ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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織斑千冬との衝撃の出会いは紳士の魂にこれまでよりも熱い何かを刻み込んだ。彼はもう止まらない。この女尊男卑の世界を駆け抜ける。


第2話 第二の出会い

 私は逮捕されてしまったが、初犯であったため比較的早く自由の身となれた。余罪はあるし官憲共もそれを前提として執拗に取り調べを行ったが、結局証拠は無かった為である。

 自宅に帰ると早速PCを起動し調べものを始める。もちろん私をKOした美しき獣について調べるためである。

 織斑千冬。第1回IS世界大会モンド・グロッソ総合優勝者。突然の引退。公式戦無敗。通称「ブリュンヒルデ」。家族は弟一人。両親なし。画像・画像・画像・画像・画像。

 

「素晴らしい」

 

 ただただ素晴らしいの一言である。他に類を見ない実績。圧倒的戦闘力。気高い狼のような美しさと精悍さを併せ持った姿。特にISを駆るその勇姿をみると私の全身からリビドーが迸りそうな感覚に陥る。

 しばらく調べ物をしていると自身の変化に気付いた。織斑千冬に対する並々ならぬ欲求はもちろんのことだが、彼女が世界最強の称号を手に入れた「IS」に対しても私は強い興奮を覚えていることに気付いた。「IS」関連の画像を収集していると織斑千冬以外の選手の画像でも激しい興奮を覚えるようになってしまっていた。

 

 

 

 

「IS」それはある日突然現れた。白騎士事件と呼ばれる既存の兵器群を揃って時代遅れの物にしてしまった大事件。世界の構造すら変えた「IS」だがいくつかの欠点があった。一つは女性しか操縦出来ないということ。もう一つはコアの数に限りがあるというとことだ。

 女尊男卑のきっかけであり注目度の高い「IS」である。操縦者を目指す女性の数は凄まじく、競争率はうなぎ上りである。そうなると必然「特別優秀」な女性が操縦者となるわけだ。「特別優秀」で人によってはモデルなども勤める女性たちが国の威信と自らの磨き上げた技術でしのぎを削る。

 そんな「IS」に触れてみたい。嗅いでみたい。舐めてみたい。擦り付けてみたい。包まれてみたい。「IS」を着た強き者を組み敷き……おっと途中から紳士的ではない思考をしてしまった。まだまだ私は未熟である。頭を振る。

 触れたりしたいと思い始めるとその気持ちはどんどんと高まっていく。だが色々したいと思って出来る相手ではない。ISは最新の戦車や戦闘機以上の戦力であるし、機密の塊でもある。それを取り巻くセキュリティーは生半可ではないだろう。

 常人であれば諦めるだろう。だが私に諦めるという選択肢などない。そもそも諦めるなどという思考は私の中には存在しない。こと性欲に関わる事柄については。

 私はセキュリティーのなるべく甘い所。侵入方法などを調べ始める。その時の私の表情は紳士にあるまじきものであっただろう。

 

 

 

 

 

 

 数ヵ月後

 

 

 千載一遇のチャンスが廻ってきた。信じてもいない神に三回ほど感謝を述べ、遂に私は邪魔者のいない状態でISの前に立つことに成功した。

 ここはIS学園の試験会場である。人の出入りが激しく紛れ込むのが比較的容易なここが狙い目であった。ここで私に二つの幸運が起こる。

 一つ目は会場のセキュリティーシステムがまともに稼動していなかったのである。正確にはまともに稼動しているように見せかけているだけの状態になっていた。システムへの介入の準備もして来ていたが多少手間取るかと思っていたので拍子抜けであった。と同時に警戒心も強まった。どうやら私以外にもここにちょっかいをかけている者がいるようだ。

 二つ目の幸運は運営スタッフの混乱である。先ほどから「男が起動させた」「技術者を呼んで」など慌ただしい。特に眼鏡をかけた豊満なる二つの夢を備えた女性スタッフは右往左往という言葉がこれほど当てはまる様子は他にないだろうといった様子である。「男が起動させた」という言葉とこの混乱、まさかISを男が起動させたのであろうか。興味深いことである。

 そもそもIS学園の試験会場に何故男がいてISを起動させるような状況になるのか?まさか試験を受けに来ました。などということはないだろう。私と同志なのだろうか。

 様子を見に行きたいが下手をすれば私も見つかってしまうし(すでに犯行がばれた同志扱い)、なによりもこの降って沸いたチャンスは逃せない。試験会場には複数のISが用意されている。その中でも予備機として持ち込まれているISならスタッフが直接監視したりはしていない。忍び込む前から狙いをつけていたISを目指しひた走る。

 

 そして今、私の目前にはISがある。本当は国家代表クラスの実力者が試合に使った直後のISこそが私の最終目標であるが目の前のISも垂涎の獲物である。量産機ではあるがISというものは兎に角数が少ない。目の前のISも相当使い込まれているはずだ。IS学園で使われているISである。現役や過去の国家代表に匹敵するの実力者も使った可能性は十二分にある。

 私は静かに服を脱ぎ綺麗に畳んだのちISへと手を伸ばす。

 その時、背後から悲鳴が聞こえた。

 

「何をしているんですか!!」

 

 振り向くと先ほど右往左往していた豊満なる女性スタッフが口に手を当て驚愕の表情で震えていた。

 

「ぬかった!!鍵を閉め忘れるとは!!」

 

 獲物を目前にした興奮の為に失念していたのだ。獲物を仕留めようとするその瞬間こそもっとも隙が出来ると分かっていながら酷い失態である。そこで慌てていたため何の感動もなくISに触れてしまう。つくづく詰めの甘い。

 

 するとISが光だしたのだ。そしてISが起動し……。

 

 私から距離をとった。

 

「「ISが自分で逃げた!!!」」

 

 

 

 この日、世界で二人目のIS男性操縦者が誕生した。


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