ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第70話 最強の水着とは?

 

 

 太郎が鈴と水着を買いに行く約束をしている間にズボンの乾燥が終わった。乾燥機から取り出したズボンを太郎が穿いていると鈴が視線を逸らしていた。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

 不思議に思った太郎がそう聞くと、鈴は頬を染めながら怒鳴った。

 

 

「あまりに堂々としているから気付かなかったけど、太郎さん下着姿じゃない!!!」

 

 

 鈴は先程までラウラの霊視疑惑や一夏対策の水着に関する事で頭がいっぱいであった為に、太郎の下着姿が意識の外に追いやられていたのだ。それに加えて鈴の言う通り、太郎が完全に自然体であったのも大きな要因の一つであった。しかし、恥ずかしがる鈴に対して太郎は怪訝そうな表情である。

 

 

「下着と言ってもトランクスです。水着と比べても大した違いはありませんよ」

 

「いやいやいや、仮に今穿いているのが水着であっても駄目でしょ。こんな所で水着姿をさらしていたら変質者じゃない!!!」

 

 

 公的な記録上は無かった事にされているが、仮にも何も太郎は性犯罪の前科者である。そう、紛れも無い変質者である。そんな事を知らない鈴からしたら太郎の姿に驚いて当然であった。

 

 ズボンを穿く前の太郎はブリーフ程では無いにしろ、アレのポジションが分かる状態だった。今はズボンを穿いてしまっているが、鈴の脳裏には先程見たその映像が浮かび続け、その頬を赤く染める原因となっていた。しかし、太郎の方はそんな鈴の状態を気にも留めず、既に日曜の買い物へと意識が行っていた。

 

 

「水着は人に見られても良い物なので問題ないでしょう。それより実は、この学園に来てから誰かと買い物に行くというのは初めてなんですよ」

 

「問題はあるでしょ、絶対。はあ・・・・そう言えば私も学園に来てから買い物なんて行ってなかったなあ」

 

 

 鈴は太郎に呆れつつも、しみじみと言った。鈴は一夏がIS学園に入るというニュースを聞いてから慌てて自分も転入を決めた。転入をしてからもクラス対抗戦やラウラとのいざこざなど慌しいものだった。実際に口にしてみると鈴もだんだんと楽しみになってきた。

 

 

「日本自体、久し振りだから水着だけじゃなくて色々見て回りたいなあ」

 

「次の機会には一夏を誘えば良いのでは?」

 

「ううう・・・・それが出来れば苦労しないわ。下手な所で誘っても周りの子に邪魔されるし、なかなか2人っきりにもなれないし・・・」

 

 

 言うは易し、太郎の言う通り出来れば苦労はない。一夏の周囲には常に女子生徒がいる。そこに割って入り、デートへ誘おうとすれば当然の如く邪魔が入る。特に厄介なのが一夏曰く【ファースト幼馴染】である篠ノ之 箒だ。彼女は明らかに一夏狙いであり、こちらに対する妨害も平気でして来る面倒な存在である。とは言え互いに激しく争っていると一夏からの印象も悪い事は箒も理解しているから、険悪になる事は多くても今の所は牽制し合う位に留まっている。

 

 

「それなら私の方から一夏にそれとなく話を振ってあげましょうか?」

 

「えっ、いいの?」

 

「結果までは保証しませんが、話を振る位なら大した事ではありませんよ」

 

「やった、今回の事といいホントありがとっ!!!」

 

 

 笑顔で小さくガッツポーズまでしている鈴を見ながら太郎は、むしろ自分の方が感謝したいと思っていた。今度の日曜日には色々な水着を試着してもらう事になる。そして、当然それに対するコメントをする為にじっくり眺める事になるのだ。もう感謝してもしきれない。現役のIS国家代表候補生を合法的に水着の着せ替えて、それをじっくり鑑賞する機会などなかなかない。一夏に少し話を振るくらい訳も無い。

 

 太郎は軽く請け負って自室へと帰っていった。太郎の本心など知らない鈴は、その後姿を見ながら「少し変わっているけど頼りになるなあ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太郎が自室に帰るとそこにはシャルと、何故かラウラが待っていた。

 

 

「ラウラさん、どうしたんですか?」

 

「パパ、今度の日曜日に私や教官と一緒に水着を買いに行こう」

 

 

 太郎の問いかけが耳に入っているかどうかも怪しいラウラ。お誘いというより決定事項を告げるかのような口ぶりである。急な話の展開であったが、太郎の方も負けず劣らずである。

 

 

「ではそこに鈴さんとシャルも加えたメンバーで行きましょう」

 

「えっ?」

 

 

 唐突に自分もメンバーに加えられたシャルが驚いて声を漏らす。

 

 

「ん?何か不都合でもありますか?」

 

「いえ、まあ、僕も水着は必要だからいいんですけど・・・」

 

 

 ラウラと太郎の話の展開に戸惑いつつもシャルは同行を了承した。それにしても、どういう思考回路だとこんな話の展開になるのだろうとシャルは内心首を傾げていた。

 

 

「実は先程、鈴さんにも買い物に誘われていたんですよ」

 

「ほう・・・」

 

「えっ、何で?」

 

 

 太郎の言葉を聞いてラウラの目つきは鋭くなる。シャルの方も疑問に思っているようだ。鈴が一夏狙いなのは公然の秘密である。いや、むしろ一夏以外の周囲の者は全員知っていると言って良い。それなのに何故一夏ではなく太郎を誘ったのか、まさかとは思うが太郎狙いに変わったのか。シャルが自問自答していると答えは直ぐにもたらされた。

 

 

「一夏にアピールするための水着を買いたいからアドバイスが欲しいと頼まれました」

 

「ふむ」

 

「ああ、そういう・・・・・」

 

 

 ラウラとシャルはホッと胸を撫で下ろした。それと同時にシャルは水着でアピールした程度で“あの一夏”がどうにかなるのだろうかと疑問に思った。一夏の鈍感さは、わざと知らない振りをしているのではないかと疑いたくなる程のものである。鈴の作戦の有効性については疑問が残るが、その結果については興味がある。使えるようなら参考にしようとシャルは考えていた。

 

 

「それより教官というのは織斑先生ですよね?」

 

「当然だ」

 

「意外ですね。そういう場に付いて来る人というイメージは無いのですが・・・・・」

 

 

 太郎が意外に思うのにも理由がある。千冬は基本的に授業以外では生徒へあまり干渉しない教師である。ルールには厳格であるが、それさえ守っていれば比較的生徒の自主性に任せるタイプである。それが休日の買い物を一緒に、というのはイメージからかけ離れていた。しかし、太郎にとってそんなギャップなど大した問題ではなかった。そう、もっと重要な事がある。

 

 

「織斑先生も一緒という事は・・・・・・彼女も水着を買うのでしょうか。いえ、買った方が良いです。むしろ私が買ってあげます」

 

「うむ」

 

 

 熱の篭り始めた太郎の言葉にラウラは頷く。

 

 

「世界最強である織斑 千冬が着る水着は・・・・・・当然、世界最強でないと駄目でしょう」

 

「当然だな」

 

 

 太郎とラウラのやり取りを聞いていたシャルの口から「うわあ」という声が漏れた。それは理解に苦しむ2人の発言に引いている声なのか、それとも千冬に対する同情なのか、本人にも分からない。世界最強という所から何故水着に話が行くのか分からない。そして、最強の水着とは何なのか。水着に強いも弱いもないと思うのだが、太郎とラウラの中では何か基準でもあるのだろうか。ただ一つだけ確かなのは、今度の日曜日の買い物が大変なものになるという事だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 




最強の水着ってなんでしょうね。

紐?スリング?シール?透ける水着?溶ける水着?
決着の付かないテーマですね。
ですから、争いを避けるために日本の海水浴場は全てヌーディストビーチにしましょう(平和的解決

あくしろよ


読んでいただきありがとうございます。

次は水曜に更新します。

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