暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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八幡が語ります。


七十九時間目 裏切る時間

俺らB班は、ドアを破壊してビッチ先生の捕らえられていると思われる部屋に入る。

「ビッチ先生!」

そこには手を天井にぶら下げられて拘束されたビッチ先生の姿が。俺は少し違和感を感じて嫌な予感がしていた。

(……頼むから、この悪い予感は外れてくれ……)

岡島が天井に繋がっているロープをカッターで切り、杉野がビッチ先生を背負う。

「じゃあまず寺坂のC班と合流しよう。協力してA班を救出しつつ、「死神」が来たらぶっとばす!」

片岡が言う。

「ビッチ先生と杉野を守りながら、岡島君と三村君が先導。私と比企谷君が後衛! 敵が一人ならまだ充分渡り合える!」

そう片岡の指示で俺らは移動すると――

 

ドサッ、ドサッ!

 

杉野と片岡が倒れた。くそ、嫌な予感があたっちまった!

「6ヶ月くらい眠ってたわ、自分の本来の姿も忘れて……目が覚めたの「死神」のおかげでね」

ビッチ先生の奴、やっぱり裏切ってやがった!?

「ビッチ先生……そんな人だとは思わなかったよ」

は? なにいってんだ? 中村は……

「よく考えろ中村。俺らの知ってるビッチ先生はわりとこんな人だぞ?」

「え………あ、身勝手で、欲望に弱くて、男がいないと性欲で全身が爆裂して死ぬ。確かにわりとこんな人だ」

「恐い設定付け足すな! というかヒキガヤ。あんたは私の裏切り予想してたみたいね?」

ビッチ先生の言葉に矢田達が俺に注目する。

「まあな、ぼっち生活が長いと人と少しでも関わると嫌でも考えちまうんだよ。関わった人が裏切るパターンや可能性を。もっともぼっちは人と関わる事がないからぼっちなんだが、それでも身近な奴が裏切ったり見捨てたりする所を想像しちまうもんなんだよ」

これを俺が言うとビッチ先生は……

「ふーん。でもなら何で桃花やメグ達にそれを言わなかったのかしら? 言っておけば、警戒くらいはできたんじゃないの?」

そうだ。俺はわかっててその可能性を言えなかった。

「去年の……殺せんせーに会う前の俺なら言えたかもな。ずっとぼっちで、人に嫌われても傷ついてもなんともなかった俺が、E組でクラスメイトと関わって……思うようになっちまったんだよ――『嫌われたくない』ってな」

確かにビッチ先生の言う通り『ビッチ先生が裏切ってる可能性はないか?』と言っておけば、警戒くらいは出来たかもしれない。だが、それを言えば俺はここの奴等に『そんな可能性を考えてるなんて酷い奴』と思われることになるだろう。去年の俺ならそんな事を思われてもなんの問題も無かったがE組でクラスメイトと関わって、それが嫌だという気が出てしまった。俺の痛恨のミスだ。

「……思ってもいなかったからな。エリートぼっちのこの俺がこんなに人と関わって、毎日飽きることの無い学生生活することになるなんて。去年はちょっとした事件で人間関係を壊したからな、壊したくないって思いが強くて言えなかった……」

ビッチ先生はなにやら不機嫌な顔をしていた。

「だから俺はビッチ先生をこの場で気絶させて裏切った事を無かったことにする」

それを俺が言うと岡島と三村がビッチ先生に言う。

「そ、そうだよ、ビッチ先生。「死神」の手先になってたのはショックだけどよ」

「一応俺らも毎日訓練積んでるし、先生一人じゃ、もう勝負にならないと思うよ」

そうだ。ビッチ先生の正面戦闘能力は俺らと大差無い。普通に勝負したら勝てるはずだが……

「クス、そうかしら。なら、最後の授業をしてあげるわ、ガキ共」

ビッチ先生はゆらりと近づいてくる。両手には片岡と杉野を眠らせた麻酔銃。あれに気を付ければ……

「あっ痛うっ!」

ビッチ先生は膝をついた。

「ぐ……ハダシで石踏んだ……」

「だいじょ……」

矢田が駆け寄った瞬間。

 

プシュ、プシュ、プシュ、プシュ!

 

すばやい動きで矢田、三村、岡島、中村に麻酔銃を射った!?

そのあと、足でビッチ先生が座っていたシーツをたくしあげて速水と神崎に被せて二人に麻酔銃をあてる。

「ず……ずりぃ……」

「弱ったフリするなんて……一瞬心配しちゃったじゃん……」

岡島と矢田が倒れ際に言った。残った俺と倉橋はビッチ先生から離れた。

「ふん、気絶させるどころかさせられてるわね? ヒキガヤ。ここからあんたはどうするのかしら?」

どうするか? 決まってんだろ……

「逃げるぞ!」

「ふえ!?」

「倉橋と俺だけじゃビッチ先生にも勝てない。寺坂達にビッチ先生の裏切りを伝えて脱出だ!」

……っと、思わせて――

 

(――追っかけてきたビッチ先生の足元をロヴロさん直伝の『けたぐり』で――)

 

俺は振り向いて足元を狙おうとすると――

 

ガッ!

 

足元をけたぐりされた。……俺が!?

「あんたと渚がロヴロ師匠から技を習ったことは「死神」の情報網から報告済みよ。そしてその技はロヴロ師匠から私もよく見てる。その技の弱点はカウンター。第一撃の足への攻撃の時に逆に足を引っ掻ければ崩れ落ちるわ」

俺は首もとに麻酔銃をうたれて気を失う。

くそ、やっぱり嫌われることを覚悟するべきだったか……

俺らはビッチ先生に敗北して、そのあとC班も捕まり、全員「死神」とビッチ先生に捕まってしまったのだった。

……絶対絶命じゃね? これ……




次回は人質の時間。烏間先生対「死神」

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