暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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E組対シロ+シロの部下。


六十時間目 駒の時間

シロが堀部を見捨て、堀部が行方をくらました翌日。

鶴田さんは頭にたんこぶができていた。

同じ部下の園川さんが言うには軽率にシロに協力したことを烏間先生にしかられたらしい。

「烏間さんの殺人げんこつ。直径四センチに渡って頭髪が消し飛び、頭皮が内出血で二センチも持ち上がる恐ろしい技です」

え? あれってデフォルメ的なたんこぶじゃないの?

そして下着泥の疑惑をかけられていた殺せんせーは……

「わ、悪かったってば、殺せんせー」

「俺らもシロに騙されて疑っちゃってさ」

一番疑いが強かった三村と矢田が中心に機嫌をとる。殺せんせーは口をとがらせていた。

「先生の事はご心配なく。どーせ体も心もいやらしい生物ですから」

本当に殺せんせーって、あいかわらず器が小さいんだな……事あるごとに蒸し返してきそうだな……

そして殺せんせーは言う。むしろ心配なのは堀部だと。

「触手細胞は人間に植えて使うには危険すぎる。シロさんの梯子を外されてしまった今、どう暴走するかわかりません」

殺せんせー曰く、殺せんせーみたいな全身触手の生物はともかく堀部のような人間に植えた触手は毎日のようにメンテをしなければ常人なら3日くらいで狂い死ぬほどの激痛に貪られるらしい。

「名義上はクラスメイトだけどさ、俺らあいつの事何も知らねーよな」

全くだ。知っている事と言えばシロによって触手を植えられた事と強くあることに拘る事だけだ。

 

さらに翌日。街で携帯ショップが次々と破壊される事件が多発した。犯人は恐らく堀部だ。

「先生にはわかります。この破壊は触手でなくてはまず出来ない」

「どうして携帯ショップばっかりを?」

「触手に電気か……もしくは携帯の部品の何かを求める本質でもあるんすか?」

「いえ、触手のエネルギーに特に携帯の部品が必要とは思いませんが携帯ショップを狙っているなら次の狙いもわかるかもしれません。担任として責任を持って彼を止めます」

「助ける義理あんのかよ殺せんせー」

「あいつの担任なんて形だけじゃん」

全くだ。しかし街で被害が出るとなるとほっとくこともできん。

「……それでも担任です。『どんなときでも自分の生徒から触手(て)を離さない』と先生は先生になるとき誓ったんです」

……誰に?

まあ、ともかく俺らは堀部を探すこととなった。

 ……。

 …………。

 ………………。

ドガシャッ!

 

「勝ちたい、勝てる強さが欲しい」

携帯ショップを破壊して堀部が言う。

律の予測で狙われる携帯ショップに向かったがすでに破壊されたあとだった。

「やっと人間らしい顔が見れましたよ。イトナ君」

堀部は殺せんせーに気づいた。

「……兄さん」

今にも倒れそうなくらい汗をかいてフラフラしている。

「殺せんせーと呼んで下さい。私は君の担任ですから」

次に寺坂が言う。

「スネて暴れてんじゃねーぞイトナァ。テメーにゃ色んな事されたがよ、水に流してやるから大人しくついてこいや」

すると堀部は弱々しく……

「うるさい……勝負だ……今度は……勝つ」

「もちろん勝負はしてもいいですが、お互い国家機密の身。どこかの空き地でやりませんか? それが終わったらその空き地でバーベキューでも食べながら皆で先生の殺し方を勉強しましょう」

堀部の腹から『グゥ』と小さな音が聞こえた。

「そのタコしつこいよ~、ひとたび担任になったら地獄の果てまで教えに来るから」

全くだ。地獄に殺せんせーが来るかどうかは別として生徒になったが最後、教えて手入れするまでついてくる。

「当然ですよ。目の前に生徒がいるのだから、教えたくなるのが先生の本能です」

いい感じに堀部を連れ戻せ――

 

ピュッ、ボフッ!

 

「ゲホッ、な、何!?」

俺らがいる、携帯ショップの跡地に煙幕が投げ込まれた。いや、殺せんせーと堀部の触手が溶けだしているから対先生弾のパウダーか!?

店の外にはシロの乗った大型トラック。荷台に何人かシロと同じ対先生繊維の服を着てる。

「これが今回の第二の矢。イトナを泳がせたのも予定の内さ」

シロはイトナをネットで捕まえてトラックが発進。

「追ってくるんだろ? 担任の先生」

クソ、堀部を見捨てたのも俺らが堀部を探すことも計算の内だったのかよ!?

「大丈夫ですか、皆さん!?」

「……多分、全員なんとか」

「では先生はイトナ君を助けてきます」

殺せんせーはマッハで跳んでいった。

「……俺ら気にして回避反応が遅れたな」

「ちくしょう、イトナを見捨てたのも計画通りかよ!」

「……あんの、シロ野郎~…とことん駒にしやがって」

三村、杉野、寺坂とイラつく声を出す。

「……堀部をエサに殺せんせーを誘き出す作戦だったみてーだから、トラックでもそんなに遠くには逃げてねぇと思うぞ? 律。予測できるか?」

『お任せを!』

俺らは堀部と殺せんせーを追った。

 ……。

 …………。

 ………………。

俺らが到着したときは殺せんせーはかつてシロが使った殺せんせーの動きを止める特殊光線の中でシロの部下たちが殺せんせーというより堀部を狙って撃っているのを殺せんせーが守りながら堀部を助けていた。

どうやら堀部を捕まえたネットも対先生素材でできているため殺せんせーには助けづらい。

だから俺らが堀部を助ける。

 

ドガッ!

 

木の上のシロの部下は赤羽、前原、寺坂といった身体能力の高い奴を中心に蹴り落とす。

そして落としたら倉橋、矢田、杉野といった器用な奴を中心にスマキにする。

「くっ、ガキ共が! 返り討ちに……」

「ダメだよ烏間先生に追われるばっかでこっちだって悔しいんだから。このケイドロはあんたたちが泥棒側ね」

岡野がシロの部下を足で吹っ飛ばす。

流石のシロも殺せんせーの生徒に作戦を邪魔されるのは計算外だったようだ。

「……お前ら、なんで……」

堀部が言う。

「カン違いしないでよね。シロの奴にムカついてただけなんだから。殺せんせーがいかなけりゃ、私たちだってほっといたし」

おお、速水がいいこと言う。

「速水が『カン違いしないでよね』って言ったぞ」

「生ツンデレはいいものだね」

岡島、竹林。反応するべきととこはそこか!?

そしてシロが俺らに気をとられている間に殺せんせーが堀部をとらえているネットを根本から外した。

「去りなさいシロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが、生徒たちを巻き込めばその計画は台無しになると気づいた方がいい」

シロは――

「くれてやるよ、そんな子は、どのみち二~三日の余命、皆で仲良く過ごすんだね」

――そう言って去っていった。

あとは堀部だが……

「触手は意思の強さで動かすものです。イトナ君の力や勝利への病的な執着心が有る限り、触手細胞は強く癒着して離れません」

そうこうしている間にも堀部の肉体は強い付加を受けて衰弱して行き、最後には触手もろとも蒸発して死んじまうそうだ。

それはいくらなんでもかわいそうだろ!

「なんとか切り離したりは出来ないんすか?」

「彼の力への執着を消さなければ。そのためにはそうなった原因を知らなくては……」

堀部が力や強さに執着する原因……

「その事なんだけど、気になってたんだ。どうしてイトナ君は携帯ショップを襲ってたのか……姫菜や律と彼に繋がることを調べてたら彼は『堀部電子製作所』の社長の息子だったみたいなの」

堀部電子製作所。小さい町工場だが勉強を重ねた腕利きの職人が集められて世界中にスマホの部品を提供していたらしい。しかし、外国の企業に金で技術を盗まれ社長夫婦は息子残して雲隠れ……

なるほど。堀部が力や強さに拘る理由はこれか……

「ケッ、つまんねー。それでグレただけって話か」

寺坂?

「皆それぞれ悩みあんだよ。思い軽いはあんだろーが、けどそんな悩みとか苦労とかわりとどーでもよくなったりすんだわ」

そして寺坂は言った。

「俺らんとこで、こいつの面倒見させろや。それで死んだらそこまでだろ」

寺坂……どうする気だ?




次回はイトナ君と寺坂たちの話です。
タイトルは適当な時間。

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