ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第27話 人外

 授業が終わり生徒達が席を立つ。太郎の隣の席である一夏も席を立ち、太郎に真剣な顔で話しかけた。

 

 

「太郎さん、付き合ってくれないか」

 

 

「「「!!!!!!!!!?」」」

 

 

 一夏の告白でクラスに戦慄が走る。

 

 やはり【そう】なのか?

 

 今、疑念が確信に変わる。

 

 そこから一部のクラスメイトが激しく動き始める。

 

 

 

 

 特にセシリアと静寐(しずね)は激しい動きを見せた。

 

 

「山田代表、こちらへ!」

 

 

 静寐が太郎の手を引っ張り、一夏から距離をとらせる。そして、セシリアが太郎と一夏の間にその身を割り込ませ太郎を守るように両手を広げる。

 

 

「やはり太郎さんの事を狙っていましたのね!!」

 

 

 その光景を見ながら乃登香は一心不乱にメモを取っていた。

 

 箒が一夏に駆け寄り、襟を掴んで怒鳴る。

 

 

「お、おまえ、は・・・男の方が良いのかー!!!!」

 

「はあ?俺は太郎さんとセシリアが放課後やってるみたいだから混ぜて貰おうと思って」

 

 

 

 

「「「!!!!!!!!!!!!!!?」」」」

 

 

 二重の意味で衝撃の発言だった。

 

 太郎とセシリアがそういう関係?

 

 女子は恋愛話が大好物である。しかも2人ともクラスの中心人物である。盛り上がらない方がおかしい。

 

 

「うっそ!?あの2人付き合ってるの!!」

 

「でも分かるわー。あの2人なら納得」

 

「私も彼氏欲しいぃなぁ」

 

 

 だが今は恋愛話よりも衝撃的な話題が合った。

 

 

「織斑くん、サイテー」

 

「淫獣だよ、淫獣!!」

 

「混ぜて欲しいって頭おかしいんじゃない!?」

 

「えっ、でもどっち目当てなんだろ?」

 

「あー、両方とか?」

 

「うわぁぁー、ひくわー」

 

「女の子も欲しいとか駄目だよ!認められないよ!!」

 

 

 

 心なしか箒以外のクラスメイト達と一夏の距離が遠くなった。物理的にも、精神的にも。

 

 セシリアの一夏を見る目は汚物を見る様な目になっていた。

 

 

「少しは骨のある男性かと思いましたが・・・。サイテーですわ」

 

 

 一夏は困惑していた。何故クラスメイト達がこんなに騒いでいるのか、何故自分がここまで酷い言われ方をしているのか、全くわかっていなかった。

 

 

「放課後に2人がISの訓練してるみたいだから、そこに混ぜて欲しいって言っただけで何でこんなに騒がれるんだ?」

 

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

 

 騒がしかった教室が沈黙に包まれる。

 

 そして、誰かが手をパン、パンと2回叩き、

 

 

「はーい、かいさーん」

 

 

 

 

 

 

 と言うと一部を除きほとんどのクラスメイトが教室からゾロゾロと出て行く。

 

 

「ちっ・・・・人騒がせな」

 

「カスがっ」

 

「期待させやがって・・・ぺっ」

 

 

 彼女達はそう捨て台詞を吐いていった。

 

 一夏は何をどう誤解されたのかは分からなかったが、誤解が解けたようなので太郎にもう一度頼んだ。

 

 

「太郎さんは俺と同じ近接戦主体だろ。それで長距離射撃型のセシリア相手に間合いを詰める練習してるって聞いたから、俺もそれに参加させて欲しかったんだ。俺の白式もまずは接近出来ないとどうにもならないからさ」

 

「確かに雪片しかない状態では間合いの詰め方を覚えるのは急務ですね。セシリアさんは一夏が一緒でも構いませんか?」

 

「・・・ええ。太郎さんが良いのであれば」

 

 

 太郎の問いにセシリアは一夏への警戒が解いていないのか、しぶしぶと言った様子で了承した。

 

 

 

 

────────────────────────────────

 

第3アリーナ

 

 

 ISの練習の為にアリーナへ移動している途中、鈴が合流していた。軽くウォーミングアップ代わりにアリーナの中を何周か飛んだ後、実戦形式の練習に移った。太郎はセシリア相手に、一夏は鈴相手に射撃系の武器の弾幕を掻い潜りながら相手に接近するという練習を行った。そして、途中で相手を交代して10分程練習を続けたが太郎と一夏はかなり苦戦していた。

 

 セシリアと鈴は専用機を持った国家代表候補生である。試合の時には隙を付いて間合いを詰める事に成功した太郎も、純粋な機動技術だけでは簡単に近づく事は出来なかった。

 

 動きが鈍ってきたところで一時休憩となった。

 

 

「一夏も瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使えるんですね」

 

「ええ、でも未だに時々失敗しちゃうんですよね。太郎さんも使えるなら何でほとんど使わないんですか?」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)は直線的なので使用するタイミングを読まれると簡単に迎え撃たれますから」

 

「あー、確かに・・・」

 

 

 太郎の意見に一夏は先程までの練習で何度も瞬時加速(イグニッション・ブースト)の進行先に弾幕を張られて、酷い目に遭った事を思い出した。

 

 

「やっぱり、フェイントとかもっと入れて不意を突けるようにならないとキツイかー」

 

「そうですね。緩急をつける必要もありますね。あと常に最短距離で詰めようとすれば狙われ易いでしょうね」

 

 

 太郎と一夏が意見交換をしていると鈴が一夏に、セシリアが太郎に用意していたタオルを渡した。

 

 

「一夏、これ使って」

 

「おっ、サンキュー」

 

「太郎さん、よろしければこちらを」

 

「ありがとうございます。セシリアさん」

 

 

 

 太郎が汗を拭いていると、セシリアが何かを言いたそうに太郎の顔を窺っていた。

 

 

「セシリアさん、どうしたんですか?」

 

「今日はアレを使わないんですか?」

 

「「アレ?」」

 

 

 セシリアの言葉に一夏と鈴が興味を持った。

 

 

「太郎さん、アレって?」

 

「何か切り札でもあんの?」

 

 

 太郎はクラス対抗戦で鈴相手に間合いを詰めるのに苦労した後、ずっとその対応策を練っていた。その方法の1つが瞬時加速(イグニッション・ブースト)などのISの機動技術を習得する事だった。太郎からすると瞬時加速(イグニッション・ブースト)は簡単に習得出来た。それは太郎の才能ではなく美星のおかげであった。

 

 美星はログさえあれば、どんな特殊な機動でも物理的にヴェスパに可能であれば再現する事が出来る。そして、太郎が乗っている状態で行えば太郎はその機動の感覚を容易に掴む事が出来、習得も他の人間とは比べ物にならないほど簡単になったのだ。

 

 太郎は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を身に付けると、次にその応用に取り掛かった。それがセシリアの言う【アレ】である。この【アレ】に関しては参考になるログデータは無かった。太郎以外にまともに運用出来る人間はいないらしく太郎のオリジナル機動だった。

 

 

「いくつか特殊な機動を練習してまして、その内の1つの事です。簡単に言えば瞬時加速(イグニッション・ブースト)の応用ですね」

 

「へえー。面白そうね。私が相手するから見せてよ」

 

 

 鈴が面白がって太郎に言った。太郎もそれに頷き、一度距離をとった。セシリアと一夏も邪魔にならないように離れた。

 

 それを確認すると合図と共に鈴が龍咆の牽制を始める。

 

 太郎が回避行動をとりながら機を窺い、龍咆の連射の切れ間に瞬時加速(イグニッション・ブースト)を仕掛けた。

 

 

「かかったわね!!」

 

 

 連射の切れ間は鈴が意図的に作った罠であった。

 

 鈴が一直線に自分に向かってくる太郎に強力な一撃を入れようとした瞬間、鈴の視界から太郎が消えた。あわてて周囲を警戒しようとしたが間に合わず、鈴は太郎に背後から抱きすくめられてしまった。

 

 

「えっ、えっ、どうなってんのよ!?」

 

「どうでした?凰さんからは私が消えたように感じたんじゃないですか?」

 

(美星さん、今です!!)

 

『抜かりはありませんよ』

 

 

 驚く鈴に何食わぬ顔で話しかけながら、その抱き心地を堪能しつつ、美星に頼み甲龍への電子的侵入を謀っていた。ヴェスパの毒針は時間は掛かるが相手に突き刺さなくても、そこから放出しているナノマシンにより制御系に干渉することが出来る。

 

 

『417は元気ですね。凄くわめいてます』

 

(あまり無茶をしてはいけませんよ。凰さんにバレると面倒ですから)

 

『大丈夫ですよ。軽く頭を撫でた程度の事です』

 

 

 こうやって鈴と太郎は誰にも知られず甲龍のデータを収集し、417とも直接接触した。事が済むと太郎は鈴を放した。

 

 鈴が太郎に向き直り問い詰め始める。

 

 

「今の消えたのは何をやったの!?」

 

「こっちからは太郎さんが急に曲がった様に見えたぞ」

 

 

 近付いてきた一夏がそう言う。一夏からはそう見えたようだ。

 

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)中に羽で方向転換したんですよ」

 

「はあ!?そんな事したら操縦してる人間は無事じゃ済まないわよ!!!」

 

 

 平然と言う太郎に鈴が驚愕する。

 

 

「私は鍛えているので問題ありません。それにヴェスパは元々そういった変則的な機動を得意としているので可能なんです。他の機体だと制御を失うでしょうね」

 

「制御を失うどころか、乗ってる人間の骨か内蔵がイッちゃうわよ・・・・」

 

 

 鈴は太郎の事を化け物を見る様な目で見ていた。確かに瞬時加速(イグニッション・ブースト)をしながら方向転換をすれば正面から見ている相手はその姿を見失ってもおかしくはないが、そんな機動をすれば間違いなく操縦者は壊れるはずだ。

 

 

「わたくしも始めて見た時は驚きましたわ。しかし、太郎さんですから」

 

「まあ、太郎さんだしな」

 

「ええええ・・・・」

 

 

 何故か納得しているセシリアと一夏に鈴はどうしても頷けなかった。

 

 

「千冬姉が太郎さんの事を驚異的な身体能力だって言ってたし、普通とは違うんだと思うぞ」

 

「えっ!?なにそれ怖い・・・」

 

 

 あの千冬が【驚異的な身体能力】と言う。それがどれ程の事か、鈴は考えを改めた。山田 太郎は化け物みたいな人間ではない。化け物だ。これからは絶対喧嘩を売らないようにしようと固く心に誓った。

 

 

「今見せたのは練習している機動の中では楽な方です。もう1つの機動は3回位すれば目や鼻や耳から出血してしまって大変でした」

 

「あまり無茶はしないで下さい。あの時は、わたくし心臓が止まるかと思いましたわ」

 

「ふふっ、セシリアさんは心配性ですね。大した事ではありませんよ」

 

 

 大した事あるわよ!と鈴は心の中で突っ込みを入れた。

 

 練習が終わった後、鈴はクラス対抗戦の時の挑発的な発言を謝った。太郎はそれを笑って許した。鈴は太郎に自分の事をこれからは「鈴」と呼ぶように頼んだ。太郎の凄さを知った鈴からすると、太郎に「凰さん」とかしこまった呼ばれ方をすると逆に自分が恐縮してしまいそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう一夏はホモでいいじゃないかと思ってきた今日この頃。

もしくは一夏とマドカをフュージョンさせて女体化してしまえばとか妄想している。今の所はあくまで妄想しているだけですが。


読んでいただきありがとうございます。


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