ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第93話 一夏、光に包まれ……

 作戦司令室として使われている宴会場は、ピリピリとした空気に包まれていた。生徒と職員達にとって慣れない、もしくは初めての実戦なのだから、それも当然である。しかし、原因はそれだけではない。

 

 作戦参加メンバーである箒の様子がおかしいのだ。箒は1度宴会場から出た。そして、しばらくすると何故か虚ろな表情で帰ってきた。これから実戦だというのに、これでは周囲の人間も気が気ではない。しかも、一夏と箒の一次攻撃陣が失敗した場合の予備戦力である太郎がいないのだ。

 

 

「山田のヤツは何処に行ったんだっ!」

 

 

 今回の作戦指揮官である千冬も、ついイラつきを表に出してしまう。実戦経験の乏しい者達を指揮するとあって、千冬にかかる重圧も普段以上のものとなっているのだろう。

 

 そんなイライラしている千冬とは対照的で、一夏は心配そうに箒へ声を掛ける。

 

 

「おい、大丈夫なのか。何かあったのか?」

 

「す、全て夢だ。そう、あんなもの現実の筈が無い……」

 

 

 一夏の問い掛けにも、箒は俯きながら「夢だ。あれは夢だ」と繰り返すばかりである。こんな状態で実戦に参加出来るのか、不安になった一夏は少し強く箒の肩を揺する。

 

 

「しっかりしろよっ! これから実戦なんだぞ!」

 

 

 一夏の呼び掛けが功を奏したのか、箒の顔が上がる。

 

 

「……ん、どうした一夏。そんなに必死な顔をして」

 

「どうしたじゃないだろ。お前の様子がおかしいから心配したんだぞ。何かあったのか?」

 

「……ナニモナイゾ」

 

 

 一夏の質問に、箒は首を横へと振る。言える訳が無い。姉が男と一緒に下着を顔に被り、小躍りしていたなど言える訳が無い。

 

 

(いや、違う。あれは夢だ。もしくは、何かの見間違いだ。そうに違いない)

 

 

 箒は自分に強く言い聞かせ、先ほど見たものを無かった事にした。

 

 

「一夏、そんな事より作戦開始の時間が迫っている。そろそろ行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと待てよ。そんな事って……さっきまでお前、相当ヤバイ感じだったぞ」

 

「良いから早くしろ。相手は待ってくれないからな」

 

 

箒は強引に話を終わらせ、一夏を引っ張って宴会場から出て行く。時間が無いのは確かなので、一夏もそれ以上強く問いただす事は無かった。

 

 

 

 

 

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 一夏達が出撃してしばらくすると、太郎が宴会場に戻ってきた。それを見た千冬が怒鳴り声を上げる。

 

 

「山田っ! 今まで何処にい……」

 

 

 太郎を叱責しようとした千冬だったが、想像だにしない光景を目にして口をポカンと開けている。

 

 宴会場に入って来た太郎は、束と肩を組んだ状態だったのだ。しかも、2人共笑顔である。つい先ほど、砂浜で激しい闘いを見せた2人が何故、急に仲良くなっているのか。千冬だけでなく宴会場にいた者全ての頭上に、【?】マークが浮かんでいるかのような状態である。

 

 ただ千冬の脳裏によぎるのは、束と太郎が争う危険性が減った事に対する安心より、厄介な奴等が徒党を組んだ、という危機感だった。

 

 千冬は友として、束の性格や危険性を良く理解している。太郎についても短い付き合いではあるが、そこそこ知っている。だからこそ、断言出来る。

 

 

(こいつらは絶対、何か仕出かす)

 

 

 千冬が厳しい目つきで太郎達を睨んでいると、彼等は不思議そうに小首を傾げた。

 

 

「何か問題でもありましたか?」

 

「そんな怖い顔してどうしたのー。ちーちゃん?」

 

 

 能天気な2人の様子に、千冬は警戒心と共に気まで抜けるような心情だった。

 

 

「……随分と仲良くなったみたいだな」

 

 

 千冬は大きく溜息を吐くと、苦々しげに呟いた。その様子を見た束が跳ねる様に千冬の側へとやって来る。

 

 

「あれあれー。もしかして妬いてるのかな。うーん、束さんの1番は、ちーちゃんだから安心してっ☆」

 

「……いちいち寄って来るな。うっとうしい」

 

 

 千冬は抱きついて来ようとする束をなんとか引き剥がしつつ、視線を太郎へと移す。

 

 

「おい、どういう事なんだ。さっきまで争っていた癖に」

 

「まあ、分かり合えない部分も未だありますが、共感出来る部分も発見出来たというか……」

 

 

 千冬の疑問に太郎は言葉を濁した。まさか、「貴方のパンツと束さんのパンツを交換して、一緒に被ったら仲良くなりました」と言う訳にもいかない。

 

 言葉を濁す太郎に千冬が詰め寄ろうとすると、意外な人物が割って入った。

 

 

「チッチッチ、タロちゃんの言葉にはちょーっと間違いがあるね」

 

 

 束が意味の無いドヤ顔をしながら、千冬と太郎の間に立った。

 

 

「分かり合えない部分っていうのは、ISに対するスタンスだと思うんだけどさ。私は砂浜での発言を撤回して、タロちゃんの考えに賛同しても良いかなーって思ってるんだよねー」

 

 

 束は軽い調子で言っているが、千冬にとっては驚きの発言である。自由気ままで我が道を行く、そんな束があっさりと考えを改めるなど予想だにしない展開である。

 

 束が考えを変えたのには、当然理由があった。それは美星の存在である。分かり易く褒めたりはしなかったが、太郎と美星が作った箒の等身大フィギュアは、束から見ても良い出来であった。束が欲しいと思うモノを創造出来る。そんな存在にすら、ISが成長・進化する可能性があるという良い例である。

 

 ISが自分の想定を超えた。もしかしたら、ISの中から自分と並び立つ様な存在すら生まれるかもしれない。それならばIS達を物以上の存在として認めても良いんじゃないか、と束は考えを変化させたのだ。

 

 束の言葉を聞き、太郎は笑顔となった。そして、太郎は束へ右手を差し出す。それを束が掴み、熱い握手が交わされた。2人はもう単なる取引相手ではない。仲間である。

 

 

 

 

 しかし、感動の場面で水を差す者がいた。もう1人の山田、山田真耶である。彼女は戦況を映したモニターを見ながら悲鳴の様な報告をする。

 

 

「織斑機っ、撃墜されました!!!」

 

「「はあ!?」」

 

 

 突然の報告に、全員が一瞬ぽかんとした表情となっていた。




タイトル詐欺になってしまった。光に包まれる描写が無いじゃん。無いじゃん。

読んでいただき、ありがとうございます。次も来週の木曜日に投稿します。



ちん○丸出しでネットやゲームをしていたら風邪をひいてしまいました。
これじゃあ、もうチ○コを出してネットもゲームも出来ないじゃないですか。
私にどうしろって言うんですか(不条理な怒り)

太郎「逆に考えるんだ。上も脱いじゃえばいいだと」
丸城「ファッ!?」
太郎「全裸でジョギングをし、寒さに強い体を作れば良いのです」

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