ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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豚の思考

 セシリアは怒りに震えていた。

 シャルに自分が裏で【歩く公然猥褻罪】と呼ばれていることを知らされたことに?

 いいや、違う。自分と同類であるはずのシャルが、まるで自分は一般人だという態度をとっていることに義憤を覚えているのだ。

 そう、これは自分が学園で変態扱いされていると見ず知らずの店員にバラされた怒りではない。シャル自身も太郎の愉快な仲間の一人であるなら当然(変態)淑女であるはずだ。にもかかわらず一般人のフリをするのは、自身の生き様に誇りを持っていないとしか思えない。

 セシリアはシャルのつまらない誤魔化しを、この場で剥ぎ取り、真の淑女に相応しき覚悟を持たせるという使命感に胸を熱くする。今からすることは、決して店員を前にして恥をかかされた腹いせではない。

 

「わ、わたくしが公然わいせつ物陳列罪でしたら、シャルさんも色々問題があると思いますわ」

「えっ学園では一応優等生のつもりなんだけど……?」

「しかしシャルさんはIS学園の王子様と呼ばれてますわね。な、ぜ、か……」

「そ、それは」

 

 シャルは性別を偽って男性IS操縦者として学園に転入した負い目から歯切れが悪い反応を見せた。今はもう意識的に男子のフリをしているわけではないが、立ち居振る舞いの癖が抜けず中性的な見た目も相まって、そういった目で見ている女子生徒も未だに多い。

 セシリアは視線をシャルの股間へ向ける。

 

「それは? もしかして凄いモノをお持ちなのが理由かしら」

「なんのこと?」

「王子様は顔に似合わずアチラの方は盾殺し並だそうで」

「え゛っ!?」

 

 最初はセシリアの言っている内容が分からなかったシャルだが、やっと理解が追いつきその表情を歪めた。

 店員(偽)の方はまだ訳が分からず困惑気味である。

 

「ちょちょちょ、待ってよ。誰がそんなこと言ってるの!?」

「いえ私は学食でそんな噂を小耳に挟んだだけですわ」

「そんな、あり、あり、あり得ないでしょ。ペニ……凄いアレがあるだなんて」

「あら王子様ということは生えていても、おかしなことはありませんわ」

 

 本当に生えているかどうかは別として、セシリアがそんな噂を聞いたのは事実である。嘘は何一つ言っていない。あくまで噂を聞いただけと言っているだけで、生えていると断言したわけではない。しかし、シャルはこの場で生えていない証拠を実際に脱いで見せるわけにもいかない。第三者の言を使い無実を証明しづらい点を責め立てる、意外にもセシリアは狡猾であった。

 そしてセシリアの話術に店員(偽)はまんまとハマる。店員(偽)は「生えて」「王子様」というキーワードでやっと話を理解し、理解したがゆえに混乱は増していた。

 

「あ、あのお客さんは男なんですか?」

「違うよ!?」

「でも生えているという噂ですわ」

 

 男じゃないのに生えている。訳が分からない。店員はシャルを注意深く観察する。

 中性的な整った顔、手触りの良さそうな金髪は短いが、女としてもおかしくない程度の長さである。Tシャツとホットパンツという服装で胸の膨らみは詰め物をしているようには見えない。ホットパンツから伸びる足は程よい肉付きでムダ毛も見あたらない。

 店員(偽)の視線はシャルのホットパンツへ戻り、止まる。こんな子の股間に生えているのかと思うと何故だか胸に感じた事の無いモヤッとしたものが湧き上がる。

 

「セシリア止めてよ!」

「あっ、そう言えば元々第三の男性IS操縦者という触れ込みでしたわね」

「こ、これで男……」

 

 セシリアの衝撃的な発言に店員の思考回路はショート寸前である。

 三人目の男性IS操縦者がいるなど聞いたことが無い。つまりIS学園はこの重大な事実を隠蔽していたのだ。やはりIS学園はとんでもない場所である。

 勘違いを加速させている店員にシャルは悲鳴のような訂正を入れる。

 

「僕は女だよっ!」

 

 どういうことだってばよ。女なのにペニ●が生えているとは……そういうのもあるのか。店員は悩む。

 本人は女だと言っているが、股間いパイプが生えていれば男ではなかろうか。

 店員の啓蒙が大幅に上がった。しかし、そうなると大きな問題が浮上する。このシャルと呼ばれる人間の扱いについてだ。女性のIS操縦者ならば敵であるが、棒が付いているのならば仲間になり得るのではないか。そんな思いが店員を悩ます。セシリアというド変態に対して「もう止めてよぉ」と顔を赤らめる自称女(棒付き)の中性的な少女? 敵として排除するのは躊躇われる。

 思い悩む店員にシャルが心配そうに声を掛ける。

 

「頭を抱えてどうしたんですか、体調が悪いんですか?」

(天使かっ!?)

 

 棒が付いているなら男。店員は今そう決めた。本人が女と言っても男、それで全て解決である。シャルは保護して、連れのクソ淫売は拘束してIS委員会へ政治的な要求するネタにでも使おう。そうしよう。そうと決まれば予定変更を仲間に伝えなければならない。反対意見も出るかもしれないが。

 

(なあに、この子を知れば皆も賛成してくれる)

 

 店員(偽)は新たな階段を登り始めた。その階段もまた太郎とは方向は違うが紳士道の一つである。

 深刻な表情で頭を抱えていた店員が、急に悟りを開いたような微笑みを浮かべている。そんな状況にシャルとセシリアは若干引いた。

 

「だ、大丈夫なんですか」

「これが賢者モードと呼ばれるものでしょうか?」

「セシリア、それは違うんじゃないかな……」

 

 顔を見合わせる二人をよそに、店員はシャルの肩を軽く叩き声を掛ける。

 

「色々苦労したろう。力になるよ」

「え、苦労? セシリアの言ってること本気で信じちゃってる? 違ッ」

「分かってる分かってる。大丈夫だ」

「いやっ僕が大丈夫じゃないんだけど!」

 

 シャルと店員のやり取りを見ていたセシリアは、思惑通りの展開に留飲を下げる。やっぱり変態扱いされた腹いせだった。だがセシリアの思考はさらに先へと進む。いっそ嘘から出た実にしてしまったら良いかもしれないと。

 チン●が生えればシャルは太郎だけでなく女性も性の対象になるかもしれない。そうすればセシリアが太郎を占有出来る時間が増える可能性がある。現代の科学力ならチン●の一本や二本位生やすことも出来るだろう。恋のライバルの足を引っ張る為にチ〇ポを生やすという発想、セシリアの脳みそは致命的なエラーを起こしている。




俺……フタナリは好きじゃないけどシャルには生えていても良いと思う。(ポッ


読んでいただきありがとうございます。

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