ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第42話 狩りの時間 後編

 今回のトーナメントの為に太郎が用意した新兵装の内、容量の大きい【ゲヘナの炎】はシャルのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡに装備していた。そして太郎に対して使用許諾をする事で太郎にも使用出来る様にしてあるのだ。使用許諾はラファールの追加装備全てに及ぶ。これによってヴェスパの拡張領域の少なさを補っているのだ。

 

 

(美星さん、篠ノ之さんはどうなりましたか?)

 

『上手に焼けていますよ。シールドエネルギーはゼロになっていますし、大きな怪我もありません』

 

 

 爆発の規模の大きさから一瞬ヤッてしまったかと思った太郎であったが、美星の報告を受けてほっとした。しかし、ほっとするのも束の間だった。燃料気化爆弾の威力を見て脅威を感じたラウラが残り5発の爆弾を持つ太郎に対してレールカノンを撃った。嵩張る荷物を持って、動きが鈍くなった太郎は何発か直撃ではないが食らってしまう。

 

 しかし、既に闘いは2対1の状況になっている。太郎へ攻撃を集中させるラウラに側面からシャルが接近しつつ

ショットガン【レイン・オブ・サタデイ】を撃ち込む。体勢の崩れたラウラを尻目に太郎は全速力で上昇し、アリーナの戦闘空間を包み込む遮断シールドの天井部分に達した。そして、太郎は持っていた【ゲヘナの炎】5発全てを投下した。

 

 太郎のヴェスパから送られてくる爆発予測範囲のデータを元にシャルは回避行動を始める。シャルが爆発に巻き込まれない様にわざとアリーナ全域が爆発範囲にならない様に各爆弾の爆発位置は美星が調整している。

 

 

ドッゴオオオオオオオオオオオンンンンンンンン!!!!!!

 

 

 1発目よりも大きな爆発が起こる。まるでアリーナ全体が震えている様な衝撃だった。あまりの轟音と衝撃に観客席の観客達は全員耳を押さえて蹲ってしまった。

 

 そんな大爆発にも関わらずラウラは奇跡的に爆発の直撃からは逃れる事に成功した。しかし、強烈な爆風の煽りを受けて体勢を崩してしまった。その隙を太郎は見逃したりはしなかった。

 

 太郎は加速しながらラウラに向けて降下する。そして、体当たりをする様な勢いのまま組み付こうとする。

 

 

「私に組み付こうとするとは・・・・・AICの餌食になれ!!」

 

 

 一時体勢を崩したもののラウラは組み付かれる寸前でAICによって太郎を捕らえる事に成功した。

 

 

「馬鹿めっ!自らやられに来るとはな。やはり私の方が貴様より上だったな!!」

 

「ふふっ、いいえ。やはり貴方は小動物です。今から私達に狩られるのです」

 

 

 ラウラは勝利を確信して吠えた。獲物が自らこちらの懐に飛び込んできたと喜んだ。しかし、獲物はラウラの方だった。歯を剥き出しにして嗤う目の前の獣にラウラは危険を感じた。それは厳しい訓練を乗り越えてきた成果か、それとも遺伝子強化による五感の鋭敏化の影響か、何故かは分からないがこのままではやられるとラウラは強く感じた。直ぐに太郎から距離をとろうと身を翻そうとしたが、もう遅かった。

 

 ラウラは背中に凄まじい衝撃を受け前のめりになる。

 

「せっかく1人に集中していたら危ないよって注意してあげてたのに・・・・駄目な子だね」

 

 

 いつの間にかシャルが暗い笑みを浮かべながらラウラの背後についていた。先程の攻撃は灰色の鱗殻(グレー・スケール)、通称・盾殺しの名で呼ばれる、第2世代最強クラスの威力を誇るパイルバンカーによるものだった。

 

 灰色の鱗殻の一撃は凄まじく絶対防御が発動したにも関わらずラウラの体に強烈な衝撃をもたらした。その影響で太郎を捕らえていたAICが解けてしまった。前のめりになったラウラを太郎が抱きとめる。

 

 

「いらっしゃい、子兎ちゃん」

 

『随分調子に乗ってくれましたね。さあ、お仕置きの時間ですよ』

 

 

 太郎と美星の声はラウラには届かなかった。つい先程背中に喰らった灰色の鱗殻を第3世代型へと改修した【毒針】が太郎の股間部分から突き出されバリアーを突き破り、絶対防御まで破ろうと干渉して凄まじい衝撃と音を出していたのだ。

 

 ラウラは必死の思いで太郎をAICで停止させようとするが、強力な干渉能力を持つ【毒針】が既に当たっている状態では上手く発動できなかった。戸惑うラウラを再度背後からシャルが襲いかかる。前からは毒針で、後ろからは灰色の鱗殻でラウラは貫かれた。

 

 

「どうです。これがサンドイッチと言う物です。効くでしょう。くっくっく」

 

 

 太郎が楽しそうに笑っているのを美星も嬉しく感じながら、シュヴァルツェア・レーゲンの制御を完全に掌握しようと試みていると突然それを邪魔するモノが現れた。美星がシュヴァルツェア・レーゲンとそのコアである436の両方に干渉していた所、別の何かがシュヴァルツェア・レーゲンの制御を全て奪い取ってしまったのだ。

危険を感じた美星は直ぐ太郎に警告を発した。

 

 

『マスター!シュヴァルツェア・レーゲンから直ぐに離れてください!!』

 

 

 理由も告げない突然の警告に太郎は躊躇いも無く従い、ラウラから距離をとった。その瞬間、今まで太郎がいた場所を黒い刃が通過した。いつの間にかシュヴァルツェア・レーゲンの右腕に黒い刀が握られていた。

 

 

「危険です。シャルも直ぐに距離をとって下さい!」

 

 

 太郎の指示でシャルは直ぐラウラから距離をとった。

 

 シュヴァルツェア・レーゲンとラウラの様子がおかしい。ラウラが苦悶の表情を浮かべる。

 

 

 「ち・・から・・・・ち・力が・・・欲しい。しょうめ・・・す・・・為の」

 

 

 ラウラがくぐもった声を上げている間にシュヴァルツェア・レーゲンが黒い粘土状の物へと変化してラウラを包み込んでいった。そして、黒い粘土状の物が人型を形作った。それは──────────

 

 

「・・・・・・織斑先生の現役時代を彷彿とさせますね」

 

「えええっ!・・・・・まさか強さの方も織斑先生みたいじゃないよね?」

 

「試してみれば分かるでしょう」

 

 

 太郎の言葉でシャルの方は若干怯え気味だったが、太郎の方はイラついた様子でシュヴァルツェア・レーゲンとラウラだった物を睨みつけていた。

 

 

「良い所だったんですがね。このアリーナで闘っていると何だかいつも良い所で邪魔が入っている様な気がします」

 

 

 人でも獣でも食事を邪魔されれば当然機嫌も悪くなろうというものだ。

 

 

「シャルはそこで待っていてください。私が試してみます」

 

 

 太郎は慎重にシュヴァルツェア・レーゲンとラウラだった物に近付いていった。ある程度近付いた所で相手が黒い刀を太郎へ振る。鋭いその一太刀を太郎は難なく回避した。何度も太郎へ黒い刀が襲い掛かるが、その悉くを太郎は余裕で捌き切った。そして、一度大きく間合いを取った後、シャルに話し掛けた。

 

 

「単なる織斑先生の真似ですね。何の輝きも感じないゴミです」

 

「えっ、でも織斑先生の真似なら強いんじゃ・・・・・」

 

「織斑先生の現役時代の動きをコピーしているだけなので、行動がパターン化されていて次の行動が読み易いです。それに刀の振り方も角度・速度共に単なるコピーなので、織斑先生の現役時代の映像をちょっとした仕草まで記憶する位に見ている私からすると何の問題も無く対応出来ますね」

 

 

 太郎の自信は当然であった。太郎は千冬の現役時代の試合映像はほぼ毎日の様に見ていた。動きが参考になる事も理由の1つだが、1番の理由は単純に見ていると興奮を覚えるからだ。そんな太郎からすれば目の前の敵は千冬の偽者にもなりきれない、ただのゴミでしかなかった。

 

 

(美星さん、毒針によるハッキングであの織斑先生の出来損ないの制御を奪い、ボーデヴィッヒさんを引きずり出すことは出来ますか?)

 

『先程は予測外の出来事だったので距離をとる事を助言しましたが、形が変わってもアレはISです。相手がISならば毒針を直撃させれば確実に制御を奪えます。いえ、私が奪って見せます』

 

 

 美星は太郎にそう宣言した。美星にとっても先程のシュヴァルツェア・レーゲンとそのコアの436を掌握する直前で邪魔された事は相当不快だったようだ。

 

 

「さて、さっさとゴミを片付けてボーデヴィッヒさんで遊・・・・ではなく、ボーデヴィッヒさんに教育的指導をしてあげましょう」

 

 

 太郎は漏れかけた本音を訂正しつつ無造作に敵に近付いていく。当然、千冬モドキが斬りかかるが太郎はそれを避けて簡単に懐に入ってしまった。その時にレイジングスターの鎖を千冬モドキの両腕に巻き付け封じてしまった。

 

 

「用があるのはボーデヴィッヒさんです。・・・・・そろそろお別れの時間です」

 

 

 冷たく言い放った太郎は毒針を正面から打ち込む。千冬の形をしたモノを太郎のモノが貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラの意識は黒い粘土状に変わったシュヴァルツェア・レーゲンに包まれた後も残っていた。ただ身動き一つとれず、シュヴァルツェア・レーゲンだった物の見ているものを黙って見ているしかなかった。どうやらシュヴァルツェア・レーゲンだったモノはラウラの憧れた最強を体現した存在、ラウラにとって救世主と言ってもいい存在、織斑 千冬の現役時代の姿になっているらしい。

 

 あれほど憧れた織斑 千冬になっているのにラウラには何の感慨も生まれなかった。山田 太郎と闘っている映像を眺めていても何故か空しさしか感じなかった。

 

 太郎がシュヴァルツェア・レーゲンだったモノと少し闘った後に「何の輝きも感じないゴミ」と評して言葉の通りゴミを見るような目でこちらを見ていた。

 

 

(そんな目で私を見るな!!!!)

 

 

 太郎の目は出来損ないの烙印を押された頃に自分を蔑み嘲笑った者達を思い出させるものだった。太郎はラウラにとって強さの象徴とも言うべき織斑 千冬を相手に互角どころか、余裕すら感じられた。

 

 一度大きく間合いを取った太郎が無造作に近付いてくる。鋭い斬撃が太郎を襲うが軽々と避けてしまう。そして鎖で織斑 千冬の両腕を拘束してしまった。

 

 

「用があるのはボーデヴィッヒさんです。・・・・・そろそろお別れの時間です」

 

 

 太郎のその言葉にラウラは疑問を覚えた。

 

 

(私に用だと・・・・・。私などに何の用だと言うんだ。これ程の強さを持った者が敗北した私にどんな用があるというのだ。)

 

 

 太郎の毒針が突き刺さって少しするとラウラの視界は真っ黒に染まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 未だ太郎に聞きたい事があったのだが自分は死ぬのかとラウラが思い始めたところで目の前に太郎が現れた。

 

 

「ど・・・・どうなっているんだ?」

 

「さあ?私にも分かりません」

 

 

 ラウラの口から無意識の内に漏れた呟きに太郎が答えた。まさか、普通に話しかけられるとは思っていなかったラウラは驚いてしまった。どういう状況なのか全く分からなかった。周囲を見回しても黒一色の景色で太郎と自分以外何も無かった。そして太郎は何故か全裸だった。ラウラが自分はどうなのかと下を見ると自分も裸であった。何故裸なのかは分からないが、太郎はその状態でも堂々とした態度であったしラウラも特に恥ずかしいとは思わなかったので隠そうともしなかった。

 

 ラウラは自分達の格好より気になっている事があった。何と言って話しかければ良いのかという事だ。今のラウラには太郎に聞きたい事や話したい事がいっぱいあるのだが、これまでの自分の言動から今更何と言えば良いのか分からずにいた。

 

 

「・・・・・山田 太郎と言ったな?その・・・な、今まで・・・・・の事を・・謝りたいのだ」

 

 

 ラウラはとりあえず謝ることにしたが、元々まともな人間関係を持たないラウラにはただ一言謝るだけでも困難な事だった。しかし、それでも太郎にはちゃんと届いていた。

 

 

「分かりました。私は貴方を許します。後でセシリアさんや鈴さんにも謝っておいて下さい。あれはやり過ぎです」

 

「分かった。謝っておく・・・・・」

 

 

 ラウラのその言葉を聞いて太郎は頷いた。そして、ラウラの頭に手を置き優しく撫でた。

 

 

「私は貴方の言ったように必死で周囲の者を威嚇していただけの小動物だったようだ」

 

 

 ラウラが呟くように言った言葉に太郎は何も言わず、黙ってラウラの頭を撫でていた。

 

 

「私は教官の絶対的な強さに憧れた。教官の教えに縋って自分まで教官の様に強くなったと錯覚していた、ただの未熟者だった。・・・・・・どうすれば貴方の様に強くなれる」

 

「貴方は何故そんなに強さに拘るんですか?」

 

 

 ラウラの質問に対して太郎は質問で返した。

 

 

「私は兵器として生み出された存在だ。私の価値は強さだけだ。だから惨めに敗北した今の私には何の価値も無い」

 

「価値ならありますよ。私から見てラウラ・ボーデヴィッヒという人間は魅力的ですよ。貴方自身の事を無価値だと言うのなら私が貰ってしまって良いんですね」

 

 

 太郎の言葉にラウラは唖然としてしまった。ラウラは魅力的などと言われたのは初めてだった。簡単に信じられるものではなかった。

 

 

「ま、まて。私に兵器としての存在価値以外に何があると言うのだ。生まれてから今までずっと兵器として生きてきたんだぞ」

 

「少なくとも見た目だけでも十分私にとっては魅力的ですね。それに触れているだけでこんなに気持ち良い」

 

 

 太郎はラウラの肢体をべたべたと触りながら褒めた。「ほら、ここもスベスベで気持ちいい」とラウラの内腿をさすりながら言った。

 

 

「他にも価値ならあるでしょうし、無くても貴方はこれから成長する事が出来ます。価値だっていくらでも付きますよ」

 

「そ、そうだろうか?」

 

 

 確信を持って紡がれる太郎の言葉にラウラも少し自信を取り戻した。

 

 

「それじゃあ、もし軍が私を必要としなくなったら・・・・・貴方が私を貰ってくれるか?」

 

「ええ、もちろんです。何だったらドイツ軍がラウラさんを必要としていても私が貰って行きますよ」

 

 

 太郎の答えにラウラは嬉しくなった。千冬の指導によって部隊で最強の座へ返り咲いた時とは違って、何だか暖かい気持ちになった。ラウラは空虚だった自分の中身が満たされていくように感じた。それと共にラウラの意識は薄れていった。

 

 

「まだ話したいのに、なぜか・・・眠くて仕方が・・・い」

 

「また後で話しましょう」

 

 

 

 ラウラは頷き眠りに落ちていった。その幸せそうな寝顔は年齢より随分幼く見えた。

 

 




ラウラちゃんの内腿ぺろぺろしたいよ~。

ラウラちゃんの事、もっとお仕置きするつもりだったのに何故かイチャイチャさせちゃってる。ラウラの可愛さが悪いんだよ。

日本もこんな子を作ろうぜ。ちゃんと俺が面倒見るからさ。

寝不足で変なテンション+注意力散漫なので本編におかしな所があるかもしれませんが・・・・・ご勘弁を。




読んでいただきありがとうございます。


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