ビッチ先生&烏間先生くっつけ計画第2弾。
校舎では片岡と矢田を中心にビッチ先生と烏間先生を引き離す。
その好きに潮田、茅野、杉野、奥田、神崎、赤羽、俺と修学旅行の四班メンバーが烏間先生からビッチ先生へのプレゼントを買いに来た。
「ったってなぁ、ビッチ先生、大概のプレゼントもらったことあるだろ」
「難しいねー」
全くだ。去年、由比ヶ浜の誕生日プレゼントに犬の首輪をやったがそれとは全くの別の問題だ。
「前に授業で石油王からスポーツカーもらったって言ってたしね~」
そうなのだ。
「クラスのカンパは総額約五千円」
「この額で烏間先生からビッチ先生へ、大人から大人にふさわしいようなプレゼントは……」
考えていると――
「やっぱりそうだ。ねぇ、君達!」
近くにいたお花屋さんのお兄さんが話しかけてきた。
「その後、大丈夫だったかい? ほら、おじいさんの足のケガの……」
あ、この人、その時救急車呼んでくれた人だ。
「まぁ、なんとか、お詫びして、タダ働きして許してもらいました」
「そっか、大事にならずよかったね。それと今、プレゼントが欲しいとか言ってたね、大人にあげるにふさわしい……こんなのどう?」
花屋さんはそう言って神崎に花を向ける。
「なるほど、花束かぁ」
たしかに王道だな。
「ものの枯れるものに数千円から数万円。ブランド物のバッグやアクセサリーより実はずっと贅沢なんだ」
そう考えりゃそうか? なら何で花がプレゼントの王道なんだ?
「人の心なんて色々でプレゼントは選び放題の現代で未だに花が第一線で通用する理由――それは心じゃないんだ。色や形が、香りが、儚さが人間の本能にピッタリとはまるからさ」
花屋さんはいくつかの花をとって束をつくり言った。
「うわわ、説得力ありますね」
たしかにあるが……
「電卓を持っていなけりゃな」
電卓には5580の数字が出ていた。恐らく値段だろう。
「んんん、一応商売なんで」
でしょうね。
「まあ、これも花の縁だ。君達のカンパ額にあわせて最高の束を見繕おうじゃないか。どうする?」
ま、他に案もないし……
俺らはお願いすることにした。
……。
…………。
………………。
「すっごーい、五千円の輝きですね」
その発言だと安っぽく聞こえるぞ、奥田……
「よい人だったね、あの花屋さん」
たしかにな。ほぼ初対面でも安心できる人だ。
なんにせよ、ビッチ先生のプレゼントは買えた。さっさと戻るべきだ。
E組校舎職員室。
「イリーナに誕生日の花束? 何故俺が? 君らが渡した方が喜ぶだろう」
ここは任せた。赤羽。
「あのビッチ先生が必要な戦力と思うならさぁ、烏間先生。同僚の人身掌握も責任者の仕事じゃないの?」
「俺らが用意したのは内密にお願いします」
烏間先生は少し考えてから……
「一理あるな。わかった、俺が渡す。気遣い感謝する」
そう言って烏間先生は花束を受け取り、俺らは準備OKの合図を出し、ビッチ先生を誘導。
そして二人きりの教室を俺らは覗いている。
そして烏間先生が――
「誕生日おめでとう。遅れてすまなかった」
ビッチ先生は大喜び。クラスの連中もいい雰囲気とにやけているが俺は心配な点があった。
……烏間先生、もう何も言わないでくださいよ……
「あんたのくせに上出来よ、なんか企んでんじゃないでしょうね」
「バカをいえ、祝いたいのは本心だ。おそらく最初で最後の誕生祝いだからな」
ああ!? 言ってしまった!?
「なによ、最初で最後って」
「当然だ。任務を終えるか地球が終わるか2つに1つ。どちらにせよ後、半年もせずに終わるんだ」
するとビッチ先生は俺らのいる窓へ、やべぇ。
「こんな事だろうと思ったわ」
沖縄離島の時からわかっていたことだが、ビッチ先生と烏間先生は前提関係が悪すぎる。防衛省と殺し屋。どちらも殺せんせーがいなければ二度と会うことのない関係。交わる方が難しいのだ。
「おかげで目が覚めたわ。最高のプレゼントをありがと」
ビッチ先生は校舎を出ていった。殺せんせーはそっとしておけと言う。
「烏間先生! なんか冷たくないすか、さっきの一言!」
「まさか、まだ気づいてないんですか!?」
前原と岡野が言う。俺は烏間先生の答えはわかっていた。
「そこまで俺が鈍く見えるか」
そう、烏間先生は気づいている。ビッチ先生の気持ちに……
「非情と思われても仕方ないが、あのまま冷静さを欠き続けるなら他の暗殺者を雇う。色恋で鈍るような刃ならここで仕事をする資格はない」
烏間先生の言うことはごもっともだ。しかし――
「烏間先生の言う通りだな。たしかにこのままだとビッチ先生の刃は鈍るかもしれない」
「比企谷!? お前……」
「……でも烏間先生。俺は去年の部活で色々な恋愛相談や告白の手伝いをさせられて、その手伝った相手が全員思った共通の一つの結果があります」
俺は周りから色々言われながら烏間先生に言った。
「フるならフるでちゃんと答えを言ってあげて下さい。半端に返事を出さずに流す方が相手は傷つく、けじめはつけてあげて下さい」
去年、俺はとある後輩の生徒が同級生に告白して答えを流されて傷付いた様子を見た。その状況に少し似ていた。
かくして、俺らのビッチ先生のくっつけ計画は失敗に終わった。
次回は死神登場。