私は悩んでいる。
私の身長は174.
背が低い方が可愛いじゃないか!!
私は校内の女子で一番背が高い。女子の平均から考えて私の身長は頭ひとつ大きい。その結果「末は大林か木村か」等と言われているのである。
「私は木村は木村でも小さくて可愛いカエラになりたいんだよ!!」
もしみんなの前でこんなことを言ったら学校中にどよめきが走ることだろう。友達からは考え直せと言われ、知らない人からも、教師からも心配されるだろう。
そして身長174.
物凄く彼氏が欲しい。
周りが彼氏と気ゃっきゃっしているなか私だけが「私にとってバレーが恋人です」なんて言える余裕は全くない。そういうのは雑誌の取材とかで言い飽きた。
しかし、ひとつ問題がある。
身長だ。まず、私は彼氏ができたら物凄く甘えたいタイプだ。毎日メールしたいし、重いものを持ってもらいたいし、登校も下校も一緒にしたい。そして何よりも抱きつきたい。そのような願望をまとめた結果、私の恋人に求める条件は、優しく、気が使えて、面倒なことにも嫌な顔せず付き合ってくれて、甘えさせてくれる身長180㎝以上の男。という一見無理そうな条件になってしまった。日本人男性の4%しかいない身長180㎝にそんな完璧超人がいるだろうか……
だって、男の身長が低かったら男の胸板に顔を埋めることができないじゃないか!?
男の胸板に顔を埋めてすりすりしたい……
しかし、私の身長ではそれさえも難しい。
「男の胸板に顔を埋めてすりすりできずに死ぬなんて、死ぬほど嫌だ!!」
しかし、この五つの難題とも言える条件をクリアできる可能性のある逸材が私の高校にいる。そして私は……
今、モーレツに好きな人がいます!
相手は男子のバレー部のエースで身長は183㎝(←重要)クールで感情を表に出さない。同じクラスで共にバレー部なので挨拶するくらいには仲がいい。クールなのに困っている人を放っておけない。頭もよく女子からも人気が高いという、まるで少女漫画の世界から飛び出してきたかのような完璧超人。しかも何故か今まで彼女ができたことがないらしい。つまり、私にもチャンスがあるということだ。
彼を山に例えるとしたら正しくエベレスト。高く、内も外もクール。彼を目指して数えきれないほどの女子生徒が登っていったが誰独りとして登頂することができなかった。
そうなると私は大きさ的にK2だろうか。……いや、仮にも女の子が「私はケーツーだ」なんて言えない。だとしたら……世界一大きな活火山のジージャイジャコが妥当だろう。内に秘めた熱い思いがとても私らしい。
二つの山は離れているが、クールなエベレストと、表に出さずとも内側は熱いルライラコ……。いいんじゃないか。そして一回り大きなエベレストに包まれて……
「私はジュージャイジャコになりたい!」
「部活帰りか?」
「うおおおおいっ!!」
「何言ってんだよ。」
なぜここに本人が登場するのだろう。本当に少女漫画の世界から飛び出してきたのではないだろうか?
もしかしたら彼に届くのだろうか。
「何か叫んでなかったか?」
「あんたにゃ関係ないよ」
「ケチだな。」
そんな爽やかに笑っても教えないよ。だって、身体中をマグマが駆け巡る。頭が貴方のことでいっぱいになってショートする。全ての感覚器官が貴方を捉えようとオーバーワークしてる。こんな感覚に陥ってる私を放って勝手に最高に爽やかな笑顔で尋ねても教えてやらない。もし今伝えようとしたら……
「私を貴方の彼女にして、思いっきり可愛がってください!」
って言っちゃうから。
「いや無理」
「えっ」
「だって俺、甘えたがりたから。彼女にするのは年上で、俺より背が高くて、面倒見がよくて、優しくて、甘えさせてくれる人って決めてるから」
「い……」
「い?」
「一生童貞してろ!!」