レンタルビデオ屋で借りたビデオを見終わる。
テーマに興味を持ち、世間の評価の高さから借りることにした作品。児童養護施設で育てられたふたりの男と女、互いに惹かれ合い、愛を育む。周りの反対に圧しきられそうになりながらも、最後は互いの愛を確かめハッピーエンド。
チープである。そういう感想が出てきた。まず、児童養護施設をあからさまな悪に仕立てあげた作品である。世間からすれば棄てられた子供が最後に行き着く最悪の場所なのだということを再確認する。
名前も聞いたことのないようなバンド……そう思うことにした。聞いたことのないような歌詞が耳を右から左へと流れていく。そこそこの演奏にチープな詞。耳が痛むハイトーンなボイス。高い声が出せればいいという世間には評価されるそんな武器を持っている。俺にはない、武器を持っている。
そんなことを思いながら米焼酎で揺れる脳を抑える。明日は仕事が休みであるという事実がこの頭痛を加速させているのかもしれない。そんなことを思いながら、歩いて数歩、狭い部屋に似つかわしい小さな冷蔵庫に歩を進める。最低限の肉類と野菜が入る小さな冷蔵庫。その中に所狭しと詰め込まれた食材の中から1.5Lのコーラボトルを取り出し、焼酎を注いでいたグラスに注ぐ。少し重い煙草に火を灯す。換気扇の下で、煙を可能な限り室内に残さないようにゆっくり吐き出す。
変わってしまった。
そんなことを思いながら、煙を吹かす。吹いた煙は換気扇に巻き込まれ、その羽にかき混ぜられ、かき消され、飲み込まれていく。その煙の行く末のように俺自身の罪の意識もかき消され飲み込まれてくれれば……。そんなことを思いながら、二本目のタバコに火を点ける。
「るる!」
後ろからの甲高い声と共に腰の辺りに衝撃が走る。
「俺が煙草を吸っているときは近づくなっていってるだろ?」
自分らしくない、そんな声が喉から鳴らされる。歌のお兄さんとまではいわないが、優しい声。自分でも演技臭いと思ってしまう。しかし、このような声を出さなければいけない相手である。
「だってるるがずっとテレビ見てたから……」
ややしゅんとした声、それに合わせて、やや頭も垂れている。
去年から増えた俺の同居人。俺の殺風景な部屋には似合わないその異物を受け入れざるを得なかった。拒みようのない小さな異物。
その異物の頭を優しく撫でる。やや色素の薄い、あの頃撫でたであろう頭と同じ色。
つい1か月前、「父親」というものになった。自分の父親は知らない。施設では死んだとも、服役中だとも聞いたが、真実は知らない。顔も、何をしていたかも、どんな人だったのかも知らない。父親というものがわからない。ただ、同じ部屋で寝て、起きて、同じ机で飯を食べ、同じ時間に家を出て、俺よりも先に帰ってる。そしてまた、同じ机で飯を食べ、同じ部屋で寝る。それだけでしかない。
父と呼べるのか?家族と呼べるのか?……わからない。
朝になる
何もできまま朝を迎えた。
俺は父には向いていない