暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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今になって考えるとこの回が“死神”登場回なんですね。


六十八時間目 事故の時間

二学期中間テストを二週間後に控えた。殺せんせーは今まで以上に分身の数が増えて、ついには顔だけで机の周りを埋め尽くすまで分身の数が増えていた。

教えかたは今までよりもわかりやすく、今回こそ全員学年総合50位以内を達成出来そうだと思えるが、俺らは全員、どこか落ち着きがなかった。その理由は、やはり殺せんせーを今だに殺せていないからだろう。

地球存亡が決まるまでの期間は残り5ヶ月になったのだから……

 ……。

 …………。

 ………………。

「あーくそ、疲れた~」

「よくまあ、あんだけ教えかたを思いつくわな、殺せんせーは」

今日なんか分身を使って立体視まで活用してきやがった。もはや、なんでもアリだ。殺せんせーが火を吹いても驚かん自信がある。

「でもさ、勉強に集中してる場合かな私達。あと5ヶ月だよ。暗殺のスキル高める方が優先じゃないの?」

矢田の発言はごもっともだ。しかし、そうもいかない。

「仕方ねーだろ。勉強もやっとかねーとあのタコ来なくなんだからよ」

吉田の発言もごもっともだ。なんかないものか……通学するだけで訓練になるような方法は……すると提案は意外な人物から来た。

「クックック、難しく悩むなよお前ら」

岡島だった。

「俺に任せろ。スッキリできるグッドアイディア見つけたからよ」

岡島の提案……エロいことじゃねえよな?

すると岡島はその場の全員を連れて裏山と住宅街の間に来て一番裏山近くの建物に飛び乗った。

「すげー通学路を開拓したんだ。ここからフリーランニングで建物の屋根を伝ってくとな、ほとんど地面に降りずに隣駅の前まで到達できる」

なるほど、これは通学するだけで訓練になるな……しかし――

「えぇ~……危なくない? もし落ちたら……」

「そーだよ、烏間先生も裏山以外でやるなっていってたでしょ」

倉橋と片岡の発言。その通りだ。誰か一人でも怪我したらテストはもちろん暗殺訓練にも支障が出る。

「へーきだって! 行ってみたけど、難しい場所はひとつも無かった。鍛えてきた俺らなら楽勝だって!」

「……うーん……」

「いーじゃねーか磯貝! 勉強の邪魔せず暗殺力も向上できる! 二本の刃を同時に磨く。殺せんせーの理想とするところだろ!」

前原の発言に俺は考える。確かにそうかもしれんが……

「よっしゃ! 先導するぜ、ついてこい!」

そう言って岡島は行く。続けざまに寺坂、岡野、木村、前原、中村とついていく。俺も行くか……

「うは、きーもちー!」

建物と建物の間を最初に烏間先生が言った通り忍者のように飛び越える。俺の後に村松、矢田、三村、片岡、磯貝等も結局ほとんどの面子がついてきた。

「楽勝だな!」

「だろ? 体育祭でわかったろ! もう俺らは一般生徒とは段違いなんだよ」

確かに棒倒しで勝利した俺らは本校舎生徒から一躍のヒーローと化した。小町も『比企谷さんのお兄さんってE組の人なんだよねー、すごーい』と本校舎で言われているらしい。……すいません、嘘です。しかし、暗殺訓練で狙撃にナイフ。さらにはフリーランニングで出来ることが増え続ける。これなら暗殺も……

すると木村と岡島が到着し――

 

ガシャァッ!

 

岡島と木村が大荷物を乗せた自転車をこいでいたおじいさんにぶつかり、おじいさんは倒れた。

脚を押さえている。もしかしたら骨折かもしれん。

「今の音、何があった!?」

近くで人が……

「!! 大変だ!救急車!」

その花屋のお兄さんは救急車を呼び、おじいさんは病院へ運ばれた。

 

おじいさんが運ばれた総合病院。烏間先生が出てきた。

「右大腿骨の亀裂骨折だそうだ。君らに驚きバランスを崩して転んだ拍子にヒビが入った」

やはり骨折か……

「程度は軽いので二週間ほどで歩けるそうだが、なにせ君らの事は国家機密だ。口止めと示談の交渉をしている。頑固そうな老人だったが部下が必死に説得中だ」

そして、俺らは背中にゾクッと寒気が……

振り向くと、顔を真っ黒にした殺せんせー。日焼けではない。怒りで真っ黒なのだ。

そして岡島、矢田、寺坂が少し言い訳をすると――

 

ビッ!

 

――俺らは全員、殺せんせーにビンタされた。

「……生徒への危害と報告しますか、烏間先生?」

「……今回だけは見なかったことにする」

烏間先生は続けて言う。

「暗殺期限まで時間がない、危険を承知で高度な訓練を取り入れたが、やはり君達には早すぎたのかもしれん、俺の責任だ」

違いますよ、烏間先生。俺らは全員わかってる。烏間先生の言いつけを破って暗殺技術を私的利用した俺らの責任だ。さらに殺せんせーは……

「君達は、強くなりすぎたのかもしれない。身につけた力に酔い、弱い者の立場に立って考えることを忘れてしまった。それでは、本校舎の生徒と変わりません」

返す言葉がない。そして殺せんせーは言う。

「話は変わります。今日からテスト当日と被害者が歩けるようになるまで、ちょうど同じ二週間。クラス全員のテスト勉強を禁止します」

『!?』

なんだと!? それとこれは別問題だろ!?

「罰ではない。テストより優先すべき勉強をするだけです。教え忘れた先生にも責任がある。まずは被害者を穏便に説得してきます」

そう言って殺せんせーは何処かへ行ってしまった。

どういうことだよ……




次回はタダ働き編。
E組の為に八幡が働きます。

はたらくぼっちさま!
(なんか新しいクロス作品が作れそう……)

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