あれから3日立つが、ビッチ先生はE組校舎に来ない。
そして烏間先生は……
「地球を救う任務だぞ。君達は中学生らしく過ごしていいが、俺や彼女は経験を積んだプロフェッショナル。情は無用だ」
厳しい人だ。俺の発言もあんまりきいてないようだ。
……。
…………。
………………。
「イリーナ先生に動きがあったら呼んでください。先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かなければ」
殺せんせーは顔をサッカーボールカラーにして飛んでいった。呑気なもんだ。
「ビッチ先生、大丈夫かな」
「う~ん、ケータイもつながんない」
「まさか、こんなんでバイバイとかないよな」
「そんなことないよ。彼女にはまだやってもらうことがある」
「だよねー。何だかんだ、いたら楽しいもん」
岡野が花屋に言う。
…………………ん?
「そう、君達と彼女の間には充分な絆が出来ている。それは下調べで確認済みだ。僕はそれを利用させてもらうだけ」
そう言って花屋は教卓に花束を置く――――っ!?
『『『っ!?』』』
俺らはようやく気がついた。
この花屋は平然とごく自然になんなくクラスに溶け込みやがった!?
そして言い放つ。
「僕は「死神」と呼ばれる殺し屋です。今から君達に授業をしたいと思います」
なんだよ……俺は言った。確認だ。
「えっと、一応確認すけど、授業って、ビッチ先生の居なくなった穴埋めの先生ってわけじゃないっすよね?」
「もちろんです、比企谷君。僕の授業は今回限り。花はその美しさにより、警戒心を打ち消し、人の心を開く。でも、花が美しく芳しく進化してきた本来の目的は……律さん、送った画像を表示して」
全員、律の方を向くと律のモニターに映る――
「虫をおびき寄せるためのものです」
――手足を縛られ、箱に詰められたビッチ先生が!?
「手短に言います。彼女の命を守りたければ、先生方には決して言わず、君達全員で僕が指定する場所に来なさい」
花屋――いや、「死神」は言う。
「来たくなければ来なくていいよ。そのときは彼女の方を君達に届けます。全員に平等に行き渡るように小分けにして、そして多分次の『花』は、君達のうちの誰かにするでしょう」
な、なんだ!? たしかにこの人はロヴロさんが言っていた最高の殺し屋「死神」だとわかる。なのに警戒ができねぇ……むしろ安心感まで出しやがる。疑い深い俺が……
「おうおう兄ちゃん、好き勝手にくっちゃべってくれてっけどよ、別に俺らは助ける義理ねーんだぜ、あんな高飛車ビッチ」
寺坂が言う。
「俺らへの危害もちらつかせてるが、烏間の先公やあのタコはそんな真似許さねーぜ。第一、ここで俺らにボコられるとは考えなかったのか誘拐犯?」
やめろ!? 俺らの敵う相手じゃない!? 「死神」は――
「不正解です、寺坂君。それらは全部間違ってる」
――余裕の表情で言う。
「君達は自分達で思っている以上に彼女が好きだ。話し合っても見捨てるという結論は出ないだろうね」
たしかにそうだ。そんな結論はE組では出ない。
「そして、人間が死神を刈り取ることはできない」
そう言って「死神」は花束を宙に舞わせて……
『畏れるなかれ、死神が人を刈り取るのみだ』
そう聞こえて、姿が消えた!?
俺らは少し混乱している……
「おい、こないだの花束、どこにやった!?」
「え? た、たしか職員室に……」
俺は花束を取りに行って教室に持ってきた。そして中を調べると――
「やっぱりか……」
――盗聴器を見つけた。
「くそっ、これで俺らの情報を探ってたのかよ!」
「殺せんせーや烏間先生がいなくなるのを見越して来たみてーだな」
倉橋が最後の砦的発言をする。
「でもさ~「死神」ってほど悪い人とは思えなかったよ。実はいい人ってオチは無い?」
そう思いたいが、無理だ。
「スゴいよね~、そう思わせちゃうんだから」
「だな、あいつの前では誰もがそう思うんだろ。自分が殺される寸前まで誰も気がつけない」
この俺と赤羽の発言で全員納得した。
そして「死神」が置いていった地図とメッセージを見る。
「『今夜18時までに、クラス全員で地図の場所に来てください。先生方や親御さんはもちろん、外部の誰かに知られた時点で君達のビッチ先生の命はありません』……か」
くそっ、あの「死神」は俺の名前も知っていた。と言うことは何人かをつれて行かずにもしものための衛兵にすることも出来ない。というよりやはり「死神」の狙いは……
「鷹岡やシロの時とおんなじだな」
「俺らを人質にして殺せんせーを誘きだす作戦か」
「厄介な奴に限って俺らを先に標的にしやがる!」
千葉、吉田、杉野と言う。そして狭間が言う。
「しょーがないんじゃない。私ら大金稼ぎの一等地にいるんだから」
「ああ、つーより律や鷹岡の作戦の例があるように俺らは政府との契約で殺せんせーからは守られてる。逆に言えば俺らは殺せんせーに対しての無敵の盾になりうるわけだしな……」
他の殺し屋に取ってはたかが中学生を捕まえるだけで無敵装備になれる。こんないい話も無いだろ。
「使うか? これ」
寺坂が出す。超体育着を……
「守るために使うって決めたじゃん。今着ないでいつ着んの」
「ま、あんなビッチでも色々世話になってるしな」
「最高の殺し屋だか、知らねーがよ、そう簡単に計画通りにさせるかよ」
こうして、俺らはビッチ先生奪還作戦を練る。
次回は奪還の時間。八幡をどのチームに入れるべきか悩んでいます。
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