A組の会話からスタート。
一応、雪ノ下目線です。
後半はオリジナルです。
本校舎A組。浅野君はある四人を迎える。
まず、帽子を被った髭の男。
「久しぶりだな、浅野【英語】」
「よく来てくれた、ケヴィン。テキサス人の不屈の魂を借りたくてね【英語】」
続けて、髪を高く整えた白人男。
「浅野にまた会えるなら、この研修留学ってのも悪くないね【フランス語】」
「そうだろ? カミーユ。短い間だが楽しんでいってくれ【フランス語】」
続けては顔と首が少し長めのアジア系の男。
「ありがとうサンヒョク。君のその最強の肉体が必要だった【韓国語】」
「なにを言う、学秀。君と会って体の強さは大きさじゃないと思い知らされた【韓国語】」
最後にケツアゴの殺気だかい男。
「地球の裏からようこそ。ジョゼ【ポルトガル語】」
「おう、浅野。早く俺に闘いをさせろ【ポルトガル語】」
四人は浅野君がA組とE組の棒倒し対決のために短期留学として呼んだ助っ人だそう。
「デカすぎる。こいつら本当に15歳か!?」
瀬尾君が驚く。
確かに全員二メートルちかい身長。横幅もかなりある。
「ああ、カミーユはフランスのレスリングジム次代のエース。サンヒョクは韓国バスケ界の期待の星。ジョゼはブラジルの世界的格闘家の息子。そして全米アメフトジュニア代表のケヴィン。いずれもれっきとした同い年さ」
浅野君は彼らの説明をしながら言う。
「年齢を隠せば猛者の友人はもっといるけどね。常識のルールはちゃんと守るさ」
どこが常識なのかしら……四ヶ国語を話して外国人の助っ人を呼べる時点で常識外れだと思うのだけれど……
「皆、E組とやる事になったこの棒倒し、最優先目標は棒を倒すことじゃない」
『?』
どういうこと?
「助っ人を入れて丁度倍の人数差。戦力的にも棒を倒すのはいつでもできる。僕はね、これを通してE組の皆に反省して欲しいんだ」
浅野君は言う。
「クラスのほとんどが素行不良。誰とは言えないが、こっそり校則違反を繰り返している者もいる。そんなE組にね、棒を倒す前にじっくり反省してもらう。もちろんルールにのっとって正々堂々とね」
よく言うわ。助っ人を呼んだ時点で正々堂々なんて聞いてあきれるわ。
「それに期末テストで悔しい思いをした皆だ『中間の前に少しお返ししておきたい』そんな気持ちが皆にあっても僕は責めない」
言葉使いが遠回しできれいごとね。要するに浅野君の言いたいことは『E組をたっぷり痛めつけろ。3週間後の中間テストに影響が出るくらいに』と言うこと……
さて、彼らはこれにどう対処するのかしらね……
私は廊下にあるラジコンに気づかないふりをしながら体育祭の他の準備に取りかかる。
堀部作の『糸成二号』の録音機能を使ってA組を偵察し、浅野の考えを読む。
……全く。そういうことかよ。
「驚いたな。まさか浅野の考えが比企谷と同じとは……」
「そこか、前原!?」
驚くところはそこじゃねぇだろ!?
「ケッ、いくら勝ちてぇからって助っ人呼ぶかよ」
「しかもこれを聞く限りじゃ、そうとうな奴等だぜ?」
全くだ。どうやってこいつらに勝つか……しかし、向こうが俺らを痛め付けることが目的なら俺らは棒を倒すことに集中すればいい。なら手はある。紅白の分かれ方がE組が赤であれば……
「言っておくけど比企谷君。去年みたいな事して反則負けになるのだけはやめてよ?」
海老名さんに言われた。バレたか……
「あー、去年のアレか~」
「え? 去年なにがあったの?」
潮田が茅野に説明する。
「去年の体育祭で、比企谷君と浅野君は対決したんだよ。正確には敵チーム同士でだけど。それで比企谷君の方は赤のハチマキで浅野君は白のハチマキだったんだけど比企谷君、赤のハチマキの上に包帯巻いて白チームに成り済まして棒に近づいて棒を見事に倒したんだけど、包帯巻いて白チームに成り済ましたせいで反則負けになったんだよ」
「自業自得!?」
まわりはサイテーな奴を見る目。おいこら!
「ケッ、だけどあの時初めてあの浅野の悔しがる顔を見れたぜ」
寺坂は味方してくれた。
「……比企谷、今回それやったら磯貝の退学決まるからやるなよ?」
「わかってるよ。つか、同じ手が二度通じる相手じゃねぇだろ」
まわりは納得する。烏間先生は……
「防衛学校で何度かやったがあれは暗殺ではなく野戦だ。人数差は極めて大きなハンデだぞ。しかも相手は格闘の名手。訓練を積んだ君たちでも……防衛省としては君たちが負傷するのは避けたいが……」
ま、そうなるよな。
「まあ、ハチマキの偽造はやらねえが大まかな作戦はある」
俺は磯貝に作戦を言っておいた。
準備の時間
次回は今度こそ体育祭の時間。