アイエスがくえんのせんせえは、たいへんだなーておもいました(棒
今年度の入学式が開かれる数日前に遡る。
会議室でIS学園の関係者は皆一様に頭を抱えていた。今年度はただでさえ史上初の男性IS操縦者が発見され学園に入学することになり、その対応に追われているというのに・・・・。
「どうしても断れないのでしょうか」
苦々しげな表情で一人の教師が学園長に訊いた。
「今回の件をIS委員会は要請と銘打っていますが実質的には命令です」
「しかし、危険すぎます。驚異的な身体能力を持った性犯罪者をほぼ女子校であるIS学園に入学させるなど正気の沙汰ではありません!!」
ここで行われているのは世界で二人目の男性IS操縦者である山田太郎のIS学園入学についての対策会議であった。山田太郎については当初IS学園に入学させるという話は一切なかった。そもそも前科があり、ISを起動させた時もIS学園の入試試験会場に計画的に「不法侵入」した犯罪者である。だが彼は今回の件で逮捕はされていない。それどころか前科に関する情報も公式には無かったことにされている。
その理由は単純である世界でたった二人しかいない男性操縦者に大きな利用価値を政府が見たからだ。彼から有用なデータが採れるかもしれないし、データ採りが終わればその身柄を外交カードとしても使えるのではないか?という計算から前科などという余計な情報は邪魔であった。
政府関係者は興奮していたIS登場以来自国の世界的立場はどんどんと上がっている。そのうえで男性操縦者の独占である。もう笑いが止まらない。とりあえず彼のことを説得し自国の公的な研究所に「合意の上で」所属してもらっていた。色々と便宜を図ることになってしまったが。
これが他国は面白くない。ただでさえ貴重な男性操縦者を日本が独占など不公平だと騒ぎ始めた。国際IS委員会で強制的に山田太郎の国籍を剥奪し日本から取り上げてしまおうという動きもあったが、日本も黙っていなかった。
日本の公的機関に所属している人間を当人の意志を無視して国籍を剥奪し身柄を押さえようという「非人道的」な行いを国際IS委員会が行おうとしていると各国のメディアにリークしたのだ。各国のメディアと野党はこれを煽り立てた。その後、妥協案として出されたのが所属は日本の研究所。但しIS学園へ入学し学園で採れたデータに関しては各国で共有するというものであった。
日本国政府はこれを渋々了承し、太郎はIS学園という自身にとって楽園のような場所に入れることに歓喜し二つ返事で了承した。
そして最後に貧乏くじを押し付けられたのがIS学園。とりわけ現在この会議室にいるメンバーであった。そのメンバーの中で最年少である更識 楯無が千冬と真耶に質問する。
「織斑先生、山田先生、この山田 太郎という人物と直接顔を合わせたことのある人間はここには御二人しかいません。今用意してある資料からは身体能力に長けた変態ということしかわかりません。何か気付いたことがあれば教えてくれませんか」
「裸だったな」
「裸でした」(顔が真っ赤)
「そ、それだけですか・・・・」
全く何の参考にもならない情報に会議室は幾分暗くなった気がする。
「私としてもアイツのことは良く分からん。ただ余計な事をしなければ積極的に他者を傷付けたりするタイプには見えなかったな」
千冬の言葉はおそらく今日唯一の明るい材料であった。ここで今までほとんど発言していなかった裏の学園長である轡木 十蔵が重い腰を上げた。
「普段は拘束衣などで行動を制限し監視を付けるくらいしかやれる事はありませんね」
その場にいた全員が頷く。そうやれることは限られている。それならばやるしかないのだ。大まかな方向が決定し具体的な計画などを話し始めたところで楯無が手を挙げる。
「私の方で直接少し探りを入れて見てもいいですか?彼がどういう人間か知っておきたいので」
敵を知り己を知れば百戦危うからず。ISすら持っていない人間相手なら学園最強の楯無に万が一のこともない。危険性についても問題ないだろう。楯無の発言に反対するものはいなかった。ただ千冬だけが何か思うことがあったらしい。
「アイツを甘く見るな。呑まれるぞ」
楯無はこの時の千冬の言葉をもっと真剣に聞いて置くべきであった。
お読みいただきありがとうございます。
次回かその次くらいからやっと太郎さんの本領が発揮されます。
ここまでは前置きみたいなものだったのさ!!!!!
これからも駄文にお付き合いください。