烏間先生を見て悔しそうな顔をしているビッチ先生に岡島はチョンチョンと肩をつつく。
ビッチ先生が振り向いた先には俺らE組全員と後頭部に『カップル成立』と書かれた殺せんせー。
……。
…………。
………………。
場所を移動して、ホテルの休憩所。
「意外だよな~、あんだけ男を自由自在に操れんのに」
「自分の恋愛にはてんで奥手なのね」
全くだ。
「仕方ないじゃないのよ! あいつの堅物ぶりったらワールドクラスよ! 私にだってプライドあるわ、男をオトす技術だって千を超える。ムキになって本気にさせようとしてる間に……そのうちこっちが」
なんだ!? ビッチ先生をかわいいと思っちまった……なんか屈辱だ……
しかし、ビッチ先生は積み上げた経験が逆に邪魔で気持ちに素直になれないわけか……
「俺らに任せろって、二人のためにセッティングしてやんぜ!」
「作戦決行は夕食の時間だ!」
「やーん、南の島のディナーで告るとかロマンチック~」
そんないい事でも無いと思うが……俺の中で黒歴史が開きそうだが、押さえ込む。
「では、恋愛コンサルタント3年E組の会議を始めます」
殺せんせーもノリノリだ。
そしてどうやれば、うまくいくか相談する。
「まずさぁ、ビッチ先生、服の系統が悪いんだよ」
「そーそー、露出しときゃいーや的な」
まずはやはり見た目か……
「烏間先生みたいなお堅い日本人の好みじゃないよ」
「もっと清楚な感じで攻めないと」
「む、むう、清楚か」
ま、そうなるわな。
「清楚つったら、やっぱり神崎ちゃんか、昨日着てた服乾いてたら貸してくんない?」
「あ、う、うん!」
神崎は昨日着てた服をとってきてビッチ先生に着させた。
「ほら、服ひとつで清楚に……」
なってねぇよ!? むしろサイズが合わなくてエロさが増したぞ!?
「もーいーや、エロいのは仕方ない。大切なのは乳よりも人間同士の相性よ!」
それが合わないからこうして話し合っているのでは?
「誰か烏間先生の女性の好みを知っている人は?」
「ん~、前に部下の人……園川さんが烏間先生はメチャメチャ犬好きだとは聞いたことありますけど……女性の好みは……」
「……犬好き……?」
海老名さんの言葉に誰もが疑問を持った。そして矢田がテレビを指して言う。
「あ! そういえばさっき! テレビのCMであの女の事、ベタ褒めしてた! “俺の理想のタイプだ”って」
いや、それは好きな芸能人とかで役にはたたないのでは? そのCMを見てみると……ギチムチの筋肉の女性が三人並んだCMだった。
理想の戦力じゃねーか!?
「いや、強い女性が好きって線もありうるけど、なおさらビッチ先生の筋肉じゃ絶望的だね」
竹林のいう通りだ。今度は奥田が……?
「じ、じゃあ、手料理とかどうですか? ホテルのディナーも豪華だけどそこはあえて二人だけは烏間先生の好物で」
「烏間先生、ハンバーガーかカップメンしか食ってんの見たことないぞ……」
それだと不憫すぎる。
あらためて思うが隙が無さすぎだろ、烏間先生!?
「なんか烏間先生の方に原因あるように思えてきたぞ」
「でしょでしょ?」
「先生のおふざけも何度無情に流されたことか」
打つ手がなくて烏間先生をディスる展開になってしまった。
「比企谷君! 奉仕部時代にこう言う依頼もあったんでしょ!? なんか無いの?」
不破に助けを求められた……俺に求められても……
「そうだな……押して駄目ならあきらめ……じゃない、引いてみろって感じに……」
「今、諦めろって言いかけなかった?」
「まあ、目には目を、歯には歯を、真面目には真面目をぶつける。見たいにビッチ先生も真面目になるとか?」
「それでどうなるの?」
「烏間先生のビッチ先生のイメージはなんだ?」
その場の全員は思った。
「「「ビッチ」」」
「喧しい!」
「ま、そんなわけだから、急に真面目になったら烏間先生もなにかあったんじゃないかと心配になって気になり始めるんじゃないか?」
俺の発言に中村が気づく。
「なるぼど、いわゆるギャップかぁ!」
「それいいかもね」
「おし、その方向で行こう!」
こうして俺らはディナー開始まで準備になったのだった。
……。
…………。
………………。
21:00 ディナー開始。
「……なんだこれは」
烏間先生がディナールームに入ってくると、中村と岡野が烏間先生の席をふさぐ。
「烏間先生の席はありませーん」
「E組名物、先生いびりでーす」
「てわけです、烏間先生。悪いんですけど先生方は邪魔なので外の席で勝手に食べてください。ぐ腐腐腐腐」
海老名さん。このタイミングでその笑いは入らないでしょ……
烏間先生は仕方ないとしてわけがわからず、ビッチ先生の居る外の席へ向かった。
俺らはその様子を覗き見。みんなビッチ先生がんばれと応援だが、倉橋だけはハンカチを咥えて悔しそうにしていた。
烏間先生とビッチ先生の会話はここからでは、聞こえない。が、ビッチ先生は烏間先生になにか過去の話をしてから……
チュ
烏間先生のナプキンに自分の唇をつけてから烏間先生の唇につけた。
「好きよ、カラスマ。おやすみなさい」
告白ではなく、殺白したのだった。
クラスの連中は……
「なによ今の中途半端な間接キスは!」
「いつも見たいに舌入れろ、舌!」
「あーもー、喧しいわガキ共! 大人には大人の事情があんのよ!」
そして烏間先生は……
「生徒たちと言い、イリーナと言い、なんだったんだ?」
……烏間先生の弱点。
『超鈍感』
次回はオリジナル。
帰宅の時間(予定)。