ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第78話 そこは狩場、いや戦場だ 1

 砂浜とそこにいる見目麗しい少女達。それらに照りつける夏の強い日差し。男にとっては楽園の様な要素が揃った砂浜は、何故かドロドロとした殺気と欲望に満ち満ちていた。

 

 今日、この砂浜は臨海学校の為に訪れたIS学園生徒、職員達の貸切である。つまり、この殺気や欲望丸出しの空気を作っているのはIS学園の生徒と職員に他ならない。では何故、こんな事になっているのか。それはIS学園の男女比が主な原因であった。IS学園には数百人の女に対して男が2人しか存在しない。

 

 

 

 そう、IS学園の生徒及び職員の女達は飢えていたのだ。男に!

 

 

 

 たった2人しかいない男が、この砂浜にまだ来ていない。それだけの事で女達──────いや、男に飢えた獣、女豹達は溜まりに溜まった何かを持て余していた。

 

 

「織斑君はまだなの?」

「山田代表の裸体……早く見たい」

「ああ、待ちきれないわ。ちょっと更衣室の方、見て来ようかな」

「駄目だよ抜け駆けは!」

 

 

 ざわざわと不穏な雰囲気を醸し出す砂浜だったが、ついに彼女達が求める物が現れた。まず先に現れたのは一夏だった。穿いている水着の色は爽やかなライトブルー、丈は長めの物である。それ単体ではインパクトの無い当たり障りの無い普通の水着であるが、一夏が穿けば飢えた女豹達を興奮させるには十分であった。

 

 

「う~ん、やっぱりイイっ!!」

「かっこいいよね」

「やんちゃな感じを残しつつ、爽やかさもある美少年。あああ付き合いたいな」

「意外と良い体つきねえ」

「可愛いお尻っ!!」

 

 

 女達が好き勝手に一夏の水着姿を評する。

 

 

「ええぇ……何なんだよ。この騒ぎは」

 

 

 その異様なまでの盛り上がりに一夏も戸惑ってしまう。そんな一夏に後からやって来た太郎が声を掛けた。

 

 

「もっと胸を張らないと、織斑先生の買ってくれた水着が泣きますよ」

 

「た、太郎さん。そんな事を言ってもこの空気は異常だって!」

 

 

 泣き言を言いながら振り返った一夏の目に映った太郎は、本人の言うとおり確かに威風堂々としていた。

 

 戸惑う一夏とは違い、むしろ自らを見せ付けるかの様に太郎は仁王立ちしていた。動きの邪魔をしない洗練された筋肉。程よく厚い胸板。割れた腹筋。そして、股間を覆う白い六尺褌(ろくしゃくふんどし)。集まる視線。

 

 今この瞬間、砂浜の主役は太郎であった。

 

 

「す、すごい……」

「盛り上がっている。アレが」

「織斑も良い体だと思ったけど並ぶとやっぱり格が違うわ」

「山田さんの筋肉で溺れたい」

「なんか彫刻みたい……」

 

 

 男に飢えた女豹達でさえ圧倒する存在感が太郎にはあった。その余りにも堂々とした態度に勇気付けられたのか、一夏も平静をいくらか取り戻した。

 

 

「太郎さん、色んな意味でスゲーな。あと、何で褌なんだ」

 

「ふふっ、男は黙って褌ですよ」

 

「えっ、俺には男は黙って全裸って……」

 

 

 太郎は水着を買いに行った時、確かに一夏へそう言っていた。しかし、太郎にもどうしようも無い事情があった。

 

 

「仕方が無いでしょう。織斑先生がどうしても駄目だと言うんですから」

 

 

 太郎が両手を軽く挙げて、お手上げ状態だと示した。砂浜へ全裸で登場など千冬が許す筈が無い。いくら太郎でも引き際というものは理解している。今回の件は無理を通すと千冬を本気で怒らせると判断して自重したのだ。

 

 太郎に千冬の名を出されては一夏も納得するしかない。IS学園では千冬が法律である。太郎の方は千冬の目を掻い潜って色々やっているのだが、その事は今の一夏には知る由も無かった。

 

 

「「織斑くん、山田さ~ん、こっち向いて~!!」」

 

 

 男同士で話をしていた太郎達に対して、2人の気を引きたい女達から黄色い声が飛ぶ。それを見て一夏は照れながら小さく手を振る。太郎は両腕を上げ肘を曲げてフロント・ダブルバイセップスのポーズを取って上腕二頭筋を見せ付けた。

 

 

「「きゃあああああああっ!!!」」

 

 

「織斑君、顔が赤ーいっ」

「照れてるんだ」

「青い果実……汚す悦び」

「山田さん、キレてます!キレてますよ!!!」

「ナイスカット」

「(上腕二頭筋)デカイよー!!」

 

 

 女達から悲鳴のような声が上がった。一夏に対しては「照れている所がかわいい」などという声が多く、太郎に対しては熱心な信奉者達が応援のような何かをしていた。

 

 太郎達に色めきたつ砂浜。

 

 しかし、真打は彼らではなかった。太郎達から少し離れた場所で妙なざわつきが起こる。それはだんだんと大きくなり太郎達の近くまで迫って来た。

 

 

「えっ、何あれ……」

「嘘でしょ……」

「正気?」

 

 

 太郎達の耳にもそれは聞こえてきた。太郎と一夏が何事かとそちらを見る。

 

 ざわめきの中心がこちらに近づいてくる。すると太郎達の周囲にいた女達がそれを避けるように左右へ分かれて道が出来た。そして、その正体が太郎達の目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セシリア・オルコット、英国貴族にしてイギリスの代表候補生がそこにいた。

 

 スリングショットを着てそこにいた。

 

 澄ました顔をしてモデル立ちをしたセシリアを見て、一夏のボトルも立ちそうになる。少年には刺激が強すぎたのだ。一夏をよそに太郎はセシリアの姿を見て笑顔で拍手をしていた。

 

 

 




今日も読んでくれてありがとうございます。夜の個人メドレーに勤しむ丸城です。

手コ○、オ○ホ、床オ○、自由形(ダッチ○イフ)の4種目を……おっと今は夏休み期間ですし、青少年が見ているかもしれないのになんて内容の後書きでしょう。猛省しないといけませんね。

次の更新は金曜日です。

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