「「「暗殺……胆試し?」」」
殺せんせーからのイベント。確かに夏の夜にやることかもな。
「先生がお化け役を務めます。久々にたっぷり分身して動きますよぉ。もちろんお化けである先生は殺してもOK。暗殺旅行のしめくくりにはピッタリでしょう」
なるほど。簡単に言えばホラー系のシューティングゲーム感覚で殺せんせーの暗殺が出来る。怖がってもよし、殺してもよし。おもしれぇ……と俺が思ったのもつかの間だった。
「では好きな人とペアを組んでください。極力男女で」
……ここで俺が嫌いなぼっち生殺しの『好きなやつと組め』かよ!?
俺は当然、ポツーンと一人あまりに……
「あ、比企谷君。私と組も!」
……へ?
「海老名さん?」
「うん、ダメかな?」
「いや、別にいいが……」
というか、なぜ海老名さんが俺とペアを組もうとするのだろうか……
その後も次々とペアが決まる。ペアは以下の通りだ。
潮田、茅野ペア。
杉野、神崎ペア。
前原、岡野ペア。
岡島、倉橋ペア。
赤羽、奥田ペア。
千葉、速水ペア。
菅谷、中村ペア。
不破、木村ペア。
磯貝、片岡ペア。
寺坂、狭間ペア。
三村、矢田ペア。
竹林、原ペア。
村松、律ペア。
吉田、律ペア。
烏間先生、ビッチ先生ペア。
俺、海老名さんペア。
となった。ちなみに律の名前がふたつあるのは、人数的問題だ。竹林が村松たちに変わってくれとごねたが、実質村松、吉田ペアだ。海老名さんが喜びそうなペアだな……
かくして、胆試し大会は始まるのだった。
……。
…………。
………………。
胆試し会場は海底洞窟。300メートル先の出口まで殺せんせーの仕掛けを協力してクリアして抜けろというシンプルなものだった。
まず最初に潮田、茅野ペアが入る。次に杉野、神崎ペアが入った。さらに何組か入って俺と海老名さんも入る。
すると……
ペンペンペン
と沖縄の三線の音が聞こえ……
ボゥ!
と和服姿の殺せんせーがいきなり現れる。
「ここは地塗られた悲劇の洞窟」
殺せんせーはリアリティーを出すためか、作り話を語る。
「決して二人離れぬよう、一人になればさまよえる魂にとり殺されます」
ぼっちに一人になるなとは……
俺と海老名さんは先へ進む。
すると包丁を磨ぐ音と鬼ババの格好をして障子の外に居る殺せんせーが……
『血が見たい……同胞を殺されたこの恨み……血を見なければおさまらぬ……血、もしくはイチャイチャするカップルが見たい……どっちか見れればワシ満足』
「「恨みが安い!?」」
俺と海老名さんがツッコミを入れてしまった。
取りあえず……
「血が見たいっていってるから海老名さん、鼻血」
「うんわかった~って、ちょっと待って! そんな水くれ、みたいに鼻血求めないでよ!? 私は確かに鼻血出やすいかも知れないけど、いつでも出せるわけじゃないからね!?」
え? そうなの? 去年は俺や戸部とかをネタにいつも鼻血噴いてた記憶しかないが……
『いや、やっぱりイチャイチャするカップルだけでいいかな~、血はいいわ~』
殺せんせーも流石に困ったようだ。しかし、殺せんせーの狙いは何となくわかった。
取りあえず先へ進むと――
『ぎゃああああ!!?』
殺せんせーの叫び声が聞こえた。
「ん? どうしたんだろ?」
「時間的に狭間だろ」
「ああ、きららちゃんか~。『ミス胆試し日本代表』ってあだ名ついたって言ってたからね~」
なんてピッタリなあだ名だろうか……本名の『きらら』よりも似合っている。
そんな感じに進むと――
――暗闇に目の無い男が立っていた……
「「「「ぎゃああああ!!?」」」」
俺らは驚く……互いに。
「ひ、比企谷?」
「ち、千葉か?」
俺らが見たのは千葉と速水のペアだった。
「千葉、お前、目が髪の毛で隠れて見えねえからのっぺらぼうかと思ったぞ?」
「それはこっちの台詞だよ。比企谷の目が腐ってるからゾンビかと思ったよ」
「「どっちもどっちでしょ!」」
速水と海老名さんに同時に言われた。そして……
『ひー、目が無い!? こっちは目が腐ってる!? ぎゃああああ!!?』
一瞬、殺せんせーが俺らを見て飛んでった。
「……比企谷、俺らが言い争うと互いに傷付くから辞めよう」
「……むしろ俺から頼みます」
そして殺せんせーは……
『ひー、なんかヌルヌルに触られた!? ひー、日本人形!? ひー、水木しげる大先生!?』
……勝手にパニックになっていた。
取りあえず、殺せんせーはもう俺らになにかする事は出来そうに無さそうなので、千葉、速水ペアと出口へ向かう。
「ねえねえ、速水さん。千葉君と比企谷君ならどっちがウケだと思う?」
「……? 何の話し?」
「いや~、去年は比企谷君のベストカップリングは浅野君だと思ってたけど、E組に来て赤羽君とか前原君とか寺坂君とか、いい組み合わせをたっぷりと見させてもらって……ぐ腐腐腐腐」
「……??? 本当に何の話?」
速水はわからなくて困っていた。
「ねえ、比企谷君。海老名さんは何の話をしてるの?」
「俺じゃなくて、挾間か不破に聞いてください」
そんな会話をして出口から洞窟を出た。
……。
…………。
………………。
「ようするに、怖がらせて吊り橋効果でカップル成立させてそれをネタにひやかしたり実録小説書いたりしようとしてたのかよ」
あるペア以外、全員が洞窟から出ると、クラスでも恋愛的な話しをされたら面倒な前原、中村を中心に、殺せんせーを問い詰めていた。
「だって手を繋ないで照れる二人を見てニヤニヤしたいじゃないですか!」
泣きギレが入った。ゲスい大人だな……
すると……
「なによ、結局誰もいないじゃない! 怖がって歩いて損したわ!」
「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ。徹夜明けにはいいお荷物だ」
「うるさいわね、男でしょ! 美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!」
最後のペア。烏間先生とビッチ先生が出てきた。
ビッチ先生は俺らに見られると烏間先生から離れた……
「……なぁ、うすうす思ってたけど、ビッチ先生って……」
「……うん」
「……どうする」
「明日の朝帰るまで時間は有るし……」
『『『くっつけちゃいますか!?』』』
結構みんな、ゲスかった。
八幡と海老名さんの話でした。
(別に海老名さんをヒロインにするつもりはないんですか……どうしてこうなった!?)
次回は恋愛の時間