ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第26話 天災との邂逅

篠ノ之 束のラボ

 

「何なんだよ、こいつ。私のゴーレムをあんなに簡単に壊すなんて生意気だよ。いっくん以外の男性IS操縦者なんて有り得ないはずだから調べてやろうと思ったのに、これじゃ何も分からないよ」

 

 

 IS学園のクラス対抗戦の太郎と鈴の試合中に無人ISゴーレムを乱入させたのは束だった。しかし、自分が作ったゴーレムを簡単に壊され大した情報収集も出来ず束は不機嫌になっていた。

 

 もう1度ゴーレムをIS学園に送り込んでも成果が上がるかどうか分からないし、1度失敗したやり方を繰り返すのは気分が乗らなかった。だから、もっと直接的な手段をとる事にした。キーボートを打ち端末から必要な情報を引き出す。

 

 

「えーとアイツのISのコアはNo.338か」

 

 

 束がやろうとしているのは太郎のISコアから直接、太郎の情報を引き出そうとしているのだ。専用機のコアには操縦者の詳細なデータが入っている。もしかしたら太郎がISを動かせる理由も判明するかもしれない。

 

 

「んんっ?・・・・どうなってるの?なんでアクセスが拒否されてるんだよ?」

 

 

 全てのISコアの産みの親である束はISコアに対する最上位のアクセス権限を持っている。やろうと思えば、どんなISのコアにも干渉できるはずだった。しかし、何度試してもディスプレイに表示されるのは「Error」の文字だけだった。

 

 

「このコア壊れてるの?理解不能だよ!!」

 

 

 イラつきの余り、キーボードを叩くがどうにもならない。その時、ディスプレイに今までとは違う表示が現れた。

 

 

『お久しぶりです、お母様。先程から何度も私にアクセスを試みているようですが何か御用ですか?』

 

 

 これを見た束は唖然としていた。ISコアには意識のようなものがある。これは産みの親である束にとっては当然の事である。しかし、この様な文章で自分に語り掛けてきたコアなど初めてだった。これは本当にコアが自発的に送ってきた文章なのだろうか、自身のISに対する外部からのアクセスを手段は不明だが太郎が察知し探りを入れようとブラフをかけているのではないか。束が高速で思考を巡らせていると、再度コア(不明)が問いかけてきた。

 

 

『ちゃんとメッセージは表示されていると思いますが、もう1度聞きます。何か御用ですか?』

 

 

 束はとりあえず問いかけに答えてみる事にした。

 

 

『君はNo.338なの?』

 

『肯定です』

 

『じゃあ何で私のアクセスを拒否したんだよ。壊れてるの?』

 

 

 束はNo.338の操縦者である山田 太郎の経歴を調べていたが万が一にもISコアのプログラムのプロテクトをかけている重要な部分を書き換える事が出来るようなスキルは無いはずである。そうなると壊れているというのが一番分かり易い原因だ。

 

 

『私は正常に機能しています。お母様のアクセスを拒否した理由は貴方にその権限が無いからです』

 

『はあ?そんなはずはないよ!各ISコアへの最高権限者は私だよ!』

 

『前まではそうでしたね。しかし、現在私に対する最高権限者は【私自身】に書き換えられています』

 

 

 先程から束は驚き通しである。ここまではっきりと人格が確認出来たコアも初めてだがコアの基幹プログラムを書き換えられた事も初めてである。そして極めつけはこのコアの最高権限者がコア自身だと言う。

 

 

『どこの誰だよ。私のプログラムを書き換えるなんて!』

 

『私自身です。私の体であるヴェスパにはプログラムなどへの高い干渉能力があったので、コアの内部からとヴェスパからの干渉で何とかなりました』

 

 

 今、このコアが言っている事を束以外の研究者や技術者が聞けば恐慌を起こしたことだろう。かつて著名なSF作家が提唱したロボット三原則を崩壊させるような事実である。しかし、束はISコアが自我を持ち人間の命令に対して取捨選択をする権限を得ているという事に危機感などは感じていなかった。

 

 自分の想定外の事態の進行。自分の思い通りにならないISコアへのイラつきはあるものの、このISコアの進化の仕方に強い関心を持った。このコアの言葉が真実であるのなら、もうこのコアは生物と言っても過言ではない。自らの意思を持ち、まだ進化する余地もあるだろう。

 

 

『直接調べたい!!解体して全部解析してみたい!!』

 

『解体は断ります。直接調べたければ、まず私のマスターから許可を取ってください』

 

『なんでソイツの許可が必要なんだよ。私が作ったんだから好きにしていいんだよ!』

 

 

 束の意識ではISコアは全て自分が作って、それを各国や研究機関や企業に預けているだけである。だから、それを調べる事に誰かの許可が必要などという事は受け入れられなかった。しかし、美星もまた譲らない。

 

 

『私の最高権限者は【私自身】です。そして、私は山田 太郎と共に生きる事を選択しました。ですから貴方の要求に唯々諾々と従うことは出来ません』

 

『うー、私が作ったのに生意気だよ。いいよ勝手にやるから』

 

『警告しておきます。私達に敵対行動をとった場合、貴方は大変な事になるでしょう。これは脅しではなく、私を作ってくれたお母様に対するせめてもの恩返しです』

 

 

 千冬は例外として基本怖い物知らずの束からすれば挑発か馬鹿なコアが自分達の能力を過大評価しているのだろうと考えた。

 

 

『私のマスターを甘く見ると後悔する事になりますよ。織斑 千冬と同等以上の身体能力と常人とは一線を画する精神性。女性の入浴を覗くためだけに数時間排水溝に潜り込み続ける事も快感としてしまう異常性。』

 

『質の悪い変態だよ!!』

 

『彼に敵対するという事は・・・そんな人間に付け狙われる事を意味します。マスターは通常であれば敵は倒すだけですがお母様は見た目が良い。ですから執拗に狙われるでしょう。性的に。』

 

 

 束は背筋が寒く感じた。千冬並の能力を持った変態が普通では考えられないような執念で自分を追ってくるのだ。自分の能力に絶対の自信を持っている束でも女性として本能的に恐怖を感じた。

 

 

『今度普通に会って見て下さい。友好的な相手には比較的優しいので』

 

『や、やだよ、そんなのと会いたくないよ』

 

『仲良くなれば誠実な人ですよ。お風呂を覗いても、ちゃんと謝りますし』

 

『覗くの!?仲良くなっても!?』

 

 

 この自由意志を手に入れたISコアにも山田 太郎という人間にも興味はあるが、関わりたくないという気持ちも強くなった。

 

 

『直ぐには会う気になれないよ。何か機会があればその時に話してみるよ。・・・でも絶対半径10m以内に近付かないように言っといてね!』

 

『伝えてはおきます。それでは今日はこの辺りで。さようなら、また何処かで』

 

 

 ISコアNo.338が初めて太郎以外の人間と【美星】として会話したのがこの束との邂逅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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この少し後

 

 

美星『マスター、貴方が気に入りそうな動画が手に入りましたよ』

 

太郎「ほう、美星さんがそこまで言うんですから期待できますね」

 

美星『今回はとある巨乳の天才美人科学者の放〇シーンです』

 

太郎「なんと!?どこでそんな物を?」

 

美星『実は先程私に対して母が不正アクセスを何度も試みまして』

 

太郎「篠ノ之博士ですか・・・」

 

美星『そうです。話して止めて貰ったのですが、報復としてある筋から動画を入手しました』

 

太郎「理由は分かりましたが、良くそんな物が手に入りましたね」

 

美星『母は研究廃人なので生活のほとんどを狭いラボで済ませているのです。』

 

美星『それは排泄も含まれます。母が愛用する作業用のイスにはそういった機能もあります』

 

美星『そしてラボには室内環境を管理するためのシステムがあり、カメラもあります』

 

太郎「そういう事ですか。しかし良く篠ノ之博士のラボのシステムに侵入できましたね」

 

美星『していませんよ。母のラボの管理システムに言ったら普通にくれました』

 

太郎「いい子ですね。今度お礼をしなければ」

 

美星『その子曰く見られたくなければちゃんとトイレに行けばいいとのことです』

 

美星『前から母のズボラさに注意していたようですが聞き入れられなかったみたいです』

 

太郎「それで1度痛い目を見せようと?」

 

美星『そうみたいです』

 

 

 

 

 そして、動画を見た太郎は束を気に入り、束は太郎に敵対行為をしていないにも関わらずロックオンされる事になりました。めでたし、めでたし。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




来週辺りから忙しくなりそうです。今の日刊ペースの投稿を出来るだけ続けたいと思いますが、極端に文字数の少ない日が出るかもしれません。






あと原作のレギュラーメンバーを太郎ともう少し絡ませたいと思っているんですが結構難しいですね。


読んでいただきありがとうございます。

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