暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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フリーランニング編。
ステルスヒッキー発動!?


五十八時間目 警泥の時間

ある日の体育の授業。

「2学期から教える応用暗殺訓練。火薬に続くもう1つの柱がフリーランニングだ」

フリーランニング?

「例えば今から、あの一本松まで行くとしよう。三村君、大まかでいいからどのように行って何秒かかる?」

三村はざっと見て計算する。

「えっと、まずこの崖を這い降りて十秒、そこの小川は狭いとこから飛び越えて茂みのない右の方から回り込んで、最後にあの岩をよじ登るから、一分で行けたら上出来ですかね」

俺もそんな感じた。すると烏間先生は……

「では俺が行ってみよう。時間を計っておけ」

そう言って烏間先生は三村にストップウォッチを渡す。

「これは一学期でやったアスレチックやクライミングの応用だ。フリーランニングで養われるのは自分の身体能力を把握する力、受け身の技術、目の前の足場の距離や危険度を正確に計る力」

そう言って烏間先生は崖を後ろ向きに落ちる!?

「これが出来れば、どんな場所でも暗殺が可能なフィールドになる」

烏間先生は空中で回り地面に受け身をとって、川の滝部分を横走りし、木上まで跳んであっという間に一本松の所へ行ってしまった。

「タイムは?」

「じ、十秒です」

なんてことだ。予想の六分の一で到着してしまった……

「道無き道で行動する体術、熟練して極めれば、ビルからビルへ忍者のように踏破することも可能になる」

クラスの連中は今のを見て『あんなん身につけたら超かっけくね?』とうずうずしていた。

「だがこれも火薬と同じ、初心者のうちに高等技術に手を出せば死にかねない危険なものだ。この裏山なら地面も柔らかくトレーニングに向いている。危険な場所や裏山以外で試したり俺の教えた以上の技術を使うことは厳禁とする。いいな!」

はーい。と全員返事をして、基本の受け身を俺らは習った。

 

それから数日後。

「やっべ、寝坊した」

「どこもジャンプ売り切れてて探しちゃった……」

俺と不破が遅刻して教室に入ると……

 

カシャン

 

ん?

「遅刻ですねぇ、逮捕する」

警官姿の殺せんせーに俺と不破は手錠をかけられた……なんだ!?

「なんだよ殺せんせー。朝っぱらから悪徳警官みたいなカッコしてよ」

木村が殺せんせーに聞く。そういや木村の親は警官だったな……今はどうでもいい。手錠を外せ!

「ヌルフフフ、最近、皆さんフリーランニングをやってますね、せっかくだからそれを使った遊びをやって見ませんか?」

遊び? いったい何をする気だ……殺せんせーは寺坂に風呂敷を頭にコソドロのように被せて言う。

「それはケイドロ! 裏山を全て使った3D鬼ごっこ!」

ケイドロ。つまりは警察と泥棒の鬼ごっこだ。一部地域ではドロケーとも言うらしい。

「皆さんには泥棒役になってもらい、身につけた技術を使って裏山を逃げて下さい。追いかける警官役は先生自身と烏間先生。一時間目内に全員を逮捕、つまりはタッチできなかった場合、先生が烏間先生のサイフで全員分のケーキを買ってきます」

烏間先生も聞いていなかったらしく、殺せんせーの言葉に『何!?』『おい!!』と言葉を挟む。

「そのかわり、全員捕まったら宿題2倍!」

なんだと!?

「ちょっと待ってよ!」

「殺せんせーから一時間も逃げれるかよ!」

クラスで罵声が響く。

「その点はご安心を、最初に追うのは烏間先生のみ、先生は校庭の牢屋スペースで待機してラスト一分で動き出します」

なるほど。それならなんとかなるかもしれん……

「よっし、やってやるか皆!」

磯貝の言葉に全員が賛成した。

烏間先生は少し納得が行かない様子だったが訓練的には良さそうだと納得した。

俺らは着替えて裏山へ行く……殺せんせー、早く手錠を外して下さい……

 ……。

 …………。

 ………………。

裏山。俺はなるべく単独行動に出る。集団で固まると一度に捕まる危険が増えると思ったからだ。

警官は二人。しかもラスト1分まで烏間先生一人。ラスト1分で殺せんせーに捕まらない方法は考えがある。問題は烏間先生をどこまで誘導できるかだ……そう考えていると……

『岡島君、速水さん、千葉君、不破さん。アウトぉー』

警官と泥棒の勝敗審判役と牢屋に居る面子のお知らせ役の律が言う。おい!? まだ始まって五分もたってないぞ!? するとさらに菅谷、ビッチ先生が捕まった。てかビッチ先生も参加してんのかよ……すると。

 

ビッ!

 

ん? なんか肩に当たったような……

「比企谷君。逮捕だ」

いつの間にか烏間先生が目の前にいた。

バカな!? 俺のステルスヒッキーが破られた!?

俺は牢屋スペースへ向かうのだった。

しかし、まだ諦めるわけには行かない。ケイドロのルールでは牢屋の泥棒をタッチすれば解放できる……

牢屋につくと、殺せんせーがいた。

……そういえばラスト1分まで牢屋スペースから動かないって行ってたな……

さらに律から竹林と原が捕まったコール……やべぇ殺戮の山じゃねえか!?

てか殺せんせーと烏間先生のコンビ実は無敵じゃねえのか!?

最強(暫定)人類と最強(確定)生物の無敵コンビじゃねえか!?

どうすんの? これ……このままでは宿題が2倍になっちまう……

牢屋の近くで杉野と潮田が見ているが……

「ヌルフフフ、泥棒共が悔しそうに見ていますねぇ。本官がここにいては救出も出来まいて」

全くだ。これじゃ30分ももたずに泥棒が全滅しちまう……さらには寺坂グループ四人が逮捕されたコールが律から流れる。

どうすれば……

ちなみに牢屋にいる間は警務作業のドリルで勉強させられている。

すると岡島が動く。

 

ちょんちょん、スッ……

 

岡島は無言で巨乳水着のちゃんねーの生写真を殺せんせーに渡した。すると……

 

チョイチョイ

 

(今だ潮田、杉野。助けに来い!)

岡島の下衆な買収によって俺らは全員脱走した。なんか複雑な気持ちだが仕方ないことだ……

出ていこうとすると殺せんせーは……

「ちなみに烏間先生は……君達の残した痕跡を追跡しているはずです。足跡や植物の乱れに注意して逃げるといいでしょう」

……なんて言う。殺せんせー、まさか!?

殺せんせーの泥棒の取り逃がしは続いた。何回か取り逃がしすると烏間先生も怒って殺せんせーを叱り始めた。

「やっぱ合わないね~、あの二人」

「いや、殺せんせーはわざと逃がしてたな」

「? どういうこと比企谷君」

潮田に聞かれた。

「……これで泥棒のほぼ全員が一度は捕まって脱走した。んで殺せんせーは脱走の際に泥棒にアドバイス……これでわかるか?」

「「あ!」」

潮田と杉野も気がついたようだ。ここからは捕まったら脱走は出来ないと考えた方がいい。のこりは20分ちょい。逃げ切る。

最初はすぐになる逮捕コールもなかなか鳴らなくなっていた。

殺せんせーからのアドバイスでフリーランニングの基礎的な動きの縦移動やロングジャンプを駆使して危険な動きをしない範囲で烏間先生の追跡を困難にする。しかし、それでも完璧ではない。

頼んだぞ……前原、木村、岡野、片岡……

その四人が烏間先生をプールから遠くまで離してくれれば……

ラスト1分。

 

ゴボッ

 

潮田、杉野、赤羽はプールの水の底にいれば逮捕出来ねぇ。

『タイムアップ! 全員逮捕ならず、泥棒の勝ちです!』

やったー、ケーキだー。とクラス全員が声をあげる。

「なんかフシギ~、息の合わない二人なのに教えるときだけすっごい連携取れてるよね」

倉橋が言う。

「当然です。我々は二人とも教師ですから。目の前に生徒がいたら伸ばしたくなる。それが教師みんなの本能ですから」

確かに平塚先生もそんなこと言ってたな……というより……

「ケッ、立派な事言いやがって汚職警官が。泥棒の方が向いてんじゃねーのか?」

寺坂が言う。俺も同意件だ。マッハ20なら泥棒の方が向いている。

「にゅにゃ!? 何を言いますか聖職者に向かって。この先生が泥棒なんてするはずがありません!」

こうして裏山フリーランニングケイドロ大会は終わった。




二話に分けて投稿する予定だったのですが、一話で投稿出来ました。
次回は殺せんせー容疑者編。

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