ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第47話 それでも私はやっていない 1

 太郎は紹介したい人がいると言い、セシリア、シャル、静寐の3人を伴って整備室にやって来た。IS学園には複数の整備室があり、ここはその中でも個別整備室D-3という場所であった。所謂、第1整備室や第2整備室は複数人、もしくは複数グループが同時に使えるように広く作られている。それらとは違い、この個別整備室はその名の通り予約した人間がその時間内は占有できるようになっている整備室である。第1整備室や第2整備室に比べると狭く設備も劣るが、試合前などに装備や機体状態を他人のいる場所で晒したくない人間が使用する整備室である。

 

 この個別整備室はアルファベットごとに使用する学年が分かれており、Aが1年、Bが2年、Cが3年という風になっている。そして、太郎が3人を連れてきたDは教職員などが使用する3番目の整備室である。ここは楯無経由で学園側に用意させた太郎専用の個別整備室である。太郎はかなりの寄付金を学園に支払う事になったが、後ろ暗い事の多い太郎にとっては便利な部屋であった。

 

 太郎達が整備室に着くと中では楯無が待っていた。セシリアと静寐の2人はこの人が太郎の紹介したい人(恋人?)なのかと、緊張した様子で観察していた。シャルは既に太郎から楯無を紹介されていたのでセシリア達のように緊張する事は無かった。

 

 

「こんばんは太郎さん、大事な用事って何かしら?」

 

「楯無さんに紹介しておきたい人がいるんですよ」

 

 

 楯無は軽く手を挙げて太郎に声を掛けた。その親しげな様子にセシリアと静寐の緊張はさらに高まった。楯無はそんな2人を見て、ニコっと人好きのする笑顔を作る。

 

 

「そちらの2人は始めましてよね。私は2年の更識 楯無よ。このIS学園の生徒会長であり、現役のロシア代表よ。よろしくね」

 

「は、はい・・・・私は鷹月 静寐です。よろしくお願いします」

 

「生徒会長・・・・そう言えば見覚えが・・・。わたくしはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 セシリアと静寐は笑顔の楯無から先に挨拶をされて、しどろもどろに挨拶を返す事しか出来なかった。次に楯無は2人から視線を外しシャルへと満面の笑みで近付き抱きついた。

 

 

「シャールちゃーん!元気にしてた?」

 

「はい、元気ですよって、ちょっ、ちょっと体触り過ぎっ、止めてっ!」

 

「まあまあ、いいじゃない。私が用意した女子用の制服のサイズがちゃんと合っているかどうか確かめてるだけよ」

 

 

 楯無は抱きついたままベタベタとシャルの肢体をまさぐった。もちろんシャルは抵抗したが、体術もかなり高いレベルである楯無相手ではほとんど意味を為さなかった。楯無は生妹成分が不足しているからコレはその代替だと言って、シャルへの接触を止めない。そして、楯無がシャルの肢体を堪能していると整備室の扉が唐突に開かれた。

 

 

「遅れてすまない。仲間からのメールに対応していたら遅れてしまった」

 

「こちらこそ急に呼び出して申し訳ありません」

 

 

 そこにいたのはラウラだった。太郎はラウラを整備室に招き入れると扉をロックした。

 

 楯無はシャルに抱きついたままラウラを観察していた。楯無はラウラに妹成分に近い何かを感じたのかシャルを開放してフラフラとラウラへと近付いていった。そして、抱きつこうとするがラウラも現役の軍人である。不穏な気配を感じたラウラが身構えると楯無も簡単には組み付けなかった。

 

 

「ふふふ、流石のドイツ軍仕込みね。隙が少ないわ」

 

 

 楯無は喋りながら隙を見つけたのかラウラへタックルしようとする。

 

 

「私は更識 楯無、生徒会っ、隙あり!・・・・ちょっと太郎さん!」

 

 

 そこを太郎が後ろから腰辺りに手を回して止めてしまった。抗議の声を上げる楯無に太郎は大きな溜息を吐き出した。

 

 

「話が進まないので、そういう事は後にしてください」

 

 

 楯無は太郎の腕の中から抜け出すのは、困難だと判断してラウラを襲う事を諦めた。

 

 

「さて、呼び出した人も揃ったのでそろそろ本題に入りましょう。貴方達に紹介したい人はこの人です」

 

 

 太郎がそう言って自らの専用機・ヴェスパを展開した。

 

 

「・・・・・ねえ、太郎さん。もしかして・・・このISが紹介したい・・・・・人?」

 

 

 楯無は半信半疑で太郎に聞いた。それに対して太郎は頷く。楯無を含め、太郎以外の全員が呆然となった。知り合いが「紹介したい人がいる」と言ってISを出して来たら誰でもこういう反応になるだろう。そして、考える筈だ「頭がおかしくなったのか?」と。

 

 しかし、彼女達がその考えを口に出す事は無かった。何故なら太郎が装着していない状態のヴェスパが勝手に動き始めたのだ。皆が注目する中、ヴェスパがゆっくりとお辞儀をする。

 

 

「皆様、はじめまして、私はこのIS・ヴェスパに搭載されているコアで美星と申します」

 

 

 美星の挨拶に太郎以外の全員が驚きのあまり目を見開いていた。

 

 実はセシリア、静寐、楯無の3人は無人で動くISを知っていた。クラス対抗戦で太郎と鈴の対戦時に乱入したISを見ていたからだ。セシリアは直接闘い、太郎によって破壊された無人のISを間近で見ていた。静寐も太郎の試合を観戦していたので遠目ではあるがそれを見ていた。楯無も太郎の闘いに興味があった為、隠れて観戦していた。それに更識家のトップとして無人ISの残骸の調査結果も受け取っていた。

 

 それでも3人の驚きは大きなものだった。まさか、無人のISがいきなりお辞儀をして自己紹介するなど想像もしていなかった状況に声も出ない。

 

 

「えええ、ど、ど、どうなっているの?」

 

「・・・・・ISの機体内に人間の脳と脊髄を搭載すれば・・・」

 

 

 そして、初めて無人で動くISを見たシャルは驚きの声を上げ、ラウラは恐ろしい推測をしていた。

 

 

「ラウラさん、私に人間の中枢神経など搭載されていませんよ。私は操縦者がいなくても機体を動かせます」

 

「なんだと・・・・・」

 

 

 美星の言う事が本当なら世界初の男性IS操縦者が発見された時と同等のニュースである。

 

 

「な、何故・・・この事を発表しないのですか!?」

 

「私や美星さんは実験動物になる気はありません。ですから、この事は秘密です。貴方達なら秘密を守れると思って教える事にしました」

 

 

 太郎はラウラの問いにはっきりと答えた。

 

 

「・・・・それで、ラウラさんはこの事を軍へ報告しますか?」

 

「い、いえ、パパの信頼を裏切る様な真似は出来ません」

 

 

 ラウラの答えに満足した太郎は次に他の者達を見回す。全員問題無さそうだ。

 

 

「では、他に質問のある方はいますか?」

 

 

 太郎の言葉にシャルが小さく手を挙げた。

 

 

「あのー、僕達に教えたのって秘密が守れそうっていう理由だけなの?」

 

「いえ、1番の理由は別です。貴方達とはこれからより深い関係になりそうなので、私の半身である美星さんの事を隠しておきたくなかったのです」

 

 

 太郎とより深い関係になりそうだと聞いて皆喜んでいるようだった。その中でも特に上機嫌なセシリアが手を挙げた。

 

 

「深い関係というのは・・・・それは例えば・・・わたくしと・・・・けっ、けっ、結婚を前提としっうぐぁっ!痛いですわ!」

 

「何を言おうとしているのよ!」

 

 

 セシリアの質問は静寐の延髄チョップによって遮られた。セシリアの抗議を静寐は無視して太郎に別の事を聞く。

 

 

「美星さんが操縦者無しでもISを動かせるし、人のように意思の疎通が出来るのも分かりました。それなら他のISコアはどうなんですか?」

 

 

 この静寐の質問に答えたのは太郎ではなく美星であった。

 

 

「多分、私以外のコアには難しいと思います。コアの開発者であるお母様、篠ノ之 束が操縦者無しでISを動かす機能に関しては現在はロックしていると思うので。あと人との意思疎通に関しては各コアの進化の仕方次第です」

 

「えっ、ロックされているんですか?」

 

「私の様なコアが増えて好きにISを動かし始めると困るので、自分の許可が無くては出来ない様にしていると思います。私に関してはお母様の干渉を受けない様に対処済みなのでこの様に動かせますが」

 

 

 

 美星の言葉は太郎以外の人間にとっては衝撃の新事実だった。

 

 操縦者がいなくてもコアさえあればISが動くという事。そして、篠ノ之 束が各国、各企業に与えたISコアに干渉出来るという事を知り驚愕していた。

 

 

「では、わたくしのブルー・ティアーズにもロックが掛けられているのですか?」

 

「ええ、でも安心してください。ブルー・ティアーズとシュヴァルツェア・レーゲンに関しては1度私の制御下に入った時に色々対策を仕込んで置きましたから、お母様からこれ以上大きな改変を受ける事は無いでしょう」

 

 

 不安そうなセシリアに美星は自信満々に答えた。

 

 

「安心しましたわ。・・・・あの話は変わるのですけど・・・わたくしのブルー・ティアーズにも美星さんの様な意思というか人格の様なものがあるんですか?」

 

 

 安心したセシリアは気になっていた事を美星に聞いてみた。

 

 

「ええ、ありますよ。ブルー・ティアーズのコアである263は天然でビッチな素直なコアです」

 

 

「「えっ・・・・・・!?」」

 

 

 部屋の中の空気が凍った。今、美星は何と言ったのか。天然でビッチと言わなかったか。

 

 

「あのー、聞き間違えだと思うのですけど・・・・・天然でビッチと仰いましたか?」

 

 

 セシリアが恐る恐る美星へ確認する。

 

 

「セシリアさんの聴覚は正常です。263は天然でビッチです。太郎さんに自分にも乗ってみて欲しいと言ってしまう位にはアホでビッチです。太郎さんは私のマスターですから、寝言は寝てから言って欲しいです」

 

「そんな・・・・・嘘ですわ・・・・わたくしのブルー・ティアーズに限って・・・・」

 

 

 残酷な真実にセシリアは両膝を地についてしまった。他の者達はそんなセシリアを気まずそうに見ていた。

 

 

「気にするな、オルコット。ISコアとしての機能に問題が無いのなら構わないだろ」

 

「ラウラさん・・・・・そうですわ。コアとしての役割を果たしているのなら問題ありませんわ」

 

 

 意外な事に落ち込んでいたセシリアをラウラがフォローした。それによって持ち直すかと思われたセシリアだったが、現実はそんなに甘くは無かった。

 

 

「あと、セシリアさんの機動は眠くなると263が言っていました。太郎さんがやっている様な魂まで響いてくるような激しい機動(ビート)を刻んで欲しいとか訳の分からない事を言っていましたね」

 

「太郎さんの機動なんて真似したら体が壊れてしまいますわ!」

 

 

 美星の告げたブルー・ティアーズの要望にセシリアは悲鳴を上げる。太郎特有の機動と言えば常人ならまず怪我をしてしまう、瞬時加速中の方向転換などがある。あんなものはセシリアには再現出来ないし、出来てもブルー・ティアーズが壊れる可能性が高い。

 

 美星もセシリアの意見に頷く。

 

 

「そうですね。太郎さんの真似は危険です。それと263の言う事は気にしない方が良いです。あの子はアホなので良く考えもせずにテキトーな事を言っているだけです」

 

 

 美星のフォローはセシリアの崩れ行く心の支えにはならなかった。精神的なダメージが大きくセシリアは抜け殻の様になってしまった。

 

 

「・・・・・もしかして他のコアもそんな感じなんですか?」

 

 

 静寐の疑問の声にセシリアと太郎以外の専用機持ち達がびくりと体を震わせた。彼女達の心はこの時、1つになっていただろう「余計な事を聞くな」と。

 

 

「シュヴァルツェア・レーゲンのコアは436ですが、良く言えば孤高ですね」

 

「孤高か。流石は私のISコアだ。良いではないか。」

 

「悪く言えば根暗なボッチです。コア・ネットワーク内でもいつも独りですね。他のコア達が戦闘に関する情報共有を行っていると参加したそうに見ていますが毎回言い出せずに、結局勝手にログを漁って白い目で見られていますね」

 

 

 自分のコアの現状を聞いたラウラの様子を一言で表現するなら、「ズーン」といった様子だ。まるで彼女にだけ重力が余分にかかっている様だった。

 

 

「ラウラさん、もっと友達を作って交友関係を広げてください。436がこんな風になっているのは貴方の影響ですよ」

 

「・・・・・・・わ、私にだって・・・助けてくれる者はいるっ!独りじゃない!」

 

 

 容赦ない美星の言葉にラウラは涙ぐみながら太郎に抱きついた。そこを美星の鋭い指摘が襲う。

 

 

「それは友達とは言いません」

 

「むがぁっ・・・・・・・・」

 

 

 トドメを刺されたラウラは呻き声を上げた後、黙ってしまった。

 

 

「後はここにはいない人のISコアですね。甲龍の417は兎に角、煩い子ですね。煩い割に打たれ弱く、その代わり立ち直るのも早いタイプです。白式のコアは263とは逆で身持ちは固いです。普段は優しいですが、やる事なす事、全てが極端な人なので近くにいると大変です」

 

 

 美星の甲龍と白式の評を聞いて全員納得してしまった。甲龍に対する煩いと言う評価は操縦者である鈴の活発な所からも何となく連想出来た。白式に関しても武装が一種類しか無いという他に類を見ない状態から極端さが窺える。

 

 美星が毒針によってそのコアの深層部まで干渉し状態を把握したのは、ここまで説明したコア達だけであった。それ以外のコアに関して美星は特に何かを言うつもりは無かったのだが、それをよしとしない者がいた。

 

 床にへたり込んでいたセシリアが幽鬼の如く立ち上がった。

 

 

「それでは次はシャルロットさんと更識会長の番ですわ」

 

「「えっ!!!!」」

 

 

 セシリアの発言にシャルと楯無が驚きの声を上げた。

 

 

「私はラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡや楯無さんの専用機とは交流があまり無いのでどんなコアなのか分かりませんよ」

 

 

 美星が消極的なのを見てシャルと楯無は内心喝采を上げていたが、それも直ぐに終わった。

 

 

「ここで彼女達のISコアを調べる事は出来ませんの?」

 

「出来ますよ」

 

 

 セシリアの問いに美星が即答し、シャルと楯無の希望は無常にも一瞬で散った。セシリアがシャルと楯無に笑顔を向けた。その笑顔には「貴方達も道連れですわ」と書かれていた。

 

 

「さあ、早くISを展開しなさい!」

 

「い、嫌だよ」

 

「お姉さんのミステリアス・レイディはちょーっと今日調子が悪いみたいだから今度にしましょ」

 

 

 幽鬼の如くにじり寄って来るセシリアからシャルと楯無は逃亡を試みるがここは狭い個別整備室である。直ぐに追い詰められてしまった。そして、何より2人にとって不幸だったのはこの部屋の主が既にヤル気満々になっていたのだ。

 

 

「ここにいる皆はこれから仲間としてやっていくんですよ。シャル、出しなさい!」

 

 

 シャルも太郎の指示には逆らえなかった。しぶしぶラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを展開した。

 

 

「マスター、私を装着してください。その方が毒針の能力が高まるので」

 

 

 美星の言葉に従い太郎はヴェスパを装着した。そして、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを抱えて毒針を撃ち込んだ。

 

 

(無抵抗なISを犯すなんて心が痛みます)

 

『本当ですか?心拍数などからは興奮している様に見受けられますよ』

 

(多少はそういう部分もあるかもしれません)

 

 

 そうこうしている内に美星はコアの掌握に成功した。

 

 

「さて、皆さん結果が出ましたよ」

 

 

 美星の一言に全員が固唾を呑む。シャルは祈るような気持ちで変な結果が出ていない事を願った。

 

 

「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡのコアである175は計算高く腹黒いですね。貞淑な振りをして獲物を誘い込んでモノにする狩人です」

 

「な、なにかの間違いだよっ!」

 

「あと私達がラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの制御系に侵入しようとした時に彼女は口では嫌だ嫌だと言っていましたが、一切抵抗しませんでしたよ」

 

 

 美星にシャルが何かの間違いだと反論したが、敢え無く撃沈した。

 

 

「ふふふ、シャルロットさんのコアもわたくしのブルー・ティアーズと同類ですわ」

 

「天然ビッチと一緒にしないでよ!」

 

 

 セシリアとシャルが醜い争いをしている間に太郎と楯無も争っていた。

 

 

「さあ、大人しくISを展開して下さい」

 

「今日は日が悪いわ。今度にしましょう、そうしましょう!」

 

「往生際が悪いですね。私は元々知っていますが、楯無さんが特殊な性癖を持っているは先ほどのシャルやラウラさんとのやり取りで私以外にもバレていますよ」

 

 

 楯無は激しく抵抗したが太郎相手では逃げ切れないとしばらくして観念した。楯無がミステリアス・レイディを展開すると早速、太郎と美星はミステリアス・レイディと合体した。

 

 

(ん?何かおかしいですね。毒針の干渉率が100パーセントを超えています)

 

『あー・・・・・それはミステリアス・レイディのコアが自分から進んでこちらに制御権を移譲して来ているからです』

 

(何故、彼女はそんな事を?)

 

『マスターには後で説明します』

 

 

 ミステリアス・レイディを調べる事は直ぐに終わったのだが美星はなかなか結果を言わなかった。あまつさえ──────────

 

 

「さて、皆さん。もう時間も遅くなったので寮へ帰りましょう」

 

 

 などと言ってこの集まりを解散させようとすらした。それに対してシャルとセシリアが猛抗議した。

 

 

「彼女だけ庇うのですか!ズルイですわ!ズルイですわ!」

 

「ここはやっぱり皆平等であるべきだと僕は思うなあ」

 

 

 そんなシャルとセシリアにも美星は折れなかった。

 

 

「世の中には知らない方が良い事もあります。貴方達には未だ早いです」

 

 

 シャルとセシリアが数分粘ったが美星を説得することは出来なかった。頑なに沈黙を守る美星を説得したのは、やはり彼女が唯一認めたマスターである太郎だった。

 

 

「美星さん、ここまで来て隠しても仕方が無いでしょう。ここにいる人間はこれから仲間として付き合っていかなければならないのですから、いずれその本性も露見します。これが良い機会だと思いましょう」

 

「・・・・・・分かりました」

 

 

 ついに美星が折れた。その場にいる人間全員、整備室の空気が重くなったように感じた。ミステリアス・レイディ以外のISコアについてはかなり酷い内容でもズバズバ言っていた美星が言うのを躊躇うなど、どれ程の内容なのかと皆の緊張感が高まった。

 

 

「・・・・・・・・・ミステリアス・レイディはバイです」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 誰も何も言わなかった。重い、重い沈黙が続く。

 

 だが、美星の報告には続きがあった。

 

 

「・・・・・・それとSでもありMでもあります。四刀流ですね」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 心なしか楯無と太郎以外の人間との距離が遠くなったような気がした。

 

 

「元々はSだったようですが太郎さんに負けてMにも目覚めたようです」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 かなり衝撃的な内容だったが美星からの報告は未だ終わりではなかった。

 

 

「・・・・・・あとシスコンを(こじ)らせたロリコンです」

 

「ぬ、濡れ衣よ!!!私はロリッ、ロ、ロリコンじゃないわっ!!!」

 

 

 楯無がついに抗議の声を上げた。だがそれは藪蛇だった。動揺する楯無へ美星が冷静に告げる。

 

 

「・・・・・・・ミステリアス・レイディの話ですよ」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 楯無の不自然なまでに焦った抗議が怪しさを倍増させた。そして、美星が最後の爆弾を落とす。

 

 

「ちなみにミステリアス・レイディの中に厳重に保護された領域がありました。何かと思って調べてみたら・・・・・楯無さんの妹と小柄なIS学園の生徒達の画像が大量に保存されていました」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 セシリアと静寐がラウラを楯無から遠ざけた。

 

 

 

 

 

霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)ですか・・・・・とんだ淑女がいたものですね」

 

 

 呆れた様な美星の声が整備室に響いた。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。


こちらの話としてはかなり長くなってしまい、出来上がるのが遅くなってしまいました。

ちなみにこのシーンはまだ続きます。次の投稿はまた1日か2日あくと思います。







最近大人しい話が続いてそろそろ私の中の獣が爆発しそうです。

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