ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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第15話 信じるという事

第3アリーナ管制室

 

 一夏が背後からトドメを刺されている姿を見て真耶は顔を赤くしながら呟いた。

 

「あれ絶対入ってますよね!?」

 

 

 そこには何処か期待を含んだようなニュアンスがあった。それに対して千冬は顔色一つ変えていなかった。

 

「落ち着け、ISには何重もの安全対策が搭載されている。余程の事が無い限り操縦者が重傷を負う事は無い。コーヒーでも飲んで落ち着くといい」

 

 

 千冬はコーヒーを手に取ろうとして落としてしまう。ガシャンッと音がしてコップが割れる。慌てて拭く物を探そうとして砂糖の入れ物まで倒してしまう。管制室内に微妙な空気が流れた。空気を読んでいるのか読めていないのか真耶が口を開く。

 

「やっぱり、弟さんの事が心配なんじゃないですか。隠さなくてもいいじゃないですか~」

 

 

 千冬相手に空気を読んだうえでこんな事を言えるのなら大したものである。千冬が真耶の方を向く、その表情は先程までと変わっていないが真耶にはこころなしか威圧感が増しているような気がした。

 

「山田先生は掃除が好きでしたね」

 

「えっ?別に好きでは・・・・」

 

「好きですよね」

 

「・・・・・・はい」

 

 

 有無を言わせぬ千冬の言葉に真耶は頷くしかなかった。言質をとった千冬は真耶の肩を叩き、

 

「それではここの片付けは任せました」

 

 

 そう言うと千冬は管制室を出てピットへと向かった。残された真耶は溜息をつき千冬が落としたコーヒーやカップの破片などを片付け始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 アリーナに決着を告げるブザーが鳴り響く。

 

「試合終了。勝者─────────山田 太郎」

 

 

 しかし、アリーナは悲鳴と歓声が入り混じり誰もブザーの事など気にしていなかった。

 

「お、織斑君が遠い人に・・・」

 

「山田 太郎許すまじ!!」

 

「ジュルっ。いいもん拝ませてもらったぜ」

 

 

 太郎は悲鳴と歓声が上がり続ける観客席に向かって手を振りながら一夏を担いでAピットに帰って行った。Aピットでは千冬と箒の2人が待っていた。太郎と一夏はピットに着くとISの装着を解除した。太郎は涼しい顔をしていたが、一夏の方は尻を押さえたままへたり込んでしまった。

 

「いてててて、セシリアには1発だったのに何で俺には2発なんだよ」

 

「よく分からないのですが白式のバリアーと絶対防御の方が硬かったんですよ」

 

 

 一夏と太郎がそんな事を話していると箒が一夏の元へ駆け寄って来た。

 

「一夏!大丈夫なのか!!」

 

「おう、体は少し痛いけど大丈夫だぞ」

 

 

 箒が本当に聞きたかった事とは少し違ったのだが流石に尻の貞操が大丈夫だったのかどうかを直接問いただす事は出来なかった。聞きたい事を聞けない心中のもやもやした物が太郎の顔を見た瞬間、怒りとして弾けた。

 

「貴様がぁー!!」

 

 

 箒は太郎に木刀で殴りかかった。上段から振り下ろそうとした木刀が太郎を打ち据える事は無かった。がら空きの両手首を太郎が掴み横に放り出す様に投げた。普段の太郎の女性に対する扱いからするとかなり粗雑な扱いだった。何故なら太郎は激する事こそ無かったが静かに怒っていたからだ。

 

「篠ノ之さん、自分が何をやっているのか理解しているんですか」

 

「うるさい!お前が悪いんだ!!」

 

 

 箒は太郎の言葉に反発して怒鳴った。それに対して太郎は声を荒げることは無かった。

 

「貴方がやっている事は負けた選手の付き添いの人間が勝者を凶器を持って襲撃しているという事ですよ」

 

 

 太郎の言葉に今度は流石に怯んだ。箒の行為は一夏が負けた事に対する腹いせや報復行為にしか見えない。太郎はその様子を見ながら言葉を続ける。

 

「・・・という事で悪い()にはお仕置きが必要ですね」

(美星さん、レギオンの制御をお願いします)

 

 太郎の指示に美星も直ぐに反応する。

 

『了解です。この小娘に後悔させて上げます』

 

 

 太郎が索敵・観測用ビット【レギオン】を展開する。展開されたレギオンは5匹だけだったが美星が直接制御するビット達は素早く、複雑な動きで木刀程度ではどうしようもなかった。箒に取り付いビット達は肢体を這いずり2匹は服やスカートの中に潜り込んだ。

 

「いやぁぁー!!なっ、何なんだコレは!?」

 

『あら?いきなり襲い掛かって来る様な野蛮な雌にしては可愛らしい下着ですね』

 

(小さなピンクのリボンが可愛らしいですね。春を意識した柔らかな配色に手触りの良さそうな素材が好印象です)

 

 

 悲鳴を上げる箒を前に太郎と美星は下着批評を楽しんでいた。ピット達を引き剥がそうとし色々とはだけてしまっている箒の姿に一夏は顔を赤くしている。そんな太郎と一夏の頭を千冬が叩く。

 

「やめんか馬鹿者!!」

 

「痛っ、俺何もやってないぞ千冬姉。あいたっ!」

 

「織斑先生だ。止めずに見ているだけのお前も同罪だ」

 

 

 頭を押さえて痛がっている一夏を横目に太郎は秘かに美星の報告を受けていた。

 

『データとり終えました。ついこの間まで中学生だったとは思えない肢体ですね』

 

(今日はセシリアさんに続き篠ノ之さんの詳細なデータが手に入って吉日ですね。あとで3Dモデル化しましょう)

 

 

 太郎はデータをとり終えたピット達を戻し、一夏を叱っている千冬に落ち着くように促す。

 

「一夏もそういうのが見たいお年頃なんですよ。余り抑えつけると変な暴走をしかねませんよ」

 

「お前の様に?」

 

 

 千冬の返しに太郎はいかにも心外だという様に首を横に振る。

 

「私は自分に素直なだけですよ。暴走なんてしてません」

 

 

 太郎の言葉を聞き千冬は眉間を押さえて黙ってしまった。

 

「それより篠ノ之さんをどうしましょうか。彼女の行動は普通に犯罪なんですが」

 

 

 太郎の指摘に千冬が「お前が言うなよ」という顔をしていたが箒はびくりとしていた。箒のその姿を見て一夏が慌てて太郎と千冬の間に入る。

 

「ちょっと待ってくれ。箒だってそんなつもりは無かったと思うからそんなに怒らないでくれよ」

 

「一夏・・・・」

 

 

 箒は自分を庇っている一夏を陶然と見ていたがこの時の千冬と太郎は厳しかった。

 

「篠ノ之、今回の件で山田がお前の木刀を避けれていなかったら退学どころの騒ぎではなかったぞ」

 

「身のこなしから見て篠ノ之さんは有段者でしょう。有段者が木刀で頭を殴ったら相手は死んでもおかしくありませんよ」

 

 

 太郎と千冬の言葉に箒の顔色は真っ青になっていた。そんな様子を見ながら太郎はふと思いついた事を美星に言う。

 

(まあ、今穿いている春風薫るパンツを差し出すなら許しても良いですがね)

 

『それは紳士的にいいんですか』

 

 

 美星のもっともな問いに太郎は平然と答える。

 

(いいんです。そもそも彼女が誠心誠意謝罪するなら私はそれだけで許しますよ。それが無いんですから別の物で補わないといけませんよね)

 

 

 太郎が美星と話している間に箒の処遇は決まっていた。反省文と観察処分である。ここで言う観察処分は法的な物ではなくしばらくの間、特に厳しく生活態度などを観察、監督するというものである。仮に期間中に問題行動等があればより厳罰に処されることになる。

 

 

 箒と一夏はとりあえず退学などにはならなかった事を喜んでいたが太郎や千冬は少し白けた感じだった。太郎が千冬の耳元で声を潜めて言う。

 

「このままでは再犯しますよ。彼女は罰を恐れて自らの行為を後悔していましたが反省した様子は見受けられませんでした」

 

「あいつにも色々あるんだ。自然に直らない様なら、私がそのうち根性を叩き直してやるさ。」

 

「早めにする事をお勧めしますよ。取り返しの付かない事になる前にね」

 

 

 そう言うと太郎はピットから出ていった。太郎が出て行くのを見て一夏と箒も千冬に一声かけ寮に帰っていった。一夏は歩く時に腰か尻が痛むのかその辺りをさすりながら歩いていた。

 

 

 

 一人ピットに残った千冬は帰っていく一夏のその姿を見て小さく呟いた。

 

 

「私は信じているぞ」

 

 

 

 

 




一夏の尻の●が「無事なのか」、「そうでないのか」

それはきちんと確認されない限り彼のケツ●ンコはこの2つの状態が重なり合った状態なのだ。


2015年3月3日午前1時お気に入り登録99人


変態主人公を求める栄えある100人目は誰でしょうか。

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