暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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茅野の巨大プリン回。
この話をやるのを待っていた!


五十七時間目 おやつの時間

ある日、家でダラダラと過ごしているとテレビから耳に入ったニュース。

 

全国で鶏卵が供給過剰に

出荷されずに廃棄される卵

 

『国が生産調整に失敗しちゃって国内の鶏が増えすぎてな、卵の値段も急落でさ、運送費の方が卵より高くて出荷するだけマイナスなんだ』

食えるのに処分とはもったいねぇな……ま、生鮮食品にはたまにあることか……

「もったいないな~、あの卵全部使って巨大プリン作って食べたい!」

小町が言う。アホかこいつ……絶対に食いきれずに残すだろ……

 

そのニュースを見てから一週間後。茅野が俺らを集めて言う。

「というわけで! 廃棄される卵を救済し、なおかつ暗殺もできるプランを考えました!」

た、卵を暗殺に? まさか……

「ケッ、メシ作って対先生弾混ぜるつもりか? そんなもん、とっくにやって見破られてるっつーの」

寺坂が言う。その通りだ。前に原と村松が砂糖や小麦粉に対先生弾の粉末を混ぜてケーキを作って食わそうとしたが あっさりと見破られたことがある。

すると茅野は……

「ふふふ、もう少し考えてるのだ。烏間先生にお願いして下準備もOK! どうぞ皆さん校庭へ」

俺らは校庭へ向かうと……

 

見覚えのある台形状の巨大ケースが校庭に設置されていた。

 

「あの形に卵って……まさか」

原が言う。

小町~、どうやらお前の発想をバカに出来なくなったよ。

「そう、今から皆で巨大プリンを作りたいと思います。名付けて……」

茅野は言い放つ。

 

「プリン爆殺計画!」

 

きっかけは甘いもの好きの茅野と殺せんせーが一緒にプリンを食べていた事らしい。

殺せんせーは言ったそうだ。

『いつか自分よりでっかいプリンに飛び込んでみたいですねぇ。……お金無いから出来ませんが』

……と。

「ええ、叶えましょうそのロマン! ぶっちゃけ私もそれやりたいけど!」

願望が入ってんぞ~。てか俺もやりたい。

作戦の内容はこうだ。

プリンの底に対先生弾と爆薬を密閉しておき、殺せんせーが底の方まで食べ進んだら、竹林の発破でドカン。

と言う、シンプルな作戦だ。

こんな単純な作戦に引っ掛かるわけないとも思いそうだがそうでもない。何故ならば……

「……やってみる価値あるかもな」

「殺せんせー、エロとスウィーツには我を失うとこあるもんな」

そう、今更だが殺せんせーはスウィーツ大好き。巨大プリンなんて常識外れな物をみたら我を失うじゃすまないだろう。そして我を失った殺せんせーが周囲への警戒が薄れるのは岡島のエロ本トラップで調査済みだ。底に爆薬があるなんて考えてる暇も無くなるだろう……

しかも今までサポートに徹底してた茅野が先頭に立って支援している意外性まである。これはいけるのでは?

そう考えて俺らは製作に入る。

 ……。

 …………。

 ………………。

大量の卵はマヨネーズ工場の機械で割って混ぜてもらい、砂糖、生クリーム、バニラオイルを混ぜる四つの班にわかれて混ぜる。すると倉橋が茅野に聞く。

「でもカエデちゃん。前にテレビで巨大プリンって失敗してたよ? 大きすぎると自信の重さに耐えられなくて潰れちゃって」

それは俺も見たことがある。ただ同じ材料で巨大化させても意味がないそうだ。

「ちゃんと考えてるよ。凝固剤としてゼラチンだけじゃなくて寒天も混ぜてるの」

茅野が言うには寒天はゼラチンよりも融点が高い上に繊維が硬いからプリンを崩れにくくするらしい。さらに四つの班に分けた理由もそこにあるらしい。

一班はゼラチン寒天を多めに、二班、三班と量を変えていくことで重心をしっかりと保ちつつふんわりと仕上げるそうだ。

「あと、はい、これをときどき投げ入れて」

茅野はそう言って片岡にキューブ状の色々な色のぷよぷよした固まりを渡す。なんだこれ?

「オブラートに包んだ味代わり。これだけのプリンだと流石にずっと同じ味だといくら殺せんせーでもあきちゃうでしょ? フルーツソースやクリームムースがプリンの中で溶けてあちこちに違う味の部分ができるの」

なるほど。俺も大きすぎてあきるのは考えていたがそこも工夫していたか……と言うか……

「そういやこのプリン、どうやって冷やし固めるんだ? 九月の外気じゃ冷えねえだろ? それともバーナーか何かで炙って焼きプリンにでもするのか?」

すると茅野は……

「焼きプリン……それもいいけど、今回はパイプから冷却水を内部に流して冷やすの。これで中までしっかりと冷やし固めることができるよ」

す、すげぇ。茅野の奴、どこまでプリンの特徴を熟知してんだよ……科学的な根拠も有りつつ味も研究してある。

「好きなものの暗殺だとここまで行動力があるとは……」

全くだ。本人は『こうと決めたら一直線』といっていた。一直線過ぎるだろ。ん? そういえば……

「つか、茅野って今回だけじゃなくてもよく考えりゃすげぇ奴なんだよな……」

「ん? どういう事だ? 比企谷」

千葉に聞かれた。

「いや今まで忘れてたが、茅野って確か殺せんせーが来る直前にE組に編入してきただろ? 殺せんせーの登場がインパクトありすぎて忘れてたけど……それでよくここまで自然にクラスに溶け込んだなと……」

すると千葉は……

「そういやそうだったな……」

「茅野ってサポートとか多かったし、あんまし目立ったこと無かったけどよく考えりゃ本当にすげぇ」

前原も言う。

そして隅で請求書に悩まされている烏間先生が見えた。この作戦にいったいいくらかかったのだろうか?

そしてその日の作業は終了した。

 ……。

 …………。

 ………………。

翌日。一晩冷やし固めたプリンからパイプを引き抜き、そのパイプが入っていた穴から空気を入れて外枠を外す。ゆるめのゼラチン寒天をプリンの表面に塗ってプリンの表面を整え、カラメルソースを上にかけて、表面をバーナーで炙れば……完成。

 

『『『出来たぁ!!』』』

 

見事な巨大プリンが完成した。

クラスの連中は『うまそー』『下に爆薬があること忘れそう』といっていた。

そして俺らは殺せんせーを呼ぶ。

すると……

「……こ、これ、本当に全部先生が食べていいんですか?」

今にも狂いそうな表情でよだれを滴ながら、俺らに聞く殺せんせー。

「どーぞー、廃棄卵救いたかっただけだから。もったいないから全部食べてねー」

「もちろん! ああ、夢が叶った。いっただきまーす!」

中村の発言に殺せんせーは皿とスプーンを持って巨大プリンに飛び込んだ。

俺らは校舎の中へ。

「うまい。うまいうまい!」

バババババッ! と凄い勢いでプリンを食べる殺せんせー。プリンが無くなるのも時間の問題だ。

爆発のタイミングは起爆装置に仕掛けたカメラにプリンがなくなって光が差し込んだ一瞬だ。皆、緊張が高まる。

すると――

「ダメだああああああああああ!!」

――茅野が叫んだ。

「皆で愛情込めて作ったプリンを爆発なんてダメだああああ!」

竹林のリモコンを奪おうとした茅野を寺坂が止める。

「プリンに感情移入してんじゃねえ! 元々吹っ飛ばすために作ったプリンだろが!」

「嫌だー! このままずーっと校庭でモニュメントとして飾るんだい!」

「プリンの賞味期限なめんな茅野! 三日くらいで異臭を放って虫のエサになって、最終的に腐るわ!」

茅野を止めようとすると……

「ふぅ、ちょっと休憩」

殺せんせーが教室に……起爆装置も外されて……

「異物混入を嗅ぎとったものでねぇ、土を食べて地中に潜って外してきました」

……土食ったの? そういやディッシュを唐揚げにして食べたってのもあったし土食っても不思議じゃないのか?

「プラスチック爆弾の材料には強めの匂いを放つものもある。竹林君。先生の鼻にかからない成分も研究してみて下さい」

「……っ、……はい」

結局作戦は失敗に終わった。そして……

「そしてプリンは皆で食べるものですよ。きれいな部分をより分けておきました」

おー、流石殺せんせー。

「ただし、廃棄される卵を食べてしまうのは、厳密には経済のルールに反します。食べ物の大切さと合わせて次の公民で考えましょう」

はーい。と全員答えてプリンを食べる。

「惜しかったね茅野。むしろ安心した?」

「あはは」

「でも茅野がここまで徹底してやると思わなかった。楽しかったし、意外だったよ」

確かにな。サポート要員かと思っていた茅野がここまでやるとは……

「ふふ、本当の刃は親しい友達にも見せないものよ。また殺るよ。ぷるんぷるんの刃だったら、他にも色々持ってるから」

なんだよ? ぷるんぷるんの刃って……殺せんせーの触手じゃあるまいし……今度は巨大ゼリー作戦か?

ま、かくして茅野プロジェクトの巨大プリン作戦は幕を閉じたのだった。




自分もプリンは大好きです。
次回は殺戮のケイドロ。
ステルスヒッキー発動?

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