ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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前回のあらすじ・セシリアが太郎の部屋で〇ナっていると、そこに太郎が帰って来て、さあ大変。


超越

シャルっ無事ですかッ!? ふた●り改造されて〇ちん●みるく搾乳調●されていませんかっ!?」

 

 太郎が叫びながら寮の自室に飛び込んで目にしたのは布団だった。自分のベッドの上で盛り上がった状態の布団が動いている。不審極まりないが、其方ばかり気にしてはいられない。すぐシャルのベッドの方も確認する。シャルは寝ているように見える。

 太郎が視線をシャルへ移した瞬間、太郎のベッドの上の布団が窓へと走り出し、そのまま突き破った。

 

「ちっぃぃ、逃がしませんよ」

 

 太郎は布団を被った何者かに続き、窓から外へ出て追跡を始める。共同浴場から走って来たばかりであっても太郎の体力は未だ十分ある。大した苦労もなく追いつくかと思われたが、そう簡単にはいかない。驚きの光景が太郎の眼前にて繰り広げられる。

 布団を被った何者かは校舎近くまで逃げて来たところで突然ジャンプする。そして、何も無い空中を駆け上がって行く。ISで飛んでいるのではない。まるで透明な階段を二段飛ばしで駆け上がって行くように、布団を被った何者かは空中を駆け上がり校舎の屋上にまで達した。

 

「馬鹿な!? しかし、そう簡単には逃がしませんよ」

 

 太郎は驚きで一旦止めてしまった足をフル回転させ校舎の外壁に向かう。一階の窓枠を足場にして飛び上がり、雨どいに取り付きよじ登っていく。IS学園に来る前はマンションの高層階のベランダに干されている下着狩りで良く使った手である。

 ISを使えば話は早いのだが、ISの無断使用は一応禁止されている。太郎は破りまくっている規則だが、バレないようにやっているだけで完全に好き放題というわけではない。IS学園内各所には監視カメラやセンサー類が設置されており、この辺りは感知される恐れがある。そして、何より眼前で見せられた空中を駆け上がるという離れ業に対抗意識が働いていた。

 スルスルと登っていく太郎だったが、強烈な妨害が入る。雨どいをよじ登る為に両手両足を使っているせいで無防備な太郎に何かが襲い掛かる。

 固くて太いナニかが太郎を下から突くように飛んでくる。奇跡的に股間とア●ルへの直撃は免れた。が、直撃ではないものの股間近くの太ももに当たってしまう。

 金的は例え直撃ではなくとも効く。特殊な訓練をこなした紳士・太郎の息子であっても身構えていない状態、しかも見えない角度からの不意打ちはキツイ。

 

「ぐぉッッ」

 

 太郎は思わず手を放してしまい、その身は重力に引かれ地面へと叩きつけられる。大体二階から三階の間くらいまで登っていたのかなりのダメージだった。それでも下がコンクリートやアスファルトではなく土だった分良かった。

 

「……やってくれますね」

 

 太郎は苦々し気に呻きながら身を起こす。屋上を見上げても、そこには布団の姿はなかった。

 

「美星さん」

『周囲に生命反応ありません。逃げられたようです』

 

 太郎の呼びかけに美星が報告する。

 太郎は歯噛みする。戦って負けた訳ではない。良く言えば相手を撤退させたとも言える。しかし、太郎の胸中は晴れない。太郎はしばらく暗闇に包まれた屋上を睨みつけていたが、大きく息を一つ吐き出すと自室へと(きびす)を返した。

 太郎が寮の前まで戻ると深夜にも関わらず、ほぼ全ての部屋に明かりがついているが見えた。正体不明の不審者が窓を突き破った時の音で騒ぎになったのだ。さらに何事かと起きて来た生徒達は扉を外され、窓も壊れた太郎の部屋を発見し騒ぎは大きくなってしまった。

 そのせいで駆け付けた警備員や教師達は戻ってきた太郎から事情を聴く為、睡眠時間を大きく削るはめになる。

 ちなみにシャルは寝ていただけで無事だった。太郎が危惧は杞憂と化し、シャルの股間に汚れたバベルの塔が建設されたという事実は無かった。

 

 

◇◇◇

 

 セシリアは布団を被ったまま窓を突き破り屋外へと逃走する。部屋が一階であったのと布団を被っていたお陰で、地面に叩きつけられたり、割れたガラスで怪我をすることはなかった。

 全力で走るセシリア。不幸中の幸いなのは布団を被っている状態だったので、正体がバレなかったことだ。だが喜んでばかりではいられない。太郎相手に単純な足の速さでは勝負にならない。このまま普通に走って逃げていてはジリ貧だ。

 特に行先を定めた逃走ではなかったが、走る先にある建物にセシリアは気付く。闇の中にたたずむ校舎。

 その時、普段のセシリアでは考えつきもしないような案を閃く。

 セシリアは脇目も振らず一直線に校舎へと走って、あと10メートルくらいに迫ったところで踏み切り、ジャンプする。空中にブルー・ティアーズのレーザービットを部分展開し、それを足場としてさらに上へ飛ぶ。足場にし終わったビットはすぐに格納しつつ、同時に新しいビットを次の足場として展開する。そうして淀みなく空を駆け上がるという超絶技巧を実現せしめた。

 これまでのセシリアはビットを操作していると、それ以外の動きや思考がおろそかになるという弱点があった。しかし、正気と狂気の境目が曖昧になっている今のセシリアだからこそ、失敗に対する恐れに飲まれることなく、ただ一心にやるべきことを為して弱点を克服して見せた。

  しかも、ビットはかなりのサイズだが、足場にする瞬間だけ展開してすぐに消しているうえ、蒼色が闇に紛れて太郎からは見えない。

 校舎の屋上に辿り着いたセシリアは、太郎の方を見る。太郎は校舎の雨どいをよじ登ろうとしている。

 セシリアはビット一基展開し、太郎から見られないように彼の下へ回り込ませ、下から突きあげさせた。堪らず落下してしまった太郎を見てセシリアは悦楽、罪悪感など自身でもハッキリとこれと言えない複数で複雑な感情を覚えた。その胸中で暴れまわるそれらに、もどかしく狂おしいまでの昂りを感じた。

 セシリアは地面に叩きつけられた太郎を一瞥した後、また走り出す。

 数秒も走ると既にセシリアは先程までの出来事より、今現在自分が被っている布団へ意識が移っていた。

 

「くくくっ……ケエーヘッヘッヘ、じゅるり」

 

 セシリアは太郎の臭いの染み付いた布団に包まれながら恍惚とした表情を浮かべる。使用済みのISスーツや下着こそ手に入れられなかったが、布団というSRアイテムを得て脳内がエンドルフィンで満たされる。

 セシリアは頬をつたうヨダレを拭い、闇へと紛れていった。その後、寮の自室に帰ろうとしたが騒ぎになっていた為、それが収まるまで待つことになった。曖昧なセシリアでも本能的にその程度の判断は出来た。




太郎 「あっ、無事だったんですね……」
シャル「なんで残念そうなの」


読んでいただきありがとうございます。

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