ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第44話 新たな道

 千冬にやる事があると言って保健室を出たラウラは先ずセシリアと鈴を探した。太郎に言われた通り2人に謝罪をする為だった。セシリア達は国家代表候補生であり、目立つ存在であったので何人かの生徒に居場所を聞けば直ぐに見つける事が出来た。

 

 セシリア達はラウラが拍子抜けする位あっさりと謝罪を受け入れラウラを許した。それは事前に太郎が取り成していたからだった。2人は太郎からラウラが謝りに来たら出来れば許してやって欲しいと言われていたが、まさか本当に謝りに来るとは思っていなかった。転入してからの言動を鑑みればそう思うのも当然である。

 

 2人に謝罪をしに来たラウラは相変わらず無愛想だったが、これまでの見下す様な態度や攻撃的な雰囲気が無くなっていた。ラウラの劇的な変化に驚いた2人は太郎からの取り成しもあったので謝罪をすんなりと受け入れラウラを許した。

 

 セシリア達からの許しを得たラウラは次に自らが隊長を務めるIS特殊部隊【シュヴァルツェ・ハーゼ】の副隊長クラリッサ・ハルフォーフと連絡をとった。どうしても2、3聞いておきたい事はあったのだ。聞きたい事は直ぐに聞けた。ラウラはそこで有益な情報も手に入れた。これまでラウラはクラリッサをただの部下(道具)としか認識していなかったが、ここまで頼りになるとは思っていなかった。これからは隊の者達との関係も変えていく必要があるとラウラは考えを改めた。

 

 そして、次に自らの専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンの状態を確認した。シュヴァルツェア・レーゲンは全損に近い状態だったが不幸中の幸いかISコアは無事だった。ラウラは修理ではなく予備パーツを中心としたほぼ新機体の組み立てに近い処置をする事になった。ラウラは太郎の元に早く行きたいという思いもあったが、自分が未熟だったせいで壊れたシュヴァルツェア・レーゲンをそのままにしておけなかったのだ。代表候補生や軍に所属している者としての義務感からではなく、もっと感傷的なものがラウラにそうさせていた。これもまたラウラの変化の1つだろう。

 

 

 その日は結局、ラウラが整備室から寮へと帰ることは無かった。

 

 

 

 

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 学園別トーナメントの翌日、1年1組教室SHR時間

 

 

「ボーデヴィッヒはどうした?休むとは連絡を受けていないぞ。今日、誰かあいつを見た者はいるか?」

 

 

 千冬が生徒達に聞いたが誰も見ていないようだ。昨日、VTシステムによって姿を変えたシュヴァルツェア・レーゲンから救い出されたラウラは気を失っていた。ラウラは気絶している間に検査を受けて命に関わるような怪我は無いと結果が出ている。その為、部屋で倒れているという可能性は低い。しかし、念のため誰かに様子を見に行かせようかと千冬が考えていると教室の扉が開きラウラが入って来た。

 

 

「お前が遅刻とは珍しいな。どうした?」

 

 

 千冬がドイツ軍で教官を務めていた頃もラウラは遅刻など1度もした事は無かった。性格的にも理由も無く遅刻をする様な者ではない。普段の千冬なら遅刻者など問答無用で頭を叩くかグラウンドを走らすかしている所だが、不思議に思い理由を聞いてみた。

 

 

「はい、申し訳ありません。シュヴァルツェア・レーゲンを予備パーツを使って組み直していました。少し時間がかかってしまい遅刻してしまいました」

 

「そうか。今回は特別に許すが次からは気を付けろ」

 

「了解しました。教官!」

 

 

 敬礼して答えたラウラに千冬は大きく溜息を吐いた。昨日、千冬から見てラウラは大きく変わったと思ったが、こういう所はそのままだった。

 

 ラウラは自分の席へ向かう前に最前列の太郎の席へと近付いた。

 

 

「色々と世話になった。・・・・・貴方のおかげで私は救われた」

 

 

 太郎に感謝の言葉を告げたラウラはそのまま太郎との距離を詰めて行く。そして、2人の距離はゼロになった。ラウラの唇と太郎の唇が重なっていた。

 

 

 

 

 教室内の時間が止まった。

 

 

 

 

 実際には2、3秒だったが、永遠とも思える時間が過ぎラウラの顔がゆっくりと太郎のそれから離れた。

 

 

「今日から貴方は私のパパだ」

 

「パ、パパですか?」

 

 

 ラウラの宣言に太郎も流石に困惑していた。同級生を娘にするという発想は太郎にも無かった。それに今はラウラの唇の感触に意識がいっていたので太郎としては珍しく場の主導権を失っていた。

 

 

「日本では援助してくれる年上の男性の事を【パパ】と呼ぶのだろ。そして対価として【こーさ↑い↓】や【(ハー)?】をすると昨日部下から聞いた。良く分からんと言ったらキスしておけば後は流れで何とかなると助言を受けたのだが・・・・・・何か間違っていたか?」

 

「・・・・・・残念なお知らせがあります。貴方の言っている事は【援助交際】と言うもので、日本の法律に引っ掛かります」

 

 

 本当に、本当に残念そうな表情で太郎が説明したがラウラは顔色一つ変えなかった。

 

 

「それなら問題ないです。IS学園はいかなる国家機関にも属さない。それにIS学園内における規則を確認しましたが、男女間の接触を禁じるような事項はありません」

 

 

 自信満々にラウラが言った。太郎は直ぐに美星に確認する。

 

 

(美星さん、ラウラさんの言っている事は本当なんですか?)

 

『少し待って下さい。調べてみます・・・・・・・・・・確かに男女間の交際や接触に関する事項は存在しません。そもそもIS学園は女しかいない隔離された場所なので禁止する必要が無かったという事でしょうか?』

 

(理由は分かりませんが・・・・・YES!YES!YES!!!!!!!YES!ロリータ!タッチOK!)

 

 

 美星の言葉に太郎は興奮を禁じえない。美星も心なしか弾んだ声で太郎に聞いた。

 

 

『2人の行為は全て記録しても良いですか?』

 

 

 太郎は満面の笑みで親指を上へと立てた。

 

 

「分かりました。ラウラさんになら幾らでも援助しますよ」

 

 

 太郎は笑顔で答えたが、教室内は騒然とした。

 

 

「えっ、いいの?」

「代表が遠い存在に・・・・」

「待って。逆に考えるのよ。私も援助してもらえば良いと!」

「俺はどうすれば良いんだ」

 

 

 騒然となった教室内でも一際騒いでいたのはセシリアと静寐、そしてシャルだった。

 

 

「いきなりキスをするなんて羨ま・・・破廉恥な!【えんじょこーさい】がどんな物かはわたくしも知りませんが、認められません。どうしてもと言うのなら、わたくしも参加させていただきます。なんでしたら太郎さんをわたくしが援助するという形でもよろしくてよ!」

 

「山田代表とは私の方が先にソック・・・・ゲフンッ、ゲフンッ。ある約束をしているんです。勝手な事を言ってもらっては困ります」

 

「僕は既に仲間だから、そこに参加しても何の問題も無いよね?」

 

 

 三者三様の様相を見せていた。

 

 この混沌の極みと化した教室内を鎮める事が出来る者は唯1人しかいない。

 

 

「この馬鹿どもがあああ!!!全員口を閉じろ!文句のある奴は前に出ろ。そんなに口を閉じるのが嫌なら顎の関節を外して閉じなくしてやる!!!!!」

 

 

 千冬の怒号に教室は静まりかえった。当然、前に出る勇者は皆無だった。

 

 

「・・・・・山田とラウラは昼休みに職員室に来い」

 

 

 そう言って睨みつける千冬に教室内のほぼ全ての人間が震え上がった。

 

 

 唯一、太郎だけは(こんなに怒るなんて妬いているのでしょうか?)などと的外れな事を考えていた。                                  

 

 

 

 




・Hのルビを「ハー」としているのはドイツ語だと「エイチ」ではなく「ハー」と読むそうなので。

・ドイツ語で父は「ファーター」ですが、ここで言う「パパ」は「父親」の事では無いので問題ありません。

・ラウラと太郎はキスをしましたが舌は入っていないので挨拶みたいなものです。だから問題ありません。

・作者である丸城は最近性欲を持て余していますが、犯罪には手を出していないので問題ありません。


読んでいただきありがとうございます。

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