暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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暗殺者事情編。


五十時間目 事情の時間

「よっしゃああ、ボス撃破!!」

俺らは、というか潮田は鷹岡を倒した。俺らはヘリポートにはしごを立て掛け直して、潮田を迎える。

「よくやってくれました渚君。怪我も軽いようで、今回ばかりはひやひやしましたよ」

「……うん、僕は平気だけど……」

そうだ、薬が爆破されてしまった以上、治療薬は鷹岡から奪った三本のみ。全然足りない。

「……とにかくここを脱出する。ヘリを呼んだから君らは待機だ。俺が毒使いの男を連れてくる」

すると……

「フン、テメーらに薬なんぞ必要無え」

屋上の入り口に……

「ガキ共、このまま生きて帰れるとでも思ったかい?」

“ガストロ”“スレッド”“グリップ”“スモッグ”の四人がいた。クソッ、まさかこいつらも俺らに負かされたのが原因で屈辱を晴らしに来やがったのか!?

烏間先生は言う。

「お前らの雇い主は既に倒した。闘う理由はもうないハズだ。俺は充分に回復したし、生徒たちも充分強い。これ以上互いに被害が出ることはやめにしないか?」

「ん、いーよ」

「あきらめ悪ィな! こっちだって薬が無くてムカついて……って、え?」

吉田は気づくのに遅れたが、全員思った。

え? いいの?

「『ボスの敵討ち』は私たちの契約には入っていないわ。それに“ガストロ”が言ったじゃない。貴方たちに薬は必要ないわ」

“スレッド”が言う。どういう事?

「お前らに盛ったのはこっち。食中毒菌を改良したものだ。後三時間位は猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒となる。ボスが使えと指示されたのはこっちだ。これを使えばお前らマジでヤバかったぜ」

つまり、ウイルスってのは嘘ってことか? 寺坂も他の前原たちも放っといて治るのか?

「使う直前にこの四人で話しあったぬ。ボスの設定した交渉期限は一時間。だったらわざわざ殺すウイルスじゃなくとも取引は出来る」

確かにな……でもそれは……

「……でもそれって、鷹岡の命令に逆らったって事だよね。金もらってるのにそんなことしていいの?」

「その通りすよ。もし俺らがあんたらの要求全シカトして都会の病院に行っちまったら俺らは誰も死ななかった上に命令違反でプロとしての評価ダダ下がりっすよ?」

岡野と俺が言うと、殺し屋たちは――

「アホか。プロが何でも金と評価で動くと思ったら大間違いだ」

「そうよ。もちろん依頼主の意に沿うように最善は尽くす。けど彼は最初から貴方たちに薬を渡す気なんて無かったのよ」

――と言う。やっぱりか……俺もそう思ったよ……

「カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか、命令違反がバレてプロとしての評価を落とすか。どちらが俺らの今後にリスクが高いか冷静に秤にかけただけよ」

殺し屋たちは言う。この人たちの言うことは本当だと俺は思える。

そして“スモッグ”が俺らに薬の入ったビンを渡す。

「ま、そんなわけでお前らは残念ながら誰も死なねえ。その栄養剤を患者に飲ませて寝かしてやんな。「倒れる前より元気になった」って感謝の手紙が届くほどだ」

アフターケアも万全かよ!? てかあんたは殺し屋やめて薬剤師にでもなった方がいいだろ!?

「……信用するかは生徒たちが回復したのを見てからだ。事情も聞くし、しばらく拘束させてもらう」

烏間先生は言う。それと同時にヘリが到着する。

ヘリに気絶した鷹岡。鷹岡の個人の部下。四人の殺し屋が乗り込んで行く。

「……なーんだ、リベンジマッチやらないんだおじさんぬ。俺の事、殺したいほど恨んでないの?」

赤羽がおじさんぬに向かってからしとわさびを構えながら言う。

するとおじさんぬは――

「殺したいのはやまやまだが、俺は私怨で人を殺したことは無いぬ」

「そうよ。私もそこの腐った目のぼうやとリベンジマッチしてやりたいとこだけど暗殺技術を私的利用はしないわ」

“スレッド”さんも言う。

「誰かがお前を殺す依頼を寄越す日を待つ。だから狙われる位の人物になるぬ」

「そうよ。本気で暗殺(デート)しに来てほしかったら偉くなりなさい」

「そんときゃ、プロの殺し屋の本気のフルコースを教えてやるよ」

殺し屋たちは去って行った。

「……なんていうか、あの四人に勝ったのに勝った気がしないね」

「全くだ。勝ったってより、勝たせてもらったって雰囲気にしやがった」

「言い回しがずるいんだよ」

「……年季が違うなぁ……」

こうして俺らの大規模潜入ミッションはホテル側の誰一人気づかないまま完了した。

俺らは倒れた連中の居るホテルに戻り大丈夫な事を報告し、毒のオッサンからもらった栄養剤を飲ませて、安心したら……全員、寝てしまった。

 ……。

 …………。

 ………………。

起きたときには次の日の夕方だった。

全員起きてジャージ姿で海岸に来る。

ダメ元だが、殺せんせーを対先生弾と鉄板とコンクリートで固めて居る。

烏間先生は不眠不休で指揮をとっている。疲れも見せずにすげぇ……

太陽が沈んだ直後あたりに……

 

ドドーン!

 

コンクリートが爆発した。殺ったか!?

いや、俺らはわかってる……

「おはようございます。殺せんせー」

殺せんせーはもとの触手姿の生物に戻った。

「では旅行の続きを始めましょうか」

なんて呑気な事を言う。

「旅行の続きって、もう夜だぜ?」

「明日は帰るだけだし」

「一日損した気分よね~」

三村、海老名さん、中村が言うと、殺せんせーは……

「ヌルフフフ、夜だからいいんですよ。ちゃんとしたスペシャルなイベントを用意してます」

殺せんせーの触手には……

 

『夏休み特別企画 清涼! ヌルヌル暗殺胆試し』

 

と書いてあるプラカードがあった。




次回は胆試し編

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