ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第98話 穢れた天使

『マスター、私に良い考えがあります』

 

「では、それで行きましょう」

 

『えっ!?』

 

 

 太郎は美星の言葉に作戦内容も聞かず、GOサインを出す。それに美星は驚き、一瞬戸惑ってしまう。

 

 

『あ、あの……内容も聞かずに決めてしまうのは』

 

「のんびり話している暇もありませんし、他に案が無いなら実質決定でしょう? それに美星さんが良い考えというなら大丈夫でしょう」

 

 

 太郎は当然の事の様に言う。それほど太郎の美星への信頼は厚かった。

 

 美星は戸惑いつつも、太郎の信頼に応えるべく自らの考えを示す。

 

 

『ISとそのコアは経験を積み進化します。それは私にも当てはまります』

 

「まさか、こちらも形態移行を?」

 

『いえ、形態移行が出来るようになるのは、もう少し先の話です。今回は機体ではなく、私自身が最近習得した技術を使います』

 

 

 美星は珍しく自慢げにその技術の内容を太郎へと告げる。美星の習得した技術、それは毒針による敵ISの制御系への干渉に関係するものである。

 

 

『私はコア・ネットワークを使用して相手の認識を一時的に狂わせる事が出来るようになりました。例えば何も無い場所に私達がいるとに認識させる事も可能です』

 

 

 太郎達の度重なる毒針の使用によって蓄積した経験により、毒針を使わなくても少しなら相手ISに干渉できる技能を手に入れたのだ。今回得た技術ならば無線状態でも使用出来るのだ。

 

 元々毒針の機能が【当たれば相手を思うがままに出来る】ならば、今回の新技術は【毒針を当てる為の接近用テクニック】であった。

 

 これは近接戦を好む太郎が相手の懐へ潜り込む為に苦心していた事も影響している。

 

 

『流石に相手のコアも馬鹿ではないので、干渉を受けた事に直ぐ気付くでしょう。しかし、実戦ではその一瞬の隙が命取りとなります』

 

 

 確かに、この技術があれば新型毒針の射程である2、30メートル圏内へ近付けるだろう。

 

 

「素晴らしい……しかし、銀の福音は正常にネットワークへ繋がっているんですか? 彼女は束さんに狂わされているんですよ」

 

『そこは大丈夫です。こんな事もあろうかと先程接触した際にコア・ネットワークへ無理矢理繋げています』

 

「流石です。では……そろそろ反撃と行きましょうか」

 

 

 太郎はそう言うと回避に専念するのを止め、福音が放つ光弾を掻い潜って間合いを詰め始めた。その際、太郎の視界の端に呆然としている箒の姿が映った。しかし、慣れない連携は逆に危険であるし、箒のいる場所は福音の射程外で安全だと判断して通信をしなかった。

 

 

 

 

 銀の福音との距離800メートル、太郎は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使わない通常機動でも難なく攻撃を避ける。

 

 銀の福音との距離600メートル、通常機動の限界域ですら光弾がシールドバリアーを掠め始める。

 

 銀の福音との距離450メートル、ハイパーセンサーで視覚情報の処理速度が向上していても、光弾に反応出来なくなってくる。光弾を見てから避けるのではなく、当てられないように変則的な動きで撹乱する。時には瞬時加速(イグニッション・ブースト)も使用するが、それでも被弾をゼロには出来ない。

 

 銀の福音との距離300メートル、ついに太郎と美星は勝負を掛ける。太郎は福音に向けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動する。

 

 瞬く間に福音との距離200メートルまで接近する。

 

 そのまま直進してくる太郎に向けて福音は弾幕を集中させる。そして、福音の光弾が太郎の駆るヴェスパへ直撃─────────せずに、通り抜けてしまった。

 

 太郎は確かに福音へ向けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動した。しかし、途中で進路を強引に曲げていたのだ。普通のIS操縦者であれば骨折や内臓の損傷をまねく行為であり、強靭な肉体を持つ太郎にのみ許された特殊機動である。そして、太郎が進路を曲げる直前に美星は福音へと干渉し、太郎が直進し続けたように見せたのだ。

 

 銀の福音は一瞬状況把握に手間取ったが、すぐに敵のクラッキングを受けたのだと理解して対応する。即座に問題の箇所を修正し、敵からの干渉をシャットアウトする。束が弄った部分、福音が暴走している要因については福音にはどうする事も出来なかったが、美星の小細工程度なら修正に5秒もかからない。そして、センサー類をフル稼働して索敵を行う。すると相手はもう自身の上方20メートルまで接近していた。

 

 太郎は福音がこちらの位置に気付いた事を認識すると、にやりと口元を歪める。

 

 

「光弾の雨をありがとうございます。こちらはお返しです」

 

 

 ヴェスパの股間の装甲が開き、毒針が(あらわ)となる。そして、毒針の先端の穴から何かが射出され福音のシールドバリアーに当たった。

 

 

『ッッッ!?』

 

 

 オープン・チャネルから福音が驚いている様子が(うかが)える。福音のシールドバリアーには白く濁った粘液がべっとりと付着している。バリアーの○濁液が触れている部分が福音の意志とは関係なく明滅する。

 

 その白○液の正体はナノマシンであった。敵や敵のバリアーに干渉するナノマシンを粘液に混ぜ、射出出来るようにした、これが新型毒針の機能の1つである。

 

 そして、突如自身のシールドバリアーが機能不全に(おちい)って混乱している福音へ、新型毒針2つ目の機能が火を噴く。

 

 毒針本体である鉄杭までもが射出され、バリアーの中でも白濁○による干渉で明滅している、弱っている部分をブチ抜き絶対防御を発動させる。この時点で銀の福音のエネルギーはほぼ底を尽いた。

 

 太郎はここぞとばかりに福音へと接近し、毒針がブチ抜いたバリアーの穴へヴェスパの股間を密着させる。毒針本体である鉄杭は無くても、溜め込んだ白○液の残量は十分にある。

 

 

 ドッピュ、ドピュドピュ!!!!!

 

 

 全身に白○液を浴びる福音。

 

 白濁○の中を泳ぐ一億匹を超えるナノマシン達が、銀の福音の回路という回路を犯す!犯す!犯す!!!!

 

 機体の制御権を奪われた銀の福音は、力なく空から堕ちる。しかし、紳士たる太郎が海面へ激突する前に回収し、抱きかかえた。

 

 ここに銀の福音制圧作戦は終了となる。暴走した銀の福音は撃墜される予定だったが、ほぼ無傷で回収となった。

 

 

 

 

 

 この作戦は極秘作戦であったが、当事者であるアメリカとイスラエル以外の各国軍上層部もある程度情報を得ていた。その為、各国の軍関係者間では太郎の戦闘能力が高く評価される事となる。

 

 未だ男性社会である軍上層部では秘かに【太郎待望論】が囁かれるようになる。すなわち太郎の軍への所属を希望する男達が増えていく。




福音「男になんて負けたりしない」キリッ


福音「白○液には勝てなかったよ」

伏字なんていらないかな、と思いましたが紳士にあるまじき勘違いをする人が出ては駄目なので使用しました。

それにしても○ーメン×郎って書くとまるで……いや、なんでもないです。


読んでいただきありがとうございます。次回は来週水曜日に更新します。


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