ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第50話 トレジャーハント 2

 魔境と化したIS学園寮長室、太郎と一夏はその中へと一歩を踏み出した。

 

 2人は先にゴミとそれ以外の物を分別する事にした。千冬は一夏の「手を出されるとむしろ邪魔」という言葉で見ているだけになった。

 

 とりあえず大量にあった缶ビールの空き缶を片付ける。それらは全て千冬が口を付けた物だろう。本来なら太郎にとって何物にも代え難いお宝になりそうな物なのだが、いつの物なのか分からない埃を被った空き缶をペロペロする気には流石になれなかった。使えそうにない空き缶は潰して分別していく。その時、美星が何かを発見した。

 

 

『マスター、そこの机の上にある缶は比較的開封されてから時間が経っていないです』

 

(先ずはお宝1個ゲットですね)

 

 

 太郎は千冬達に気付かれない様に他の空き缶と分けておいた。

 

 ツマミの食べ残しなどは完全に危険物質になっていたので全てゴミ袋に放り込む。恐らく部屋の生ゴミ臭はこれと流し台が原因だろう。ツマミの食べ残しをゴミ袋に放り込みながら太郎は近くにあった使用済みのフェイスタオルを懐に忍ばせたジップ○ックへと神業的な速度で折りたたんで入れた。

 

 

(順調ですね)

 

『世界最強と言えどマスターがゴミを分別しながらその一部を回収している事までは見通せないでしょう』

 

 

 太郎と美星がプライベート・チャネルで内緒話をしていると一夏が太郎の元にやって来た。

 

 

「太郎さん、ちょっと・・・・・・」

 

「どうしたんですか?」

 

 

 一夏が何かを言い掛けて止めてしまったので、太郎は不思議に思いどうしたのかと聞いてみると一夏は黙ったまま流し台の方を指さした。流し台は部屋に入ってすぐの所にあったので、その惨状は太郎も既に確認していた。使用済みのマグカップやカップラーメンの容器などが積み重なっていた筈だ。それにしても一夏の様子がおかしい。太郎は流し台に近付き改めて状況を確認してみた。

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 絶句である。その惨状を正確に把握すると太郎は絶句してしまった。カップラーメンの容器に残ったスープに何か白っぽい毛羽立った膜が出来ていた。そして、そこから異臭がしていた。

 

 流し台のシンクの部分も3分の1程が黒い膜のような汚れに覆われていた。壁際の辺りにはキノコの様な物まで生えていた。

 

 

「どうしてこんなになるまで放っておいたんです」

 

「・・・・・仕事が忙しくて・・・・ついな」

 

 

 千冬は太郎から目を逸らせつつ小さな声でそう言った。それを聞いた太郎と一夏は大きな溜息を吐いた。千冬は時間があっても掃除しないだろうと2人は確信していた。

 

 

「織斑先生、学園の食堂はとても豪華なのに何故カップラーメンなんて食べているんですか?」

 

「・・・・・・寝る前にビールを飲むと、ついラーメンも食べたくなるんだよ。偶にだぞ。偶に・・・・週3位だから」

 

 

 太郎は疑問に思っていた事を千冬に聞いてみた。すると予想以上にダメ人間な答えが返って来た。呆れた様子の一夏は千冬に説教しながら流し台の掃除を始めた。

 

 

(流し台には使えそうなモノはないですね。むしろ触ると病気になりそうです)

 

『ここは危険がいっぱいです。別の場所を漁りましょう』

 

 

 太郎は部屋の中をゆっくりと見回し良い物を見つけた。それはベッドだった。ただベッドは持って帰れないので、太郎が目を付けたのはベッドシーツと枕カバーだった。

 

 

「織斑先生、最後にベッドシーツを洗ったのは何時(いつ)ですか?」

 

「・・・・・・覚えていない。そもそも洗った記憶がない」

 

「・・・・・・布団ごとクリーニングに出しておきますね」

 

 

 予想の斜め上をいった千冬の言葉だったが、太郎は気を取り直して新たに手に入れた布団などの戦利品を部屋から運び出し自室に置いて来た。心の中では拍手喝采、踊りだしそうな気分だった。

 

 そして、千冬の部屋の探索はクライマックスに突入する。そう、千冬が脱ぎ捨てた衣類の処理である。

 

 先ずは見慣れた黒いスーツと白いワイシャツ。スーツは流石にハンガーへ掛けられていたがワイシャツは床に脱ぎ捨てられていた。それもかなりの数が。

 

 

「ワイシャツも数があるのでアイロンがけの事まで考えるとクリーニングに出した方がいいですね。ではっ!」

 

 

 弾むような声で太郎はそう言ってくしゃくしゃになってしまっていたワイシャツ達を回収した。クリーニングに出すと言ったのは、もちろん嘘であった。同じ物を買ってそれを千冬に渡せば気付かないだろう。

 

 ワイシャツを回収する際に予想外の戦利品が付いて来た。ストッキングである。黒のパンストである。スーツとワイシャツを脱ぐ時に一緒に脱いだ為に近くにあったのだろう。何足かをワイシャツで挟んで外から見えないようにして回収する。

 

 太郎がふと足元を見るとジャージの上下が脱ぎ捨てられていた。IS実習の時に千冬が来ていた物だ。太郎が手にとってみると、下の方は雑に脱いだ為に足の部分が裏返ってしまっていた。それを戻そうとするとそこには・・・・・ソックスが半分裏返った状態で入っていた。横着して脱いだ為にこうなったのだろう。これは静寐さんが喜ぶぞと太郎は満面の笑みとなった。

 

 

(目ぼしい獲物は粗方手に入りましたかね)

 

『そうですね』

 

 

 太郎が美星と今日の戦果について話をしようとしていると視界の隅に黒い何かが2つ見えた。それはくしゃくしゃな布ような物だった。千冬や一夏に気付かれない様に近付き手に取ってポケットにねじ込んだ。

 

 

(美星さん・・・・・・大変な事になりましたよ)

 

『今、拾った物は何だったのですか?』

 

(・・・・・・下着です)

 

『だ、だ、だ、大戦果じゃないですか!!!』

 

 

 美星が驚きのあまりにどもるという珍しい事態であったが、太郎自身も興奮を抑えられずそれどころではなかった。ゴミをゴミ置き場に持って行くと行って太郎は1度部屋から出た。そして、周囲に誰もいない事を確認しポケットの中身を出した。

 

 

 それは黒レースのブラとパンツだった。

 

 

 太郎は感動と興奮のあまり絶叫しようになったが、なんとか我慢した。とりあえずブラとパンツをジッ○ロックに収め、急いでゴミを出しに行った。その後、千冬の部屋に戻った太郎は凄かった。1秒でも早く戦利品を堪能したいが為に3倍速かと思う程に迅速に片付けを仕上げていった。

 

 もう少し。

 

 後ちょっと。

 

 これを片付ければヘヴンに旅立てる。

 

 

 

 太郎の動きは千冬と一夏が目を見張っている程のものだった。瞬く間に千冬の部屋を片付け終えた太郎は挨拶もそこそこに自分専用となっている個別整備室D-3へとひた走る。今の彼ならオリピックの短距離部門のメダリストとも張り合えるだろうという驚異的な速さで駆ける。ヘヴンへと────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに禁断の宝具を手に入れた太郎。

彼の魂は天を目指して駆け上がる。もう誰も止められない。

そして、○○を開いた太郎によってIS学園の歴史がまた1ページ。



次回もしくは次々回「深夜のカーニヴァル」をお楽しみに。


お読みいただきありがとうございます。

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