暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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学園祭準備編。13巻終了。


八十六時間目 学園祭の時間

椚ヶ丘学園中高合同のビッグイベントが近づいてきた。

学園祭だ。

椚ヶ丘の学園祭は全国的に有名で本格的な売り上げ合戦となる。売り上げは寄付するが、そこであげた功績は就職にも役立つため、どこのクラスも必死になる。

本校舎も準備にかかっている。

『また、やんのかな? A組対E組の対決』

『今度は売り上げや集客でA組に勝ったりして』

本校舎の近くを通ると、そんな声が聞こえてきた。

そういや、家でも小町から聞かれたな……そのときはわからんと答えたが……今回ばかりは無理だろ……E組は山の上の校舎で店を出さなければ行けないのだから……

 

「勝ちに行くしかないでしょう」

殺せんせーは顔に大量の団子をつけて言う。カッコ悪。

「つってもな~」

「店系は300円まで、イベント系は600円までって単価の上限が決められてる。誰が1㎞の山道登ってそんな安飯食べにくんのよ」

そうなのだ。すると前原が聞いてきた。

「ちなみに比企谷。今回は浅野はどんな手に出ると思う?」

「いや、なんで俺に聞くの……?」

「いやー、1学期期末も体育祭も浅野の考えを読んだのは比企谷だったし……」

たしかにそうかもしれんが……

「なんでもかんでもわかると思うな。浅野が何をするかなんてわかるか」

杉野が言う。

「噂で聞いたが、フードメーカーとスポンサー契約結んで飲食無料化するらしいぜ?」

そこまでやるのか……

「なら、さらに単価の高いイベント系で集客するな。E組が飲食店をやるって予想して無料飲食で腹を満たしやすくする作戦だな」

『やっぱりわかるんじゃん!』

何人かに言われたがまあいい。すると殺せんせーは言う。

「大事なのは何よりのお得感です。安い予算でそれ以上の価値を産み出せば客はきます。たとえばコレ」

殺せんせーの触手にどんぐりがあった。

「裏山のどこにでも落ちてます。特にこの実が大きくアクの少ないマテバシイという種類が最適です。みんなで拾って来てください」

俺らは裏山に入り、言われた種類のどんぐりを拾ってくる。

40リッター袋四つ分は拾ったところで殺せんせーは次に拾ってきたどんぐりを水につけさせる。

「浮いたものは捨てて、沈んだものは殻を割って渋皮を除き、中身をミキサーで荒めに砕きます。そしたら布袋に入れて川の水にさらして、一週間ほどアクを抜きます。先生が一週間前からアクを抜いたものがこちら」

アクを抜いたものが予め用意してあるのかよ……料理番組の定番か!

「その水にさらしていた物を三日ほど天日干しにします。したものがこちら」

だから用意してたのかよ!? なら最初からそれを出せ!

「天日干しにしたものを細かくひいて、どんぐり粉の完成です。これは小麦粉の代わりに使えます」

マジか! どんぐりが小麦粉に!?

「客を呼べる小麦粉を使った食べ物といえば?」

『ラーメン!』『パン!』『うどん!』

バラバラだった。

「まあ、色々ありますが、今回はラーメンでいきましょう。コレを使ってラーメンを作りましょう」

「ラーメン……だと?」

ラーメン屋の息子、村松が動く。どんぐり粉を一なめして言う。

「ちょい厳しいな。味も香りも面白ぇけど、粘りが足りねー。滑らかな食感を出すには大量のつなぎの卵が必要になるから材料費がかかっちまう」

ダメなのか……すると殺せんせーは……

「卵ではありませんが、つなぎになりそうなものはあります。このツル、むかごという小さなジャガイモみたいなのが目印です。この根元を慎重に掘っていくと……」

掘った先にはとろろ芋が出てきた。

「うおおおっ! と、とろろ芋だ!」

「正しくは『自然薯』といい、天然物は店で買えば数千円はします。しかもとろろにすると香りも粘りも栽培ものとは段違いです」

殺せんせーはマッハでとろろにして言う。

「できるか?」

「ああ、申し分ねぇ!」

「自然の山にはどこにでも生えています。標的を捕らえる観察眼でこのツルを探しましょう」

殺せんせーの言葉にシャベルやスコップ、ツルハシを持った奴等が山に行く。

磯貝が自然薯を見つけた。

「ああ……俺、中学出たら自然薯堀になろっかな~」

……磯貝が壊れた。

「タダで得た高級食材に将来設計を見誤ってる!」

「しっかりしろ!? 磯貝!」

前原と片岡が磯貝の目を覚まさせる。

「まあ、どんぐり粉と自然薯で麺の材料は無料です。残った資金を贅沢にスープ作りにつぎこめます」

「……なるほどねぇ、だったらラーメンよりつけ麺の方がいい、この食材の野性的な香りは濃いつけ汁の方が相性いいしスープが少なくすむ分利益も高ぇ」

なるほど。しかもどんぐり粉のラーメンというだけで話題も充分ある。だが……

「けどスープの具はどうすんだ?」

「メニューもラーメンだけじゃ寂しくない?」

俺と原が言うと、殺せんせーが言う。

「それも今、皆さんが探しています。おや、寺坂くんが来ました」

寺坂は大量の魚を持ってきた。

「プールにわんさか住みついてたぜ」

「ヤマメにイワナ、オイカワ。あ、テナガエビもおいしんだよね~」

「控えめに獲ってもサイドメニューには充分な量だ。塩焼きやくんせいで激安で出すことも可能だ」

次は木村と矢田が適当に木の実をとってきた。

「クリやカキやクルミはともかく、この変なブドウみたいなの食べれんの?」

「それはヤマブドウですねぇ、甘酸っぱくて美味しいですよ。砂糖で微調整すれば立派なジュースに成りますが、こっちの似ている芯の先がピンク色なのは有毒のヤマゴボウなので気を付けてください」

次は赤羽がキノコを持ってきた。

「明らかに毒キノコっぽいやつばっかなんだが?」

「え~、そうかな~?」

赤羽の奴、絶対に毒キノコをいたずらに使うために集めてきたな……

「この真っ赤なのなんか明らかに……」

「いえいえ、それは西洋では『皇帝のキノコ』と称されるタマゴダケですよ。人工栽培も出来ない希少食材です」

マジか!? こんな毒々しい色のキノコが!?

「ただし、毒キノコのベニテングダケと似ているので要注意です」

なるほど、毒キノコと似ているのか……

「ん? こ、これって……」

「おや、そのキノコのなかにとんでもない価値あるものがあったようですねぇ。素人の目でもわかるような……」

 

『マ……マツタ……ケ?』

 

だった。

「これらを店で買ってフルコースを作れば、一人前三千円はくだらない。ところがこの山奥ではほとんどが無料で手に入る。ハンデどころか最大の強みに成ります。この食材は君たちと同じ、山奥に隠れて誰もその威力に気づいていない」

たしかにな……この裏山がここまで豊富だとは……しかも旬的にもあっていそうな物ばっかだ。

「隠し武器で客を攻撃か。ま、殺し屋的な店だわな」

「その通り、殺すつもりで売りましょう。君達の山の幸と言う名の数々の刃を!」

俺たちは数々の刃を持ち、学園祭に挑む。




次回はしょうたいの時間。
『しょうたい』の漢字はどっちでしょう?
①招待
②正体
正解は次回。
俺ガイルキャラ複数登場予定。

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