暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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どーすっべ? これから……


六十一時間目 適当な時間

堀部の触手を取り除くには堀部から力や強さへの執着心を消す必要がある。取り合えず殺せんせーが対先生ネットをリメイクしたバンダナで一時的に押さえたがいつまでもつか……

寺坂の奴……どうやって……

「さて、オメーら。どーすっべ? これから」

……なにも考えていないようだった。

「考えてねーのかよ何にも!」

「ホンット、無計画だなテメーは!」

「うるせー! 四人もいりゃなんか考えてあると思ったんだよ!」

全くあいつらは……すると寺坂は俺の所へ来た。

「八幡! 手伝ってくれ! なんか無ぇのか!?」

なんか寺坂はプールの一件と期末テスト以来俺を無駄に頼りにしてないか?

まあいい。寺坂も本当に何も考えて無いわけじゃない。例えるなら数学の計算問題で答えだけが解ってて途中式が解らんような状態だ。俺が途中式を書いてやるか……

「んまあ、堀部はずっと暴走して暴れてたから腹が減ってるハズだ。取り合えずなんか食わせた方がいい」

俺が言うと……

「なら、村松ん家のラーメン屋行きましょ。ここらか近いし」

「お、おう」

狭間と寺坂が村松の家のラーメン屋につれていく。

……あの不味いラーメン屋で大丈夫か?

 ……。

 …………。

 ………………。

村松の家のラーメン屋『松来軒』。

「どーよ、不味いだろ、うちのラーメン。親父に何度言ってもレシピ改良しやしねぇ」

全くだ。あいかわらずの味だ。

「……不味い。おまけに古い。手抜きの鶏ガラを化学調味料でごまかしている。トッピングの中心には自慢気に置かれたナルト。四世代前の昭和ラーメンだ」

堀部の奴、意外に知ってやがる。

まあ、こんなラーメン屋、近くにチェーン店でも出来たらあっという間に潰れちまうしな……

「んで、イトナの腹が満たされたらどうすんだ?」

「そうだな……たしかスマホの部品を提供していた工場の息子なら機械とかが好きかもしれん」

「機械か……なら次はうちに来い。こんな化石ラーメンとは比較になんねー現代技術を見せてやるよ」

俺らは吉田のバイク屋へ向かった。

 ……。

 …………。

 ………………。

「どーよ、イトナ!? スピードで嫌な事なんざ吹き飛ばせ!」

吉田は後ろに堀部を乗せてバイクで走る。

中学生が無免でいいのかとも思ったが、吉田の家の敷地内なので問題ない。

吉田が高速ブレーキターンをして堀部が草むらにぶっ飛んだ。

「おいこら、物理的に吹っ飛ばしてどうすんだ!」

「いやぁ、テンション上がりすぎて……」

寺坂だけじゃなく、村松も吉田も計算してないようだ。こうなったら狭間だけが頼り――

「シロに復讐したいでしょ? 名作復讐小説『モンテ・クリスト伯』全7巻2500ページ。これ読んで暗い感情を増幅しなさい。テンション高めの海老名さんも読んで一時的に暗くなったわ。あと最後の方は復讐辞めるから読まなくていいわ」

――あ、ダメだこりゃ……

「狭間テメーは小難しい上に暗いんだよ!」

「何よ、心の闇は大事にしなきゃ」

それはそうだが、今はそれを解消する為にやっているとわかって下さい。

すると堀部は……

「やべ、時間切れだ。触手の発作が起きやがった……」

また暴れだす……

「俺は、適当にやってるおまえらとは違う。今すぐ、あいつを殺して勝利を」

あとは任せたぞ、寺坂……

俺らは寺坂以外、堀部から離れる。

「おぅイトナ。俺も考えてたよ、あんなタコ今日にでも殺してーってな。でもなテメーにゃ今すぐ殺すなんて無理なんだよ」

寺坂は堀部に言う。

「無理のあるビジョンなんざ捨てちまいな。楽になるぜ」

「うるさい」

堀部は触手で寺坂に攻撃する。寺坂は足と腹で受け止めた。

「2回目だし弱ってるから捕まえやすいわ。吐きそうなくらいクソ痛てーけどな」

そして寺坂は思い出したかのように堀部に言う。

「村松の奴な、あのタコから経営の勉強進められてんだ。今は不味いラーメンでいい、いつか店を継ぐときがあったら、新しい味と経営手腕で繁盛させてやれってよ。吉田も同じようにいつか役にたてるかもしれないって」

寺坂は堀部にげんこつをあたえて言う。

「一度や二度負けた位でグレてんじゃねぇ、いつか勝てりゃあいーじゃねーかよ。タコ殺すにしたってな、100回失敗したっていい、3月までにたった1回殺せりゃそんだけで俺らの勝ちなんだからよ……」

すると堀部は……

「……耐えられない。次の勝利のビジョンが出来るまで……俺は何をして過ごせばいい」

「はぁ?」

言ったれ、寺坂……

 

「今日みてーにバカやって過ごすんだよ。そのために俺らがいるんだろーが」

 

寺坂たちのようなグループの適当な一言はこういうときには力を抜くのに役に立つ。

「俺は……焦ってたのか」

堀部の触手がだらんと垂れ下がる。

……そう、堀部の異常な力への執着心は焦りから来るものだ。かつて焦りで悩んだ寺坂だからこそ堀部の事に気がつけた。

ただ寺坂は遠く先の堀部はすぐそこのビジョンが見えなくて焦っていた。その違いが寺坂にわからなかった途中式だ。

なんにせよ堀部から執着心は消えた。あとはよろしくお願いします、殺せんせー。

「目から執着の色が消えましたね、イトナ君。今なら君を苦しめる触手細胞を取り払えます。大きな力をひとつ失う代わりに多くの仲間を君は得ます」

殺せんせーは堀部に言う。

「殺しに来てくれますね? 明日から」

堀部の答えは……

「……勝手にしろ。このちからも兄弟設定ももう飽きた」

 

翌日。

「来たかイトナ。もう壁壊して入って来んのは無しな」

「おはよー、イトナ君。似合ってるねそのバンダナ」

「おは~」

前原、原、倉橋とやっとまともに登校した転校生に挨拶。

「おはようございます、イトナ君。気分はいかがですか?」

「最悪だ。力を失ったんだからな……でも」

堀部は言い放つ。

「でも弱くなった気はしない。最後は殺すぞ……殺せんせー」

『兄さん』ではなく『殺せんせー』としっかり呼んで席に着く。堀部イトナはようやくE組に加入となった。

「おい村松。金がない。吐くのガマンするからラーメン食わせろ」

「あァ!?」

ちなみに寺坂グループに入った。




堀部イトナ君加入。
次回はラジコン編。
機械の時間。

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