ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第19話 青春あるいは友情

 昼休みになると一夏は太郎を「食堂に行くなら一緒に行こう」と誘った。一夏の後ろでは箒が微妙な表情で成り行きを見ていた。元々、箒は一夏と2人で食べに行くつもりだったので太郎は邪魔でしかなかった。しかも太郎にはついこの間へこまされたばかりである。本当は一緒に行動したくは無かったが一夏がわざわざ誘っているのを止める事も出来なかった。

 

 一夏と箒と太郎、そして最近いつも太郎と一緒に昼食をとっていたセシリアと数人のクラスメイトが付いて来た。食堂に着くとそこで鈴が立ち塞がった。

 

「待っていたわよ一夏。さっきの話の続きをするわよ」

 

「んー・・・・。分かったから退いてくれ。食券出せないだろ」

 

「わ、わかってるわよ。席を取って置くから早く来なさいよ」

 

 

 その後、全員料理を受け取り席に着いた。一夏の懸命な弁解によって鈴の一夏に対する疑惑は一応晴れた。その様子を面白くなさそうに見ていたのは箒だった。想い人が他の女と親しげにしているのだから面白いわけがない。

 

「一夏、結局誰なんだ?」

 

「幼馴染みの凰 鈴音だよ。俺は【鈴】って呼んでる。箒が転校していった後に入れ替わるように入ってきたんだよ」

 

 

 箒の言い方はトゲが含んだ物言いだったが一夏は気付かなかった。続いて箒を指した。

 

「こっちは篠ノ之 箒。俺が通ってた剣術道場の娘で俺のファースト幼馴染みだな」

 

「ふーん、そう」

 

 

 鈴は返事をした後、じろじろと値踏みするような視線を箒に向ける。箒も鈴の事を睨みつける。2人共もう互いが一夏が好きだという事は分かっていた。その為に互いに牽制を始めた。どちらが一夏の放課後のIS特訓で指導役をやるかで言い争っていた。2人に挟まれた一夏はぐったりしていた。

 

 他のメンバーはその恋の鍔迫り合いを楽しみつつ昼食を堪能した。太郎とセシリアは微笑ましいといった感じで見ていたが、それ以外のクラスメイトはより激しい修羅場を望んでいるのか「争え、もっと争え」と念を送っていた。

 

 すると思い出したかのように鈴は太郎の方を向いた。

 

「そう言えば一夏に勝ってクラス代表になったらしいわね。私もクラス代表なのよ。クラス対抗戦で戦う事になったら一夏の(かたき)を取らせて貰うから覚悟しておいて」

 

「楽しみにしておきます」

 

 

 挑発ともとれる様な鈴の言葉に太郎は本当に楽しみだと言わんばかりの表情だ。その表情を見て鈴は眉を顰めた。

 

「私って強いわよ。舐めてると痛い目見るよ」

 

「凰さん、貴方の言う強いというのは織斑先生レベルですか?」

 

「はあ?何言ってるの。そんな訳無いでしょ。あんな化け物レベルの人と同じなわ・・・・」

 

 

 鈴が言い終わる前に強制的にセリフを停止させた人間がいた。彼女は鈴の頭を背後から鷲掴みにしていた。千冬だった。

 

「ほーう、この学園には化け物がいるのか。ぜひ会ってみたいものだなぁ。」

 

「ひぇっ、千冬さん・・・」

 

 

 千冬は鈴をそのままUFOキャッチャーの様に吊り上げてしまった。ただしUFOキャッチャーの驚くほど貧弱なアームとは違い世界最強と呼ばれる千冬の握力は生半可なものではなかった。その日、食堂にいた生徒は全員少女の断末魔の叫びを聞いた。

 

 

 

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 次の日

 

 放課後になると開放感からか皆足早に教室から出て行くが、今日は数人が教室に残った。太郎が席で待っていると布仏 本音、鷹月 静寐、谷本 癒子の3人が集まってきた。

 

「おまたせー。頼まれてた情報集まったよ~。」

 

 

 本音が間延びした声でそう言った。鈴がクラス代表と知った太郎は早速クラスメイトに情報を集めてもらっていたのだ。1日で情報収集を完了したと言うこのクラスメイト達は優秀だ。先ず本音から報告を始める。

 

「凰 鈴音、中国の代表候補生で専用機は第3世代の「甲龍」実用性と効率化がコンセプトな機体だよー」

 

 

 この辺りの情報は太郎も自身で調べていた。次を促す。

 

「一番の特徴はー、第3世代型兵器の【龍咆】って言って砲身も砲弾も見えないんだってー」

 

 

 かなり厄介な兵器である。威力や連射性能や使用エネルギー量などが分かれば対処も少しは楽になるのだが、これらは操縦者が任意で調整出来るとの事だ。本音の報告が終わると次は癒子が報告を始める。

 

「凰 鈴音本人の特徴は活発な性格で物怖じしないタイプみたい。体格は小柄で昨日、大浴場で確認した人によると胸もAカップあるか怪しい感じで、チ〇ビは黒」

 

 

「「ええええっ!???」」

 

 

 癒子の報告に全員が驚いた。その様子を見て癒子は気まずそうに訂正する。

 

「冗談です。すみません。色は綺麗なものらしいです。ちょっと陥没気味とのことです」

 

「ほう、本人はアグレッシブな感じですがそこは恥ずかしがり屋なんですかね」

 

「それと何処の毛とは言いませんが随分薄いそうです」

 

 

 最後の報告者は静寐(しずね)だった。

 

「凰 鈴音は中2の終わり頃まで日本にいて、その後は中国に帰国していたみたいです。家庭の事情との事です。あえて言わなくても知っていると思いますが織斑君に片思い中みたいです」

 

 

 静寐の報告が終わると太郎は満足気に頷き3人の顔を見る。

 

「良く調べてくれました。報酬は何が良いですか?」

 

「私はおかし~」

 

 

 本音が真っ先に手を挙げた。

 

「どういった物がいいんですか?」

 

「スナック系で~」

 

「地方限定物とかも集めておきますね」

 

「やった!」

 

 

 よろしくね~と言いながら本音は教室を出て行った。次に手を挙げたのは癒子だった。

 

「私は千冬様と一夏君の写真が欲しい!」

 

 

 癒子の希望を聞き太郎は秘蔵の画像データを携帯端末から取り出した。千冬のパンチラ画像と模擬戦の時に攻撃を食らって苦悶の表情を浮かべた一夏のアップ画像を渡すと癒子は不気味な笑い声を出しながら走り去った。

 

 教室に残ったのは太郎と静寐だけになった。すると静寐は太郎に近付きポケットからジップ〇ックを取り出した。ジップロッ〇に入っていたのは薄い水色を基調とした布切れだった。一部が黄ばんだソレをジップ〇ックごと太郎は恐る恐る受け取った。

 

「これは?」

 

「凰さんのパ〇〇です」

 

 

 太郎に電流が走る。見たところ使用済みだ。黄ばみ具合を見る限り千冬に関節を極められて失禁しかけた時のものだろう。大洪水は免れたものの少し漏れてしまったのだ。

 

「これほどの逸品、貴方は何を報酬として望むのですか?生半可な望みではないでしょう」

 

 

 静寐は顔を赤らめ恥ずかしがってなかなか答えない。辛抱強く待っていると小さな声で望みの物を告げた。

 

「・・・・ソ、ソックスが欲しいです」

 

「貴方は!ソックスハンターだったんですか!?」

 

 

 太郎の詰問に静寐は両手で真っ赤になった顔を隠しながら頷いた。ソックスハンターとはかつて猛威を振るった変態集団で、ある理由から弾圧の対象になり政財界からも多くの対象者が発見され迫害された悲劇の狩人達の総称である。弾圧の影響で勢力は弱まったものの地下に潜った彼らはより巧妙かつ高度に組織化されていた。著名人の中にも隠れハンターがいるという噂は常に付き纏っていた。まさかクラスメイトにいるとは太郎も考えていなかったので驚いてしまった。

 

「私のコードネームは【靴下を読む者】ソックスリーダーと呼ばれています。ソックスから持ち主の身長体重など様々な情報を読み取れる事からそう呼ばれています」

 

「私に正体を明かしてしまって良かったのですか?」

 

 

 ソックスハンターにとってその正体を明かす事は大きな危険をともなう行為である。しかし、静寐は微笑む。

 

「山田代表であれば大丈夫だと思いました。何か私達に近いものを感じたので、ただみんなには内緒にして下さい。バレると何をされるか分からないので」

 

「分かりました。ソックスは今履いている物で良いんですか?」

 

 

 太郎の言葉に静寐は頷き新品のジッ〇ロックを2つ取り出した。太郎がその場でソックスを脱ぎ静寐は右と左を別々に入れた。そして一度はポケットに入れようとしたが我慢出来ないといった様子で右足分を入れたジュップロッ〇を顔まで持って行き少しだけ開けて鼻を突っ込んだ。

 

「スーーーーーーーーーー。ひふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 

 静寐が鼻からソックスイオン(注意・後書きにて解説)を大量に取り込んだ為に意識がトンでしまったのか奇声を発しながらよろめき後ろに倒れかけた。太郎が慌てて静寐を抱きかかえる。意識が戻った静寐は太郎に謝った。

 

「すみません。つい我慢できずに・・・・・」

 

「危険ですので場所を選んで使った方がいいですよ」

 

「気をつけます。・・・それにしても良いソックスでした。強烈な男臭さの中にある気品、それはあたかも野を行く気高き狼のよう。そして脱ぎたてにしか出せない温かみと蒸れ具合は嗅ぐ者の魂を包み込むような優しき空気。結構なお手前でした」

 

 

 静寐はそう言うと黙り込んでしまった。何かを言おうかどうしようか迷っている様子だ。それを察した太郎が「他にも言いたい事があるならどうぞ遠慮なく」と促した。静寐は思い切って太郎に聞いた。

 

「出来ればこれからも定期的にソックスを譲って欲しいんです。それと私が手に入れるのを諦めていた織斑先生のソックスを山田代表なら入手出来るんじゃないかと思って・・・」

 

「私のソックスに関しては問題ありませんが、後半は確かに難しいミッションですね」

 

「もし、もしですよ。手に入ったら譲って欲しいんです。対価は支払います。何枚でも」

 

 

 太郎は必死の形相の静寐の肩に手を置き笑顔で言った。

 

「手に入ったら直ぐに報告しますよ。それと対価ですが貴方自身のモノも私は欲しいんですが」

 

「わっ私のなんかで良いんですか!?」

 

「卑下しないで下さい。少なくとも私は魅力を感じています」

 

 

 

 静寐は何度も太郎に礼を言った。教室はいつの間にか夕日に染まっていた。静寐は思った私は一生この美しい風景を忘れないだろうと・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太郎のソックスを放課後に静寐が受け取る。それを堪能した静寐が太郎の日課のジョギング時に顔に被るパ〇〇を渡す。

 

そして太郎がジョギングの時に履いているソックスを静寐が受け取る。太郎は朝一番に静寐から一晩履いていた〇〇ツを受け取りモーニングコーヒーと共に楽しむ。放課後になるとまた太郎がソックスを静寐に渡すという一連のルーティンが形成された。

 

 

 

ここに1年1組の永久機関が完成したのだッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




爽やかな青春ラブコメ活劇ですね。

自分も高校時代に〇〇〇とソックスを交換出来る様な女友達が欲しかったですね。

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用語解説

ソックスイオン・・・ある種の素質を持った者のみが感じ取れる物質。使用済みのソックスから発生すると言われている。


効能・・・疲労回復、精神高揚、冷え性、肩こり、内臓疾患、うつ病などに効果があるとハンター達の間では噂されている。


副作用・・・多量に吸い込む事により、幻覚、呼吸障害、意識混濁などの症状を起こすと多数の報告がある。

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