ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第4章 蠢動
第46話 曲がらない道


 今のラウラは憔悴し切っていた。これまでラウラは過酷な訓練の後も、どんなに厳しい実戦の後にもこれ程消耗した事はなかった。ふらつきそうな体を奮い立たせ寮の自室へと帰り、ベッドに体を投げ出した。そして、先程までの事を思い返す。

 

 ラウラは朝のSHRの時間に太郎へキスした事で千冬から呼び出され、職員室で太郎と共に説教を受けた。しかし、言い足りない事があったのか、それとも個別に言うべき事があったのか、ラウラは放課後にも職員室に呼び出されて色々な事を言われていた。

 

 

 

 曰く、時と場所を考えろ。

 

 曰く、軽々しくキスをするな。

 

 曰く、する相手は慎重に選べ。

 

 

 千冬から様々な事を言われたラウラだったが、その半分も理解はしていなかった。SHR(ショートホームルーム)の時間に教室でキスしてはいけない事は理解出来たが、休み時間なら問題なかったのだろうか。などとラウラは考えていた。

 

 それにラウラからすれば軽々しくしたつもりは無い。相手に関しても太郎だからしたのだ。ラウラなりに考えた末の行動だったのだ。もし説教をしてきた相手が千冬以外の人間だったならラウラは完全に無視をしていただろう。 

 

 あと、説教内容自体も千冬自身の恋愛経験の無さから話に具体性が少なく抽象的なものだった。その為に恋愛経験どころかまともな人間関係すら結んだ事が殆ど無いラウラにとっては意味を理解する事は困難のものであった。ラウラとしても尊敬する千冬の言う事は出来るだけ聞きたいと思うのだが、理解出来ない内容の話を必死で聞いていると疲労も倍増である。

 

 千冬を怒らせずに太郎との距離を縮めるにはどうすれば良いのか。ラウラには全く有効な方法が思い付かなかった。そんなラウラに希望の光が差し込む。

 

 ラウラにドイツ軍から符丁を使った暗号メールが来ていたのだ。内容を確認すると────────

 

 

『山田 太郎 攻略 支援 用意中 数日 要』

 

 

 ラウラは心強い仲間の存在に感謝を覚えた。孤独に生きてきたと思っていたが違っていた。だが、今の自分は孤立無援では無い。未だどういった支援なのかは分からないが、心強かった。

 

 

 

 

 

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 ラウラが寮の部屋でドイツ軍からのメールを確認していた頃、太郎は寮の自室で数人の女性に包囲されていた。それはとても機嫌の悪そうなセシリア、シャル、静寐の3人だった。

 

 

「あれはどういう事ですの?」

 

「あれとは何の話ですか?」

 

 

 セシリアの怒気を孕んだ質問に太郎は本当に何の事か分からないといった感じで聞き返した。

 

 

「ラウラさんとの事ですわ!太郎さんとラウラさんはどういう関係なのですか!?」

 

「簡単に言えば、困った事があれば助けるから代わりに仲良くしましょうね。という関係です」

 

 

 セシリアの質問に太郎は平然と答えた。

 

 

「仲良くと言うのは、その・・・・キ・・・キッ・・キスも含まれているんですか!?」

 

 

 太郎の言葉にラウラと太郎がキスをしていた姿を思い出しながら、セシリアは顔を真っ赤にして問いただす。

 

 

「含まれます。流石にああいった場で私の方からキスをしたりはしませんが、魅力的な女性にキスをされて怒るような紳士はいません。」

 

 

 太郎がはっきりと答えると、セシリアは赤くしたまま小さな声で質問をする。

 

 

「で、では・・・・・今からわたくしがしても問題ありませんか?」

 

「どうぞ、歓迎します」

 

 

 セシリアの質問に太郎が笑顔で答えると躊躇いがちに、しかし、止めることはなくセシリアは自身の顔を太郎のそれへと近付けていく。ただ、それを許さない者達がいた。

 

 

「何をやっているの、セシリア。そういう話じゃ無いでしょ!」

 

「そうです!ボーデヴィッヒさんの事を聞きに来たのに何をしているんですか!?」

 

 

 セシリアの右腕をシャルが、左腕を静寐が掴んで太郎から引き離した。

 

 

「あの・・・・太郎さんは・・・ボーデヴィッヒさんと恋人関係という訳ではないんですよね?」

 

 

 静寐は邪魔をされて不満顔のセシリアを放っておいて太郎に改めて質問した。

 

 

「ええ、違いますよ」

 

「でもキスされても良いんですよね?それもボーデヴィッヒさんだけでなく、セシリア相手でも」

 

 

 静寐の言葉にセシリアが「でもとは何ですか、でもとは!」と憤慨していたが2人はそれをスルーして話を続ける。

 

 

「はい、歓迎しますよ」

 

「おかしくないですか。そんなの誰とでもするみたいじゃないですか!」

 

「誰とでもではありません。魅力的な相手だけです」

 

 

 太郎の「魅力的な相手だけ」という言葉にセシリアは満足気な表情になった。太郎はまだ納得のいかない様子の静寐の耳元へ顔を寄せ他の2人に聞えないように小声で囁く。

 

 

(静寐さんも私以外の人のソックスを使って興奮している事もあるでしょう?それと同じ事ですよ。貴方は一生、私のソックスだけで生きていけるんですか?)

 

「うぐっ・・・・そ、それは!?」

 

 

 太郎の鋭い指摘に静寐は呻く事しか出来なかった。今まで集めたコレクション、それにこれから集まるだろうコレクションの大半を使う事を禁止されたら静寐は発狂してしまうと自分で断言出来る。これ以上、反論の余地など無かった。

 

 シャルは完全論破されて打ちひしがれる静寐と色惚け気味なセシリアの様子を見て、ここは自分も一応太郎に迎合しておくべきだと考える。シャルは感情論で自分だけが太郎を強行に責め立てても利は無いと冷静に判断した。

 

 

「僕は太郎さんがそういう事を色々な人とするっていうのは嫌なんだけど・・・・・太郎さんは簡単に考えを変える様な人じゃないし仕方がないよね」

 

 

 シャルは自分の気持ちを示しつつも、太郎の考えを認めるような事を言った。

 

 太郎は3人の様子を見て、一気にこちら側へ引き込んでしまおうかと思案していた。そもそも静寐とシャルは共犯者、もとい協力者なので問題ないだろう。太郎はセシリアもこの様子なら大抵の事には頷くと確信を持った。

 

 

「3人がもし、私の考え方を認めてくれるのならば、これからより私達の関係を深めるにあたり話しておきたい重要な事があります」

 

 

 真剣な表情で太郎は3人の様子を見ながら言った。3人から否定的なものを感じなかった太郎は話を続ける。

 

 

「それでは今から整備室に付いて来てください。貴方達に紹介しなければならない人がいます」

 

 

 セシリア、シャル、静寐の3人は太郎の言葉に息を呑んだ。まさか既に恋人がいてその人を紹介するという事だろうか。そして、自分達はどう頑張っても2番目以下という話になるのでは!?と恐れた。

 

 

 太郎はある人物達に連絡を入れた後、3人を伴って整備室へと向かった。

 

 

 

 




ひゃっほー。休みだあああああああああ。

9時間くらい寝れたああああああ。この休みがずっと続けば良いのに・・・・。



次話から原作には無い話がいくつか入る予定です。かなりアレな内容になると思いますが、引き続き読んでいただければ幸いです。


お読みいただきありがとうございます。

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