めぐりん先輩登場!
学園祭当日一日目。E組の店は客用客足が延びずに苦戦していた。
逆にA組の『イベント喫茶』は、一時間毎に浅野の伝でアイドルやお笑い芸人等を呼び、さらに会場を二つに区切り一時間毎に交代交代でイベントを行うため、入場料をループでとられる。上手いやり方だ。さらにA組メンバーの人望で客も知り合いも他人も大盛況。
E組はやはり校舎までの道のりがネックとなり客が来ない。ふもとで矢田が客引きをして足腰の弱い人には寺坂&吉田が荷台で中腹まで送ってもらえるがやはり来ない。
そんな風に客が少なく暇していると……
「ひぃ~、きっつ。タバコ辞めっかな……」
学ランを来た顔に傷跡のある見覚えのある高校生が五人登ってきた。
「あー、修学旅行の不良高校生!」
だった。
「また女子でも拉致るつもり?」
「今度はしおりで殴られるじゃすまねぇぞ?」
すると不良どもは……
「……もうやってねーよ。どっかの化け物先公に出てこられちゃたまんねーしな」
殺せんせーの事を言ってるのか。殺せんせーなら校舎の上でシャチホコをやって身を潜めてるが……
「じゃあ、特に何もしねーのか?」
「まさか、力を使わなくても台無しにすることは出来る。例えば、ここのメシがクソ不味いと叫びまくったり、ちょいとネットでつぶやいたりなァ」
めんどくせぇことするな……俺は、看板メニュー『どんぐりつけ麺』を不良どもに運んだ。不良どもの反応は……
「うおー、うまそー!」
「なー、リュウキ君。モンブランも頼んでいい!?」
いがいと好評価だった。そして不良どものリーダー的なリュウキ君?がどんぐりつけ麺を一口食べると……
「う……うめぇ!」
涙流しながらそう言った。
村松。解説よろしく。
「いけるだろ、くせの強い食材ばっかで苦労したぜ。究極のバランスを求めてとんこつ醤油どんぐり麺よ」
それを聞いていた堀部が……
「村松にしては奇跡の味だ。不味さが売りのキャラが崩れる」
そんな事を言いながら堀部は週二のペースで村松の家のラーメンをたかりにいっているらしい。なんだかんだで仲のいいコンビだ。
「他のも食おうぜ、他のも!」
「なんだこのタマゴダケって食ったことねぇ!」
不良どもは大変気に入ったようだ。しかしリーダーだけは……
「テメーら! 不味いって言え!」
そこで登場するのが……
「あらぁ……うちの生徒の料理、お口にあわなかった?」
『『『マブい!』』』
ビッチ先生の登場。不良どもは鼻血を出して目がハートになったように見えた。
「いやいやいや超ウメーッス!」
「そーお? じゃ、この柿とビワのゼリーとかいかが? 私の肌と丁度同じ柔らかさよ」
「喰うッス!」
ビッチ先生の肌と同じ柔らかさって言うのはただのビッチ先生の売り文句だが不良どもへは効果抜群だった。
「いっそ全メニュー食べてくれたらセンセーうれしいな~」
「え、で、でも金が……」
ビッチ先生はリュウキ君の耳元で何かを囁いた。
「「「金を下ろして来るッス!」」」
貢ぎコースが確定した。
E組の客引き戦略。
山のふもとで矢田が客引き→頂上に到着してメニューを一品でも食べて美味しいと思ったらビッチ先生を投入→ビッチ先生の誘惑でメニュー制覇させる。
という師弟コンビの客引きが左右する。ちなみにふもとの客引きには前原もおり、頂上の接客には磯貝がいるため、女子にも効果的。
しかし、それでも客足は伸びない。
菅谷のポスター。岡島の写真。狭間のメニュー解説。三村の特設ホームページ。海老名さんのブログでの宣伝など色々とやってはいるがA組の方が上手だ。海老名さんのブログでの宣伝はそもそも海老名さんのブログはグルメブログじゃないから宣伝にあまりならないし……
「ま、初日は仕方ねぇ。勝負は二日目だ」
「どうして?」
俺が言うと、神崎が聞いてきた。
「A組の浅野の戦略は同じ客に何往復もさせて集客する。学生の学祭で使える予算はせいぜい二、三千円だ。初日に使いすぎれば二日目にはこっちに流れてくる」
「なるほど……でも……」
そう、それでは客が来てもA組に勝つことは難しい。そんな事を考えていると――
「おーい、いるか渚ー!? はーちゃーん!? 来てやったぞー!」
わかばパークのさくらちゃん、松方のじーさん、その他の園の皆が来た。あれ?
「……けーちゃんは?」
けーちゃんがいなかった。どうしたんだ?
「けーちゃんは、お姉ちゃんと来るって」
ああ、さーちゃんとか……
「へー、付き合い続いてるんだね渚も比企谷も」
「うん、ときどき勉強教えに」
「……潮田について行ってな……」
俺らはさくらちゃん達にどんぐりつけ麺を出す。
「おおっ、こりゃ絶品じゃ」
「こんだけおいしけりゃ売れてるでしょ」
それが苦戦しています。潮田が説明してると、松方のじーさん達は……
「心配ないよ。渚達は不思議な力持ってるじゃん」
「ああ、日頃の行いが正しければ必ず皆に伝わるわ」
わかばパークの皆は『ごちそうさま』といって帰っていった。
そんな感じに続けていると――
「比企谷。お前に客だぞ」
磯貝から言われた。俺に客?
「ん、けーちゃんか?」
「いや、雪ノ下さん」
雪ノ下? 堀部がたった今A組のステージにいると聞いたばかりなんだが……
俺は行ってみると……
「ひゃっはろ~、ひさしぶりだねぇ~、比企谷君♪」
……雪ノ下さんでした。姉の……
高等部三年の雪ノ下陽乃。雪ノ下雪乃の姉で元中等部三年A組のトップ。
「うわ~、そのあからさまな嫌そうな顔。久々に見れてうれしいな~」
「何しに来たんすか……妹の方はいいんすか?」
「えー、だって今の3-Aは雪乃ちゃんより浅野君が仕切ってるからいじりがいが無いんだよねぇ……」
この人は相変わらず苦手だ。そして一緒に……
「ハルさんが来たいって言うから~、比企谷君、本当にひさしぶりだね」
「城廻先輩……」
高等部一年の城廻めぐり先輩。前年度、浅野の前に生徒会長だった先輩にして奉仕部の依頼常連客。
俺は、とりあえず二人のどんぐりつけ麺を運んだ。
「うぉ、おいし~!」
「うん、美味しいよ」
「どうもッス」
俺は戻ろうとすると……
「ちょっと~、ひさしぶりなんだし話そうよ~、ほら座って座って」
「申し訳ありませんが当店ではそう言ったサービスをしておりませんので……」
と俺が言うと……
『渚ちゃーん! 遊びに来たぜー!』
『げ、ゆ、ユウジ君!? ど、どうしてこの学校ってわかったの?』
『あれから島の客を調べてね、丁度学祭やってたから』
『そ、そっ!?』
『行ってこい渚ちゃん! クラスの命運は君の接待に託された!』
そう言った中村に押され、スカートをはいた潮田がユウジと呼ばれた少年と山の茂みの席へ向かった。
「そう言ったサービスはしてないんじゃ、なかったの~?」
「あ、あれは全メニュー制覇のお客さま限定で……」
「じゃ、あたしも全メニュー制覇ね♪」
雪ノ下さんから一万円札を出され、俺は雪ノ下さんの特別接客をすることになったのだった……
わかばパークの園児が考えた。E組メンバーのあだ名。暗殺俺ガイルバージョン!
原 寿美鈴 ―― ママ
千葉 龍之介 ―― だいくさん
茅野 カエデ ―― ひめ
赤羽 業 ―― きし
菅谷 創介 ―― ぴかそ
岡島 大河 ―― ししょう(男のみ)
狭間 綺羅々 ―― まじょ
前原 陽斗 ―― たらし
吉田 大成 ―― 黒うどん
神崎 有希子 ―― おれのよめ
潮田 渚 ―― さくらのよめ
比企谷 八幡 ―― はーちゃん(一部でさーちゃんのむこ)
寺坂 竜馬 ―― じゃいあんとぶたごりら