ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第57話 怒れる狂気

 

 

「あのクソマ○コどもっ、頭引っこ抜いてアイツらの腐れ穴にブチ込んでやるわっ!!!!」

 

 

 第2アリーナのピットへ繋がる通路に1匹の怒り狂った野獣がいた。それはIS学園生徒会長である更識 楯無だった。

 

 

「楯無さん、落ち着いてください!」

 

「ISを展開しては駄目ですわ!」

 

「そうだぞ。頭を引き抜くと人間は死んでしまう。こんな所で殺人はまずい事になる」

 

 

 シャル、セシリア、ラウラが必死で楯無を抑えていた。

 

 楯無達は太郎から簪の専用機が届くと聞いて、それを見に来ていた。しかし、楯無だけは専用機というより簪自身を見に来ていた。そこで突然現れた襲撃者に心無い言葉を浴びせられて涙ぐんだ簪の姿を見たのだ。そして、激怒した楯無は襲撃者達に襲い掛かろうとしてシャル達に取り押さえられたのだ。

 

 シャル達が必死に楯無を抑えている間に太郎達は襲撃者を倒し、ピットへと運んでいった。それを見た楯無は自分もピットへ向かおうと押し留めようとするシャル達を引き摺りながらピットへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

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 その頃、第2アリーナのピットでは状況が変わり始めていた。未だに沈黙を守る川島影子と理屈に合わない言い訳を続けている福瀬かほとは違い残りの2人は自分達の置かれた状況を理解していた。

 

 

「・・・・・今回の事は全面的に私達が悪かったです」

 

 

 残っている2人の内の1人、高須鈴香は深々と頭を下げた。もう1人の方、小井貴子も一緒に頭を下げていた。もし太郎達に今回の事を徹底的に責められた場合、自分達に待っているのは絶望だけだとこの2人には分かっていた。証拠、証人ともに太郎側が圧倒的に有利である。ISを使っての襲撃が明るみに出れば退学程度では済まないかもしれない。高須と小井は今更ながらに自分達の軽率な行動を後悔していた。

 

 

「えーと、貴方達は・・・高須さんと小井さんですね」

 

「はい、ごめんなさい。どうかしていたんです。・・・・・だから・・・どうか今回の事は穏便に」

 

 

 太郎の問いかけに高須は答えて謝罪した後、地面に額が付きそうな位に頭を下げていた。

 

 

「何を勝手に謝ってるのよ。私は悪くないわっ!」

 

「アンタの方こそ黙ってよ!」

 

 

 謝罪をしていた高須に対して福瀬が文句を言ったが、横にいた小井に強く言い返されて黙ってしまった。このグループの力関係は小井の方が上なんだなと太郎は察した。

 

 その時、ピットに狂える野獣が乱入した。

 

 

「見つけたわよっ、このゴミクズどもがっ!今すぐ粉砕して焼却炉に放り込んでやるわ!!!!」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

 

 楯無は自分の事を抑えようと縋り付いているシャル達を引き摺りながらピットに現れた。最近、疎遠だった姉が突然現れた事に簪は驚きの声を上げた。

 

 

「楯無さんに簪さんの専用機が完成すると言ったら絶対見に行くと言っていたんですが・・・・・やはりアリーナに来ていたんですね」

 

 

 シスコンを拗らせまくった楯無なら確実に何処かで見ているだろうなと太郎は確信していたが、やはりアリーナに来ていたようだ。

 

 

「なんで・・・・お姉ちゃんが・・・・・」

 

「何故って、楯無さんが簪さんの事を大好きなのは誰が見ても明らかでしょう。この前も大切な妹の専用機が届くと聞いてはしゃいでましたよ」

 

「お、お姉ちゃんは・・・・・私の事なんて・・・」

 

 

 太郎の言葉を否定する簪に、太郎は楯無を指差して言った。

 

 

「大切な妹が襲われたからこそ・・・・・あんなに怒っているんですよ。いつも余裕綽々としている楯無さんがあれだけ必死になるという事の意味を考えてあげてください」

 

 

 シャル達を引き摺りながら襲撃者達に詰め寄って行く姿は、普段のマイペースで余裕のある楯無からは想像も出来ないようなものだった。そんな楯無の姿を見て、簪は楯無に感じていた蟠り(わだかま)が薄れていくのを感じた。

 

 

(私が勝手にお姉ちゃんと比べられる事を気にして距離をとっていたのに、お姉ちゃんは昔と変わらず私の事を大事に思ってくれていたんだ)

 

 

 簪はそう考えると何だか嬉しくなって笑顔になってしまった。そこにはもうアリーナで心無い言葉を浴びせられ、涙を流していたか弱い少女は存在しなかった。

 

 

 そんな簪の心の変化を知る由も無い楯無は、まだ4人の襲撃者達に掴みかかろうとしていた。その楯無の執念に見かねた太郎が川島達と楯無の間に止めに入った。

 

 

「どいて!太郎さん、そいつらを庇うの!!!」

 

「楯無さん、流石にそれは拙いです。殺すのはダメです」

 

 

 止めに入った太郎の言葉の最後には「ここでは」というニュアンスが込められていた。この場でその恐ろしい事実を察する事が出来たのは楯無とシャルだけだった。太郎は川島と福瀬を指す。

 

 

「楯無さん、そこの2人は何の反省も無い様なので好きにして構いませんよ。どうぞ持っていってください」

 

「ふっふふふふふ、良いの。今の私はまともじゃないわよ」

 

「まあ、問題にならない様に上手くやってください」

 

 

 楯無の目に危ない光が宿っていたが、太郎は楯無を信頼しているのかそれだけ言って川島達を引き渡した。楯無に呼ばれた更識家所属の警備員が直ぐに2人を何処かへ運んで行った。その様子を見ていた高須と小井は震え上がっていた。

 

 

「簪さん、この残った2人の処遇に関して何か希望がありますか?」

 

「ううん・・・・私はもういい・・・」

 

 

 太郎の問いに晴れやかな気分だった簪は首を横に振って、これ以上の処罰を望まなかった。それを受けて太郎は高須達に向き直った。

 

 

「貴方達は反省して謝罪もしたという事で一応許しましょう。学園側からの処分に関しても軽くなる様に私の方で手を打っておきます」

 

 

 太郎の許しに高須と小井は顔を綻ばせた。そこに太郎は1つだけ付け足した。

 

 

「ただし、貴方達の反省が上辺だけの空虚なものであった場合・・・・・貴方達はその報いを受ける事になりますよ」

 

 

 そう言った太郎の目を高須達は良く見ておくべきだった。その時、彼女達を見る太郎の目は猜疑に満ちたものだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話から分岐したエンディングをR-18に投稿しました。

「ISー(変態)紳士が逝く R-18エンディング集」の中の

ノーマルエンド「堕ちた主義者」がそれです。

作者名から辿れば逝けます。このページの私の名前をクリックすれば私の投稿小説リストが表示されると思います。そちらにあるので興味のある18歳以上の方はご覧になってください。

内容としてはIfのシナリオであり、本編とは違うので読まなくても今後の展開には関係ありません。


お読みいただきありがとうございます。

次の投稿は土曜日にします。

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