ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第66話 導かれし者

 ドイツ軍謹製の恋愛支援ナビゲーションプログラムという心強い武器を得たラウラは、早速初期設定を終えて今後の方針も決めた。太郎との関係を強化する、と決意したラウラにプログラムは新たな選択肢を提示する。

 

 

【早速作戦行動に移りますか?】

【1、はい】

【2、いいえ】

【3、助力は必要ない】

 

 

 やる気十分のラウラは、当然【1】を選択する。何もしなくても事態が好転する、そんな状況では無いとラウラは認識していた。

 

 太郎は周囲の者達から好意を向けられている。現在、恋人関係の人間がいるかは分からないが、いなかったとしても将来的には出来る。それも近い将来の事だとラウラは予想していた。恋人が出来たからといって太郎が自分を軽んじるとは思わないが、出来るだけ早期に自分と太郎の関係を確固としたものにしたいとラウラは考えていた。

 

 

【それでは具体的な策を選択してください】

【1、食事に誘う】

【2、世間話をする】

【3、相手の寝室に忍び込み既成事実を作る】

 

 

 【3の既成事実を作る】はラウラ自身、具体的にどうすれば良いのか分からない。それに太郎の部屋にはシャルもいる。シャルがこちらに協力的な立場をとるかは未だ分からない。世間話についてもラウラにはハードルが高かった。特定の用件も無く、話す事そのものが目的の会話などラウラには不可能と言って良かった。その為、消去法的にラウラは【1】を選んだ。

 

 太郎を食事に誘う事にしたラウラは早速太郎の元へと向かった。専用機持ち同士なのでIS経由でもメッセージを送れるのだが、直接話をしたかったのであえて自ら出向く事にしたのだ。

 

 

 

 

 ラウラが太郎の部屋の前に到着した。IS学園の寮内はラウラから見ると全体的に浮ついた雰囲気なのだが、太郎の部屋付近はとても静かだった。それは太郎の部屋が、寮監でもある千冬の部屋の隣にある影響だろう。この辺りで騒ぐなどという蛮勇を振るう生徒はそうそういない。

 

 ラウラがノックをしようとした瞬間、太郎の部屋の扉が開く。ラウラは咄嗟にノックしようと伸ばしていた手を引き、一歩後ずさった。

 

 

「ん?ラウラさん、どうしたんですか?」

 

 

 部屋から太郎とシャルが出て来た。2人はどうやら丁度何処かへ行く所だった様だ。運良くスレ違いにならずに済んだ。

 

 

「パパを食事に誘うおうと思ったのだ。出掛ける様だが・・・」

 

「それなら丁度良かった。今から皆で学食に行こう思っていた所です。一緒に行きましょう」

 

 

 ラウラが食事の誘いで来たのだと知った太郎が、そう提案するとラウラはこれ幸いと頷いた。実はシュヴァルツェア・レーゲンの提示した【食事に誘う】とはデート的な意味合いの物だったが、ラウラにはそんな発想は無かった。間違ってもクラスメイト達で揃って学食に行くという意味では無い。早くもナビとラウラの間で齟齬(そご)が生まれているが、果たしてこのコンビは上手く行くのだろうか。

 

 

「それにしてもラウラさんの方から誘いに来るなんて珍しいですね」

 

「そうだね。何かあったの?」

 

 

 太郎とシャルが意外そうにしていた。こういう場合、大抵は太郎が誘うか、ラウラがいつの間にか参加しているかである。態々ラウラが声を掛けて来るのは珍しい事だった。

 

 

「い、いや、特に理由は無いぞ」

 

 

 シャルの問い掛けにラウラは首を横に振った。完全に嘘である。

 

 太郎達の反応は意外そうにしているが悪い感触ではない。ラウラは内心、恋愛支援ナビゲーションプログラムの有効性を痛感していた。ナビが無ければ学食程度、ラウラが自分から誘ったりはしなかっただろう。ラウラの場合、学食の席など何処に座ろうとほとんど自由なので、太郎がいればその近くの席に座るという位にしか考えが及ばない。太郎達と学食に向かいながらラウラは、ナビが起動状態になっている事を確認する。これさえあれば大丈夫だとラウラは信じ切っていた。

 

 

 

 

 太郎達が学食で食事をしていると、そこにセシリアや一夏達が合流した。その時、ラウラは既に太郎の左隣を確保していた。それもこれもラウラが自分から太郎を誘いに行っていたお陰と言える。ちなみに合流したのはセシリア、一夏、箒、鈴である。

 

 ラウラは表情こそ変わらないものの、機嫌良く食事をしていると唐突に新たな選択肢が眼前に現れた。

 

 

【チャンスです。標的に接近しています。狩りの手法を選んでください】

【1、料理を食べさせて上げる。定番のあーん】

【2、飲み物をわざと相手の股間付近に(こぼ)し、拭いてあげる】

【3、飲み物に睡眠薬を入れる】

 

 

 実はこの文章、ラウラの脳に直接データが送られているので周囲からは見えない。ラウラからすれば何も無い空間に文章が浮いている様に見えるが、そう脳に認識させているだけである。その為にラウラが突然、何も無い空中を凝視しし始めた様に周囲の人間には見えた。

 

 

「ラウラさん、どうかしましたの?」

 

「いや、何でもない」

 

 

 ラウラの様子を不思議に思ったセシリアが訊ねてみるが、ラウラは何でもないと取り合わない。セシリア以外の者達も不思議そうにラウラの様子を窺っていた。そんな中、一人だけそわそわしている人間がいた。

 

 

「ちょ、ちょ、ちょっと、ラウラそういうの止めてよ。悪趣味よ」

 

 

 震える声でそう言ったのは鈴だった。

 

 

「そういうの、とは何だ?」

 

「だ、だから、何か見えてる振りをしているんでしょ」

 

「ち、違うぞ。何も見えてなどいない」

 

 

 ラウラは鈴がナビの存在に気付いたのかと思い焦って否定した。しかし、その様子を見て鈴は余計に勘違いし、平静さを失う。鈴はオカルト的な事が苦手であった。

 

 

「もももももしかして・・・・・本当に何か見えてるの?」

 

「な、んの事か、わ、分からんな」

 

 

 ラウラはラウラで太郎攻略の秘密兵器と言っても良い恋愛支援ナビゲーションプログラムの存在が、露見しては拙いと焦りの色を隠せない。その反応が鈴からすると余計に悪い方向へ想像を膨らませてしまう元となるのか、どんどん顔色は悪くなり目に見えて分かる程に体が震えていた。

 

 そんな中、何とか誤魔化そうとキョロキョロしていたラウラの手が水の入ったコップに当たってしまい、太郎の股間辺りに水を撒いてしまった。図らずも選択肢の【2】を選んでしまう事になる。

 

 

「あっ、す、すまない」

 

「いえ、水くらい大した事ではありませんよ」

 

 

 謝罪するラウラに太郎は何の問題も無いといった態度だった。むしろラウラに股間を拭かれて満更でもない様子である。

 

 

「もうちょっと強く拭いてください」

 

「こうか?」

 

「そうそう、もうちょっとひだっぐげええ!!!?」

 

 

 楽しい一時(ひととき)を堪能していた太郎の顔面を強烈な衝撃が襲う。太郎の顔面に学食で使われているトレーが飛んで来て直撃したのだ。驚いたラウラ達がトレーが飛来してきた方向を見ると、そこには鬼の様な形相の千冬が立っていた

 

 

「貴様ら随分と愉快な事をしているな。ここで合コンでもしているのか。それとも新手のプレイなのか?」

 

「・・・痛いですね。ちょっと水を零してしまったので拭いて貰っていただけですよ」

 

「そうか、それなら寮の乾燥機を使え。学食でいかがわしい事をするな」

 

 

 取り付く島もない千冬に太郎も諦めたのか、食事もほぼ終わっていたので千冬の言葉に素直に従う。そんな太郎に黙って付いて行こうとしたラウラだったが千冬に肩を掴まれてしまった。

 

 

「お前にはまだ話がある。この間、アイツにキスをした時に色々説教した筈だが全く理解していなかったみたいだな。ちょっと私の部屋まで来い。改めて説教だ」

 

「そ、そんな・・・・・私の行動に誤りが?おかしい。私は指示にちゃんと従ったはずだ」

 

 

 ラウラは何故千冬が怒っているのか分からず、眼前に浮かんでいる様に見える選択肢を見直しつつ呟いた。その様子を見ていた鈴が顔を真っ青にしていた。

 

 

「やややっぱり何か見えてんじゃない」

 

 

 そんな鈴に何かを答える間もなくラウラは千冬に連行されてしまった。

 

 

 

 

 




鈴がオカルト的な事が苦手という設定が原作にあるかどうかは分かりません。今回こういう風にしたのは、単純に私がそんな鈴を見たかっただけです。


イカゲー・・・・買っちまったよ。本体ごと。エロゲーもいっぱい積んでるのに学習しない人間です。どうせやる時間ないのに。


読んでくれてありがとうございます。

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