朝、学校登校前。
「見て見て、お兄ちゃん。この街で下着泥多発だって……狙われたらどうしよ……」
小町に言われて俺は新聞を見る。
「あー、ま、小町は大丈夫だろ」
「ほえ? なんで?」
「この下着泥、Fカップ以上を狙うって書いてあんぞ? お前は10年たってもそこまで成長はしないから安心だ」
「言いきった!? 10年って失礼な! ごみぃちゃん! 小町だって成長期なんだよ!?」
いや、茅野といい勝負の体型のお前が言っても言葉に根拠が無いぞ? しかし、下着泥か……ん?
俺は新聞をもっとしっかりと読む……こ、これは……
俺は新聞を持ってE組校舎へ向かった。
E組校舎の教室に着く。すると……
「どうやら全員、新聞見たみてぇだな」
「うん。そうみたいだね」
全員、疑惑の眼差しをしていた。そして教室に殺せんせーが入ってくると……
「今日も生徒たちが信頼の目で先生を見つめて――って、汚物を見る目!? どうしたんですか、皆さん!?」
殺せんせーは俺らが汚物を見る目をしていた理由がわからんようだ。白々しい……
俺は無言で新聞の例の記事を殺せんせーに見せる。
「『多発する巨乳専門の下着泥。犯人は黄色い頭の大男。ヌルフフフと笑い、現場には謎の粘液を残す』これ、完全に殺せんせーよね」
岡野が説明する。そして三村が言う。
「正直がっかりだよ。こんなことしてたなんて」
すると殺せんせーは……
「ちょっ!? 待ってください! 先生、まったく身に覚えがありません!?」
「じゃあ、アリバイは?」
「アリバイ?」
速水が聞く。
「この事件が起こった昨日の深夜。殺せんせーは何処で何をしてた?」
そうだ。事件ならアリバイがあれば普通は無実となる。
しかし、殺せんせーの答えは……
「何って……高度一万メートルから三万メートルの間を上がったり下がったりしながらシャカシャカポテトを振っていましたが……」
「「「誰が証明できるんだよ、そんなこと!?」」」
……だった。
「そもそも、アリバイなんて意味ねーよ」
「どこに居ようが大体一瞬でこの街に戻って来れるんだしね」
だよな? すると……
「まてよ皆! 決めつけてかかるなんてひどいだろ!」
磯貝が庇う。
「確かに殺せんせーには小さな煩悩がいっぱいあるよ。けど今までやったことといったらせいぜい、エロ本拾い読みしたり、水着の生写真で買収されたり、休み時間中狂ったようにグラビアに見入ったり……『手ブラじゃ生ぬるい』『私に触手ブラさせて下さい』と要望ハガキ出してたり……」
おかしい……それが小さな煩悩なんだろうか?
「……先生。正直に言って下さい」
「い、磯貝君まで!」
磯貝が庇えなくなるって、こりゃそうとうだぞ?
「全く、お前ら落ち着けよ……」
「ひ、比企谷君……やはりこういうときに味方になってくれるのは君のような意外な人物――」
「……殺せんせーは地球を破壊する超生物だぜ? それにくらべりゃ下着泥なんてかわいいもんだろ?」
「――って、やったこと前提で話を進めないで下さーい! 先生は潔白です。失礼な!」
すると殺せんせーは教室のドアを開けて職員室へ向かう。
「先生の理性の強さを証明するため……今から机の中のグラビアを全部……捨てます!」
今、一瞬捨てること躊躇ったように見えたのは気のせいだろうか?
「見なさい。机の中身を全部出し……て……」
殺せんせーの机の中からブラジャーが出てきた……
マジかよ。すると教室にいた岡野が――
「ちょっと! みんな見てクラスの出席簿! 女子の横にアルファベットが書いてあると思ったら、全員のカップ数が調べてあるよ」
出席簿には岡野、奥田、狭間の所にA。海老名さん、神崎、倉橋、不破の所にB。片岡、速水の所にC。中村、原の所にD。矢田の所にE。茅野の所に永遠の0と書かれていた。
……永遠の0って何?
「私だけ永遠の0って何よコレ!」
さらには……
「しかも最後のページに街中のFカップ以上の女性のリストが……」
前原が見つけて俺らはいっそう、疑いの眼差しをおくる。すると殺せんせーは……
「そ、そうだ。い、今からバーベキューしましょう皆さん!」
あ、殺せんせー誤魔化した。
殺せんせー。その誤魔化しは端から見たら口止め料にしか見えん……
「放課後にやろうと準備しておいたんです! ホラ見てこの串! 美味しそ~で……しょ……」
殺せんせーの触手が持った串には、バーベキューの肉や玉葱ではなく、ブラジャーが刺さっていた。
「……やべぇぞ、こいつ……」
「……信じらんない」
「不潔……」
突如降ってわいた、殺せんせーのド変態容疑。
……。
…………。
………………。
キーンコーンカーンコーン
「……きょ……今日の授業は……ここまで……」
授業中。殺せんせーがどんな質問をしても冷たい返答しかなく、一日中針のムシロとなった。
まあ、仕方ないことだ。
「あっはは、居づらくなって逃げ出すんじゃね?」
そうなったら困るな。今年が地球最後の年になってしまう。いや、むしろ自殺に追い込めるか?
「でも殺せんせー本当に犯ったのかな。こんなシャレにならない犯罪を」
「比企谷君の言うとおり、地球爆破と比べたら可愛いもんじゃん」
潮田の疑いに、赤羽は笑いながら答える。
「でもさ、仮に俺がマッハ20の下着泥ならこんな明らかな証拠をボロボロ残さないけどね」
ま、確かにな。
「そんな事してたら、俺らの中で先生として死ぬこと位わかってんだろ。あの教師バカの怪物にしたらE組の俺らの信用を失うことは殺されんのと同じくらい避けたいことだと思うけどね」
その通りだ。殺せんせーは無実だと俺も思う。
「……偽よ」
……不破? それに海老名さんも……
「にせ殺せんせーよ! ヒーロー物のお約束! 偽者悪役の仕業だわ!」
「そうね。体色とか、笑い方とか真似してるって事は……少なくとも殺せんせーの事情を知ってる何者か……ぐ腐腐腐腐、本物と偽者のウケセメ……」
ま、確かにその線だろ……殺せんせーの事情を知ってる奴……殺し屋しか思い付かねぇ……つか海老名さん。こんな時にその妄想はやめて下さい……
「ま、いずれにせよ、こういう噂が広まって賞金首がこの街にいれなくなったら元も子もない。俺らの手で真犯人をボコッてタコに貸し作ろーじゃん?」
赤羽は寺坂を捕まえて言った。
「それじゃあ、私は律と手がかりを探してみるわ」
「お願い、姫菜」
こうして、俺、不破、潮田、茅野、赤羽、寺坂、海老名さん、律による、にせ殺せんせー捕獲作戦が開始されたのだった。
……。
…………。
………………。
夜。とある家に侵入する影が七つ。
「ふふふ、体も頭脳もそこそこ大人の名探偵参上!」
「やってることはフリーランニング使った住居侵入だけどね」
俺らはとある建物に侵入した。
なんでも律からの情報によるとこの建物は某芸能プロの合宿施設でこの二週間は巨乳アイドルグループの新曲ダンスの練習をしているらしい。
次に狙われるとしたらここらしい。
すると……殺せんせーがいた。風呂敷を鼻のところで結び、黒いサングラス……
……殺せんせー、あんたが真犯人にしか見えません……
すると……
タッ、ザザッ、ダーッ!
向こうの壁から誰かが来た。その人は……
(黄色い頭(ヘルメット)の大男!)
やはり犯人は別にいたか……その男はすぐさま干してある洗濯物の所へ、干してあるブラジャーを取ろうとした瞬間。
「捕まえたー!」
殺せんせーが捕獲した。
「よくもナメたマネしてくれましたね! 押し倒して、隅から隅まで手入れしてやる。ヌルフフフフフ」
なんか、下着泥よりも危ないことしてませんか?
「顔を見せなさい、偽者め!」
殺せんせーはヘルメットを脱がす。そこにあった顔は……
「……えっ!?」
「あの人たしか、烏間先生の部下の鶴田さん?」
烏間先生の部下の人がなんで下着泥を? すると――
バツッ!
――と殺せんせーを囲むように檻が出来た!?
「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シーツの檻の中まで誘ってもらった」
シロが現れた!? まさかこの事件の真犯人は!?
「――堀部か!?」
上から堀部が入るのが見えた。
「当てるよりまずは囲うが易し。君達の戦法を使わせてもらったよ」
「シッ、シロ! これ全部テメーの計画か!」
「そういうこと、街で下着泥を重ねたのも、殺せんせーの周囲に盗んだ下着やら色々と仕込んだのもね。この彼を責めてはいけない。仕上げのこの場所だけは代役が必要だったもんでね」
鶴田さんは申し訳なさそうに俺らに言う。
「……すまない。烏間さんのさらに上司の命令でやりたくなかったけど断れなかった」
シロは言う。
「生徒の信頼を失えばあの怪物は慌てて動く。そこにきて巨乳アイドルの合宿という嘘情報。多少不自然でも飛び込んできてしまうあたりが間抜けだねぇ」
こうしてシロが話している間にもシーツの檻の中では殺せんせーと堀部のバトルが繰り広げられている。
シロはさらに言う。なんでも今回は堀部の触手に対先生物質で出来たグローブを装着してジワジワダメージを与えているらしい。すると……
なにやらシーツの檻の中から黄色い光が……そして……
ズギュゥゥン!
対先生シーツの檻は爆発した。殺せんせーの新技だそうだ。
……これって堀部への加害にならないんすかね?と思ったが、堀部は装着したグローブが壊れた以外にダメージを受けていないので問題ない。
「シロさん。この手の奇襲はもう私には通じませんよ。彼をE組に預けておとなしく去りなさい。あと私が下着泥じゃないという正しい情報を広めて下さい」
「私の胸も正しくは、び、Bだから!」
あ、茅野の奴、永遠の0って書かれたこと気にしてやがる。てか、見栄をはるなよ……
すると今度は堀部が……
「い、痛い。頭が痛い。脳みそが裂ける……」
なんだ!? また暴走か!?
「度重なる敗北のショックで触手が精神を蝕み始めたか、ここいらがこの子の限界かな」
限界? どう言うことだ?
「イトナ。君の触手を一ヶ月健全に維持するのに火力発電所三基分のエネルギーが要る。これだけ結果が出せなければ組織も金を出さなくなるよ」
組織? エネルギー? なんだなんだ?
「さよならだイトナ。あとは一人でやりなさい」
取り合えず俺がこの場でわかったことは一つ。
シロの奴、堀部を見捨てやがった!?
「待ちなさい! あなたはそれでも保護者ですか!」
「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。なんでもかんでも壊すしかできないくせに」
シロは殺せんせーに言う。
「私は許さない。お前の存在そのものを、どんな犠牲を払ってもいい。お前が死ぬ結果だけが私の望みさ」
シロは逃げていった。
そして……
「があああっ!」
堀部も行方をくらました。
海老名さんのカップ数がわからなかったので取り合えずこのくらいかなと思って設定しました。
次回はシロ対E組。