堀部がE組に正式加入して2日。堀部は何やらラジコンの戦車を作っていた。潮田が声をかける。
「昨日一日、あのタコに勉強漬けにされてストレスが溜まった。腹が立ったから、こいつで殺してやる」
殺してやるって、ラジコンで殺せりゃ苦労は……なんだこれ……
俺は堀部の作っているラジコンをよく見ると、なんかスゲーハイテクだった。
「寺坂がバカ面で言った『100回失敗してもいい』と、だから失敗覚悟で殺しにいく」
堀部はそう言ってさらに改造を進める。
「すごいなイトナ。自分で考えて改造してるのか」
「親父の工場で覚えた」
おいおい、堀部って触手振り回してたときはめちゃくちゃ単細胞な奴だと思ってたのにこんなに知能派だったのか?
「堀部、お前こんな改造とかできたなら触手持ってたとき殺せんせーをもっと追い詰められたんじゃねぇのか?」
すると堀部は……
「……触手が俺に聞いてきたんだ。“どうなりたいのか”を、俺は『強くなりたい』と答えたら、それしか考えられなくなったんだ。ただ朦朧として闘って勝つことしか考えられなく」
なるほど。触手に考える力を吸いとられてたとかそんなかんじか?
「……最初は細い糸でいい、徐々に紡いで強く成れ。と言う親父の願いがこもった名前が俺、『糸成』という名前の由来だ。なぜか忘れていた、自分のルーツを」
そういう意味だったのか……触手細胞、恐ろしいや。
堀部はそう言いながらラジコン戦車を床に置く。そして操縦。
ボボボッ! カカカァン!
「すげぇ、走ってる時も撃つときもほとんど音がしねぇ」
「こいつは使えるな」
堀部曰く、電子制御で音を押さえているらしい。
さらにはスマホのガンカメラで銃の照準と連動しつつ、コントローラーに映像を送る。
なんか、スパイっぽいな……
「……それと、お前らに一つ教えておく。狙うべき理想の一点、シロから聞いた標的の急所だ」
堀部は言い放つ。
「奴には“心臓”がある。位置はあの三日月のネクタイの真下だ。そこに当たれば一発で絶命できるそうだ」
マジかよ! これは大きな弱点を発見できたんじゃね?
今まで俺らは無意識に殺せんせーのあのタコ頭や首、こめかみを狙うことが多かったがこれからはネクタイの三日月を狙うべきだ。
堀部は戦車を動かして職員室へ向かったが殺せんせーはいなかった。
……そういえば今日は韓国でジャージャー麺を食いにいくとか言っていたな……
「仕方ねえ、試運転を兼ねてそこら辺偵察しようぜ」
堀部は頷き、進むと……
コントローラーのモニターに女子の足とスカートが写った。
男子のほとんどがコントローラーに目を釘付けにされた。
「見えたか」
「いや、カメラが追い付かなかった。視野が狭すぎるんだ」
岡島、前原。お前ら目的が変わってないか?
「カメラもっとでかくて高性能にしたらどうよ?」
「……重量がかさむ」
だよな。マッハの殺せんせーをとらえるために作ってんだ。機動力が落ちたら意味がない。すると竹林が……
「ならばカメラのレンズを魚眼にしたらどうだろうか」
魚眼?
「魚眼だと歪むんじゃねぇの?」
「いや、送られた画像をCPUを通して歪み補正をすれば問題ない。歪み補正のプログラムは律が組める」
『はい、用途はわかりませんがおまかせ下さい!』
おまかせ下さいって……あくまで殺せんせー対策だよな?
「視野の大きい魚眼レンズは俺が調達する」
岡島……お前が言うと目的が違って見えるぞ……
さらには録画機能やレコーダーも必要だとかどんどん下衆っぽくなってきた。
「これも全て暗殺の為だ! 女子を追え! えーと、試作品一号!」
すると、コテンと段差に引っ掛かり倒れた。
「俺が復帰させてくる」
木村が走る。
「段差に強い足回りも必要じゃないか?」
「俺が開発するわ」
駆動系は吉田が担当することとなった。
本当に目的変わって無いよな?
「車体の色もこのままだと目立ちすぎるな」
まあ、戦車の色は本来、戦場に紛れる色だからな……
「引き受けた。学校迷彩」
菅谷が偽装。さらに前原がマップ、村松が開発中のメシと次々と改良に参加していく。
「こんだけ皆で改良に参加すんだ。機体に開発ネームでも付けたらどうよ?」
「……考えておく」
目的を忘れていない三村と堀部は言う。
開発ネームか……
するとモニターに……
キシッ
「バケモンだ――――――――――ッ!?」
裏山にひそんでいる野生のイタチが現れた。イタチを撃つが威力が足りてない。
ここも要改造だな……
結局、ラジコン戦車はイタチに壊された。
「次からはドライバーとガンナーを分けた方がいいな。頼むぞ千葉」
「……お、おう……」
殺せんせーへの場合だよな? そうだよな?
そして堀部は……
「開発には失敗がつきもの」
そう言って、壊れた戦車のパーツの一つに『糸成一号』と油性ペンで書く。
「糸成一号は失敗作だ。だが、ここから紡いで強くする。百回失敗してもいい、最後には必ず……よろしくな、お前ら」
おうよ。と答える。そして岡島が……
「よっしゃ! 3月までにこいつで女子全員のスカートの中を偵察するぜ!」
ついに完全に目的が変わった。しかも……
「……岡島、後ろ」
「ん?」
その向いた方には外から戻った。女子一同が怒りマークを浮かべて立っていた。
……そのあと俺ら男子は誰一人例外なく片岡を中心に説教されたのだった。
俺は関係なくね?
機械の時間
原作十巻終了。
次回は待ちに待ったコードネーム回!
八幡のコードネームは最初は決まっていたのに投稿する度にやっぱりこっちかな~と迷いが出てきました!
海老名さんのも……
どうしよう……