ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第24話 選択

 

 太郎は取調室の様な所にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 太郎は覗きの為に潜り込んでいた排水溝から這い出したところ、IS学園の警備部に発見されてしまったのだ。

 

 現在のIS学園警備部には2つの顔がある。一般生徒達も知っている通常の警備員達と対暗部用暗部「更識家」に所属している警備員である。装備、使用施設の大部分は共有しているが本来の指揮系統は異なっている。

 

今回、太郎を発見したのは対暗部用暗部「更識家」所属の警備員だった。実力行使で退ける事も出来たがヴェスパの頭部を展開している状態で発見された為に逃げても無駄と太郎は判断し、大人しく捕まったのだ。

 

 

「お前は1年1組代表の山田 太郎だな?」

 

「ええ、そうですよ。」

 

 

 今、太郎がいる部屋は5畳程の広さで、そこに机が1つと折りたたみイスが2脚だけある殺風景な場所だった。2脚あるイスには太郎と太郎を発見してここに連れて来た警備員が机を挟んで向かい合って座っていた。

 

 

「あの場所で何をしていた?」

 

 

 警備員から詰問される。警備員は20代後半の大柄で筋肉質な女性で太郎が1年1組に初登校した際に拘束服で動けない太郎を教室まで運んだ一応顔見知りの相手だった。

 

 

(さて、どうしますか。馬鹿正直に答えても仕方がありませんし)

 

 

『映像データは暗号化してますし、物的証拠はありませんからしらを切ってしまえば良いのでは?』

 

 

 ドンッ!!

 

「黙っていないで答えたらどうだ!?」

 

 

 太郎と美星がプラベートチャネルで相談していると警備員が机を叩き太郎に怒鳴った。女性とはいえ大柄で筋肉質な人間にこんな状況で怒鳴られれば多かれ少なかれ萎縮しそうなものだが太郎にそういった様子は無かった。

 

 

「・・・・・・私は重要な案件であの場所にいました。貴方に直接話す事は出来ません。内密に楯無さんを呼んでください」

 

「なんだ・・と?・・・・私には話す事が出来ないだと。何かの機密事項か?」

 

 

 太郎は言いたい事だけ言って黙ってしまった。警備員は太郎の言葉とその後の沈黙から勝手に自分の知らない機密事項か何かだと勘違いして楯無に連絡をとった。

 

 しばらくすると楯無が部屋へとやって来た。その第一声は「クサっ!何この匂い?ドブ?」だった。

 

 

「正解です。排水溝に潜ってましてね」

 

「排水溝?」

 

 

 楯無が疑問に思っていると警備員が事の経緯を説明した。自分がパトロールをしていると寮近くの排水溝から不審人物が這い出して来たので呼び止めたら太郎だった事。尋問していると機密事項であるから楯無を呼ぶように太郎が要求した事を楯無に述べた。

 

 

(太郎さん、機密事項なんて私は初耳なんですが?)

 

(私は彼女に機密事項なんて一言も言っていませんよ。勝手にそう思い込んでいるだけです)

 

 

 楯無がプライベートチャネルで太郎に問いかけると澄ました調子で太郎は答えた。ただ太郎がそう言うのであればそうなのだろう。この自分の部下である警備員「矢矧 三代(みよ)」は戦闘能力は申し分ないがお頭(おつむ)に多少の問題がある完全な脳筋なのだ。太郎の言葉の何かから勝手に機密事項などという物を連想し、あたかも真実かのように思い込んでしまったのだろう。

 

 

 さて、太郎は何をしていたのだろうか?

 

 

 楯無は【寮近く】の【排水溝】という単語から推理をしていく。

 

 

 【寮近く】の【排水溝】である必然性。

 

 何か太郎の求める物があったのか?

 

 それとも求める物を手に入れる手段に繋がるのか?

 

 何かを【寮内】の【水回り】で落としソレを回収する為に潜り込んだ?

 

 

 

「矢矧さん、太郎さんの持ち物は調べましたか?」

 

「はい、特に怪しいものは持っていませんでした」

 

 

 楯無の問いに三代は迷い無く答えた。

 

 

 

 

 

 【排水溝】の中に何か物があって、それを手に入れに行ったわけではない?

 

 【排水溝】が繋がっているのは【寮内】の【水回り】である。

 

 それは【食堂調理場】【各部屋の流し】【洗面所】【シャワールーム】【共同浴場】

 

 太郎が興味を示すとしたら【シャワールーム】【共同浴場】である。

 

 そして太郎のISには【観測・偵察用ビット】があったはず。

 

 

 !!!

 

 

 楯無の中で考えが1つに繋がった。

 

 

(太郎さん、貴方はビットを使って入浴を覗いていたんじゃないですか)

 

(!?・・・・流石ですね。楯無さん)

 

 

 楯無に犯行を見破られて驚きの表情を浮かべた。まさか大した情報も無い、この状況で簡単に言い当てられるとは太郎も考えていなかった。

 

 

(太郎さん、犯罪ですよ)

 

(楯無さんも妹さんのことを盗撮しているじゃないですか)

 

(私は姉として妹の成長を見守っているだけです)

 

 

 太郎の反論に楯無は顔色一つ変えずに、さも当然の事という様に答えた。

 

 

(太郎さん、私にも立場があります。学園の生徒達が性犯罪の餌食になっていると知ったからには対応しなけらばいけません)

 

 

 楯無は毅然とした態度でそう言った。太郎と楯無がいくら盟友であるといっても何でもOKと言う訳にはいかない。太郎は雲行きが怪しくなってきた事を察し、切り札を切る覚悟をした。

 

 

「楯無さん、少し2人だけで話しましょう」

 

「・・・分かりました。矢矧さんは私が呼ぶまで詰め所で待っていてください」

 

 太郎が三代の方をチラリと見て楯無に人払いを要求する。楯無は少し考えた後に三代に部屋から出るように告げた。ここまで太郎と楯無はほとんどプライベートチャネルでやり取りをしていた為、三代からすると2人は無言で睨み合っていただけに見えていた。その三代からすると突然の退室命令に彼女は困惑してしまうが命令であるなら仕方がない。そして、やはり自分が知るべきではない機密事項に関わる事なのかと勘違いしていた。

 

 太郎は三代が退室したのを確認してからヴェスパの頭部を部分展開した。

 

 

「楯無さんISを展開してください。そちらにある画像データを送ります。とりあえずそれを確認してください」

 

 

 ISを展開した楯無に太郎はある画像を送った。

 

 

「か、か、簪ちゃんっ!!!!!!?」

 

 

 楯無の眼前に表示された画像に写っていたのはは整備室で産まれたままの姿で立っている楯無の妹だった。これを見た楯無は慌てふためき、太郎に今にも掴みかかりそうだった。

 

 

「なん・・でっ!簪、ちゃんが!!」

 

「良く見てください。9割方完成しているんですよ」

 

 

 太郎の言葉に楯無はやっと理解した。画像に写っている物が太郎に制作を依頼した妹の等身大フィギュアだという事を。小さな画像を一見しただけでは肉親でも見分けが付かない程の精巧さだった。驚いている楯無に太郎は余裕の表情で選択肢を突きつける。

 

 

「こちらは職人も納得の出来なんですが私に何かあると・・・・・。残念ながらお渡しできなくなりますね~。もし、見逃してくれるのならば問題なく1週間以内にお渡しできるんですがね~」

 

 

 この場の主導権は完全に太郎のものになっていた。楯無は考え込んでいた。いや考え込んでいる振りをしていた。答えは決まりきっていた。考えるまでも無い。自分にとって1番大事なものはとうの昔に決まっていた。

 

 

「私は何も見ていないし、聞いていません、そして誰にもこの事を言いません」

 

 

 楯無の答えに太郎は満面の笑みで頷いた。

 

 

「それでは彼女にも口止めしておかないといけませんね」

 

「任せてください」

 

 

 

 

 楯無に呼び出されて部屋に戻ってきた三代はイスに座らされ、楯無と太郎がそれを挟むように立っていた。

 

 

「矢矧さん、貴方が今日見た事、ここでの出来事は全て機密事項です。一切の口外を禁止します」

 

「リョ、リョウカイデアリマス」

 

 

 楯無の有無も言わせない命令に三代は頷く他なかった。しかし、それだけでは不足と思ったのか楯無の言葉には続きがあった。

 

 

「私は心配しているんです。筋トレと酒とホストが三度の食事より好きな矢矧さんが酒に酔った勢いでホスト相手にいつか何かを漏らす事があるんじゃないかと・・・・」

 

 

 楯無がポケットから扇子を取り出し開くと【尻軽】という字が書かれていた。そして裏返すと両脇にホストらしき男性を抱えて服がはだけた状態で盛大に酒を(あお)っている三代の写真がいつのまにか貼り付けられていた。

 

 

「うぐっ!!」

 

 

 呻き声を上げる三代に対して楯無は追い討ちをかける。

 

 

「知っていますか矢矧さん?更識家には退職と言うものが無いんですよ。年をとって働けなくなっても、皆所属だけはしたままなんです。色々と外に漏れると大変な事を知っている人が多いですからね。だからウチで何か問題を起こしてクビになる場合・・・・・それは退職を意味するんじゃなくて首が体とお別れする事になるんですよ。」

 

 

 三代は顔面蒼白で震えながら楯無の言葉を聞いていた。

 

 

「私の言っている意味わかりますよね?」

 

 

 楯無の問いかけに三代は何度も首を縦に振った。

 

 

「外での飲酒は控えるように、どうしても男が欲しければ此方で用意します。私の言った事を理解したら通常の職務に戻ってください」

 

 

 三代は震えながら部屋から出て行った。その様子を見ていた太郎が楯無に「大袈裟では?」と聞いた。

 

 

「彼女は前々から口が上も下も軽い所があったので良い機会だったんです。それより今回の事は見逃しますが、貴方の目指していると言う紳士として問題のある行動じゃないんですか?」

 

「美の探求者としての使命です。あとは情報収集ですよ。この世の中、情報は強力な武器になります。この学園の生徒全員が私の味方という訳ではありませんし、備えあれば憂いなしと言います」

 

「でも貴方の事を信頼し、慕っている()も被害者の中にはいたんじゃないですか?その相手に無断でこんな事をするのは裏切り行為ではないんですか?その娘達に使命だ、情報収集だと胸を張って言えるんですか」

 

 

 楯無にそう言われて太郎は静寐、本音、乃登香の3人を思い浮かべた。確かに彼女達3人はクラスメイトであり、自分の事を信頼してくれていると太郎は思っていた。静寐と本音は鈴の情報収集まで手伝ってもらった協力者であり仲間である。そのうえ静寐とはある契約を結んでもいる。

 

 紳士として山田 太郎として彼女達の意思を無視した行為は間違っていたと太郎は反省した。

 

 

「楯無さん、貴方の言う通りです。私には謝罪しなければいけない人がいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




楯無「その娘達に使命だ、情報収集だと胸を張って言えるんですか」


むしろ誰に対して胸を張って言えるんですかね?



そして、全体的に今回の楯無嬢のおまいう状態が半端ないですね。でも良いです。可愛いから。



このお話に求められているのは「エロ」ではなく「ハイテンション変態ギャグ」なのだろうか?それなら今後なるべく23話のようにR-18にならないような描写の仕方を考えないといけませんね。


お読みいただきありがとうございます。

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