ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

3 / 136
第1章 二人目の男性IS操縦者は自称紳士
第3話 男のクラスメイトが増えるよ。やったね一夏君!!


 私は今、楽え……。ではなく学園にいる。そう、ここはIS学園である。私がペロペロしたいと夢にまで見たISを学ぶ園である。生徒の中には未来の国家代表がいるだろうし、教職員の中にはIS操縦者として華々しい戦歴を飾った者もいるだろう。そして極めつけは私の女神たる織斑千冬がクラスの担任であるという。

 IS操縦者の卵や雛たち。そして女神のいる学園の空気を思うがままに吸う。甘い匂いが薫ってきそうだ。今なら空も飛べる。

 興奮すると呼吸音がシューコーシューコーしてしまう。この格好では仕方がないが、いささか煩わしい。実を言うと私は入学式に出ることが出来なかった。非常に残念である

 今着ている学園側が用意してくれた特注の服装やその他諸々の手続きの為に遅刻してしまったのだ。学園はもともと私を入学式に出す気はなかったかもしれないが。とにかく面倒な手続きも終わり女神と学友たちが待つ教室へと向かう。

 

 

──────────────────────────────────

 

 

 その頃、教室では一人目の男性IS操縦者である。織斑一夏が所在無さげに自分の席に座っていた。現状、織斑一夏とそのクラスメイト達は織斑一夏こそが世界で唯一の男性IS操縦者だと認識している。そんな希少な存在である織斑一夏にクラスメイト達は興味津々であった。そして一夏にとってそれは大変肩身の狭い状況であった。

 一夏が女子生徒達から受けるプレッシャーに耐え忍んでいると、眼鏡をかけた巨乳の女教師が教室に入ってきた。

 

「みなさん席に着いてください。SHRを始めますよー」

 

 なんだか頼りない教師であった。しかし、胸は大きい。

 

「私はこのクラスの副担任を務める山田 真耶です。これから一年間よろしくおねがいしますね」

『……』

 

 教室を沈黙が包む。生徒達の反応の少なさに山田先生は涙目である。それでも何とか気を取り直す。

 

「えっと……じゃあ先ず自己紹介をしましょうか。出席番号順でお願いします」

 

 自己紹介が始まって一夏がクラス見回していると、その中に自分の幼馴染を見つけた。見間違いではないよな、箒だよな、と眺めていると。

 

「織斑君? おりむらくーん? 聞いてますか?」

「はっはい!?」

 

 一夏は自己紹介の番が回ってきていたことに気付かなかったのだ。クラスメイト達は笑っている。

 山田先生は困ったような顔をしていた。

 

「あっ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。でも織斑君の番だから自己紹介してくれるかな? だ、駄目か……な?」

「いえ、はい。大丈夫です。自己紹介しますから。落ち着いてください」

「ほっ本当ですか?お願いしますね?」

「え、えっと。織斑一夏です。・・・よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いしますね」

「あー……以上です」

 

 ズルっという音が聞こえそうな程見事に数人の生徒がずっこけそうになる。それ以外の生徒たちも「えっ!? 終わり?」という顔をしている。

 一夏は一瞬気まずそうな顔をしたが、さっと座ってしまう。

 

 パァッーン

 

 乾いた音が教室に響いた。いつの間にか一夏の横に立っていた千冬が持っていた出席簿で一夏の頭を叩いたのだ。

 

「お前は自己紹介もまともに出来んのか!?」

「げええっ!!関羽!?」

「お前は私が三国志の見事な髭をした武将に見、え、る、の、か?」

 

 千冬は一夏の頭を掴みそのまま持ち上げてしまう。一夏は「ギブっギブッ」と自身を掴む千冬の腕をタップしているが、千冬は意に介さず山田先生と話す。

 

「織斑先生、彼の手続きは終わったんですか?」

「ああ、もうこちらに向かっているはずだ。クラスへの挨拶を押し付けてしまいすまなかったな」

 

 千冬は一夏を放しクラスを見回す。

 

「諸君、私が1年1組担任の織斑千冬だ。今の貴様らはクソの役にも立たんヒヨッコだ。しかし安心しろ。どんなクソでもこれから1年で一人前の戦士にしてやる。文句のある奴は前に出ろ」

 

 ことさら大声を出したわけではないが良く通る声だった。普通こんなことを言われたら嫌な顔をするものだが、このクラスにはそんな人間はほとんどいなかった。

 

「キャー、ち、千冬様よ。こんな近くで生千冬様が見れるなんて!!」

「ずっとファンでした」

「貴方のファンになって病気が治りました」

 

 凄まじい歓声だった。

 あまりの勢いに千冬の近くいた一夏は両手で耳を塞ぎ顔を顰める。

 千冬は慣れたものなのか呆れながらも平然としている。

 

「毎年、毎年何故こうも私のクラスは騒がしいんだ。あれか? 私のクラスにこういう馬鹿共を集めているのか?」

「キャー、千冬様に罵られちゃった♡」

「でも、たまには優しくしてー!」

「そしてつけあがらないように躾けて!!」

 

 諦めたのか千冬はこれら歓声をスルーし一夏の方を向く。

 

「自己紹介くらいまともにしろ馬鹿者」

「なんで千冬姉がここにいってええええ」

 

 再度一夏の頭は災難に遭う。

 

「織斑せ、ん、せ、い、だ」

「ぐうう。分かりました織斑先生」

 

 このやり取りを聞いていたクラスメイト達は騒然となる。

 

「織斑君って苗字が一緒だからまさかと思ったけど千冬先生の弟?」

「やっぱり千冬様の弟だからISに乗れるのかな」

 

 色々な疑問は出たが結局答えを出せる者などいない。そこで騒がしい教室に千冬が大きな爆弾を落とす。

 

「実は入学式には出ていないがこのクラスにはもう一人生徒がいる。そいつは男だ。今こちらに向かっているからそろそろ来るはずだ」

 

 

 

 

「「ええええええ!?」」

「二人目の男性操縦者!!」

「嘘でしょ!!」

「一人でも凄いのに同じクラスに二人目が!!」

「静かにしろ」

 

 今日一番の盛り上がりを見せた教室であるが、千冬の一言でシンと静まり返った。元々緩い感じは一切ない千冬だがより一層厳しい顔付きで告げた言葉に逆らう愚か者はいなかった。

 

「先に言っておく。二人目の男性操縦者は普通ではない。悪い事は言わん、こいつと同じような扱いはするな」

 

 千冬は一夏の頭を軽く叩きながら続ける。

 

「アイツには触れるな、話しかけるな、エサをやるな、目を合わせるな、近づくな」

「ちょっ待ってくれよ。ちふ……ゴホン、織斑先生。いくらなんでも言いすぎだろ。どんな奴なんだよ」

 

 一夏は千冬に睨まれ慌てて名前を言い直す。

 

「アイツは前科者だ。そのうえ驚異的な身体能力を持ち、頭も切れる。代わりに人として大事なものも切れてしまっているがな。一度手合わせすることになったが……はっきり言おう。生身であるならこの学園で相手になるのは私ぐらいなものだろう」

 

 一夏も含めクラスメイト達もあまりの驚きにどう反応していいのかわからない。

 前科持ちというのも驚きだが世界最強と名高い千冬がまるで自分と同格の力を持っているかのように語っているのだ。

 

「それにアイツがISを動かした経緯もまずい。アイツはよりにもよってIS学園の入学試験場に忍び込み、セキュリティーを掻い潜って予備機として用意していたISを起動させた。単独でだ」

 

 教室が静まり返る。幼い頃からISの操縦者を目指してきた者たちである。イレギュラーで入学することになった一夏以外の者たちは、ISがどれほど厳重な管理下にあるか、程度の差はあるが理解している。で、あるからこそその異常性を理解できる。

 金髪の縦ロールの生徒が手を上げ発言する。

 

「その方はテロリストなのですか。もしくはどこかの組織に所属していたのですか? 軍か何かに?」

 

 千冬は首を横に振る。

 

「いや、テロリストではない。それと拘束された時もそれ以前にも軍や諜報関係の組織に所属したという話はない。完全な一般人だ。そうでなくては流石にこのIS学園へ入れることは出来ないしな」

 

 世界最強が認める強さにアクション映画の役かなにかと言いたくなるような潜入能力を持った一般人とはどんな人間なのか。聞けば聞くほどクラスメイト達の疑問は膨らむばかりだ。

 

「その方は何が目的だったのですか?」

「取調べでは色々言っていたようだが、『ただそうしたかった』ということだ」

 

 金髪縦ロールが質問を続けようとしていると教室の扉がノックされた。その場にいた全員の目が扉に集中した。ゆっくりと扉が開かれる。

 

 

 

 

 

 入ってきたのは特殊部隊の隊員が着るようなタクティカルベストやボディーアーマーなどを着けた大柄な女性であった。

 

「織斑先生、対象を連れてまいりました」

 

 一瞬、今話題にしていた人物が入ってきたのかと思い教室に緊張がはしったが違ったようだ。ただすぐそこに話題の人物は来ているようで、教室内の緊張はまた高まりつつある。

 

「ああ、ご苦労。入れてくれ」

 

 大柄な女性は千冬の言葉に頷き廊下に向かって指示を出す。するとその女性と同じような装備の人間が三人ほど二輪の台車を運び込んでくる。台車には一人の人間が乗っていた。

 台車に乗せられている人物は白い拘束衣によって全身を拘束されている。足まで動かせないようになっているために台車に乗せて運んできたのであろう。顔にも拘束用のマスクが着けられている。この人物こそ先程まで話題となっていた者であろうとはクラスの全員が察した。先程までの話とこの物々しい扱いから多くのクラスメイトが恐怖心を抱いたが千冬は気にしていないかった。

 

「とりあえず拘束マスクは外してくれ。こいつに自己紹介をさせる」

 

 千冬の指示された大柄な女性は困惑した様子だった。

 

「拙くないですか」

「問題ない。何かあっても私がなんとかする」

 

 何でもないという自信に満ちた千冬の言葉に大柄な女性は頷き拘束マスクを外した。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────

 

 

 

 やっと教室に到着した。目の前には女神と女生徒達と+アルファが私を待っていた。女生徒達は何故か私を見て怯えているようだ……。この服装がいけないのであろうか?私をここまで運んでくれた女性たちがわざわざ着せてくれた特注品だが、近頃の若い娘たちには不評のようだ。

 10分ぶりな女神の全身を舐めるように観察する。実際に舐められると嬉しいのだが残念ながら今は無理だ。

 次に教壇に立っている緑がかった髪の教師を眺める。身長は低いが胸は豊かなことこのうえない。私は秘かにメロンちゃんと名づけた。身長が低いため余計に大きく見える。等級は間違いなく「秀」に達していると思うがサイズはL玉だろうか? 服の上からではなかなか判断の難しいところだ。

 生命の象徴たる乳房について考察をしていると女神が私のマスクを外すように指示してくれた。自己紹介をしろとのことだ。彼女は既に私のことをある程度知っているはずなので、おそらく私の声が聞きたいということなのだろう。彼女のように素晴らしい女性に求められるとは私は幸せである。

 

「女神とメロンさん、これからよろしくお願いします。はじめましての方々もこれから仲良くしてくださいね」

「女神というのは私のことか? 次にその呼び方をすれば窓から放り出すぞ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

 なぜか女神に怒られてしまった。正面から浴びる女神の怒気は心地よいがあまり怒らせてばかりだと嫌われてしまう。とうぶんは織斑先生と呼ぶことにしよう。

 

「……えっ!? じゃあ、もしかしてメロンちゃんって私のことですか?」

 

 メロンちゃんはどうもワンテンポ反応がズレているような気がする。まだ「なんでメロンなんでしょう?」とかボソボソ呟いている。小さな声だが近くの生徒達には聞こえたらしく彼女たちはメロンちゃんのメロンを恨めしそうに見ていた。

 さて挨拶に続き自己紹介をはじめるとしましょう。

 

「では改めまして私の名前は山田 太郎と申します」

((絶対偽名だろ!!!!))

 

 日本人の生徒は全員が心の中で叫んだ。

 私が名乗ると山田先生は凄く微妙な顔をしていた。あと一部のクラスメイトがヒソヒソと

 

「山田って言ったよね」

「副担任の山田先生と何か関係があるのかな」

「もしかして千冬先生と織斑君みたいに家族とか」

 

 それを聞いた山田先生は涙ぐみながら「ちっ違います。私とは関係ありません」と全力否定していた。

 

「私は皆さんと年はかなり離れており、今年で28になりますが遠慮などせず話しかけてください。趣味はランニングです。ほぼ欠かさず毎日やっています。進路はIS関連を考えています。そして紳士たらんと精進しております」

 

 私が無難な自己紹介をすると反応はそこそこだった。

 

「結構普通じゃない? 服装がアレだけど」

「28か〜。もっと若く見えるよね。服装はアレだけど」

「ランニングが趣味って無駄に健康的だよね。服装はアレだけど」

「紳士ってどういうこと? 少なくとも服装は紳士じゃないでしょ」

 

 アレってどういう意味なんでしょうか。それにしてもこの拘束衣は本当に不評ですね。この拘束衣を特殊部隊みたいな格好をした女性たちに着せられていた時は、なんだか気分が高揚しましたが、今は不便なだけでクラスメイトにも不評なようなので止めましょうか。

 

「織斑先生、この服を脱いでもいいですか?」

「裸になりたいという意味なら駄目だ」

「拘束衣だけですよ。不便なので。これではトイレにも行けない」

「そのまましろ」

 

 女神のセリフを反芻する。「そのまましろ」?まさか10歳以上年の離れた少年少女達で満たされたこの教室でこの格好のまま糞尿を垂れ流せとおっしゃったのか? なんという非道。糞尿を垂れ流すところを想像するだけで興奮してしまいます。出す瞬間の開放感。出した後に周囲の女神や少女たちがするであろう嫌悪感に満ちた表情。思い浮かべると全身の血が沸騰しそうです。

 理性と本能がせめぎ合う。

 

 

天使『駄目駄目。みんなが真面目に勉学に励んでいる時に、横で便を垂れ流すことに励むなんて最低だよ。そんな迷惑をかけるなんて紳士にあるまじき行為だよ!!』

 

悪魔『だが、それがいい』

 

悪魔『それに女神がそうしろと言うのだから仕方なかろう(にっこり)』

 

天使『そうだね。仕方がないね(にっこり)』

 

 

 結論が出た。あとは出すだけ。わたしがキバリ始めたところで女神が先程の発言を撤回した。

 

「やはりなしだ。こんなところでされると迷惑だ」

 

 も、弄ばれたのか。なんという残酷。期待させるだけさせて落とす。なんたる邪悪。だがそこがいい。

 

「拘束衣も外して構わん」

 

 女神の発言に私を運んできた女性たちが慌てる。

 

「織斑先生それは駄目です。危険すぎます。許可できません」

 

「このクラスのことは私に一任されている。私がいるときは問題ないし、それ以外の時は手錠と足枷ぐらいで十分だろう。このままだと邪魔すぎる」

 

 どうやら女神は学園でかなり強い立場のようだ。私を運んできた女性たちは不満そうな顔をしていたが女神の言葉に従うようだ。そして拘束衣を外し、新しく用意された手錠と足枷を着けたところでSHRの時間は終了となった。




主人公の名前がやっと登場。

主人公が教室に運ばれて着たときの服装は「コン・エアー」という映画に出てきた猟奇殺人者が護送されてきた時の感じをイメージしました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。