所なんだからな。気を抜けば全滅しかねないんじゃないのか?」

 

晴人の言葉にロゼは喜ぶが、傍に立つデゼルは冷静に告げる。

 

「はぁ〜……まったくこの流れでなんでそう縁起でも無い事言っちゃうかなぁ……」

 

「事実を言ったまでだ」

 

「何さ、ビビってんの?」

 

「ハッ! 誰がビビるか」

 

軽口を叩き合う2人だがそこにライラが真剣な表情で口を開く。

 

「デゼルさんの言う通りですわ。この試練神殿は確かに導師に力を授ける場所ですが、その為に課せられる試練は命を掛けねばならない危険なものです。厳しい戦いが強いられる事になるでしょう」

 

「けど、村長さんを助けるには今はハルトの力を取り戻す事に賭けるしかない。それなら俺は試練を受けるよ」

 

「あぁ、元より守る為に命を賭けるのが騎士です。私にも迷いはありません」

 

ライラの言葉にスレイとアリーシャは躊躇いなく告げる。

 

「わかりました。では、簡単に試練神殿での注意点を説明します」

 

「注意点? 」

 

「はい。試練神殿とは導師と導師と契約した天族に試練を与え、それを乗り越えた者にのみ五大神の秘力を与えると言う者です」

 

「つまり、この遺跡の場合はスレイとライラが対象になるって事か?」

 

「その通りです。その為遺跡の奥に辿り着く為には導師と天族の力で道を切り開かねばなりません。それも含め『試練』なんです」

 

その言葉を受けて晴人はライラの言いたい事を察した

 

「成る程……つまり、俺の魔法で無理やり遺跡を突破していくのはダメって訳ね」

 

「正解です♪ 導師にも従士の存在がありますから戦闘を手伝って頂ける分には問題無いと思いますが、それ以上となると……」

 

「試練として成立しなくなるか……わかった。でしゃばり過ぎない様に注意するよ」

 

「はい、では参りましょう」

 

そうして会話を終え、一同は遺跡の奥へと足を進めた。

___________________________________

 

『ガァァォォァォ!?』

 

遺跡内に響き渡る獣の断末魔。

 

「よし! 浄化完了!」

 

試練神殿の調査を開始した一同は遺跡内部に居た獣や甲虫型の憑魔を浄化しながら奥へと進んでいた。

 

「しっかし驚いたな。試練神殿の中にも憑魔がいるのか」

 

ウィザードの変身を解除しながら晴人は浄化した獣達へと視線を向ける。そんな疑問にザビーダが答える。

 

「あぁ、そいつは恐らくこの試練神殿が憑魔を封じる役割を持ってるからだろうな」

 

「封じる?」

 

「あぁ、この神殿を任せられてる天族の力なんだろうが、近隣で生まれた憑魔をこの遺跡の中に引き寄せて閉じ込めてるんだろうさ。加護天族がいないにも関わらずゴドジンの穢れが弱かった一因はそれだと思うぜ? 憑魔を封じて人々を守りつつ、同時に神殿を訪れる導師への試練になってるんだろうさ」

 

「随分と手の込んだ話だな」

 

「同感だね。加えて溶岩の所為で熱が篭ってて暑苦しいったらねぇよ」

 

「そうだな。俺も溶岩に加えて男の半裸を見せられて余計に暑苦しい」

 

「ひっでぇ言い様だな……まぁ、俺がお前の立場でもそう言うだろうけどよ」

 

そんな小言を交わしながら進む2人だが、ザビーダは暑そうに表情を険しくしている女性陣へと視線を向けるとニヤリと笑う。

 

「いやぁ、けどなんだ。健康的な汗を流す女性ってのは中々悪くないよなぁ」

 

「お前はまたそういう事を……」

 

「んだよ……お前だって思うだろうが。流れる健康的な汗! 白い服の生地が濡れて薄っすらと浮かびあがる____ 」

 

「そのセリフ、ペンドラゴでも言ってなかったか? 」

 

「わかってねぇな! 雨に濡れた女と健康的な汗をかく女ってのは別ジャンルなんだよ!」

 

「別にわからなくていいっつの……」

 

またいつものしょーもない話が始まったと晴人は呆れた表情を浮かべる。

 

「なぁミクリオ。ザビーダの言ってる意味わかる?」

 

「スレイ、わかる必要は無い」

 

「そうですね。スレイさんはそのままでいてください」

 

「うわ……ひくわ」

 

「……アイツにはあまり近づかないようにしておけ」

 

意味がわからないと純粋に首を傾げるスレイ。一方のミクリオ、ライラ、ロゼ、デゼルは白い目でザビーダを見る。

 

「っ〜〜〜!?」

 

「何してんのよアンタ」

 

「す、すいませんエドナ様……その……ペンドラゴの噴水でずぶ濡れになった時の事を思い出してしまって」

 

一方、ザビーダの言葉でペンドラゴでの濡れスケ事件がフラッシュバックしたのか、アリーシャは顔を赤くして悶えており、そんな彼女にエドナは困惑する。そしてポロリと愚痴を零す。

 

「あぁ、あのムカつく噴水ね……嫌よね、いきなり人をずぶ濡れにして」

 

「え? エドナ様もあの噴水で?」

 

その言葉にエドナは一瞬『しまった!』と言うような表情を浮かべるも、すぐにいつものテンションの低そうな表情を取り繕い視線を逸らす。

 

「……べ、別に何も無いわよ」

 

嘘である。

 

実は彼女もペンドラゴを訪れた際に憤怒の噴水の洗礼を受けずぶ濡れにされていた。

いかんせん自称大人の淑女であるエドナはドジな印象を持たれたくなくて誤魔化すが、察したザビーダはニヤニヤ笑いながらエドナを見ている。

 

「ちょっとそこのチャラ男1号。何想像してんのよ。イヤラシイ事考えたら埋めるわよ」

 

そんな事を言うエドナだが……

 

 

「えぇ……濡れたのライラじゃないのかよ」

 

次の瞬間、真顔でそんな事をほざいたザビーダの首に傘がぶち込まれ、遺跡内に笑い声が響き渡った。

 

___________________________________

 

「アイツはホントなにやってんだかな……」

 

そんな中、オチを察していた晴人はザビーダをスルーし、辿り着いた部屋の中を調べていた。

 

先へ続く扉は固く閉ざされており部屋の中には複数の台座らしき物がある。

 

「謎解きタイムってか? まるでRPGゲームだな。初心者だから説明書が欲しいぜ……」

 

そう愚痴る晴人だが、一方のスレイとミクリオは足速に台座へと近付き調べ始める。

 

「この造り……これは台座じゃなくて燭台か?」

 

「あぁ、それも普通の燭台じゃない……天響術に反応する術式が施されてる」

 

「って事はコイツに火の天族が着火すれば扉が開くのか? また随分とベタな仕掛けだな」

 

「いや、それだけじゃ無いと思う」

 

そう言ってスレイが台座の下を指差す。

 

「台座の下の床に台座を囲むように線が引いてあるだろ?」

 

その言葉に晴人が床を見ると、スレイの言う通りオレンジの線が台座を囲む様に引かれている。

 

「あぁ、けどそれがどうかしたのか?」

 

「もっとよく見てって、気になる所がない?」

 

その言葉に晴人は台座の周りをぐるりと回りながら注意して線を観察する。

 

すると……

 

「あー、一箇所だけ台座に向かって線が引かれてるな。線は二本……待て……もしかして」

 

スレイの言葉に晴人は他の台座を調べ始める。

 

「やっぱりだ。4つある台座の下の線の本数が台座毎に違う。1から4本で台座の数とも一致してる……って事は!」

 

「ご明察。おそらくは燭台の点火順だ」

 

「そう言う事。ライラ! お願いできる?」

 

「お任せください♪」

 

そう言ってライラが天響術で燭台へと点火していくと……

 

ガゴンッ!!

 

何かの仕掛けが作動した様な音と共に閉ざされていた扉が開く。

 

「おぉ、これが遺跡と対応した天族の力が必要になるって意味か。やってみると面白いもんだな謎解きってのも」

 

「だよな! 謎解きは遺跡探索の楽しみの1つなんだよ!」

 

「僕も同感だよ。やっぱりこういうのが遺跡探索の醍醐味だ」

 

楽しそうに遺跡探索の楽しさを晴人に布教する遺跡好き2名。因みにザビーダは未だに笑い転げておりデゼルを呆れさせていたりする。

 

「楽しいかしら? 面倒なだけじゃない」

 

「あたしもエドナに同感かな〜」

 

「そうですか? 私は興味深いと思いますが……」

 

「そもそも面倒ではない試練というのも如何なものかと……」

 

一方の女性陣は割と冷静な反応である。

 

そんなこんなで仕掛けを解除した一同は開いた扉の先へと向かう。

 

「ありゃ? 行き止まりか?」

 

「いや、また燭台がある。恐らくは何かしらの仕掛けがある筈だ」

 

扉の先には道は途切れており、あるのは燭台が一つのみ。その先は入り口のフロア同様、下の溶岩が溜まるフロアが見下ろせる様になっているが、落ちれば一巻の終わりだ。

 

「では、点火しますね」

 

そう言ってライラが燭台を点火すると……

 

ドゴォッ!!

 

「うおっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

何かが作動する音に一同は驚くがスレイがその正体に気づく。

 

「あっ! 溶岩が!」

 

下のフロアが見下ろすと、今の燭台の点火による影響か溶岩が滝の様に流れ落ち始め溶岩の水位を上昇させている。

 

そして暫くし溶岩の滝が停止すると……

 

「なるほどね……こういう仕掛けか……」

 

溶岩が溜まる下のフロアを見下ろす晴人はある変化に気づく。

 

溶岩の水位上昇により溶岩に浮かぶ足場も同様に上昇し、下のフロアの途切れていた道を繋げているのだ。

 

「これで下の階から遺跡の奥に進める様になったって事でいいのか?」

 

「恐らくはそうだと思う。あれなら魔法や身体能力に任せた強引な突破方法じゃなくても進める筈だ」

 

「そうか、なら先を急ごう」

 

一同は元来た道を引き返すと下のフロアへと続く階段を降り、先ほどの仕掛けで道ができた部屋へと辿り着く。

 

一同が水位上昇によりできた足場を渡り溶岩の池の中心にある足場へと辿り着いたその時、頭上を見上げだロゼがある事に気が付いた。

 

「あ、あれ! 赤精鉱だ」

 

岩壁にびっしりと生えた巨大な赤精鉱。その巨大さはマシドラが採取していたものとは比較にならない程巨大であり、ライラ、エドナ、ザビーダの3人は何故か顔を険しくする。

 

「? どうしたいきなり神妙な表情で」

 

その事に気が付いた晴人が3人に問いかけると……

 

「赤精鉱が強力な火の天響術によって生まれるものである事はライラが説明したよな?」

 

「あぁ、そう言えば言ってたな。強力って言うとどれくらいのものなんだ?」

 

「少なくとも私程度の力では赤精鉱は生まれません」

 

そのライラの言葉に一同に緊張が奔る。特にスレイ達からすればその言葉は驚愕に値するものだった。

 

スレイ達が知る中で、ライラは火を扱う天族では間違い無く上位に来るであろう力の持ち主だったからだ。

 

そのライラが自分の力では赤精鉱は生まれないと言うのだ。

 

ましてや、岩壁にびっしりと生えた赤精鉱の巨大さを考えればそれを産むのに必要になる力は……

 

「あれほど巨大な赤精鉱は火山の噴火と同等の力が必要とされるでしょう。この遺跡はそれ程の存在が祀られてると言う事です」

 

その言葉にアリーシャとロゼは無意識に唾をゴクリの飲み込んだ。

 

これから先に待ち受ける物の強大さの片鱗を見せつけられ一同に緊張が奔る。

 

「けど、やる事は変わらない」

 

「同感だ。此処まで来て引くは無いさ」

 

スレイと晴人が迷い無くそう言い切る。その言葉を受け一同は頷くと覚悟を決める。

 

ブォン……

 

すると、まるで一同の意思に反応する様に足場の中心部に描かれた円形の紋様が輝き始め、中心部の足場そのものがくり抜かれる様に下降し始める。

 

「な、何これ!?」

 

「ど、どうやらさらに下の階層に向かっている様だが……」

 

「まるでエレベーターだな……数千年前の遺跡にこんな仕掛けもあるのか……」

 

そして足場が下降を止めると、その先には扉が一同を待ち構える様に立ちはだかっていた。

 

「おそらくはこれが遺跡の最深部です……」

 

「はてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

「よし! 行こう!」

 

そう言って扉を開き、一同は部屋の中へと足を踏み入れる。

 

扉を開けた先は降り階段となっており、そこを降ると先ほどの部屋と同じ様に溶岩の池の上に造られた歯車状の巨大な石造りの足場へと一本道が続いている。

 

「五大神ムスヒの紋章がありやがる。どうやらここが最深部みてぇだな」

 

「ムスヒ……伝承では世界の始まりと終わりに現れる五大神の1人だね」

 

「うわ……いかにも何か出そうな雰囲気……」

 

嫌な予感を覚えたロゼがそんな言葉を漏らすが、一同はその足場へ向け歩き出す。

 

そして歯車型の足場に辿り着く寸前、スレイが道の端に置かれた石版の存在に気が付き足を止めた。

 

「あれ? これって……」

 

「ん? どうかしたのか?」

 

足を止め石版を見るスレイに晴人が問いかける。

 

「この石版……『古代アヴァロスト言語』で書かれてる」

 

その言葉に反応しミクリオも石版を見る。

 

「本当だ……しかもこれは暗号化されているものだね」

 

その言葉に遺跡関連に弱い晴人とロゼが首を傾げる。

 

「えぇっと……なにそれ?」

 

「古代語の一つだよ。『アヴァロストの調律時代』に使われてた言語なんだ」

 

「あれ? 古代語って従士契約の時につけてくれた『真名』ってやつに使ってたのだよね? 神衣使うときにも言ってるやつ」

 

「違うよ、あれは『メリオダス言語』。アヴァロストの調律時代の後に生まれた古代語だ」

 

「よくわからないんだけど、その『古代アヴァロスト言語』ってのは何か違うのか?」

 

「解読がかなり厄介なんだよ。単語の解釈や文章の繋げ方が特殊で一歩間違えると全然違う文章が出来上がってしまうんだ。ジイジが言うには『書いた人物の考えに共感する直感的なセンスが重要』らしい。正直僕には合わなかったよ」

 

晴人の疑問にミクリオが返答するが、晴人はその説明に引っかかりを覚える。

 

「『僕には?』って事は……」

 

そう言って晴人はスレイへと視線を向ける。

 

「…………」

 

そこには無言で集中し石版を読み始めるスレイの姿があった。

 

「そう。スレイはどうやら向いてたらしい」

 

そう言って苦笑するミクリオだが……

 

 

『ガァァァァァァァア!!!』

 

『!?』

 

突如響き渡る咆哮。

 

そして次の瞬間……

 

 

バジィッ!!

 

『なっ!?』

 

突如発生した謎の力に晴人、スレイ、ライラを除く面々が吹き飛ばされた。

 

「なっ!? これは!?」

 

急ぎ立ち直り晴人達の元へ走り寄ろうとするアリーシャだが、一本道の通路には結界らしき透明な膜が発生し一同を完全に分断していた。

 

そして……

 

「これって……ぐうっ!?」

 

突然の展開に驚くスレイだが突如、苦しむ様に地面に膝をつく。

 

「スレイさん!? これはまさか『穢れの領域』!?」

 

スレイの不調にライラはヘルダルフとの戦いを思い出し、穢れの領域が発生したという結論に辿り着く。

 

「おいおい……また厄介そうなのが来たな」

 

一方の晴人は石造りの足場の上に現れた存在に警戒を露わにする。

 

先ほどの咆哮の正体。

 

それは、ティンダジェル遺跡で戦ったドラゴニュートに似通った姿をしており、龍と人が融合した様な姿に巨大な剣と盾を持ち、体のいたる所が炎の様に赤く輝いている。

 

その威圧感はサインドが憑魔化したドラゴニュートを上回り、晴人の経験からも強敵である事を窺わせるほどのものだ。

 

「憑魔『サラマンダー』……炎を操るドラゴンの幼体の一つです」

 

ライラの口から目の前の敵の名が告げられる。

 

『ガァァァァァァァア!!』

 

もう一度咆哮を上げ、サラマンダーの眼光が三人を捉える。

 

「スレイ、体の調子はどうなってる?」

 

「ヘルダルフの時ほど悪くは無いし、サラマンダーは辛うじて見えるけど……」

 

立っていることも辛そうな表情のスレイに晴人はすぐさま決断する。

 

「なら俺がやる。ライラはスレイを守ってやってくれ!」

 

「お一人で戦うつもりですか!? 危険です! 相手は……」

 

「わかってる! でもやるしかないだろ!」

 

嘗て戦ったドラゴニュートも三人がかりで漸く浄化できたのだ。それを上回るサラマンダーに対して、1人で立ち向かうのがどう言う事かは晴人自身も理解している。

 

それでも全員で無事に切り抜けるにはやるしかない。

 

『シャァアッッ!!』

 

剣を構え突っ込んでくるサラマンダーに応じる様に晴人が指輪を構える。

 

「変身!」

 

【フレイム! プリーズ! ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】

 

魔法陣を通過しウィザードへと姿を変えた晴人はサラマンダーへ向け駆け出し、両者は歯車状の巨大な足場の上で激突する。

 

『シャァア!』

 

「はっ!」

 

【コネクト! プリーズ!】

 

サラマンダーから放たれる巨大な燃える大剣の横一閃。それを跳躍しサラマンダーの頭上を飛び越える形で回避しながらウィザーソードガンをガンモードで取り出し、着地と同時に連射する。

 

ダダダダダダダダンッ!

 

ばら撒く様に連射された銃弾は様々な角度からサラマンダーに襲いかかるが……

 

ガキキキキン!

 

「……おいおいマジかよ」

 

その弾丸をサラマンダーは全て手に持った大剣を振るい叩き落とす。憑魔でありながら高度な技量を見せたサラマンダーにウィザードは驚きの声を漏らした。

 

『グルゥ……』

 

一方のサラマンダーもウィザードの攻撃に対して目下の敵と判断したのか、スレイ達から視線を外しウィザードへ敵意を向ける。

 

「ハァッ!」

 

『グオオ!』

 

ウィザードはウィザーソードガンをソードモードへと切り替え一気に肉薄し斬りかかる。対してサラマンダーも大剣を振るい両者の刃がぶつかり。

 

 

ガギィンッ!!

 

「ぐっ!?」

 

飛び散る火花。

 

同時にウィザードから苦悶の声が漏れパワーで押し負けた得物が弾かれ体勢を崩してしまう。

 

『グオオッッ!!』

 

「チィッ!」

 

すかさず放たれた突き。ウィザードはそれを咄嗟に大剣の腹を蹴り上げ無理矢理軌道を逸らし回避する。

 

『シャァア!』

 

「ぐあっ!?」

 

しかしサラマンダーは左手に持った盾を殴りつける様に叩きつけ、直撃を貰ったウィザードは後方に吹き飛ぶ。

 

【フレイム! スラッシュストライク! ヒー! ヒー! 】

 

だがウィザードは吹き飛びながらウィザーソードガンのハンドオーサーを起動し指輪を翳す。

 

「ハァッ!」

 

体勢を立て直しながら着地すると同時にその場で炎を纏った刀身を縦に一閃、続いて流れる様に回転し横に一閃し作られた十字の炎の斬撃がサラマンダーに向けて放たれるが……

 

『グオオォォォォ!!!』

 

「なっ!?」

 

サラマンダーは燃え盛る大剣の一振りで放たれた炎の斬撃をあっさりと打ち払う。

 

「だったらコイツだ!」

 

【ウォーター! プリーズ ! スイ〜スイ〜スイスイ〜!】

 

ウォータースタイルへと姿を変え、ウィザードは再びサラマンダーと切り結ぶ。

 

受け流す様にサラマンダーの強力な斬撃と数合打ち合ったウィザードは距離をとり、再びウィザーソードガンをガンモードに切り替える。

 

【ウォーター! シューティングストライク! スイ! スイ!スイ!】

 

『ウォォォア!!』

 

そして放たれる水の弾丸。

 

それに対してサラマンダーは口から炎のブレスを放ち迎撃されてしまう。

 

【リキッド! プリーズ!】

 

だが、ウィザードは蒸発した水によって発生した水蒸気により視界が狭まったサラマンダーの隙を突き、自身を液体化させる魔法を発動する。

 

『グォオ!?』

 

液体化しサラマンダーにまとわりつくウィザード。それに対してサラマンダーは大剣を振るうが液体化したウィザードには通じず全てすり抜けてしまう。

 

「ハァッ!」

 

『グォオ!?』

 

液体化でサラマンダーの攻撃を無効化しつつ攻撃が失敗した隙を突いてウィザードは攻撃を仕掛けていく。

 

だが……

 

『ウォォォォォ!!!』

 

「ぐっ!? がぁっ!?」

 

突如、サラマンダーの足元に赤い魔法陣が出現したと思った矢先、強力な熱波がサラマンダーを中心に放たれ、液体化したウィザードを吹き飛ばす。

 

「ぐ!? コイツ、やっぱり……」

 

剣の技術といい今の判断力といい、今まで戦ってきたヘルダルフ以外の憑魔とは明らかに違う対応能力を見せるサラマンダーに、ウィザードは違和感を覚える。

 

だが、サラマンダーはこちらの都合など知った事かとでも言う様に、吹き飛ばされ片膝をつくウィザードへ襲いかかる。

 

「くっ!」

 

【ランド! プリーズ! ドッドッドッドドドン! ドン! ドンドンドン!】

 

『ウォォォ!!』

 

ガギィィンッッ!!!

 

ウィザードはパワーに優れるランドスタイルに切り替え、大上段から振り下ろされた大剣の一撃をウィザーソードガンで間一髪受け止める。

 

「ぐぅっ!?」

 

だが、ランドスタイルに切り替えて尚、パワーでは相手が勝っているのかジリジリと鍔迫り合いをする剣が押され始める。

 

『グォオオオオ!!』

 

「しまっ!? がぁっ!?」

 

拮抗が崩れ、ウィザードのアーマーにサラマンダーによる強烈な一閃が叩き込まれる。

 

アーマーから火花を散らし吹き飛ぶウィザード。

 

更にサラマンダーは追撃を仕掛ける。

 

「っ……!!」

 

【ディフェンド! プリーズ!】

 

追撃を防ぐ為に咄嗟に石柱によるランドスタイルの防御魔法を発動するウィザード。

 

だが……

 

『シャァァァァア!』

 

ドガァァッ!!!

 

「ぐあっ??」

 

大剣は石柱を容易く砕き諸共ウィザードを吹き飛ばす。

 

「(強い! ヘルダルフを除けばこっちの世界で戦ってきた憑魔の中でも間違いなく最強だ!)」

 

ジリジリと押され始め、立ち上がりながらもウィザードは敵の強さを肌に感じていた。

 

___________________________________

 

「ハルトっ!?」

 

サラマンダーに追い詰めらていくウィザードを見て、アリーシャの口から悲痛な叫びが放たれる。

 

だが、今すぐにで助けに行きたいという彼女の想いとは裏腹に結界は強固であり、一同の突破を許さない。

 

「ヤベェな……流石にあれは1人じゃ厳しいぜ」

 

「くそっ! 結界はどうにかならないのか!?」

 

「無理よ。この結界かなり手の込んだ代物よ。憑魔が即席で作ったとは思えない程にね」

 

「ならどうすんのさ!?」

 

「チッ、試練どころか憑魔の相手とはな……」

 

結界の外から見守る事しかできない一同の表情は険しい。

 

「………もしかしたら」

 

そんな中、スレイは1人、何かに気が付いた様に声を漏らす。

 

「……ライラ頼みがあるんだ。聞いてくれる?」

 

「えっ? なんでしょうかスレイさん」

 

そして……

 

「オレの事はいいからウィザードを助けに行って欲しいんだ」

 

迷わずそう告げたスレイにライラは驚き目を見開く。

 

「スレイさん!? ですが今の貴方から離れるのは……」

 

今はウィザードが敵の注意を引いてくれているものの、万が一にもサラマンダーの狙いがスレイに移れば今のスレイにはどうする事もできない。それはあまりにもリスクの高い選択だ。

 

「けど、このままじゃウィザードが危ない。あのサラマンダーを倒すのは1人じゃ無理だ。俺も神衣を使える様にならないと」

 

「ですが、憑魔の領域をどうやって……」

 

その言葉を受けスレイは先程の石版の前に立つ。

 

「多分、この石版にヒントがある筈だ」

 

その言葉にその場にいる全員が困惑する。

 

「その石版にあの憑魔への対処方が?! どうして!?」

 

突然現れた憑魔を攻略するヒントなんてものが何故遺跡の石版に書かれていると思うのか理解できず、戸惑いの声を上げるロゼ。

 

だが、スレイは時間が無いと言うかのようにライラへと視線を向ける。

 

「お願いだライラ……」

 

真剣な表情でライラを見据えるスレイ。

彼の迷いの無いその瞳にライラは静かに頷く。

 

「わかりましたわ……ですが、くれぐれも無理はなさらないでください」

 

そう言ってライラはサラマンダーと交戦するウィザードへと駆け出す。

 

それを見送ったスレイはすぐさま石版へと視線を戻した。

 

 

___________________________________

 

ガギィン!

 

ぶつかり合う刃。

 

サラマンダーによる猛攻をギリギリで捌くウィザードだが、根本的なスペックの差は埋められずジリジリと押され始めいた。

 

「ッ! がぁっ!?」

 

再び叩きつけられた大剣の一撃に、ウィザードは巨大な足場の端まで吹き飛ばされる。

 

「(マズイ!?)」

 

足場の下は溶岩。つまり足場からの落下は死を意味する。

 

ウィザードは吹き飛びながらもハリケーンスタイルの指輪を取り出そうとするが……

 

ドンッ!

 

「うお!? ってなんだこれ?」

 

吹き飛んだウィザードは何かにぶつかり落下を免れる。

 

何事かと振り向くとそこには巨大な石碑があり、それが偶然吹き飛んだウィザードの落下を防いだのだ。

 

「(石碑? なんでこんなもんが?)」

 

ウィザードが周囲を見回すと、歯車状の巨大な足場にはまるでボクシングリングのコーナーの様に4つの石碑が配置されていた。

 

なんだコレはと疑問を覚える晴人だが、サラマンダーはそんな事知った事では無いと言わんばかりに追撃してくるが……

 

「我が火は灼火! フォトンブレイズ!」

 

『グォオ!?』

 

突如、サラマンダーの進行方向が爆発し爆風がサラマンダーの足を止める。

 

「っ! ライラか!?」

 

火の天響術で牽制を放った人物。ライラは手に持った紙葉を構え詠唱を開始する。

 

「秘めし力、解きましょう! アスティオン!」

 

その詠唱と共にウィザードの体が回復術の赤い光に包まれる。

 

『グォォォォォォ!!』

 

だがサラマンダーはその隙を逃さずライラに肉薄し大剣を叩きつけようとする。

 

「させるかよ!」

 

【バインド! プリーズ!】

 

『グォオ!?』

 

ライラを守る様にウィザードは魔法を発動させ、サラマンダーの周囲に発生した黄色い魔法陣から岩の鎖が蛇の様に巻きつきサラマンダーの動きを拘束する。それでもなおサラマンダーは力を込め岩の鎖は引きちぎれるが……

 

「竜神楽!」

 

『グゥウ!?』

 

すかさずライラは手に持った紙葉をサラマンダーへと向け投げ散らし、そこから発生した炎の塊がサラマンダーを襲う。

 

「はぁっ! たぁっ!」

 

『グォアッ!?』

 

更に次の瞬間、地面に発生した黄色い魔法陣から飛び出したウィザードの切り上げを見舞い、そのまま流れる様に回し蹴りを叩き込みサラマンダーを後退させる。

 

「ライラ、どうして来た!スレイは!?」

 

スレイを守っているはずのライラが現れた事に驚く晴人だが、ライラは冷静に答える。

 

「そのスレイさんの頼みです」

 

「スレイの?」

 

「はい。どうやらスレイさんはこの状況を打開する方法に思い当たりがある様です」

 

「だからって今のアイツの側をはなれるのは……」

 

「わかっています。ですが、スレイさんは1人だけ安全な場所にいるのでは無く皆で戦いたいんです。彼にとって仲間とはそういうものなんです。勿論そこには貴方も含まれています」

 

「ッ! ……そっか、悪いな」

 

「いえ、私もどこか貴方に壁を作ってしまっていましたから……ですが、今は!」

 

「あぁ、わかってる! スレイに何か考えがあるのなら時間を稼げばいいんだろ?」

 

「はい! 微力ではありますがご助力いたします!」

 

そう言い放ちライラは周囲に紙葉を展開し、自らも両手に持った葉紙を構える。

 

『グォォォォォォオ!!』

 

対してサラマンダーは咆哮を上げ、再び地面に赤い魔法陣を浮かび上がらせる。

 

「!! 気をつけてください!バーンストライクが来ます!」

 

「ッ!!」

 

嘗てヴァーグラン森林でアリーシャが使用した天響術を思い出し、ウィザードは素早く指輪を交換する。

 

【ハリケーン! プリーズ! フー! フー! フーフーフーフー!】

 

「ちょいと失礼!」

 

「え? きゃあ!?」

 

ハリケーンスタイルに姿を変え片手をライラの腰に回し傍に抱く。

 

驚いた声を漏らすライラだが、ウィザードは構わず風を纏い一気にその場を離脱する。

 

直後サラマンダーから放たれた強力な3発の灼火弾が着弾する。

 

「お返しだ!」

 

「はい! 花鳥、招来!」

 

サラマンダーの頭上を旋回しながらウィザードは銃を、ライラは紙葉を飛行機状にして放つ。

 

放たれた紙葉は火の鳥へと姿を変え弾丸と共にサラマンダーへと着弾していく。

 

『グゥゥゥ……』

 

だが、手に持った大楯で攻撃を防ぐサラマンダーにはダメージを与えられない。

 

「隙を作らなきゃ効き目は薄いか……」

 

「任せてください! 拍子舞!」

 

ライラの言葉と共に大量の紙葉が放射状に放たれて火を放ち、炎の壁が生み出される。

 

『ッ!?』

 

炎の壁で空中のウィザード達を見失ったサラマンダーは動揺を見せる。

 

「ハァッ!!」

 

そこに炎の壁を突破してきたウィザードが通り過ぎ様に切り抜けていく。

 

ガギィィ!!

 

だがそれにすら対応し、サラマンダーは盾で斬撃を受け流す。

 

攻撃を受け流されたウィザードは空中へと飛び上がり、サラマンダーを見下ろす。

 

『ッ!?』

 

そこでサラマンダーは気が付いた。先程までウィザードの傍に抱えられていたライラの姿が無いことに……

 

「油断しましたわね!」

 

だが遅い。ウィザードが囮になり先ほどの炎の壁を利用してサラマンダーの背後を取ったライラから強力な力が放たれる。

 

「舞うは灼宴! 焔舞煉撃破!」

 

『グォォォォォォ!?』

 

舞う様に大量の紙葉をばら撒き、それが次々と強力な炎となり爆発していく。

 

「今です! ハルトさん!」

 

連鎖爆発に飲み込まれていくサラマンダーから距離を取りライラが叫ぶ。

 

「りょーかい! お任せあれってな!」

 

【チョーイイネ! キックストライク! サイコー!】

 

空中で風を纏い宙返りを決めウィザードは、一直線に連鎖爆発に飲まれるサラマンダーへと突撃する。

 

「ハァァァッ!」

 

そして加速をそのままに風を纏ったウィザードのキック、ストライクウィザードがサラマンダーに叩き込まれた。

 

『グォォォォォォオオおお!?』

 

吹き飛ぶサラマンダー。そして風により炎は勢いを増し、その大炎上にサラマンダーは飲み込まれていく。

 

「よし!これで!」

 

「手応えありです!」

 

渾身の一撃に2人は手応えを感じるが……

 

『ウオオオオオオオオオ!!!!』

 

その確信は続く咆哮に掻き消された。

 

「なっ!?」

 

「そんな!?」

 

2人の渾身の攻撃を受けてなおサラマンダーは悠々と立っていた。

 

『シャァアッ!!』

 

「来ますわ!」

 

「チィッ!」

 

再びサラマンダーは大剣を構え、2人もそれに対しようとする。

 

だが次の瞬間……

 

 

バギィィィンッ!!

 

「ッ!? なんだ!?」

 

「これは穢れの領域が!!」

 

ガラスが割れる様な大音響が響き渡り、先ほどまで発生していた穢れの領域が突如解除される。

 

「これはまさか……」

 

晴人が言葉を漏らした次の瞬間……

 

「ハァ……ハァ……なんとか……間に合った……みたいだな」

 

「スレイ!」

 

「スレイさん!」

 

声の聞こえた方へと向くとそこには4つの石碑の一つに寄りかかる様に手をかざすスレイの姿があった。

 

不可が掛かる領域の中で無理をして動いたからか息は荒いが、その表情には薄っすらと笑みを浮かべ瞳には強い意思が込められている。

 

そして……

 

「これが試練……って事でいいのかな……ええっと……サラマンダーさん?」

 

そう言ってスレイは唐突にサラマンダーに話しかける。

 

「はい? それってどういう……」

 

困惑するウィザードだが、ライラは何かに気が付いた様にハッとした表情を浮かべる。

 

「まさか、この憑魔……いえ、このお方は……!!」

 

そう言った次の瞬間……

 

「ほう、私の正体を見抜くか……流石だな導師よ」

 

「喋った!? マジか!?」

 

「やはり、エクセオ様でしたか!」

 

突如話し始めたサラマンダーにウィザードは驚きの声をあげる一方、ライラはサラマンダーの正体に心当たりがあるのかエクセオという名を口にする。

 

「その通りだ。久しいなライラ」

 

その言葉に警戒を解きウィザードは変身を解除する。

 

「導師スレイ、火の天族ライラ……そして魔法使いソーマハルト。私は五大神ムスヒの試練神殿を任された護法天族エクセオだ」

 

「ええっと……つまりどういう事だ?」

 

展開についていけない晴人は困惑する。

 

「つまり、さっきまでのサラマンダーとの戦いはエクセオさんが俺たちを試す為に憑魔のフリをしてたって事だよ」

 

「はぁ? それじゃあさっきまでのが導師の試練だったっていうのか?」

 

「正確には試練の一つ。『心の試練』だ」

 

晴人の疑問に今度はエクセオが答える。

 

「試練神殿で導師に与えられる試練は二つ……実力を試す『力の試練』と精神力を試す『心の試練』だ」

 

「ええっと……つまりスレイに力を使えない様にした上で、そんな状態でも諦めないでいられるかを試したのか?」

 

「そうだ……導師とは契約と共に普通の人間では持ち得ない強力な力を手にする……だが、本当の強さというものが試されるのは自身が苦境に立たされた時だ。故に、私は擬似的に穢れの領域を再現し導師スレイの力を封じたのだ」

 

「それで、期待通りアンタの目論見を見破った訳か……」

 

「その通りだ。導師スレイよ。よくぞ試練に気が付いたな」

 

その言葉にスレイは照れ臭そうに頬を掻く。

 

「気がつけたのは皆のお陰だよ。エドナが結界を見て『即席でつくれるものじゃない』って言った時、引っかかったんだ。結界が張られたのもサラマンダーが現れたのも何もかもがタイミングが良すぎるって……だとしたら今の状況こそが導師の試練なんじゃないかと思ったんだ」

 

「しかし、よくぞあの短時間で石碑の文字を解読したものだな」

 

「『邪なる意に抗さんと欲する善なる者よ。四方の石碑に汝が手をかざせ。我、ムスヒの破邪の炎を汝が意に添えん』……あの石版には導師が4つの石碑に手をかざす事で領域を破る事ができるっていうヒントが書かれていたんですね」

 

「ほお、そこまで正確に読み解いたか」

 

「ライラやハルトが戦ってくれたから落ち着いて挑めたんです。俺1人じゃあどうにもできなかったと思います」

 

その言葉にエクセオは満足気に声を零す。

 

「仲間を信じ思考を止めず諦めぬ心……見事だ。心の試練合格としよう導師スレイ」

 

その言葉にスレイは明るく笑みを浮かべ喜びを露わにする。

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

「ふっ……やったなスレイ」

 

「あぁ! ハルトもありがとう!」

 

そう言って笑い合う2人だが……

 

「気を抜くな。まだ力の試練が残っている……」

 

「あっ、そうだった」

 

「力の試練……って事は……」

 

「察しているようだな。そう、私を打ち倒してみせろ。それこそが力の試練だ。言っておくが手加減はしない。気を抜けば最悪死ぬ事になるぞ」

 

「「ッ!!」」

 

その言葉に場の空気が再び引き締まるが……

 

「エクセオ様……その前に一つお伺いしたい事があります」

 

ライラの言葉がそれを遮った。

 

「ライラか……何が聞きたい?」

 

「先ほどの試練、何故ハルトさんを巻き込んだのかという事です」

 

「…………」

 

ライラの言葉にエクセオは押し黙る。

 

「ええっと……ライラ、それってどういう意味?」

 

言葉の意味がわからずスレイがライラに問いかける。

 

「この火の試練はスレイさんと私の2人で挑ませるつもりだった筈です。現に他の皆さん達は結界の外へと隔離されました。本来なら私がサラマンダーの足止めを行い、スレイさんが領域を破るという試練となる筈だったのでは?」

 

「……その通りだ」

 

「ならば何故、ハルトさんだけを結界の中に残したのですか?」

 

下手をすれば命に関わる導師の試練に何故、仲間の中で晴人だけを残してサラマンダーと戦わせる様な真似をしたのか、その意図がわからずライラはエクセオに問いかける。

 

「それは彼を見極める為だ」

 

「見極める?」

 

「そうだ。『黒』をその身に秘める彼が一体どの様な人間なのか……」

 

「『黒』をその身に秘める……? どういう意味でしょうか? そもそもエクセオ様は何故ハルトさんの事をご存知なのですか」

 

「それは……」

 

ライラの言葉にエクセオが言い淀んだ。

 

その次の瞬間……

 

『知りたいか女。それは俺がコイツに教えたからだ』

 

『!?』

 

突如、響き渡った謎の声と共に晴人達が立つ舞台の一角に謎の火柱が生み出される。

 

「な、なんだ!?」

 

驚きの声をあげるスレイ。

 

そして火柱が止まりそこから現れたのは……

 

___________________________________

 

結界の外でその光景をアリーシャ達はただ見守っていた。

 

サラマンダーの正体が明かされエドナやロゼが「悪趣味な試し方だ」と愚痴るのをアリーシャとミクリオがなだめ、スレイが試練の存在に気が付いた理由にエドナの名を挙げた時にエドナがドヤ顔を浮かべるのに苦笑いしそして今、エクセオが告げた言葉にアリーシャは嘗てヘルダルフの告げた言葉を思い出していた。

 

_____『憑魔であるワシには分かる。お前の中には巨大な『絶望』そのものが潜んでいる。それこそ、最強の憑魔を生み出してもおかしくない程の力を持ったな……』_____

 

あの時はその言葉の意味がアリーシャには理解できなかった。

いや、正確には今も理解はできていない。

 

何故ならばアリーシャにとって操真晴人という人間はヘルダルフが言う様な『黒』とは無縁の人間だからだ。

 

だと言うのに護法天族であるエクセオはヘルダルフと同じ言葉を晴人に向ける。

 

「(『黒』をその身に宿す? 違う……ハルトはそんな人間では……)」

 

そう思った直後晴人達の立つ舞台の一角に火柱が立ち昇った。

 

ロゼが「うっひゃあ!?」と大袈裟な反応を見せるが一同は何が起きたのかと火柱へ視線を向ける。

 

そして火柱が収まりそこから現れたのは……

 

「え……」

 

「おい……どうなってやがる」

 

「は? 何よアレ」

 

「また、試練か何かなのか?」

 

「あのクソジジイと同じ幻術か……? いや、だがこの気配は……」

 

現れた存在に一同は困惑の表情を浮かべる。

 

何故ならば現れた者は……

 

「ハルトが……もう1人?」

 

彼らが知る操真晴人と全く同じ姿をしていたからだ。

 

そして……

 

『遅かったな、操真晴人』

 

もう1人の晴人は口から彼らが知る操真晴人の声とは似ても似つかない低い声が発し、その瞳が不気味に赤く輝いた。

 

『ッ!!』

 

もう1人の晴人の発言に一同に緊張が走る。

 

「貴様……なぜ出てきた」

 

もう1人の晴人に向け、エクセオが警戒を滲ませた声を漏らす。

 

『十分大人しくしていたと思うがな。少なくともお前が操真晴人を見極める間は邪魔をしなかっただろう。それで? その男は貴様の目にどう映った?』

 

エクセオに対してもう1人の晴人が問いかける。

 

「……彼は先ほどの試練で私の力を理解しながら率先し導師やライラを守ろうとした。貴様の語る通り彼は災禍の顕主の様な者では無い……それは認めよう」

 

『ほう……存外に物分かりがいいのだな』

 

「だが貴様の存在は別だ……いや、操真晴人が信用に値すると認めたからこそ、貴様を元の居場所に戻す訳にはいかない……」

 

『成る程……『魔法使い操真晴人』は信用できるが俺の事は見過ごせないという訳か』

 

「当然だ……貴様は限りなく憑魔に近い存在だ。そんな物を彼に宿らせる訳にはいかない……」

 

険悪な雰囲気で会話を交わす2人。

 

そんな2人に困惑したライラが口を開く。

 

「あの……エクセオ様? そちらのハルトさんは……それに『憑魔に近い存在』とはいったい……?」

 

そう問いかけるライラにもう1人の晴人が反応する。

 

『ふん、確かにこの姿では分かりづらいか……ならばこれでどうだ』

 

もう1人の晴人ニヤリと不気味に笑うとその顔に『人では無いナニカの顔』が浮かび上がり突如、強風が吹き荒れる。

 

そして、現れたのは……

 

『お前達にはこちらの姿の方がわかりやすいだろう』

 

「ッ!? あの時のドラゴン!?」

 

「えっ!? な、なにアレ!?」

 

「ドラゴンだと!? オイ! 何がどうなってる!?」

 

「アレがライラ達の言っていた……」

 

「ッ……………」

 

もう1人の晴人の姿が搔き消え、現れたのは嘗てヘルダルフと戦う時に現れたドラゴンだった。

 

その事実にミクリオは驚き、初見のロゼとデゼルは困惑、ザビーダは目つきを鋭くし、エドナは動揺し瞳を揺らす。

 

ドラゴンは晴人達の頭上を旋回しながら問いかける。

 

『ククク……中々愉快な反応だ。そうは思わんか? 操真晴人』

 

「おい、あまり脅かすなよ。というかお前はさっきから何を話してるんだ。置いてけぼりでついていけないんだけど?」

 

『何、簡単な話だ。お前の持つ魔宝石の力と共にこの場所に跳ばされた俺は、そこの天族とやらにこの場所に封じられお前が来るまでに色々と説明するハメになっていたという訳だ。面倒な事にな』

 

「説明? 何をだ?」

 

『お前の事、魔法使いの事、そして俺達『ファントム』の事をだ』

 

そう語るドラゴン。

 

それを聞きアリーシャはドラゴンの言葉を反芻する。

 

「ファン……トム?」

 

聞きなれないその言葉にアリーシャのみならずライラ達天族も困惑する。

 

「それで説明した結果、そこのエクセオさんは俺の事を試そうとしてスレイとライラの試練に加えたって訳か?」

 

『その通りだ。魔法使いという異分子を見極める為にな……喜べ、どうやらお前はヤツのお眼鏡に適ったようだぞ』

 

「その割にはお前とは険悪に見えたけど?」

 

『当然だろう。俺は絶望を喰らい生まれる『ファントム』だぞ? どちらかと言えばこいつらが忌み嫌う憑魔側の存在だ。どうやらコイツは俺がお前に力を貸すことは認められんらしい』

 

「今更だろ……いいから戻ってこいよ。別にこれまでと何か変わる訳じゃないだろ」

 

『いや、変わるのだ』

 

「……どういう意味だ?」

 

意味深なドラゴンの言葉に晴人は眉を顰める。

 

『お前はこの大陸で魔宝石の力と共にその身に宿す俺の力を大きく失った。だが、その結果得た物……いや、消えた物がある』

 

「消えた物?」

 

『……今の貴様は魔法使いとしての力を持ちながら、魔法使いが背負うべき『代償』が存在しない』

 

その言葉に晴人は大きく目を見開いた。

 

一方でアリーシャはその言葉に引っかかりを覚えた。

 

「(魔法使いが背負う……『代償』?)」

 

彼女は少なくとも晴人からそんなものが存在する事を聞いた事は無い。

 

ドラゴンの語る言葉から得体の知れない何かがアリーシャの不安を煽る。

 

「(あのドラゴンが何を言っているのか、よくはわからない……だが、何故だ? 何故私は今こんなにも不安なんだ?)」

 

ドラゴンがエクセオや晴人と交わす会話の意味はアリーシャもこの場にいる他の者達もしっかりと理解できていない。

 

だが……

 

「(どうしてだ? 何故、今あの時の『夢』が頭を過るんだ!)」

 

アリーシャの脳裏には今、ティンダジェル遺跡で意識を失った時の夢で見た光景が蘇っていた。

 

日食と共に人々の内から生まれ出る怪物達……

 

そしてそんな者達と同様に体に亀裂を奔らせ崩れ落ちた晴人の姿が……

 

「(違う! アレは夢だ! ただの夢だ!)」

 

アリーシャはそう自身に言い聞かせる。

 

それでもドラゴンの言葉は続く。

 

『俺の力を大きく失った事で、俺はお前に対して干渉する力が殆ど失われた。俺という存在が貴様をどうにかする事ができなくなったのだ。例えお前が『絶望』したとしてもな』

 

「そうだ。だからこそ君は力を取り戻すべきでは無い。その力を取り戻せば君は再び強大な『黒』をその身に宿す事になる。それは人が背負い戦い続けるにはあまりにも重い物だ。穢れが存在するこの世界で道を踏み外せば、君はファントムでも憑魔でもないナニかに堕ちるやもしれん」

 

ドラゴンの言葉を引き継ぐ形でエクセオが告げる。

 

「君が使う魔法という特別な力は確かに君の心を支えてきたかもしれない、だが力で心は守れない。『黒』をその身に宿し戦いの道を歩き続ければ、いつの日か必ず限界を迎える事になる。ならばここでそれを断ち切るべきだ」

 

エクセオの言葉。そこには憑魔という存在への敵対心と共に晴人の身を案じる優しさが確かに込められていた。

 

『だそうだ。まぁ、事実、間違った言葉では無い。お前はこれまで何度も戦いの中で絶望を乗り越えてきた。だが、これからも耐えられる保証など何処にも無い。俺という『絶望』と手を切るにはまたと無い______ 』

 

『好機だな』そう続けようとするドラゴンの言葉は晴人の行動に遮られた。

 

晴人は赤く点滅する指輪をその指にはめ、拳を握りドラゴンに向ける様に突き出す。

 

それが意味するものはただ一つだ。

 

「ソーマハルト!? 正気か!? 折角背負うべき代償から解放されたのだぞ!? それを……」

 

「エクセオさん……さっきのアンタの言葉は少し間違ってるよ」

 

「何?」

 

「俺は『魔法があるから絶望しなかった』んじゃない。『絶望しなかったから魔法を手に入れる事ができた』んだ」

 

その言葉を聞きドラゴンは呆れた様に声を漏らす。

 

『馬鹿な男だ……折角『絶望』と縁を切るチャンスだったと言うのに……』

 

ドラゴンのその言葉を受け晴人は不敵に笑う。

 

「生憎と掌返して嘘つきにはなりたくないんでね」

 

『なんの話だ?』

 

そう問い返すドラゴンに晴人は何処か懐かしそうに返す。

 

「わかっているだろ? ドラゴン」

 

それは嘗て両者が交わした言葉。

 

 

「絶望なんかじゃない……『お前の力も俺の希望だ』……これまでも、これからも!」

 

その言葉を受けドラゴンは大きく笑い声をあげた。

 

「ククク……フハハハハ! 本当にお前は面白い奴だ! 『ならば、何処まで耐えられるか試してやろう』……これまでも、これからもな!」

 

そう言い放ちドラゴンの姿は赤い炎となり晴人の指にはめられた指輪へと吸い込まれた。

 

「それが君の選択か……ソーマハルト」

 

「そう言う事になるかな」

 

「そうか、ならば今一度、導師と共に君の力と意志がどれ程の物か……試させてもらう!」

 

力の試練を始めるべくサラマンダーは再び大剣を構える。

 

そこに事態を見守っていたライラとスレイが晴人へ語りかける。

 

「ハルトさん……今のは……」

 

「ケリをつけたら約束通りしっかり話すよ。けど今は……」

 

「わかった! 先ずは目の前の問題を……だよな!」

 

「わかりました今は共に! スレイさん!」

 

「あぁ! 行こうライラ! 『フォエス=メイマ(清浄なるライラ)!』」

 

叫びと共に魔法陣が展開され、神衣を纏い大剣を握るスレイがその姿を現わす。

 

それを見届け晴人もベルトを操作する。

 

【シャバドゥビタッチ! ヘンシーン! シャバドゥビタッチ! ヘンシーン!】

 

鳴り響く待機音と共に指輪を構え、力強く告げる。

 

「変身!」

 

【フレイム! ドラゴン! ボー!ボー! ボーボーボー!】

 

『ガァァァァァァァア!!』

 

直後、ウィザードが展開した赤い魔法陣から赤く燃える龍の幻影が現れ晴人と重なる。

 

そして……炎が掻き消えた場所には……

 

「あれが……ハルトの新しい力……」

 

 

真紅に染まったローブ……

 

頭部からは龍を思わせる二本角が左右へと伸び……

 

龍の顔を模した紋様が胸に描かれ……

 

肩の銀のアーマーは巨大化し大きな赤い宝石が埋め込まれている。

 

アリーシャの記憶には無い新たな姿のウィザードがそこには立っていた。

 

 

「さて……」

 

サラマンダーを見据えウィザードは静かに告げる。

 

 

「いくぜドラゴン……ショータイムだ」







原作TOZで燭台の点火順には気がついたけど点火する方向に気がつかなくてバグかと焦る奴www


私です


エグゼイドの飛彩さん面白すぎ問題
きっとクリスマスには本編内でキャラデコケーキを切り分けてくれるはず!

平成ジェネレーションズにご本人が来てくれる事を願い続ける今日この頃です

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