ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第64話 閑話・私のルームメイトはイギリス出身

 私、アリシア・ソレルには誰にも相談出来ない悩みがある。

 

 故郷であるスペインを離れIS学園に入学して2ヶ月程経ち、かなり個性的なルームメイトにも慣れて来た今日この頃。やっと慣れて来たと思ったそのルームメイトが最近おかしいのである。まあ、元々入寮初日から私へ相談もせず、部屋の家具から内装全体まで全て自分好みに変えた変人である。学園の寮へファンタジー物のお姫様が使う様な天蓋付きのベッドを運び込んでしまう変人が、最近おかしくなったと言っても今更ではあるが・・・・・。

 

 時を少し遡る。入学当初のルームメイトへの印象は、ハッキリ言って嫌な奴というものだった。事あるごとに「キョクトーガー」「ヘンキョーダー」「サル、ドレイ」と日本や日本人に対する差別的発言を繰り返していて、ルームメイトである私まで彼女と同類に見られそうで迷惑この上なかったし、日本通な私としてはムカつく事この上無かった。それに「無敵艦隊(笑)」としつこく私にも絡んでくるので、ついグーパンを入れてしまった。その後がまた面倒だった。

 

 

「決闘ですわ!!!ISで決闘ですわ!!!」

 

 

 と煩いのだ。私は未だ授業でもほとんどISに触れていないのに、専用機持ちとIS対決などアホらしくて付き合っていられない。煩い彼女の事を無視しているとイジけてしまって更に鬱陶しかった。

 

 そんな彼女が入学から少しすると急に日本や日本人への差別発言をしなくなった。最初は不思議に思ったが、理由の方は直ぐに噂で知る事になった。なんと彼女はクラスメイトの日本人に喧嘩を売り、ISによる模擬戦闘で(へこ)まされていたのだ。

 

 

 ざまああ、マジでざまああ!!!!!!

 

 

 しかも相手は男。只でさえ注目度の高い専用機持ちなのに、それより更に注目度が高い男性IS操縦者に負けてしまっては学園内で彼女の敗北に関する話題で持ち切りになる事必至である。そもそもサムライに勝てる訳無いって。刀で何でも斬っちゃうんだよ。それに負けたらハラキリしちゃう様な覚悟を持った相手だよ。天蓋付きのベッドで寝ているお姫様(笑)が勝てる訳無いでしょ。

 

 正直言って、この件に関してはスカっとした。前から日本の悪口を言うこの女を何時か〆てやろうと思っていたので手間が省けた。別に差別意識を持つなとは言わないが、小さな子供の頃からマンガやアニメで日本に憧れてここへ来ている私の様な外国人だっているんだから余計な事を口外すんなって話である。そういうのは心の中と仲間内でやれっての。

 

 凹まされた彼女だが、それで大人しくなったかと聞かれると残念ながらそうはならなかった。差別発言はしなくなったが、逆に日本を褒めちぎる様になったのだ。どうやら自分を凹ました男性IS操縦者に惚れてしまった事が原因だった。その男性IS操縦者の生まれ育った日本という国まで好きになってしまった様だ。単純過ぎるだろ。そして、彼女は前よりウザくなった。

 

 いっつも、その男性IS操縦者の事ばっかり話して惚気てウザ過ぎる。しかも、まるでその彼と恋人同士であるかの様に惚気ているが、彼と彼女は単なる友人関係である。9割妄想である惚気話を延々とされて頭がおかしくなりそうである。それに私は織斑派だ。

 

 彼女が惚れている男性IS操縦者は山田 太郎である。それとは別にIS学園にはもう1人、男性IS操縦者がいる。それが織斑 一夏だ。私の好みは織斑 一夏の方だ。何が良いって顔が好みなのだ。姉である千冬様譲りの美形で、姉とは違って優しそうな笑顔も最高である。山田 太郎も悪くは無い。顔も体も男らしい。これでキモノを着て、刀を持っていれば理想的なサムライである。しかし、流石に私からすると年上過ぎる。10以上年上なのはちょっと・・・・。まあ、そこは人それぞれだと思うけど。

 

 ここで話は最初に戻る。山田さんに惚れてよりウザくなった彼女なのだが、最近更に様子がおかしくなった。ある日を境におかしな行動をする様になったのだ。ある日というのは「学園内のセキュリティーのチェックの為に寮から出る事を禁止されていた日」である。あの日を境に彼女は毎日おかしな行動をする様になったのだ。

 

 最近の彼女は寝る時に布団を頭から被り、ゴソゴソと何かをイタシテいるのだ。はあ、はあ、と荒い息遣いが漏れ聞こえて同じ部屋にいる者としては落ち着かない。そして、極めつけは昨日聞えた彼女の呟きである。

 

 

「太郎さんの金玉に包まれて幸せですわー」

 

 

 意味が分からない。意味が分からないよ。金玉に包まれるとは、どういう状況なのだろうか。頭がおかしくなりそうだ。こんな事、誰かに相談したら絶対私までキチガ○扱いされてしまうだろう。しかし、本人に聞くのも怖い。ああ、どうすれば良いんだろう。結論の出ない葛藤を今日も私は続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




注意・・・セシリアの言っていた「金玉」とは金井玉島というIS用品も作っているメーカーの略称であり、ここではオークションで競り落とした太郎のISスーツを指しています。正確にはカナタマと読みます。しかし、セシリアはカナタマと読んでいません。これは太郎からこのISスーツに関する情報を詳しく聞いていなかった為に、セシリアが後からネットで調べたせいです。

セシリアは某ネット知恵袋的な所で、手に入れた太郎のISスーツの詳細について質問し嘘を教えられてしまったのです。ああ、なんて酷い事を(棒)




前から書きたいと思っていたオークション後のセシリアの話です。

最初はセシリア視点で書こうと思っていましたが、第3者視点でどう見られているのか描写してみました。


読んでいただきありがとうございます。

次から新章の予定です。

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