ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第71話 いざ出発へ

 鈴から買い物に誘われた後、ラウラからも同じ日に買い物へ行かないかと誘われた太郎。太郎が鈴にラウラ達も同行しても良いか聞いてみると、二つ返事で了承を得られた。鈴としては助言役は太郎とシャルだけで十分であったが、少し位同行者が増えても問題ないと思ったのだ。そうして、最終的に5人で出掛ける事になった。

 

 

 時は日曜日、ついに太郎が楽しみにしていた買い物の時がやって来た。5人はIS学園の正門から少し離れた場所で待ち合わせをしていた。

 

 空は晴れ渡り、夏の到来を感じさせる強い日差しが地面を熱くする。しかし、その地面より熱く滾った者がいる。それは太郎と鈴であった。

 

 太郎は鈴、ラウラ、シャル、そして千冬という豪華メンバーとのデート、もとい水着購入の為のお出かけに色々と滾らせていた。

 

 鈴の方は臨海学校で一夏へ協力にアピールし、ライバル達に差を付ける。その為の水着選びに並々ならぬ覚悟をしていた。今回は相当際どい水着に挑戦する事も覚悟している。ただ、鈴の考える【際どい水着】と、助言役である太郎の考える【際どい水着】の間には埋めがたい深い隔たりがある事を、未だ2人は知らなかった。

 

 当初、太郎や鈴と同じ位に熱の入っていたラウラは、太郎や千冬と出掛けられるというだけでかなり満足しており、当初の目的を若干忘れ気味であった。それでも普段よりテンションはかなり高めであった。

 

 そんな3人とは対照的だったのがシャルと千冬である。この2人は今回の予定が組まれた時からテンションが下がりっぱなしであった。理由は単純明快。普段から突飛な行動を起こしがちな太郎とラウラ、その2人が浮かれ過ぎていて嫌な予感しかしないからだ。太郎とラウラの非常識コンビが今回の買い物にかなりの入れ込んでいる、それだけでもう碌な事にならないだろうとシャルと千冬は考えていた。

 

 

「それにしても千冬さんと水着を買いに行く事になるなんて想像もしてなかったわ」

 

「お前はともかく、目を離せん者達がいるのでな」

 

 

 引きつった表情で呟いた鈴に千冬が答えた。まさか自分の声が届いているとは思っていなかった鈴はぎょっとして千冬の方を見たが、千冬の方は太郎とラウラの2人へと鋭い視線を送っていた。鈴としても千冬の意識が太郎達に向いている方が都合が良い。鈴と千冬はIS学園に来る前からの知り合いであったが、鈴は千冬が苦手なのだ。

 

 太郎が千冬の視線に気付いたのか、こちらに振り向き近付いて来る。

 

 

「どうしたんですか。そんなに私を見詰めて。惚れましたか?」

 

「笑えない冗談だ。次、同じ事を言ったらその口を縫い合わせるぞ」

 

「どうせ塞ぐなら、その口でお願いします」

 

 

 太郎の軽口を千冬が黙らそうと拳を振るう。風を切る音が聞えそうな鋭い右フックだったが太郎は予測していたのか軽々と回避した。

 

 

「まあ、落ち着いて下さい。折角のお出掛けなんですから楽しく行きませんか」

 

「落ち着くのはお前だ。何なんだ、いつも以上に浮かれおって」

 

「それは仕方がありません。今日の買い物を前から楽しみにしていたので」

 

「そうか、そうか。そんなに楽しみにしていた買い物を中止にしたくないなら少しは自重しろ」

 

「ええ、分かっていますよ。さあ、早速楽しいデートに出かけましょう」

 

「はあ・・・・これはデートではないぞ」

 

 

 千冬の警告にも懲りる様子の無い太郎に、最後は千冬も半ば諦め気味であった。いつもの千冬であれば無茶をしてでも鉄拳制裁している所だが、今日は多少気心の知れた者しか周囲にいないのと本当に大変なのはこれからなので力を温存しているのだ。

 

 

「織斑せん・・・いや、今日は休日なので先生ではありませんね。千冬・・・・・さんは今日もお美しい」

 

「ふん、お世辞はいらん」

 

 

 最初、【千冬】と呼ぼうとした太郎であったが千冬に鬼の様な形相で睨まれ、仕方が無く敬称を付けて呼んだ。千冬は世辞と切り捨てたが太郎の言葉は本心からのものである。今日の千冬はノースリーブとリネン系のパンツ姿で、かなりラフな格好なのだがそれが千冬には良く似合っていた。実はこの服装は太郎が暴走した時に力づくで制止する為に動き易い物を選んだ結果なのだが、結果としてその太郎を喜ばせる事になってしまっていた。

 

 それに対して太郎の方はショッキングピンクのTシャツと白地のショートパンツで、どちらも鍛え抜かれた筋肉によってピチピチであった。普通なら“ない”とはっきりと言う格好であったが、何故か今日の太郎には異常なまでに似合っていた。

 

 頭の中がお花畑状態だからピンクがお似合い?などとかなり失礼な事を千冬は内心思っていた。

 

 

「世辞ではありませんよ。ねえ、ラウラさん」

 

「そうです教官。動きやすそうで良い装備だと思います。ただ耐久力に不安がある様に見えます」

 

 

 千冬は大きく溜息をついた。ラウラは今から何をしに行くつもりなのか。買い物へ行くのに服の耐久力など必要ない。ただお前達2人が暴走した時に止められるように攻撃力は欲しいがな、という言葉が喉の所まで出かかっていた。

 

 そんなやりとりをしていると、太郎が手配していたハイヤーが待ち合わせ場所に到着した。今日は人数が多いうえ、千冬と太郎という知名度の高い人間がいる為に電車などの公共交通機関では不便だろうと考えての事だった。太郎の手配したハイヤーの外見は、普通の黒い大型ワゴンで後部座席の窓にはスモークが貼られていた。中は大幅に改造されており、革張りの座席と小型の冷蔵庫が目を引く特別仕様車であった。

 

 

 

 

 5人がワゴンに乗り込む。それを物陰から覗く2つの影があった。

 

 

「くぅぅ、またしてもわたくしを除け者にするなんて・・・・・」

 

「太郎さん、千冬姉、なんで俺を誘ってくれないんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




今回登場したワゴンですが、見た目はハイ○ースみたいな感じと思ってください。

この前、会社でハ○エースを新しく買う事になったのですがカタログを見てビックリしました。あんなに種類がいっぱいあるんですね。

カタログを見ていると自分もハイエー○が欲しくなっちゃいました。便利そうですし。後部座席取り外してマットレスを入れれば良いですよね。
えっ、ナニに使うかって?
ほら、あれです。キャンピングカー代わりに使うんです(棒

読んでいただきありがとうございます。

次の更新は土曜日の夜です。

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