ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第5章 臨海学校へ向けて
第65話 ドイツからの救援物資


 6月23日金曜日の夜、ラウラの待ち望んでいた物がついに彼女の元に届いた。ドイツ軍から届いたソレは、山田太郎攻略支援の為に開発された、IS専用追加プログラムが入った記憶媒体であった。ネット経由でデータだけを送れば済むところだが、記憶媒体にデータを入れ大使館職員へ持たせて直接IS学園に届けさすといった念の入れ様である。

 

 記憶媒体にはラベルが貼ってあった。

 

 

【恋愛支援ナビゲーションプログラム 男を狩る技術1,2,3(アイン、ツヴァイ、ドライ)

 

 

 ラベルに書かれたタイトルを見てラウラは拳を握り呟いた。

 

 

「こ、これさえ、これさえあれば、もっとパパと仲良くなれるはずだ」

 

 

 ラウラはこれまで大きな挫折も経験して来たが、自分の能力に関しては自信を持っていた。しかし、社会経験やコミュニケーション能力の欠如に関してだけは、どうすれば改善出来るかすら分からない状態だった。そんなラウラにとって、このプログラムは羅針盤の様な存在になる筈だ。

 

 

「これをシュヴァルツェア・レーゲンにインストールしてやれば良いのだな」

 

 

 ラウラは早速シュヴァルツェア・レーゲンを展開し、プログラムをインストールし始めた。ラウラは【インストール中】という画面表示を見ながらソワソワしていた。このプログラムの詳細はラウラ自身ほとんど知らない。これを届けた大使館職員の話では「インストールすれば分かる」との事だ。このプログラムがどの様な形で自分を支援するのか、ラウラは色々と想像を巡らしながらインストールが終わるのを待っていた。

 

 

【インストールが終了しました。プログラムを起動しますか?Yes/No】

 

 

 画面表示が【インストール中】というものから切り替わった。ラウラがYESを選択するとまた画面が切り替わる。

 

 

【初期設定を行います。質問にお答えください。これから出る質問に対して選択肢が表示されるので最も合っている選択肢を選んでください】

 

 

 ラウラは表示された文章を読むと誰も見ていないのについつい頷いてしまっていた。

 

 

【質問・貴方の恋愛に関する状態をお答えください】

【1、好意を持っている特定の相手がいる】

【2、特定の相手はいないが恋愛がしたい】

【3、誰とでも寝る】

 

 

 ラウラは【1】を選択した。恋愛というものがイマイチ分からないラウラであったが太郎へ好意を持っているのは確かであった。それと【3】の選択肢はラウラには良く分からなかった。厳しい訓練を乗り越えて来たラウラとはいえ睡眠時はどうしても隙が生じる。それなのに誰とでも一緒に睡眠をとるというのは危険では無いのか、などとズレた事を考えていた。

 

 

【1と答えた貴方に次の質問です。その相手との関係をお答えください】

【1、相思相愛】

【2、友人もしくは知り合い】

【3、嫌われている】

 

 

「確か・・・・相思相愛というのはお互いに好意を持っている場合の事だな。それなら1だ。私を魅力的だと言っていたし間違いない」

 

 

 ラウラはブツブツと自問自答しながら【1】を選んだ。

 

 

【1ですね。それではより具体的な関係性をお答えください】

【1、将来を誓い合った仲。もしくは結婚中・婚約中のいずれか】

【2、真剣ではあるが将来については未定】

【3、遊び】

 

 

「援助交際は結婚や婚約とは違うと思うが・・・・・将来についてはパパが私を貰ってくれるらしいから1でいいのか?」

 

 

 首を傾げながらもラウラはまた【1】を選択した。

 

 

【1ですね。それでは最後の質問です。貴方とその相手にはお互い以外の恋人や愛人が存在しますか?】

【1、存在する】

【2、存在しない】

【3、わからない】

 

 

 この質問にラウラは頭を悩ませた。自分には恋人や愛人など存在しないが、太郎はどうなのだろうか。太郎にはシャルロットや楯無など仲が良さそうな女生徒が多い。ラウラはその事を考えると何故か胸が苦しくなった。

 

 

「分からないな・・・・3で良いか」

 

 

 もやもやした気持ち振り払いラウラは選択肢を選んだ。すると少し時間を置いて画面が切り替わった。

 

 

【現状を把握しました。貴方は既に勝利をほぼ手中に収めていると言っても過言ではありません。しかし、油断は禁物です。恋愛にはルールなどありません。恋愛界は弱肉強食、人外魔境。何が起こるか分からない厳しい世界です。何時、第三者の介入があるかも分かりません。相手との関係をより強化し、メンテナンスし続ける事が重要です】

 

「そ、そうなのか・・・・・」

 

 

 文章の序盤はラウラも思わず笑顔になってしまう位、良い内容だった。しかし、中盤以降を読んだラウラの表情は厳しかった。

 

 

(ルールの無い人外魔境。第三者の介入。戦場ですらルールはあるというのに・・・・・)

 

 

 自分が想像していた以上に世界は厳しいものの様だ、とラウラは改めて気を引き締めていた。そんなラウラの視界に新たな文章が現れた。

 

 

【それでは今後の方針を決めましょう。最も力を入れたいものを選んでください】

【1、相手との関係を強化する】

【2、自分と相手との関係性を周囲に広め既成事実化、周囲への牽制】

【3、相手に擦り寄る泥棒猫、もしくはその可能性がある者を排除する】

 

 

「2は効果があるのか?3も駄目だな。周囲の人間を排除するなどパパが認めるとは思えない。ここは1だな」

 

 

 ラウラに恋愛の駆け引きなど分からない。兎に角、太郎との関係を強化すれば良いだろうと結論付けた。恋愛支援ナビゲーションプログラムをインストールされたシュヴァルツェア・レーゲンはラウラの現状を把握し、今後の方針を設定された事でついにその真価を発揮する事になる。

 

 そして、ドイツ軍謹製の恋愛支援ナビゲーションプログラムがIS学園一のボッチコンビ、ラウラ&シュヴァルツェア・レーゲンを変化させる。それが太郎達にどのような影響を及ぼすのか。それは未だ分からない。

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

やっと来ました。私の娘であり恋人でもあるラウラ嬢のお話です。



>このプログラムは羅針盤の様な存在になる筈だ。

 艦こ○の羅針盤と同じ位信用出来る物になっております。

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