ISー(変態)紳士が逝く   作:丸城成年

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特別編
クリスマス1


 

 年末が近付く今日この頃、今年は暖冬暖冬と言われていたが、この日に限って言えば大陸側から流れ込んできた寒波の影響で厳しい寒さとなっていた。特に日が落ちてからは雪がチラつき始めている。

 

 今日は恋人達にとって年に一度の特別な日、性夜クリ○○ス・イ○。しかし、クリ○○ス・イ○には他の意味もある。良い子の皆へプレゼントを配りに、男が家へと忍び込む日である。

 

 その男は真紅に染め上げられた服を着て、○ナカイさんにソリを引かせてやって来る。夜の闇と雪を切り裂き、一筋の閃光となって愛を配るその男を人はサンタクロースと呼んだ。だが、サンタクロースがプレゼントをくれるなどという話は都市伝説である。本当は両親がプレゼントを用意していると、大きくなるにつれ子供達も理解する。そして、いつしかサンタからのプレゼントなど期待しなくなる。

 

 特に高校生にもなって、サンタからのプレゼントを本気で待っている者など皆無であろう。それは一つの成長かもしれないが、あえてそれに逆らい、夢を繋ごうと考えた者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャンシャンシャン、シャンシャンシャン。

 

 

 IS学園の敷地内にベルの軽やかな音が響く。真っ赤なノースリーブの本革ジャケットを素肌に着て、頭にサンタの帽子を被った男が周囲を警戒しながら寮へと近付いていた。背には大きな白い袋を担ぎ、下半身にはISの待機状態であるペ○スリング以外何も付けていなかった。男の首にはクリスマスベルを三つ、紐に通した物が掛かっていた。これが先程の音の正体だろう。股間でブラブラしている物から、あんな音は出ない。

 

 この男こそIS学園一年一組が誇るクラス代表、サン太ク郎スである。サン太ク郎スは付き合いのある少女達にプレゼントを配ろうと前々から企てていたのだ。とは言え、太郎は一人目のプレゼントは既に配り終えていた。

 

 一人目は太郎と同室のシャルであった。彼女には太郎の独断と偏見により、黒いボンテージとムチがプレゼントされた。特に太郎のお気に入りだったのが黒皮のホットパンツだった。太郎は寝ているシャルへ細心の注意を払いつつ、起こさないようにパジャマを脱がしてプレゼントへと着替えさした。少しペロペロしたがシャルなら許してくれるだろう。

 

 

 

 

 

 二人目は静寐(しずね)である。静寐(しずね)の部屋の扉に張り付き、ピッキングを開始する。この日の為に研いたピッキング技術は達人級であり、ものの三秒で鍵は開いてしまう。扉を開くと太郎はするりと室内へと入り込み、静寐(しずね)の寝るベットへと歩み寄る。

 

 クリスマスのプレゼントと言えば、枕元に用意された靴下にいれるものである。しかし、静寐(しずね)の枕元には靴下など用意されていなかった。だが、それも太郎にとっては想定内である。担いだ袋から靴下を2セット取り出す。未使用の大きな靴下と履き古した使用済みの靴下である。

 

 太郎は使用済みの靴下を静寐の鼻先へと近付ける。すると静寐は小刻みに震えだした。

 

 

「んっ……んんん? あ、あ、あが、アガペー」

 

 

 静寐は眠ったまま満面の笑みになっていた。静寐の反応に満足した太郎は、未使用の靴下へ使用済みの靴下を入れて静寐の枕元に置いていった。

 

 

 

 

 

 三人目はセシリアだ。セシリアの枕元にも靴下はなかった。仕方なく太郎は袋からプレゼントを入れる用の大きな靴下を取り出した。生物兵器の様な料理スキルのセシリアには、今後の成長を期待して料理本をプレゼントに選んだ。本のタイトルは【すっぽん料理・精力の限界を目指す】である。

 

 翌朝、セシリアより早く目覚めたルームメイトは、セシリアの枕元に置かれた大きな靴下を不審に思い中を確認した。そして、その日のうちにセシリアのあだ名は【飢えたダイソ○】や【男の味を知ったドレーク】となり、IS学園の生徒達から吸引力の変わらない肉食系貴族として恐れられた。

 

 

「男を隠せ、セシリアが来た。全てを吸い尽くされても知らんぞ」

 

 

 セシリアの同級生の間ではこの言葉が一時流行った。幸か不幸か、セシリア本人はその事に気付く事はなかった。

 

 

 

 

 

 四人目はラウラである。ここで太郎に予期せぬ不運が訪れた。部屋に忍び込むと、ラウラは普通に起きていたのだ。愛用のナイフを研いでいたラウラは、忍び込んで来た太郎に直ぐに気付いた。

 

 

「何か用か?」

 

 

 不思議そうな顔で見詰めてくるラウラへ、何と言えば良いのか迷う太郎であったが、ここは正直に話すと決めた。

 

 

「クリスマスプレゼントを渡しに来たんです」

 

「わ、私にか!? 」

 

「ええ、もちろんです」

 

「ク、クリスマスプレゼントなんて初めてだ……」

 

 

 試験管ベイビーで家族と呼べる者のいないラウラにとって、クリスマスプレゼントなど風の噂で聞く程度の存在である。驚きと感動で声が震えているラウラへ太郎はプレゼントを差し出す。

 

 綺麗にラッピングされたそれは、バニーガールの衣装一式であった。バニーガールと侮るなかれ、それは安っぽいジョークグッズやコスプレ衣装ではない。太郎がオーダーメイドで作らせた最高級品である。素材はもちろん、縫製も一流の職人による逸品である。

 

 通称黒ウサギ隊と呼ばれるIS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼの隊長であるラウラへと太郎が用意した特別な衣装だった。

 

 

「貴方なら最高に似合う筈です。いつか特別な日に着て欲しいと思い、用意しました」

 

 

 ラウラは言葉も無く、震える手でプレゼントを受け取った。初めてのクリスマスプレゼント、しかも特別な人から貰った物である。感動もひとしおであった。そんなラウラの様子に太郎は満足しつつも、次のプレゼントを配る為にラウラの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 五人目は鈴である。鈴から恋愛相談を受けた事もあり、プレゼントは当然一夏の使用済みのトランクスだ。ガードの甘い一夏からトランクスを盗み出すなど、太郎にとっては朝飯前であった。代わりと言っては何だが、太郎は鈴のパンツを自分へのご褒美として一枚拝借していった。

 

 ちなみに、残念の事に鈴は一夏のトランクスとは気付かず、何かの悪戯と判断して捨てるという痛恨のミスを犯してしまう。

 

 

 

 

 

 六人目は(かんざし)である。ここでも予想外の出来事が起こる。太郎がピッキングを試みようと扉へ触れると、扉の鍵は既に開いていたのだ。太郎は用心しながら少しだけ扉を開いて、そっと中の様子を窺った。部屋の中は電気が点いておらず、簪がラウラの様に起きている訳ではなさそうだ。

 

 太郎は抜き足差し足で部屋へと忍び込む。やはり中も特に変わった様子は無い。しかし、これまで修羅場を潜ってきた太郎の感が告げている。ここは何かがおかしいと。

 

 

 

 理由は分からないが、この部屋内に言い知れぬ緊張感が漂っているのは確かだ。

 

 

 

 太郎は唾を一度飲み込むと周囲を警戒しながら簪へと一歩、また一歩と近付いていく。

 

 

 

 後一歩で簪に触れられるという所で太郎の頬を何かが掠めた。太郎が頬に触れてみると、何かの液体の様だ。

 

 

 

 天井から水漏れ。このIS学園の寮に限ってそんな不備があるのだろうか。太郎が天井を見上げると─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには全裸の女が両手両足を広げて張り付いていた。

 

 

 

「「ッッッッッ!!!!!!!?」」

 

 

 流石の太郎も驚いた。大声で叫ぶのだけは何とか回避したが、一瞬心臓が止まるかと思った程の衝撃を受けていた。しかし、何故か天井に張り付いている女も驚愕の表情を見せているのが暗がりながらなんとか分かった。

 

 太郎が遅ればせながら戦闘態勢を取ろうとしていると、女が話し掛けてきた。

 

 

「太郎さんじゃない。そんな格好でどうしたの?」

 

「ん? その声は楯無さんですか」

 

 

 暗がりだった為に分からなかったが、女は楯無だった。楯無は音も無く天井から降り立つ。その楯無へ太郎は真っ赤なノースリーブの本革ジャケットを指して見せる。

 

 

「どうしたって、この格好を見れば分かるでしょう。プレゼントを配りに来たんですよ」

 

「ああ、それなら私と一緒ね」

 

 

 納得した様子の楯無が親指で簪の枕元を指す。そこには数本のDVDが置かれていた。

 

 

「この()って昔からアニメが好きなのよ。だから姉としてプレゼントを持って来たの」

 

 

 プレゼントというのは分かったが、どういった理由で全裸なのか、それについては楯無から何の説明も無かった。

 

 太郎の見た所、簪の寝巻きが若干乱れている様な気もするが、気のせいだろう。太郎より先に簪の部屋へと忍び込んだ楯無が、簪に対して如何(いかが)わしい行為に及んでいた。そして、その最中に部屋へ入って来た太郎に気付き、慌てて天井へ張り付いて隠れていたなどという事は恐らくない。そう、無いと思われる。たぶん、無い。

 

 太郎が気を取り直して楯無の用意したDVDを手にとって見る。それらはライナップを見て太郎は首を傾げた。

 

【魔チ○ガーZサイズ 今性器最大の衝撃 恥○の震える日】

【ソーセージ ファッ○エリオン】

【好教師編エロチ○ヘブン】

 

 

「簪さんはこういうのが好きなんですか? ちょっとイメージと違いますね」

 

「姉である私には分かるわ。絶対喜んでくれるっ!」

 

 

 ライナップへ疑問を呈する太郎に、楯無は自信を持って言い切った。しかし、太郎も負けてはいない。担いだ袋からDVDを取り出して楯無へと突き出した。

 

 

【超熟妖妻セクロス】

 

 

「DVDならコチラでしょう?」

 

「絶対無いわ!」

 

 

 太郎は楯無と本格的なプレゼント論議に入りかけたが、まだプレゼントを配らないといけない相手が残っているのを思い出した。決着はまた今度という事にして、太郎は次の良い子の元へと旅立ったのであった。

 

 

 

 

 




久しぶりに3000字以上を一日で書きました。しんどいです。しかし、後悔も反省もしていないです。明日が大変ですが。


読んでいただきありがとうございます。


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